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スティーブ・ヴァイ Part 1「メロディとの繋がりとは自分の内側から自然と湧き上がるもの」

10月17日に「ヴァイデオロジー ギタリストのための初級音楽理論」(日本語翻訳版)が発売されたヴァイ先生ですが、今年の6月に Sweetwater Gear Festival に出演した際に収録されたインタビュー動画がこれまでに3本公開されています。マスタークラス前日に収録されたインタビュー2本と当日のセッション&トーク動画です。

その中から、ミッチ・ギャラガー氏との興味深い会話が聞ける動画を取り上げます。

 

 

「いつもインタビューで訊かれる典型的なことを訊いたら罰金5ドル」という冗談で始まったインタビューは半ばから一気にディープな方向へ。今回も深く難解で有難い説法が聞けましたので、一部概要を和訳してみました。

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ギアのセットアップをしている時のあなたの試奏を聴いたのですが、11th コード、sus コード、#11th などトーンとして曖昧な好みの傾向がありますね、メジャーでなく必ずしもマイナーでなく。あなたがあのようなハーモニクスを好む理由は?

抽象的なものに親近感を覚えるんだ。私は単に手探りで弾いているんだよ。私の耳に行き先を任せているんだ。もちろん、私にはある傾向があるね。意外かも知れないが私は何もかもブルース・スケールをベースにしているんだ。でも何が起こるかはわからない、どんな展開もあり得る。まあ、私は余り考え過ぎないようにしている。

では、ソロのプレイではモードが頭にありますか、コード・トーン、スケールを考えていますか?

何が頭に浮かんでくるかに寄るな、それに誰と弾いているか等。コードは核となる。私は実験的なジャズ・タイプのプレイヤーじゃない。メジャーコードが聞こえたとしたら、明らかに使える音は沢山ある、1st、3rd、5th を使う限りは大抵。それにコード構成音についてもいろいろ使えるね。でも私は通常、即興でそういうプレイはしないんだ。

ギターは私の中にそういう風には図表化されていないんだ。私はいまだにスケール練習とかスケールに深く根差したプレイというのには抵抗しているんだ。もちろん私が初心者の頃はスケール練習をした。けれど、よし、このコードは知っている、だからこのスケールは弾けるからこれを弾こうという風には考えないんだ。それではメロディとの繋がりを失ってしまう。その繋がりとは自分の内側から自然と湧き上がるものなんだ。

もちろん理論を知っていることはいいことだが、私が勧めたいのは、耳が重要だということだ。ある種、諸刃の剣ではあるのだが、説明しよう。

 

聴くのには2つの方法がある。私がパフォーマンスをするときにはそのバランスをとるようにしている。1つ目はパフォーマンスのその瞬間のサウンドを聴くということ。

ステージの音、他のミュージシャンの音、自分が何のキーにいるか、周囲のハーモニーの状態、そういった全てのことへ強力に聴覚を働かせる。そうしていれば聴覚の集中力を散漫にする思考が入り込む余地がなくなる。しっかり聞いていればメロディとの繋がりは乱れない。

もし思考が入り込んでしまったら、こんな雑音が聞こえるんだよ。「チクショウ、バンドは何を弾いてるんだ?うわー、彼は俺より上手いじゃやないか。あれはできない、でもこれはできるな。これキーは何だ?どうしようキーがわからない!この音でいけるか?うわ、ここはうるさいな。何で彼は俺よりも音がデカイんだ?」こんな風だ、自分の頭の中の雑音さ。

殆どの場合、皆は何が起こっているのか理解していない。自分が「今」を生きていないことに気付いていないのだよ。もし「今」を生きていることを認識しているのなら、さっきのような雑念は湧いてこない。集中して聴いていればそのような余地は生まれない。その状態のときこそ、十分な反応ができるのだ。

もう1つは、説明が難しいな。メロディが何を求めているのか、それを聴くことだ。これは楽しいのだよ、君は「今」に存在し、プレイした音がそれら自身に立ち返るかのような感覚だ。今に集中することで、自分で何かをしなくともそれら自身がメロディを紡いでいる。説明が難しいな。私は今それに挑戦しているのだよ。まだこれを習得した訳ではないんだ。

つまり、自分がどの成熟度にあるとしても、練習あるのみということさ。でもいいことだよ、音楽の人生というものは。そここそが自分の帰るべき場所。音楽環境の中で自分の「今」を生きるのだ。聴くこと、繋がること、そして(音楽とともに自然と)流れること、これは実に素晴らしい体験だ。

あなたの若い頃にも失敗への恐怖や世間に認知されるかという葛藤はあったのでしょうが、それら肩の荷を降ろして、どうやって先ほどの話の状態になれるのでしょうか?

自分のエゴを認識することだ。それなしでは単に無意識になるという言葉に過ぎない。頭の中で自分を苦しめるノイズというのは続くんだ。そういうものなんだよ。それらはもはや思考でさえない、人間一般の思考パターンなんだ。人間とはそのように育てられ、社会環境の中で洗脳され、その状態が続いているのだ。

自分のプレイの仕方、他人との関わり方、そういったことに対する頭の中のノイズを現実だと思ってしまう。自分のプレイする音にしっかりと繋がり、視野をクリアにする必要がある。私が音と言うのは、各自が持つ独自の創造的な声のことだ。これは誰もが持っているものだ。

以前にも言ったことがあるが、私はまだ1音としてジミ・ヘンドリックスと同じ音をプレイした者を見たことはない。つまり、誰もが異なっていて、誰もがユニークなんだ。それは大きなアドバンテージだ。そのことに気が付けば、誰もが独自の音楽を紡ぎだせるのだよ。実際に多くの人がそうしている。誰もがユニークなんだ、無条件反射的にね。

自分独自の美しき創造性を掘り下げるためには、心を開かなくてはならない。それはまるで勇気が必要なことのようだ。なぜなら、君のユニークな声は上手くフィットしないかも知れない。実際にそういうものなんだ。心を開くには勇気が要るものなのだよ。

そうするにはまず、強い欲求がなくてはならない。自分自身のユニークで創造的な潜在能力を見つけたいと強く願うのだ。それは燃え盛る欲求になる。それさえすればいいのだよ、それができれば後は自然と起こるだろう。

(Part 2 に続く) 

 

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