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リッチー・コッツェン 「ギターを弾くのは技術を習得するためじゃなくて、音楽を作るためだ」

The Winery Dogsのリッチー・コッツェンがメディアのインタビューに答えました。ギター・プレイヤー、作曲家としてのディープなトークが良かったので、和訳してみました。

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あなたのレガートテクニックはギタリストの中でも格別です。あなたのプレイスタイルの進歩について教えてもらえますか?

俺に影響や刺激を与えてくれた人の名前を挙げることはできるんだけど、ソロを1音ずつ学んだタイプじゃないんだ。ティーンの頃、俺はヴァン・ヘイレンが大好きで、ギターを弾いてる友達は皆"Eruption"を上手くカバーできたけど、俺はできなかった。コピーしなかったから。

プレイについては、最初のうちは自分にとって簡単に思えたことに惹かれた。自分の手の大きさにちょうどよかったからか、レガート・プレイに惹かれて、どんどん進化し、モノにした。17か18の頃、自分のプレイスタイルを作る上で役立ったよ。

人として成長すると、俺は自分がギターを弾くのは技術を習得するためじゃなくて、音楽を作るためだって気が付いたのさ。それで、俺はシンガーとして作曲に集中するようになった。もちろんギターでソロを弾くのは楽しかったけど、自分の個人的な人生経験に基づいたことを歌いたかったんだ。作曲というクリエイティブな面がミュージシャンとしての俺の重点事項になったんだ。

世間には素晴らしい技術があって完璧に弾きこなせるプレイヤーが沢山いるけど、残念なことに彼らの多くは人々が聞きたいと思うような音楽を作らないんだ。技術面は素晴らしいと思うけど、ある時点では、それを伸ばす理由が必要だ。技術一式を高めるのは自分がクリエイトしたいものを実行するためなんだ。俺にとってはそれが大事なんだ。

あなたのソロを採譜していて気づいたのですが、スケールにこだわらずにメジャー7とマイナー7のアルペジオのシークエンスを多用していますね。ソロでアルペジオを使うコンセプトを説明してくれますか?

今となっては、俺の耳もプレイもすっかり確立されているから、本能的に弾いてるんだ。アルペジオではコード構成音を弾いてる訳だけど、違うレベルのこともあるんだ。例えばGメジャー・コードを弾いてるときには、Eマイナーのアルペジオを弾くことができる。でも実際には俺は自分の耳に頼ってる。違う音を弾いたら、正しい音はその上か下にあるんだから。

楽器をパターンで見るんじゃなくて、どんな音があるかで見ることが重要だ。ギターのネックにはあれだけ音があるのに、多くの人はそのごく一部分に囚われてしまう。なぜなら彼らはペンタトニックの形で考えているから。ペンタトニックの音はギターのそこらじゅうにあるんだ。

もちろんパターンの意識はある、そうやって記憶を鍛えるんだからさ。全部のポジションでのペンタトニック・スケールを覚えてから忘れてしまうんだ。そうすれば本能的な記憶となって、ネック上にあるそれらの音を全て覚えてしまえる。そうすれば、パターンで考えるのを止めて、ネック全体の中から音のつながりを考えられるようになる。あの小さな形じゃなくて。

あなたがスタンリー・クラークのバンドで"Vertu"をやったとき、彼があなたにジョン・コルトレーンの"Giant Steps"のソロをギターでやらせたって本当?

練習としてやったのを覚えてるよ。6~7つくらいのコルトレーンのソロを、自分の耳と手の感覚を鍛えるために練習した。すごくためになった練習さ。でも随分前の話で、曲の他のパートは覚えなかったし、ライブで演奏したこともない。俺がやったのは、コルトレーンのプレイを分析して、何時間も彼のソロに合わせて弾くことさ。"Vertu"ではコード・チェンジの上でプレイをしなくちゃならないところがあって、俺にはそんなの馴染みがなくてさ、"Giant Steps"のソロを学んだのは即興プレイに役立ったよ。

コルトレーンのソロを分析してそれをプレイに生かしたというのは随分と音楽理論を習得したことになると思います。この分野は独学ですか?

エスであり、ノーでもある。俺は子供の頃、2人のギター教師に習ってたんだ。理論とハーモニーの基礎は教わった。でも、それらっていうのは「覚えて忘れる」類のもので、スケールやパターンを考えながらソロを弾きたくなんかないだろ。頭の中で何も考えずに楽器と音楽とのつながりが欲しいはずだ。それが最終的なゴールだよ。

俺はこのことを「ブリッジ」って呼んでる。自分の内面と外部、つまり楽器とをつなぐ「ブリッジ」なんだ。このつながりがあればプレイ中に音楽が自分を通して、自分が導管となって音楽を表現できるんだ。機械が数学の方程式を吐き出すのとは違うんだよ。俺が思うに、俺たちに最も影響を与えたのはこの「ブリッジ」をみつけた人たちだ。

理論っていうのは何がどう働いているのかってことを説明する道具としては便利だけど、音楽を演奏している時の人間の頭には理論なんて全くないはずだと思う。プレイするっていうのは、フィーリングであり、耳であり、周りの演奏に応える能力なんだ。

あなたがその「ブリッジ」をつかんだ時期はいつですか?

