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キップ・ウィンガー 「次のアルバムまでもう5年も待たせない」

9月の半ばから約3週間ほどヨーロッパをソロ・ツアーしていたキップ・ウィンガーがノルウェイオスロインタビューに答えました。今後のバンド活動予定や、ソロ活動などについて語っていましたので、概要を和訳しました。

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WINGERでのツアーは終わったのですか、それともまだ続くのですか?

こっちでのソロ・ツアーを終えたら、アメリカに戻って、ツアーを続ける。もっと上手くスケジュールを組めていたらと思うけど、先にソロ・ツアーが入ってしまっていたから。バンドは少しの間休みになってしまったけど、ロッドが肩に違和感を感じていたし、レブはWhitesnakeのニュー・アルバムがあったから、ちょうど良い休みになった思う。

俺のソロライブでは"Better Days Comin'" からもやってるし、皆に毎回同じ古い曲ばかり聞かせなくて済んで良かった。こうして世界を旅して、多くの観客という程ではないけれど、俺の音楽を好きで歌ってくれるというのは本当にうれしいよ。今回、オファーを断らなくてはいけなかった国もあったから、来年4月には欧州に戻ってソロ・ツアーで少し周る予定だ。

あなたのソロ・ライブは観客とのトークが親密でスタンド・アップ・ショウのようでもあります。

ああ、そうだな。ジョークが好きだし、観客の誰かが面白いことを言ってきたらそれを返してやるのが好きなんだよ。

俺のソロ・ライブは確か97年頃に始めた。もうバンドではギグができなくなって、俺はソロ・アルバム、"This Conversation Seems Like A Dream" のプロモーション活動ができなかった。それで今はもうなくなってしまったけど、大手書店のボーダーズの国内店舗を周って、30回ほどのアコースティック店頭ライブで午後4時から4-5曲演奏してたんだ。そして少しずつ曲のアレンジを増やしていって、ショウは発展して行き、2時間近くのセットリストができるようになった。

WINGERでやってきた90年代以前の時代は消えてしまっていた。つまり、デヴィット・リー・ロスに象徴されるようなあの時代のバイブは全て無くなってしまったのさ。だから、当時はステージに立つのが辛かったよ。80年代のバンドは皆バカにされていたけど、俺たちは更にプラスαがついて叩かれていたから。ステージに上がる時は、「俺なんかでごめん」って気分だった。

こういった経験を過去のことにできたのは、たっぷり出来た時間を使って、俺は音楽に没頭し、作曲方法を1から学び直したから。俺は以前よりもずっと優れたミュージシャンになれたと思う。だから、物事は理由があって起こるんだよ。

もし十分な時間があれば、WINGERの曲全てをアコースティックでプレイすることができますか?

出来ないものもあるんだ。先日は"Come A Little Closer" のリクエストをもらったんだけど、断るしかなかった。この曲は本当に難しくてさ。でもいつかやりたいね、この曲は気に入ってるんだ。
俺の声の問題でできない曲と俺のギタープレイヤーとしての限界のためプレイできない曲がある。"Rat Race" のリフはレブがタッピングで作ったものがあったりするから。

俺は子供の頃からアコースティック・ギターを演奏してたけど、リード・プレイヤーじゃない、リズム・プレイヤーなんだ。即興演奏ってのは得意じゃない。12弦ギターを弾いてるのは大きなサウンドが欲しかったから。子供の頃に12弦のクラシック・ギターを習ってたんだ。だからちょっとユニークな演奏をするんだよ。"Free"、"Spell Them Under"、"Cross" なんかでは、他では見かけないような演奏をやってる。

でも俺はあまり練習しないんだ。練習してたらもっと上手くなってたと思うけど。

WINGERでの活動は成功していますね。

俺たちが上手くいっているのは、楽曲のクオリティにこだわってるから。曲を聞いてて、次の展開が分かるような曲には俺自身が侮辱されてると感じるから、決してそんなものはやらない。俺は全てにおいて高いクオリティを目指す。演奏、録音、エンジニアリング、ミキシング、マスタリング、作曲、作詞の全てにおいて。

