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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

キップ・ウィンガー ソロ・ショウに見た鋼鉄のミュージシャン魂

WINGERが5年ぶりのニュー・アルバム "Better Days Comin'" をリリースしました!キップがインタビューで話していたとおり、新作は "Pull"と"IV" の発展版というか、楽曲のバラエティが豊かで、前作"Karma"がストーレト・ヘヴィにROCKしていたのに対し、ヘヴィさを残しつつも、より複雑で彼らの多面性が現れた内容という印象。タイトル曲の "Better Days Comin'" はちょっと新しいサウンドでしたが、すっかり気に入りました。

ニュー・アルバムをひっさげて今年はWINGERでのライブ活動が活発になるとのことですが、その合間合間にキップはライフ・ワークとも言えるソロ・ショウを全米各地で続けています。3月14日にはバーモント州のOkemo Mountain Resortというスキー場でソロ・ショウが行われ、動画がアップされていました。(2018年1月現在、動画は削除されてしまいました。残念)

この動画を見てびっくり!ステージがない!キップは階段脇の通路で演奏しています!(しかも階段の下はトイレです)通路だから客席との間をスキーウエア着た人が演奏中もどんどん通ります。しかもこの場所はスキー場への出入り口にもなっているカフェテリアのようで、スキーブーツ履いた人がウロウロしてる状態。すなわち路上ライブと条件あまり変わりません。(泣)とてもプロミュージシャンがショウをやる状況ではないし、プロモーターやマネージャーに怒って帰ってもいいんじゃないかと思うのですが、キップは違います。

最初はかなりやり辛かったと思いますが、演奏と歌唱力、さらに人懐っこく楽しいトークで次第に観客をショウに引き込んでしまうキップには鋼鉄のミュージシャン魂を感じました。
観客とのやりとりがとても微笑ましかったので、トークの一部を文字再現してみました。

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■ 俺のソロ・ショウを見たことある人は?(手を挙げた観客に)95年から新曲はないから、見たことのある人は帰っていいよ。(笑)

■ (観客の声援に)飲んでる人はもっとデカイ声で叫んで!でも車の運転はしちゃダメだよ!

■ この中にミュージシャンはいる?Support Live Music!これは凄く大切なことだ!

■ またちょっとチューニング・タイムだ。この中で12弦ギター弾いたことのある人はいる?チューニングが大変なんだ、これが俺の言い訳!(笑)

■ ("Who's The One"をプレイした後)何かリクエストはある?(前列の少年から "Stone Cold Killer" の声に)ありがとう、この子は俺の音楽を知ってる若いファンだね!でもごめん、その曲はバンドと一緒でないとできないんだ。(同じ少年から今度は "Deal With The Devil" のリクエスト)君、名前は?ジョシュかいいね!

■ "Miles Away" 歌える人はいる?後で誰か出てきてもらうよ。歌詞はグーグルで検索しておいてね。

■ ("Free" の演奏を終えて)ふ~、やったね。これは若い頃のギター練習のおかげさ。1日5時間。練習ばっかりでつまらなかったけど、上手くなるためには何度も練習するしかないんだ。

■ (観客の女性に名前を聞いて)ベアトリス?本当に?わぉ、俺の最初の奥さんの名前だよ。(観客は離婚したのかと勘違いして笑うが、キップは自動車事故で奥さんを亡くしている)ドイツ系の名前だよね?('God bless her soul'と亡くなった奥様へ小さく祈りを捧げるキップ。何も知らない客席のベアトリスはキップに熱烈な視線とアピール)なんだか俺たち縁があるみたい?ハハハ(と照れてみせる)

亡くなった奥様の名前を口にした後のキップの瞳には一瞬ながら乗り越えた悲しみとかつての愛情が映ります。ファンとしてはこの表情にハートを撃ちぬかれました!(涙)

■ ジーン・シモンズの話を教えよう。90年代後半、バンドが全くギグを出来なくなった頃、ジーンが電話をくれてね、「あいつらお前をバッシングしてるから、名前を変えるべきだ」って言うのさ。「いや~、でも俺たちはずっとWINGERでやってきたから・・・」って答えると、ジーンは「いや、そっちじゃない。キップを変えるのさ。もっとロッカーらしい名前に。ミック・ウィンガーなんてどうだ?」ってね。マックのメニューみたいだよね。(笑)俺はずっとKISSのファンだったんだ!Destroyer最高だろ?

■ アリス・クーパーの新しいアルバム"Hollywood Vampires"の何曲かではベースで参加してるんだ。俺は22歳でNYに出てきたとき、縁があってアリスのレコーディングに参加して、その後何年かはツアーにも参加していた。アリスは俺が今知っていることの全てを教えてくれた人だ。実はゴルフもアリスに教わったんだ。(笑)

キップのアリスに対する深い感謝と尊敬の気持ちが伺えるコメントでした。最近も慈善ライブで共演したりと、2人はずっと仲が良いみたいです。アリスはプロ級の腕を持つゴルファーとして有名ですので、キップのゴルフの腕は鍛えられているかも知れません。(笑)

■ ("Miles Away"を一緒に歌ってくれる観客を見つけて)よし、前に来てくれ!ロブか、よろしく!女性と歌う時には見つめ合って歌うんだけど、男同士ではやらないからな。君は見つめないでくれよ。(笑) KISSのブーツはいてるのか!すごいな、さっきジーンの話をしてたんだよ。

■ ("Madeline"が終わったところで弦が1本切れて)いつかこうなるんじゃないかと心配してたんだ。11弦になったよ。なんとかチューニングしてもう1曲プレイしよう。軍隊にいた人はいる?俺の知人も軍にいるんだ。俺たちがこうして楽しんでいる時も彼らは国を守ってくれている。感謝しよう。"Blue Suede Shoes"は彼らの視点に立って作った歌だ。

"Blue Suede Shoes"が終わって、ギグを終了しようとしたキップですが、観客からのリクエストに答えて「やっぱり、"Seventeen"はやった方がいい?」と11弦のギターでなんとかプレイ。その後はファンサービスで写真などのリクエストに応えており微笑ましいです。

セットリスト

01 Cross
02 Easy Come, Easy Go
03 Who's The One
04 Headed For A Heartbreak
05 Free
06 Blind Revolution Mad
07 Miles Away
08 Rainbow In The Rose
09 Down Incognito
10 Madeline
11 Blue Suede Shoes
12 Seventeen