Stay Together

Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

レブ・ビーチ  ギターソロに訪れた閃きの瞬間

レブ・ビーチの2009年と2011年のインタビュー音源(Episode 15&98)がPodcast配信されていたので両方から一部をまとめて和訳してみました。このPodcastIron City Rocksというアメリカはピッツバーグ(レブの地元です)に拠点を置くHR/HM専門のメディアが配信しているのですが、豪華ゲストのインタビューが充実しています。

レブの音楽的才能を信じた両親のサポートで幼少からピアノを始めたレブは品のいい寄宿学校で成長したため、話し方にピッツバーグのアクセントも少ないそう。ピアノからギターに楽器を換えたレブはバークリー音楽大学へ進学しますが、中退してNYへ移ります。和訳はこのあたりから。

======================

NYでWINGERを結成するいきさつ

俺は歌うウェイターをやりながら、仕事を探してた。当時よく通ってた音楽ショップでオーディションの広告を見つけて受けたのが、フィオナのアルバムの仕事さ。そこでプロデューサーのボー・ヒルと知り合って、それからはビージーズチャカ・カーンやハワード・ジョーンズとか色々なアーティストのアルバムでプレイした。俺はアトランティック・レコードのロック系スタジオ・ギタリストとしてファーストチョイスだったのさ。

そこでキップ・ウィンガーと知り合って、アパートをシェアするようになった。キップはアリス・クーパーのツアーに出てたし、俺はセッション仕事を続けてた。その後ボー・ヒルのアドバイスで一緒に曲を作るようになったんだ。"Seventeen", "Madelaine", "Time to Surrender"は1日で書いたんだ。俺は自分が作曲できるなんて思いもしなかったんだけど、キップは俺の弾いたリフで曲を作ってしまうんだ。あいつは天才だよ、そして俺の大親友だ。

ロッド・モーゲンスタインとはスタジオで知り合った。キップはロッドのこと知らなかったけど、俺はDixie Dregsが好きだったから、彼は俺の好きなドラマーなんだ。それでキップにロッドのこと話して、Wingerのドラマーのオーディションへロッドに来てもらった。ロッドはフュージョン・ガイだから、シンバルをシャカシャカ鳴らすんだよ。「あのさぁ、俺たちはロックをやってるんだから、それは力いっぱい叩いてくれよ」って言ったもんさ。(笑)

俺とキップはデモを作ってレコード会社に持って行っては断られ続けてた。アトランティックには3回断られたかな。で、ボー・ヒルがアトランティックに「じゃぁ、儲けは全部あなた方のもので、こいつらには一銭も入らない契約でどうですか?」って言ってやっと契約したんだ。音楽ビジネス市場最悪の契約を結んだのがWingerなんだよ。でもバンドの人気が出てきて、俺はGuitar World の表紙になったりしたから、俺はハッピーだった。

俺たちは89年にデビューした80'sのバンドだ。シーンに乗るのが遅過ぎたのさ。もっと早くデビューしていたら億万長者になってたさ。(笑)

アリス・クーパーDOKKENでのキャリア

アリスとは4年間仕事した。素晴らしい経験だったよ。アリスは俺のヒーローで、俺にとっては父親でもある。でもDOKKENからオファーがあって、これは俺がどんなプレイヤーかを示すためには凄いチャンスだったから受けなきゃいけなかった。

DOKKENにあったのはたった一つのルールで、それは「何をしてもいいけど、時間までに出てきてショウをやること」だった。ライブはまるで「レブ・ビーチ・ショウ」だったよ。ドンはウイスキーとタバコを持って現れて1曲歌うと、「レブ、頼んだ」って言って10分くらい楽屋へ下がっちゃうんだ。だから俺は10分間ひたすらギターソロを弾きまくるのさ、それが全曲であるんだぜ。(笑)凄く楽しかったよ。

ホワイトスネイクでの活動

アルバム"Good To Be Bad"ではほとんど弾いてない。それこそ10秒くらいのソロがあるだけさ。これはデヴィッドのアルバムであり、彼が全曲書いてる。ギターはダグがやるしね。ダグは強力なプレイヤーだよ。ホワイトスネイクは俺にとって生活費を稼ぐ場なんだ。

ライブでの俺の役割は、スティーブ・ヴァイ的なレガート系スタイルのプレイをすること。ダグはジョン・サイクス的なプレイにぴったりなんだ。俺にはあんな風にピッキングでプレイできない。彼はレス・ポールのプレイヤーだしね。

アルバムでの俺の役割はギターについてはちょこっとソロを弾くくらいで、むしろコーラスの方が多い。最初からデヴィッドには俺の声が気に入られて、"Forevermore"ではいわば筆頭バック・ヴォーカリストとしてほぼ全曲で歌ってる。あのデヴィッド・カバーデイルの声の後ろで自分の声がするなんて超クールだろ。

WINGERのアルバム"Karma"について

最高なのは、キップが俺の好きにさせてくれたこと。いつもは俺がキップの言うとおりにして、キップが全部複雑なアレンジなんかをやって「キップ・ウィンガー・ショウ」って感じになるんだけど、今回はキップがずっとクラシックの作曲に没頭してたから、俺に何がやりたい?って聞いてくれたんだ。だから、80'sの頃みたいに、1stアルバムに戻って、思い切りロックしたいって言ったんだ。