もし"Karma" がくだらないアルバムだったら、誰も聴かなかっただろう。こいつらにはもう何も無いって言われたさ。でもいい作品を作ればそれが証拠になる。ただ残念なのは売れないことだよ。

だからバンドによっては、どうせ売れないんだから力を注がないって奴らもいる。1曲だけいい曲を入れて、あとはクズ曲ばかり。そんなモノでグッズ販売のエンジンにしてるのさ。それこそが多くのバンドがはまった下落の道だ。

曲の持つ豊かな感情こそが観客をとり込むんだ。それだけがバンドと観客を繋ぐんだよ。かっこいいTシャツのデザインなんて関係ない。俺に言わせれば、現代人には時間がないんだから、聞いてもらうためにはいい音楽でなければダメだ。俺だっていつもいい曲が書けてる訳ではないけど、その時はリリースしないようにしている。

"Better Days Comin'" は素晴らしいアルバムでしたが、前作の成功の後、プレッシャーはありませんでしたか?

逆なんだ。俺たちは"Karma" でバンドとしてのクオリティを証明できたから、自分たちのやりたいこと、クールなことをやろうってレブと作った。アルバムは言うなれば "The Best of Winger" だけど、全部新曲なんだ。俺たちの全ての側面が入ってると思う。"Stone Cold Killer" みたいなヘヴィ・ロックも、"Madalaine" のバイブがある"Midnight Driver Of A Love Machine"も、バラードでは"Ever Wonder"、プログ要素のある"Tin Solder"、クールなギターソロ、ダブル・ソロ、クールなドラミングなんかもね。"Karma" というよりも、初期3アルバムのクロスポイントなんじゃないかな。

4本のビデオが公開されていますが、レコード会社に作るよう言われたのですか?

いや、俺がやることにしたんだ。与えられた予算の中から、何とか作ったんだよ。なぜなら、YouTubeだけが今の時代のプロモーション・ツールなんだよ。このことについて話すにはオフレコじゃないと言えないな。(録音が止まる)

最近はビデオ撮影はそんなに高価じゃないんだ。最近はカメラの性能もいい。今回はオハイオで撮影クルーを雇って、1日で3本撮った。ずっと付き合いのあるダン・ハフって"Who's The One" の監督をやってもらった奴なんだけど、才能のある監督・編集者なんだ。彼に頼んで、彼が挿入映像を撮ってきた。"Tin Solder"に出てくるのは彼の息子なんだ。俺たちはビヨンセやマドンナみたいにビデオに金をかけることはできない。でもテクノロジーの進歩は俺たちに有利に働いてる。

金と時間があったら、全曲のビデオを作りたいくらいさ。皆は映像を見ながら音楽を聞くのにとても慣れてしまっているから、YouTubeは曲のプロモーション手段なんだよ。できれば、"So Long China"と "Ever Wonder" のビデオも作りたいと思っている。

あなたは声のためにアルコールを止めたそうですね。1stアルバムからあなたの声は変わったと思いますか?

ああ。俺は生まれながらのシンガーじゃないんだ。歌うのは苦痛さ。俺は歌うためにしっかりウォームアップだとか準備しなくちゃいけない。例えば、ジョンのいるStarship のボーカル、ミッキー・トーマスは出番の前にワインを飲んでも平気なんだ。酒はノドをドライにしてしまうのに、どうしてそれであんなに歌えるのか不思議だ。うらやましいよ。

俺はあまりいいシンガーではないんだ。俺が自分の歌声にどれだけストレスを持っているかは妻だけが知ってるよ。でも声が良く出る時は正にエクスタシーを感じるけどね。俺は最初からシンガーだったんじゃなくて、俺が兄弟4人でやってたバンドは全員がリードを取ってた。Eaglesみたいにね。WINGERをやる時になって、レブは歌えなくて、俺が歌うことになったんだ。部屋のクロゼットの鏡の前で"Madalaine" か何かを歌ってみた。最悪だ、俺にはライブで歌うなんて絶対にできないって思ったよ。

