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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ジョー・サトリアーニ The Complete Studio Records vol.2 「世界が俺に与えてくれた最高の贈り物」

全スタジオアルバムのリマスター版"Joe Satriani: the Complete Studio Records"を発売したジョー・サトリアーニが全14枚のスタジオアルバムについて当時のエピソードを語りました。
順に2枚ずつのコメント概要を和訳しました。今週は"Flying In A Blue Dream"と"The Extremist"です。

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Flying In A Blue Dream (1989)

とてもストレスの多い時期だった。ツアーと新作の作曲、レコーディングに追われた大変な年だった。スタジオに戻ると、他にやることが待ってた。ミック・ジャガーのツアーに参加してギターを弾き、ツアーの終盤の東南アジアでジラルディア感染症にかかってしまった。でもこのアルバムをレコーディングした年中ずっとこの病気の診断は定まらなかったんだ。

病院に行く度に、こういう病気だ、ああいう病気だって言われるんだけど、全部違ってたのさ。そうこうしているうちに、今度は親父が卒中を起こして、昏睡状態になって亡くなった。その数週間後には祖母が亡くなった。ショックで辛かったよ。その年に俺は歯に矯正用のブリッジをしたり、控えめに言ってもタイミングが悪いよな。

そんなクレイジーな時期だったけど、俺には創造力がみなぎってた。だって自分にファンがいるってことがうれしかったんだ!(笑)スタジオで行き詰ると、目を閉じて、「ツアーの時を思い出せ。"Always"か"Satch Boogie"を始めるところだ。小さなクラブの観客は大喜びする。これだ、これこそが世界が俺に与えてくれた最高の贈り物なんだ。他のことはなんとかなる。歯の矯正ブリッジはもうすぐとれる。俺の腸のどこが悪いのかも直に分かるさ。全部解決する」って自分に言い聞かせてたよ。

レコーディング予算は以前より大きくて、3ヶ月ずっとじっくりレコーディングできる!って思ったけど、始めて3週間で、「こんなの無理だ。作業が多すぎる」って弱音を吐いた。1日10時間の作業、1人で全楽器の演奏、しかも家族や自分にいろんな事が起きてた。

でもスケジュールが決まっていたおかげで、作曲にも意外な影響が現れて、最終的にはアレンジも出来、レコーディングできた。そのスタジオ風景を録画したビデオがあるんだけど、最近見直したんだ。"Can't Slow Down"のソロを弾いてる俺の顔は信じられないくらい集中してた。でも俺は痩せ過ぎで、青白く、ひどい様子だったよ。「うわー、ヒドイな。あの時には戻りたくない」って思ったね。

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The Extremist (1992)

製作には時間がかかったけれど、これは作品への愛情によるものさ。結果的には俺の取った最も野心的な方向性だと思う。これは俺のクラシック・ロックに対するオマージュであり、当時の音楽業界を席巻していたグランジとは全く違う方向だった。それでも、俺の音楽スタイルはオーディエンスに受け入れられていたから、当時の音楽界で変人として自分らしくなんとかやっていけてよかったよ。本当に可笑しいよな。

レコードが発売されると、MTVから抵抗を受けたんだ。当時のMTVはとても重要なメディアだった。でも面白いことに、ソニーのエレクトロニクス部門からコマーシャルのオファーを受けたんだ。彼らは当時ウォークマンとブームボックス販売CMのためにインスト音楽を探していたんだ。彼らは"Summer Song"でCMを作って、その結果、(皮肉にも)MTVアワーズのCM時間枠全てで2回ずつオンエアされたんだ。

これで"Summer Song"は大きな話題を呼んで、結果的にはアメリカでも海外でも俺の最高のラジオヒット曲になった。グランジじゃない音楽なんて聴きたくない」って風潮の時代に信じられないような幸運のどんでん返しを起こしたレコードなんだ。ある日突然、このレコードは俺の世界的なキャリアの確立に貢献してくれたんだ。

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追記

The Extremistについてですが、マニアな発見がありましたので追記しておきます。

以前のブログ記事に書きましたが、ダグ・アルドリッチがMarshallをサトリアーニに貸していて、それは"The Extremist"のレコーディングに使われたと言っていました。

サトリアーニの自叙伝"Strange Beautiful Music"には巻末に全てのアルバムに使用した機材の一覧が載っているので、そこを見てみると"'69 Marshall full stack, Marshall 6100"とあります。これのことかしら?ということでツイッターでダグに質問してみたところ、お返事が返ってきました!

'71年製 Superleadと'79年製Jmpを貸したよ。ジョーは'69年製と勘違いしているのかも。でも'71年製だ。アンディ(アンディ・ジョーンズのこと。The Extremistのプロデューサー)はジョーがたいてい'79年製Jmpを使っていたって言ってたよ。

ということで、疑問は解決。サトリアーニが巻末情報を少々間違えて記載していた模様です。それにしてもダグってすっごくいい人だなぁ、こんな質問に答えてくれて。