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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ジェイソン・ベッカー vol.1 ドキュメンタリー映画 "Not Dead Yet"

もし、あなたがあのスティーブ・ヴァイの後釜として、デヴィッド・リー・ロス・バンドのギタリストに抜擢されたら?もし、レコーディングの最中にALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されて、あと3-5年の命だと言われたら?

映画"Jason Becker: Not Dead Yet" (「ジェイソン・ベッカー:まだ死んじゃいないぜ」って訳になるかな)はジェイソン・ベッカーのドキュメンタリー。身体の自由を奪われ、44歳になった彼は現在も作曲家として創作活動を続けている。そんな彼の生い立ちから現在までを追ったドキュメンタリー映画が2011年に製作され、2012年に海外で公開された。

日本での公開やDVD発売の予定が不明なので、米国版DVDを購入して鑑賞したら、今年一番泣けた。でもそれは現実に起こった悲劇のせいではなく、ジェイソンと家族、友人たちの強さと献身に心を打たれたから。

映画ではプロデューサーのマイク・バーニーが80年代半ばごろに注目ギタリストを発掘していたエピソードが紹介される。15歳のポール・ギルバートや22歳のグレッグ・ハウ、19歳のイングヴェイ・マルムスティーンの記事などにギターファンの目がいく。
さらにDVD特典映像では、当時マイク・バーニーからレコード契約を断られたジョー・サトリアーニのインタビューも。サトリアーニはマイクからジェイソンのプレイを聞かされ、彼のような演奏を求められたという。(その後、マイクはサトリアーニの才能を認め、和解したそうです。)
「俺は子供の頃からギターを弾きまくってプレイを習得した。ところが、ジェイソンはまだガキのくせにあのプレイが弾けてしまうんだ。もの凄いショックだったよ」 サトリアーニ

デイヴのパサディナにある豪邸でデヴィッド・リー・ロス・バンドの新ギタリスト、ジェイソンのお披露目パーティーが盛大に行われた時、彼は既にALSの宣告を受けていたという。それでも彼は仕事をやり切れたことを感謝している。私もお礼を言いたい。おかげで現在でもオーディエンスはあのアルバムを何時でも聴くことができ、"It's Showtime"で見せたジェイソンのプレイに興奮することができるのだから。

91年の"A Little Ain't Enough"を引っさげてのツアーで全米、いや全世界はジェイソンのプレイに度肝を抜かれるはずだった。病状によりツアーは出来ないと判断し、アルバム製作のみでバンドから抜けた若干22歳のジェイソンの心情は想像を超える苦しさだったろう。

病状が進み、ジェイソンが呼吸困難に陥ったとき、医者の問いかけに対し、「まだ生きたい」と彼が言ってくれたおかげでファンはまだ彼の音楽を聴くことができる。なんて強い人なんだろう!でも彼自身は他の患者やファンに英雄視されることには違和感を感じているようだ。自分はただ音楽を創りたいだけなんだと。

Jesse Vile監督は多くはない素材を使って、ヴィヴィッドに事実を描いている。映画のイントロとエンディングの素材選びにも監督のセンスの良さが光っていると思う。映画から伝わるのは悲しみや絶望ではなく、愛と喜び、そしてユーモア。HR/HMファン以外にもこの映画の良さは分かるはず。

そこで疑問だけれど、どうしてこの映画を日本で公開もしくはDVDリリースしないのか?この映画の撮影地は米国と日本だというのに!Cacophony(ジェイソンが初めて参加したメタルバンドでマーティ・フリードマンとのツインギターが絶品)で来日したときの映像、ジェイソンが日本でクリニックをやった映像、Young Guitar誌の表紙を飾った画像。これらが使われているのに、日本にはジェイソンを知る音楽ファンが沢山いるのに、なぜ公開しないのかと残念で仕方ない。

DVDはリージョンフリーだし、HR/HMファンなら英語が苦手でも映画の内容はおよそ分かってもらえると思う。ぜひ多くの人に見てほしい作品。

なお、DVDには特典映像がついていて、本編で使用されたスティーブ・ヴァイマーティ・フリードマンジョー・サトリアーニのフルインタビューを収録。特にマーティさんのインタビューでは、本編で語りつくせなかったジェイソンとの貴重なエピソードが聞けます。本編には他にグレッグ・ハウ、リッチー・コッツェン、スティーブ・ルカサーも登場します。

上の動画は映画の予告編映像と映画のプレミアに合わせて行われたインタビューです。
映画を見た感想を聞かれてのジェイソンのコメントはジョークたっぷり。

「初めに、もっと俺の音楽を入れればよかったと思った。でも次に俺ってすげーヤツじゃんって思った」

People Magazineアメリカのセレブニュースを扱う有名週刊誌)は俺をSexiest Man Alive(今最もセクシーな男という企画で旬の男性が毎年選出され、大きな話題になる)に選ぶべきだね。(笑)


ヴァイ先生が、ジェイソンのジョークのセンスを褒めていましたが、このインタビューでもそれが確認できました。
ジェイソンは自伝を執筆中とのことですので、近いうちに出版されるかも。こちらも楽しみです。