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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ 「独創的なアイデアというのは思考からくるのではない」

再びワールド・ツアーに出ているスティーブ・ヴァイがウィーンでGuitar Maniaのインタビューに答えました。インタビュアーの質問が良かったようで、ヴァイ先生のトークは深い精神世界へ向かい、哲学的な教えを引き出しました。長く難解な内容ですが、とても良い話をされていたので、概要を和訳してみました。

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Flexableのリリース30周年おめでとうございます。

ああそうか!昨年このレコードを聞き返していたんだけど、作品というのはその時の自分のスナップショットのようなものだ。「このキッズは何者だ?」って自分で思ったよ。

音楽や人生はこの30年でより複雑なものになりましたか?

人生は見かけのとおり複雑なものだよ。でも当時は音楽から気をそらせるモノが今より少なかったね。今のようなテクノロジーはなかったから。なぜ私が当時が今より複雑ではなかったかというと、喧騒に満ちたハリウッドから郊外へ引っ越して、田舎の空気を味わっていたからさ。でも当時にしたって成すべき課題はあるから気の持ちよう次第でいくらでも複雑には成りうる。だた、1度にできることは1つだからね、人生というのは基本的に1つ1つの小さな事をやっていくしかないんだよ、そこに心的プレッシャーがあったとしても。

30年前、このように成功すると思っていましたか?

そんな風に将来のことを考えたことはないんだ。私はどんな形であれ、ミュージシャンであることに満足していた。

私は高校で素晴らしい音楽教師に出会えてとても幸運だった。彼はビル・ウェストコット先生(ビル先生はジョー・サトリアーニの恩師でもあり、2人の口からはいかに先生が音楽への道を示してくれたかというエピソードが度々語られます)で、7~12年生まで音楽理論を教えてもらった。彼は楽譜の読み方や書き方、作曲の仕方を教えてくれたんだが、私の音楽へ多大な影響を与えたよ。当時の私は高校の音楽教師になれたらいいと思ったくらいだ。

有名になるという考えは当時の私にとってはとても怖くて居心地の悪い想像だったんだ。でも子供の頃の私は大好きな音楽を聴いては、心の中であるキャラクターを作って、美しく音楽を演奏できる姿をずっと想像していた。想像の中では自由だから何でもできるだろう?でもずっと考えていることというのはそれが自分自身を変えていくのさ。

感情と前向きな思考とその視覚化について少し話していただけますか?

感情というのは全ての元になるんだ。何かを視覚化して考えるというのはある種の鍛錬になる。とても知的な作業だ。これは私が読んだ書物から知識を得ただけで私はこのことに関して権威でも何でもないのだけど。近年の科学的研究によっても確認されているように、人間の心はとても強力なものなんだ。

我々は振動し、異なる周波数を発している生物なんだ。音や色彩などもその振動の一つだが、視覚、嗅覚、聴覚によって識別できるものは限られている。感情というのも強い振動を作り出すものの一つで、喜びや悲しみ、怒りといった感情が強ければ振動は強くなるだろう。この振動は外部を引き付ける役割を果たす。人生の中で繰り返されるこの振動はその強さとその持続時間によって定義され、この振動が周りを引き付けるなど影響を及ぼすことになる。

思考が重要なのは感情を形成するからなんだ。我々は自分の思考パターンに囚われている。でもそれは常に頭にあるので、思考について自分でも気がつかないんだ。しかし、思考ではなく、イメージとして視覚化することでそれは感情になるんだ。

私が子供の頃、好きな音楽を聴いて頭の中で想像していた話をしただろう、思うに私は単に自分の願いを視覚化していたのではなくて、実際に感じていたんだ。その強い想像によって視覚、嗅覚、聴覚を使って観客を感じられる程にね。結果的にはそれが私の人生になったよ。

若いミュージシャンへ、ネガティブな思考パターンから抜け出し、ポジティブ思考を得るためのアドバイスをお願いします。

重要なことは現実的であることだ。さらに重要なのは自分の思考を自ら判別することだね。自分の思考を第三者として観察するんだ。これが大変なことなのは、我々自身が自らの思考そのものだからだ。

