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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ ギタープレイと茶道の関係

先日までスペインをツアーで訪れていたスティーブ・ヴァイをスペインの音楽メディアwww.clickandrock.comが電話インタビューしました。インタビュー動画はココで見ることができますが、インタビュアーの映像のみです。でも92年からずっとヴァイ先生の大ファンだというマティアスさんの感激に打ち震えるインタビューの様子がとっても微笑ましい。

ここで特筆すべきは、彼の質問のおかげで、かなりディープなインタビューになっていること。ヴァイ先生も途中から言葉数が増え、彼の誠意に応えて深いトークに入っていきます。それゆえに内容が哲学的、観念的で難しかった!それにしても、ヴァイ先生もインタビュアーも茶道が何たるものかご存知の様子。どこで知ったんだろう?以下、概要を和訳しました。

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以前は1日に10~15時間もギターの練習に費やしていたそうですが、現在はどのようなルーティンになっているのですか?

日常生活では私も普通の人と同様に様々な雑事に追われている。今はツアー中だからルーティンはすごくシンプルだ。好きな時間に起きて街を散歩する。昼に少し休んで、午後3時にEVO Experienceが始まる。サウンドチェックがあって、その後ショウの前には楽屋で20分から1時間くらいプレイするよ。ショウのない日は全くギターに触らない。手の繊細な筋肉を休めたいからね。15時間もプレイしたのは若い頃で、平均は9時間くらいだろうね。

でもギタープレイの鍛錬としては実際に弾くことだけではないのだよ。イマジネーションも大切なんだ。例えば寝るときに目を閉じてギターをプレイすることを想像してみるんだ。そうすることでフィーリングが鍛えられる。我々は、実際にプレイして音を聞くだけでなく、感覚や記憶のレベルでプレイしているんだ。そうだな、フレットボードに耳を持つという感覚なんだよ。だから、自分のプレイを想像して感覚を鍛えるということはとても有益なんだ。

あなたはギタープレイに関してよく、"meditation"(瞑想)という言葉を使っていますね。

"meditation"というのは、何かに深く意識を集中することだ。例えば"spiritual meditation" (精神的瞑想)というのは自己の存在に集中し、意識しない思考認識状態をつくることだ。私が使う"musical meditation"(音楽的瞑想)というのは演奏に対して高度な認識状態をつくることだ。高度な鍛錬と集中力によってある領域に達すると、ステージに立つときには意識外の能力がもたらされる。これはスポーツ競技などにもつながる感覚かも知れない。

分かります。哲学に通じますね。私は武道や茶道を思い起こします。

そうだ。茶道にもつながるね。自分の動作を考えるのではなく、高度な認識の結果の諸動作なんだ。この領域に達するのはとても難しくて、修行を要する。でもそれこそがギタープレイにも求められるんだよ。認識の世界でその瞬間に完璧に存在するということだ。

あなたのプレイを見ているとそれが分かります。
あなたは、インスト音楽に多大な影響を及ぼした人物です。インスト音楽というのは聞き手に解釈の自由が大きく与えられているという点が私は好きなのですが、あなたはそれを意図的に行っているのですか?

私は自分のアイデアやインスピレーションを音楽にしていくけれど、例えば"The Story of Light"のアルバムでは多くのアイデアがあった。カラフル、シンプル、美しい、重厚な、複雑なイメージを表現する上で、一つの音楽的スタイルにまとめる気はなかったね。サイケなものにしたいのさ。(笑)

あなたの音楽には真実があり、演奏を見るのが楽しく、魂があるので好きです。

君の言う魂という言葉は多くの解釈がある言葉だ。私の解釈では魂というのは時を越えたもの、純粋な意識下の認識であり、自我の底辺を成すものだ。
曲には2つあると思う。1つは他人の作品から知覚的にインスパイアされたもの。もう1つは完全にオリジナルで唯一のもの。こっちは完全に自分の魂から作り出されたものでなくてはならない。

作品の中で、あなた自身の人生の節目に強くインスパイアされた曲を教えてください。

すべての曲には特定のひらめきがあったので、どの曲か言ってくれれば答えるよ。しかし、そうだな、最高にユニークなインスピレーションによって書いたのは"Passion & Warfare"の"Love Secrets"だ。この曲を知っている人には分かるけど、この曲のインスピレーションはこの世界の外からきているんだ。それを考えてフレットボードを追っていたらこの曲ができたんだ。

("Love Secrets"のコメントに関して、詳しくはこちらを参照ください。)

あなたのショウはいつも素晴らしいですが、今後実現したいと考えているショウのヴィジョンは何かありますか?

そうだな、長いリストになるぞ。バンドにバイオリン奏者2人を加えることは実現したから、電気ハープを今度は2人のパーカッショニストにしてみたい。ビッグな管楽器セクションのあるバンド形式でもやってみたいし、20人のコーラス隊を入れたい。世界中を回って毎晩新しい曲を地元のオーケストラとその地の文化を取り入れて演奏して、撮影してまとめたいね。

そんな「やりたいことリスト」を挙げればきりがないし、時間と予算次第だ。
私は近年、この世でそのすべてを実現することは不可能だと気づいてね、こういうヴィジョンにあまり執着しないようにしている。人生は限られていて、優先順位をつけて取り組むしかない。それに先々のプランに気をとられて今を楽しむことを忘れてはいけないんだよ。

ああ、そうだ。さっき君は最高なショウについて聞いたけど、私の行った最高のショウというのはここバルセロナだったんだ。
Alive in an Ultra World Tourだったが、その日は1晩に2公演ある日で、大変なことに私はインフルエンザにかかってしまってね、2回目のショウのことはほとんど覚えていないんだよ、すべてがスローモーションで進んでいた感じだ。でもそれが最高のプレイができた日なんだよ。今回もここでベストなショウができるようにするつもりだ。

じゃぁ、インフルエンザにかからないと。

アハハハ

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最後の「最高のショウ」についてのエピソードは今年の来日時、東京EVOでも話してくれました。確かその時は「ベストな演奏ができるのはどんな時か」という文脈だったかと思いますが、この例を挙げて、いつどう結果が出るか分からないみたいな話だったような。。。