キップ・ウィンガーが先日カナダのメディア取材に答えました。ニュー・アルバム "Better Days Comin'"について、今後のツアーについて、初期の活動についてなど。その一部を和訳してみました。
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ニュー・アルバム聞いたよ。この半年で最高のロック・アルバムだと思う。あんまり良かったから、ボーナス・トラック2曲が聞きたくて日本版をオーダーしたくらいだ!The Policeの "Syncronicity"にステロイドを打ち込んだようなパワーがあるね。アルバム製作プロセスはどうだった?
どうもありがとう。レブとのアルバム製作プロセスはいつもと同じさ。ドラム・ビートとギター・リフから考える。俺たちは仲がいいから製作は難しいものじゃない。むしろ楽しんでるよ。俺たちには自然なことなんだ。製作はかつて"seventeen"を作った時と同じさ。沢山のアイデアを出し合い、録音して、アレンジし、使えるものを選ぶ。質の高いのアルバムを作りたいってだけだ。
"Rat Race" と "Midnight Driver of a Love Machine" は凄くヘヴィなHRだけど、こういうハードな曲を作り続けるってのは難しくないかい?それとも自然にこういう曲を書けるの?
難しいってことはない。俺たちの音楽は常に進化している。俺はプロデューサーとして、メンバーの人柄や音楽性を熟知しているから、「よし、俺たちは"Karma"でヘヴィ・ロックを思い切りやったから、次のことをしよう」と考えたのさ。バンドの持っている様々な要素を持ってきて、発展させた。今までにやってないことをやったのさ。
俺はヘヴィーな音楽が好きだからこのアルバムもヘヴィに作ったよ。まぁ、今のシーンじゃこれがヘヴィかどうか分からないけど。俺たちは皆70年代のバンドに影響を受けているから、それを発展させヘヴィにしてるってとこかな。
なぜまだニュー・アルバムを作り続けるんだい?過去のアルバム曲で十分ライブできるよね?80年代のバンドっていえば、新曲なしでツアーやってるバンドもいる。彼らに聞いたところじゃ、観客も昔の曲目当てだから、新曲をやると「トイレ休憩」に行っちゃうっていうし。
俺の人生は音楽を学び、理解することに捧げてきた。俺たちのバンドは素晴らしいし、俺はその一員であることに感謝している。作曲は俺の人生の定義そのものだから、WINGERと自分のソロ、クラシック音楽を作曲することに没頭してきた。
誰だって新曲を作るだろ?ポール・マッカートニーは"Hey Jude"で毎晩でもショウができるのに、まだニュー・アルバムを作ってるんだ。アーティストにとって創作活動というのは本能だと思う。俺はずっと作曲活動に心血を注いできたし、駄作なんて残したくない。高い質の音楽を製作したいんだ。
2014年のツアースケジュールはどんな予定なの?
たしか、イギリスに6月。夏はアメリカで沢山。日本では1月にY&Tと一緒にやったけど、できれば10月にもう一度行きたい。カナダは予定がないけど、是非行きたいね。南米は皆が行っているところだから行ってみたいけど。
俺たちはロック界で最も誤解されてきたバンドだから、場所によって行きやすいところとそうでないところがあるのさ。音楽ビジネスで重要なことは何かと言えば、俺の答えはライブ活動にあると思うから、もっとやりたいけどね。
"seventeen"を今でも歌うのは大変じゃない?
いや。声を保つっていうことなら、俺の場合はタバコも酒もやらない。両方やりながらまだ歌える人もいるけど、俺の場合は違う。ステージで歌って観客にがっかりされるシンガーにはなりたくないからね。
シンガーは自分の声をケアして維持しなくちゃいけない。歌うって事は大変さ。楽器と違って切れた弦を取り替えるなんてことはできないし。声ってのは野性の動物みたいなもので、予測できないところがある。シンガーによって声を保つ方法はいろいろやってるだろうけど、俺は声について学んだし、健康に保つために普通のことをやってる。スティーブン・タイラーなんて65歳にしてオリジナル・キーで"Dream on"を歌うんだから、凄いよ。
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このインタビューに寄せられているコメントがかなり的を得ていました。
「これまでにキップが何度も何度も繰り返し聞かれてきたくだらない質問(アニメB&B、ラーズ・ウルリッヒ、アリス・クーパーとか)は避けて欲しかった。今じゃ、WINGERはバンドのオフィシャルサイトでB&Bのフェイク・バンドTシャツを売ってるんだぜ。」
「WINGERはあまりにも過小評価されているバンドだ。一流のミュージシャンでクールな奴らなのに。」
かつてバンドの評判を地に貶めたきっかけでもあるMTVのアニメ番組とメタリカのMVについて、このインタビューでまた聞かれているので、上のようなコメントがついたのでしょう。たしかに、またかという質問にキップの答えは短くなります。
「ラーズがなぜあんなことをしたのかは分からないし、理解できない。その質問は彼にするべきだ」
「(あのバッシングの結果)俺には十分な時間ができたから、俺はその時間を賢く使って音楽の勉強を進め、今の(作曲家としての)自分がある」
というキップのコメントにぐっときました。逆境に負けずに努力した人が辿り着く高みに今のキップがいます。(涙)
インタビュアーは新曲を期待されない「80年代のバンド」として複数の実名を挙げていますが、キップがあるバンドのライブを見たけれど今でも凄く良かった、というように同業者をさりげにフォローしているところも印象的でした。
「俺たちはとても誤解されてしまったバンドだ」とキップが繰り返し発言していますが、そのことを分かっているファンは沢山いるんだということをニュー・アルバムの成功でバンドに伝えたい!