"Karma"の出来には満足さ。ヒットした1stアルバムはドラム・マシーンで作ってたりするけど、今回は違うし、音がいい。始めの4曲なんて最高の出来さ!キップは凄く腕のいいエンジニアだしね。出来で言えば3rdみたいさ。"Pull"は芸術作品なんだぜ、予算は30万ドルあって、マイク・シプリーが作った。"Pull"はミュージシャン仲間では評価も高いのに、問題は誰もこれを聴かなかったってことさ。まぁ、これが音楽ビジネスってもんだけど。

"Karma"の最後に"Witness"って曲があって、このアルバムの "Headed For A Heartbreak" に当たる曲なんだけど、長いギターソロがあるんだ。レコーディングの時、もう1時間はプレイしているのに、俺のサウンドは全くダメで、休憩をとって何本かビールを飲んでから再開したんだ。そしたら何故か閃きの瞬間がやってきて、ファースト・テイクで最高の演奏ができたんだ。録音してあって本当に良かった。キップには「お前、やったなぁ!」って大声で言われて、2人で騒いだくらいさ。

WINGERでのツアーについて

WINGERはロックバンド史上最悪の悪運に見舞われたバンドなんだ。WINGERは地球上で一番性格のいい奴らが集まってるバンドで、お互いに大好きな仲間なんだ。だけど、この前ヨーロッパへツアーに出たときは、プロモーターにギャラを踏み倒されて、ツアーバスの料金も払われなかった。そしたらバスの運転手にオーストリアのトラック停留所でバスから降ろされたのさ。正に「古き良きWINGERの日々」だよ。(皮肉って笑い、90年代の受難を語る)

俺がWINGERをやってるのは金のためじゃない。WINGERは全く金にならないんだ。俺はただバンドの皆でつるんでいたいからやってるんだ。キップと一緒にプレイするのが楽しくてしょうがないのさ。WINGERでショウをやるのは本当にしんどいんだ。ホワイトスネイクではデヴィッドの声のトーンでコーラスを歌うから楽だけど、WINGERでは"Madelaine"みたいな高音のコーラスばっかりで、声が出なくなっちまう。でもチャレンジングだし、好きなんだ。

アメリカでWINGERのツアーをやるのは難しいんだ。俺たちにはレッテルが貼られてしまっているから。プロモーターと話すときはもう最初から「で、どのバンドと一緒なんだ?」ってことになる。仕方ないさ。でも例えばMR. BIGやEXTREMEと一緒にできたらいいと思うんだ。彼らとは友達だから。

ソロワークについて

"Masquerade"は意識的に曲のバラエティを広げて、ヘヴィ・ロック、ポップ、バラードを書いた。俺がソングライターとしてどんな腕があるかを見せたかったんだ。そうすれば一緒に書こうって話もあるかもしれないから。

俺は自分のことを速弾きギタリストとは思ってない。タッピングは俺が速く弾きたいときにそうできるよう自分のプレイを作り上げたけど、俺にとっては凄く簡単なプレイで、ゆっくり弾くほうが難しいんだ。

いつかG3に出たい。そしたら俺の人生の夢が叶うよ。でもその前にインストアルバムを完成させないと。"Fusion Demo"は結構反響が良かったんだ。だからインスト・アルバムは速弾きのロックじゃなくて、俺がスティーリー・ダンとジャムしてるようなサウンドになると思う。

================================

和訳後記

レブがWINGERをやっているのはキップと一緒にいたいからなんですねぇ。それにしてもレブにはいい加減、ソロアルバムを完成させて欲しい。インタビュー時から既に5年経っていますから。

このところ、立て続けにレブとキップのインタビュー音源を聞いてきたのですが、この2人のキャラクターの違いが明らかで面白いのです。

レブのトークはアクセントのクセも少なく、聞きやすい。難しいこと言わないし。(笑)是非Podcastの音源を聞いてみて欲しいのですが、レブのトークはものすごく表情豊か。映像がないけれど、表情をくるくる変えながら身振り手振り入りで話していると思われます。途中でデヴィカバ様のモノマネもしてるし。その時の感情のままに思いついたことをバンバン口にする天真爛漫タイプ。あなたって20代の頃から話し方も話す内容もあんまり変わってないでしょう?とツッコミたくなっちゃう。(笑)

キップのトークは聞き取りに集中力使います。抑揚少ないし、あまりはっきりとしゃべってくれないし、くだけた話し方をする時は正直?になることも。でも質問によっては、言葉を選びながら、思慮にあふれた回答をする。ああ、この人は大人だなぁ、頭切れる人だなぁと感じます。

そんな正反対の2人がNYで出会い、生涯の友になったのは運命に違いない!天真爛漫で天才肌のレブと元からの才能プラス地道な努力で大量の知識と技術を身につけた、頭脳プレイヤータイプのキップ。この2人はお互いがお互いの才能を補完して、増幅させるという完璧なパートナーシップなのでは。

そんな2人が作るWINGERの楽曲はそりゃー最高なのです!Better Days ARE Comin'!