俺の声は本当はバリトンで、テナーを歌う声なんだ。ロックバンドで高音で歌うときはパンチインしてから高音まで昇って、キープする。自然な歌い方じゃないんだ。エリック・マーティンみたいなシンガーは一発で高音から入ることができるし、ロニー・ジェームス・ディオなんかは、死が訪れたその日まで自然に歌えた。ドン・ドッケンも素晴らしい声をしてる。ただ彼は酒とタバコのやりすぎなんだ。俺がリハビリ・コーチにつきたいよ。彼は酒とタバコを止めれば、美しい若い頃の声を取り戻せるはずだ。すまないドン、でも本当に君が好きだから言ってるんだ。彼は今でもいい声をしてるけど、もっといいシンガーなんだよ。
俺はステージに立って観客をがっかりさせるのなんてごめんだ。だから酒を止めた。

WINGERの今後の予定は?

この後、アメリカへ戻って、11月に日本へ行く。12月はオフで、1~2月はバンドのツアーだ。その後はソロツアーで、4月には欧州に戻ってくる。できれば、レブがWhitesnakeでツアーに出る前にスタジオで捕まえてニュー・アルバムのために10曲くらい書きたい。多分完成はできないけど、そうすれば製作にかかれるから、前回みたいに新譜まで5年も待たせなくて済むからね。

俺のソロ・アルバムのための新曲は殆ど出来ているんだ。この6年間くらいの間に様々なアイデアは蓄積してきた。俺のソロ作品というのは実験的な要素が多くて、ピーター・ガブリエルみたいなアプローチなんだ。素晴らしいミュージシャンを連れてきて、自由に演奏してもらう。そのベストテイクを録りたいんだ。俺はe-mailで出来る音楽は作らない。必ずスタジオで一緒にやる。もちろん予算は高くつくけど、俺は全てを作曲するタイプなんだ。たとえソロでも方向性は俺の頭にあるから、それを演奏者に伝えなくちゃいけない。多分、俺はコントロール・フリークなんだよ。でも俺の頭では音楽が聞こえているんだから、仕方ないんだ。

俺が"Hungry" のイントロに四重弦楽奏のパートを書いてから、"Rainbow In The Rose" や俺のソロ作品の中で俺は次第にクラシック音楽に傾倒してきて、真剣に学び、全うなオーケストラ音楽を書きたいと思っている。クラシック音楽の作曲は俺にとって自己表現の行き着く到達点であり、俺のいるべき場所なんだ。休む暇なんてない。俺の頭の中には沢山の音楽があって、死ぬまでにやりたいことで一杯なんだ。たとえ万里の長城を歩くチャンスができたとしても、行けない。俺の頭は音楽制作で一杯なんだ。

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キップが自分のボーカルを気に入っていないというのは意外でした。私に言わせれば、あんなに素晴らしい歌声のロック・ボーカリストなんてそう居りません!キップ自身は自分をシンガーとしてよりも作曲家として考えているからかも知れません。

和訳では割愛しましたが、インタビューではミュージシャンの自伝本が流行っているけれど、そういう本を読んでいるかという質問があり、キップは偉大なクラシック作曲家の名前を挙げて、自分が読みたい自伝は彼らのものであり、今たくさん出版されているの自伝本は読まないと答えていました。

実はキップの自伝本が執筆されていると思われる情報を他で見かけていたのですが、インタビューでのやりとりから推察すると、企画がキップに断られたか、公認ではない自伝本なのでしょうか?キップの自伝ならさぞかし読み応えと泣き応えある本だろうと楽しみにしていたので、少々残念です。

もう一つ、嬉しいニュースはWingerのニュー・アルバム製作の話!レブのツアー・リハの状況にもよるのでしょうが、キップとレブの作曲作業が早いのは周知の事実。10日~2週間あれば、曲は書けるのでは。レブのツアー中に製作が進めば、2016年にも新作が聞けたりして?と今から楽しみです。おっとその前に11月には来日ですからライブでメンバーに会えますね!日本公演は海外公演と違って特別な企画となっていますから、とにかく行くべしです!