例えば、「自分には演奏力が足らない、とてもレコードなんて出せない」といった終わりのない自己否定的な思考があったとしよう。その思考と自分を切り離して観察するんだ。そうすることで自分の思考パターンが分かる。これが思考の観察で、ここでは批判を持ち込んではいけない。批判するとまた負の思考パターンに戻ってしまうからだ。思考パターンと自分を切り離す事ができれば、その思考は消えていく。なぜならもはやその思考には自分が含まれていないからだ。それがポジティブ思考をするための第一歩だ。

では、ポジティブ思考とは何か?ネガティブな思考からいきなりポジティブな思考へ変えるというのは無理だ。まずは自分の思考パターンを観察し、それから少しずつ気分の晴れる思考をしていくことだ。そうすれば実際に良い気持ちが持てるようになる。これは別に「現実的であれ」と相反することではない。人は自分で達成できると信じることだけを成し得るんだ。0から100に飛ぶことはできないんだよ。

だから特定の思考方法の有用性が多くの人に理解されないんだ。彼らにそれができないから。これは多くの人が囚われるネガティブな思考パターンなんだが、「そんなことを言われてもあなたと自分は違う。とてもそんなことは出来ない」ときてしまうんだ。でもカギは自分の思考を見つけることだ。ノートに書いてみるといい。批判せずにただそれを書き出すんだ。思考であればそれを識別することで消えてなくなる。そして少しずつ現実的で良い思考をしてみると気分が良くなってくるだろう。そうして思考パターンをポジティブに変えていくんだ。

あなたの音楽はあなたの精神的世界を打ち出した宣言である一方で、こうしてライブでは観客を楽しませるというエンターテイメント性も求められますが、そこに葛藤はありませんか?

葛藤はない。気になる程度だ。私はあまりスピリチュアルという言葉は使わないんだ。誰でもある程度はスピリチュアルなのだよ。それは言葉では言い表せない経験的なものだと思う。我々は皆、心の平穏や自分を満たしてくれるものを捜し求めているのだから。

私にとって音楽表現の意図というのは年の経過によって変化してきた。時には自分の作品意図が後になって分かってくることもある。例えば、Flexableのアルバムでは自分は無邪気な子供だったと思う。でもあの作品によって私にいろいろなことが起こり、私自身の物の捕らえ方を変えてしまった。エゴが強くなったんだ。ここで言うエゴというのは悪い意味で言っているのではない。私は音楽だけでなく、人生で起こることについて興味を持っている人間で、いろいろな書物を読んで学んできた。それによって、自分に深く入り込んでそれを音楽として表現する助けになったよ。

楽器を演奏することは瞑想の一つの形で、人として成長することにも役立ちましたか?

もちろんだ。瞑想というのは心を落ち着ける方法の一つで、思考や批判などをシャットアウトして、純粋な認識の状態になることだ。これが精神的次元になる。クリエイティブなインスピレーションというのは、そこからくるんだ。

独創的なアイデアというのは思考からくるのではない。何も考えないという精神的次元から生まれるものだ。何も考えずに、リラックスして深呼吸をしてごらん。音楽の例を出してみよう。ギターでコードを弾いてみる。その音色に(Cコードだとか)ラベルを付けるのではなくて、ただ注意深く聴いて音を感じるんだ。その感覚を使うことによって、思考よりも高いレベルへの適用ができるんだ。緊張からの開放、これが創造力のカギだ。

説明が難しいな。エリック・クラプトンのインタビューをちょうど読んでいたからその例を話そう。そんな素晴らしいアイデアをどうやって思いついたのですかと聞かれた彼は「わからない。ただ私はその瞬間に集中していたんだ」と答えている。彼は過去や未来ではなくただその瞬間に存在し、思考や批判などのない無の状態にあったんだ。頭の中の雑音を止めてしまうんだよ。

私が今弾いている音にCコードというラベルをつけて考えてしまうのではなく、もっと生で感じ、音の振動を感じる。そういう完璧な客観性を持つことはある種の瞑想になるんだ。