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ビリー・シーン 「音楽に境界なんてない」

The Winery Dogsでライブ活動中のビリー・シーンが米国メディアのインタビューに答えました。
バンドのこと以外に、今の音楽業界に思うことを熱く語るビリーのトークが興味深かったので、一部を和訳してみました。

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こんな小さなライブハウスであなたのような生ける伝説のミュージシャンを見ることができてとても興奮しています。あなたは世界中のビッグ・ステージでショウをしてきましたが、再びこのような会場でファンを間近にライブするというのはどうですか?

この質問には誰もが「小さな会場のライブの方が好きだ」ってウソを答えていると思う。本当はビッグなショウの方が好きなのに。でも、俺にとっては本当のところ、こういうライブハウスの方が楽しいんだ。俺はこういうところでのライブから始めた。LAにBaked Potateってジャズ・クラブがあるんだが、ロックの奴らもよく演奏してる。そこではステージに立つと、狭過ぎて自分のドリンクを前列のお客のテーブルに置かせてもらうくらいなんだ。そこでの演奏は凄く気が張るよ、だって演奏の全てが観客に丸見えなんだから。

何年か前に、リッチー・コッツェンと日本でローリング・ストーンズのオープニングをやったことがあるんだけど、観客の顔は誰一人として見えなかった。それくらいステージと客席が離れてるんだ。遠くで皆の歓声は聞こえるんだけど。まぁ、こういうのも面白いけどね。

The Winery Dogsのライブを見ていて思ったのですが、誰かがソロを演奏しているとき、他の2人も同じように凄いプレイで、3人全員に目を奪われてしまいます。

ロック・バンドのシルク・ドゥ・ソレイユみたいだろ?俺も音楽ファンとして楽しみたいと思うからさ。絵のフレームが素晴らしいことってあるだろ?フレームが凄くて、より一層その絵に引き込まれるような。リッチーがソロをやってるとき、俺とマイクはリズムを刻んでるけど、動き回って、リッチーのソロをよりダイナミックにするのさ。とても楽しい。即興には毎晩自分たちも驚かされるし、次に何が生まれるかわからないのさ。

俺は譜面も読めないし、音楽理論も知らない。俺はただプレイするだけだ。マイクとリッチーが譜面や理論のことどうか知らないけど。俺たちはただプレイして、演奏方法を考えて、覚える、ただそれだけさ。頭じゃなくて、心から自然に生まれてくるものなんだ。

俺はライブ演奏をやって成長してきた。かつては録音よりも前にいくつものライブをやったもんだ。ツアーで全ての場所に行けるわけじゃないから、バンドの演奏を録音してラジオなんかでかけたんだ。そうすればバンドのライブ前や後に音楽を聞いてもらえたから。レコーディングってのは、バンドの演奏を録音するもんだった。今やレコーディングってのは全く別のモンスターになって、バンドがそいつに妨げられるようになった。
俺たちのレコーディングってのは正直な生のバンドの音だ。だからライブで再現するのは凄く自然で、今では即興や動きが加わってよりエキサイティングなんだ。

YouTubeに流出することを恐れてニュー・アルバム発売の前には新曲をプレイしないバンドが多くありますが、どうですか?

俺たちは気にしない。だって、止めようがないんだから。そんな石頭にはなりたくない。自由にビデオでも写真でも撮ればいい。でも凄くいいビデオが撮れたら、少なくとも俺に送って欲しいね。俺のサイトのアーカイブにリンクを貼りたいから。俺がやってきたバンドは全て、本当に歌えて演奏ができた。だからこそ生き残ってきたし、プレイにフェイクはないんだ。誰かがiPhoneで録音しても本物の音が入る。

でも、レコードの著作権侵害は別モノだ。レコードには多くの人が力を注いでる。俺はレコードを販売する機会をちゃんと確保したいし、それによって収入を得たい。でも多くの場合、もはや以前のような収入にはならないのさ。ライブが収入源だ。俺はさほど気にならないけど。俺は大の音楽ファンで、ブートレッグをよく買ってる。でも俺は普通にアルバムも沢山買ってる。俺なりに音楽を支えてるのさ。もし、あるファンがその音楽が大好きでアップロードして、他のファンがどうしても欲しくてダウンロードしたのなら、いいさ、君らに楽しんでもらえて良かったよ。

あなたはThe Winery Dogsでも MR. BIGでも米国外でより大きな成功を収めており、他のバンドもそうです。

米国ではまだまだ、欧州は最高さ。南米は信じられないくらい凄いし、東南アジアはファンタスティック!日本はもちろんいい。
米国では、MTVが悪魔に魂を売り渡した、いや魂以上のモノを売り渡したのさ。ロックや本物の音楽はラップやヒップ・ポップみたいなトレンディなモノみたいにサポートされない。実際には本当にクールなラップやヒップ・ポップがあるのかも知れないけれど、俺たちが耳にすることは決してないのさ。プラチナ・レコードの商業エリート・ヒエラルキーの世界を突破することなんて決してできないからさ。幸運なことに、俺たちのような音楽が好きで、遠くから見に来てくれる人たちがいる。

欧州でライブハウスのポスターを見ると、このバンド、まだやってたんだ!ってショウがあって、翌日は新しいバンドが出てきたり、次は違うジャンルの音楽、その次は長年活動して生き残ってる良いバンドだったり。1つの会場で凄くヴァラエティー豊かなんだ。米国では会場ごとに音楽のジャンルが細分化されてて、俺は好きじゃない。

俺が音楽を聞き始め、演奏を始めた頃には音楽のジャンルに境界なんてなかった。ボブ・ディランも、ヘンドリックスも、フランク・ザッパマイルス・デイビスも聞いた。今じゃ音楽が細分化されて、こんなでは誰も生き残れない。(米国ではラジオ局ごとに音楽のジャンルが細分化されており)こんなではファンもラジオでいろんな音楽を見つけられない。
欧州、東南アジアや日本ではメタリカのライブに行ったキッズが翌日にマライア・キャリーを見に行って、両方とも好きってことがあるんだ。

そういう意味ではロック界でメタリカのことを苦々しく思ってる人がいます。

俺は今年、メタル・マスター・ジャムでSlayer、Pantera、AnthraxやExodusの奴らとジャムして凄く楽しかったし、ライブの後も盛り上がった。でも彼らのファンの多くは「ちょっと待て、あいつは"To Be With You"をやったバンドの奴じゃないか、ここに近づくな」って感じだったかも知れない。でも皆はもっとリラックスしたらいいのに。何かで成功することは大変だし、音楽界で成功することは物凄く大変だ。だから俺はそれが例え好きじゃない音楽のジャンルであっても賞賛する。彼らとすごしたのは楽しかったよ。

MR. BIGではフランスでHellfestってヘヴィなメタル系のフェスに出たことがある。ここで"To Be With You"なんてやるなよって思ってた奴もいたけど、俺は何言ってんだ?これはヒット曲なんだ、プレイするぞ!ってステージに上がってプレイした。観客は皆が笑顔で一緒に歌ってくれたよ。

海外のような音楽に対する姿勢というのは米国にも伝わってくるでしょうか?

そう思う。この世界には外見で判断して聞かずに済ましてしまうにはあまりに多くの素晴らしい音楽がある。60年代にはそれがクールだったのさ。良いものは良い。どこの音楽かなんてことは関係ない。俺はバンドがどんな格好をしていようが、名前がどんなだろうが、観客がタトゥーだらけか、タトゥーなしかなんてことは気にしない。とにかく、俺には好きな音楽が沢山あるのさ。

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このインタビューとは別ですが、以前ユニークな対談ビデオを見たので、リンクを貼っておきます。
Metalhead To Head という企画で、ロック・ベーシストとしてお馴染みのマルコ・メンドーサがビリー・シーンをゲストに迎えて対談しています。今年の4月に公開された映像です。
2人のベース・ジャムも見れますし、ビリーの奏法レクチャーあり、ベーシスト同士のトークもなかなかに面白いです。