多分20代の頃だ。これをつかんでからは、自分のプレイが成長したよ。その頃、"Mother Head’s Family Reunion" ってソロ・アルバムを製作したんだけど、「ブリッジ」を感じてたし、プレイも上手くできたんだ。

The Winery Dogsでは、あなたとビリーは高速のユニゾン・プレイを沢山みせています。この経験で、ビリーからミュージシャンとして学んだことは何ですか?

ビリーとのユニゾン・プレイでは面白いことが沢山起こるんだ。レコードでは、俺が書いたパート、ビリーが書いたパートがどれも即興から生まれているんだ。例えば、"Not Hopeless" ではビリーの即興ベース・ソロがあって、それは彼独自のタッピング・テクニックでプレイされているんだ。俺はそれをギターで重ねたかったけど、俺にはビリーのテクニックはないから、開放弦とフィンガー・ピッキングで再現する方法を思いついたんだ。

同様に、ビリーも俺の書いたパートを彼のテクニックでギターに重ねる方法を考えていてね、結果的に俺たちのユニゾンは異なる演奏方法で実現されているんだ。

マイク・ポートノイのようなプログレ・タイプのドラマーとプレイするのは、あなたのプレイ・スタイルやボーカルの調整が必要で、大変ではありませんでしたか?

アルバムの製作では確かにやらなくちゃいけないことがあった。ギター・プレイのための空間を見つけることだ。マイクとビリーがおれに空間を与えてくれることで、俺が自分の良さを発揮したプレイができるし、同時に俺も彼らがプレイできるよう空間を残してる。

俺がリズム・ギターを弾いてるときに、もっと動きのあるプレイができるなって時もあると思うけど、その時の彼らのプレイからすれば、俺はきっちりリズム・プレイをして彼らのプレイの素地を作るし、逆に彼らも俺のためにそういうプレイをしてくれる。特にライブで俺が即興のソロを弾いているときには、彼らのサポートに安心して俺はプレイができる。これが即興のカギだ。人の演奏を聞く能力と他のプレイヤーのために空間を作ることさ。

あなたが曲中のギター・ソロを考える時、1曲全部にのせて即興プレイをして、良かったところを取り出すという話を読んだことがあるのですが、The Winery Dogsでも同様のアプローチをとるのですか?

必ずしも1曲全部にのせて即興はやらない。ソロ・パートでは、俺はたいてい、とりあえずやって見て、どんなかを確かめてる。結構長いプロセスなんだ。やってみて上手くいくこともある、でも「凄くいい感じだったけど、1箇所のベンドでは音がシャープになり過ぎたから、パンチ・インしてやり直したい」ってこともある。時には、プレイしたソロの最初は気に入ってるけど、コード上にメロディが聞こえてきて、ソロでは違う方向に行きたくなることがあるんだ。

自分の頭の中の音楽をいつも指で弾ける訳じゃないから、そいう時は5分か10分くらい座って考えて、頭の中に聞こえる音は何か、その音はギター・ネックのどこにあるか、効果的に弾くにはどうしたらいいか、ってことを考える。

それから弾いてみて、録音するんだ。最近はこんな感じで練習してるのさ。朝起きて、ギターを手にとってもう知ってることを練習しようってことはしない。たいていレコーディング時なんかに、すぐには弾けないような音楽が頭の中ではっきり聞こえてくるんだ。でもこういうのは初心者向けの練習じゃない。初心者はスケールを覚えて、メトロノームに合わせて練習すべきだ。

あなたは毎年アルバムを発表する多作のソングライターですが、どうやってマンネリに陥らず新たなインスピレーションを得るのですか?

作曲家は誰もが経験することだから、今のはいい質問だ。俺の場合、そういう障害なんてないんだって分かるところまで来たよ。つまり、曲ってのは(無理して書くものじゃなくて)書くべき時に生まれるのさ。まぁ、これは何年もずっと作曲してきた人間にとって正しい哲学なんだけど。でも、自分の感情を正確に表現できたっていう曲を書いて、それが皆に理解されるものだったら、さっきの意味は分かると思うね。

具体的に言うと、確か97年。俺は "What Is" って曲を書いた。これがいい曲かどうかってことを言うつもりはない。それは俺が決めることじゃないから。ただこの曲は文字通り、曲が自然に生まれたんだ。音楽、メロディ、歌詞が一緒になってひらめいたんだ。

俺の曲のうち10~15くらいはそんな風に出来たんだ。だからそういう瞬間がどういうものか俺には分かる。作曲にはアイデアがあればいい。曲が書かれるべきところまで来て、自分がそれと繋がることができたら、曲はできるものさ。

その証拠に、俺は今レコードを書いていて、何曲か新しい曲も書いたけど、使わなかった古い曲のアイデアも聞き直してみたんだ。凄く気に入ったものを見つけたけど、10年前くらいのものだ。でも突然、俺には曲の明確な構成、歌詞もハーモニーも含めて全てが浮かんで、何曲かを完成させた。

作曲のプレッシャーを感じないようにできれば、インスピレーションが浮かんでくる時は驚きの瞬間だ。本当にカギとなるのは、このインスピレーションが浮かんだ時に、何をすべきか、どうやって曲を完成させるのかという方法を分かっているかどうかだ。これは何年もの経験で身に付くものだから。

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インタビューの中でスタンリー・クラークのバンドでアルバム"Vertu"をやった時の話が出ていましたが、こちらのPodcast(Ep.19)で、リッチーがスタンリー・クラークの話をしていました。

スタンリーのオーディションへ行った時、譜面を渡されても読めなくて、適当にソロを弾いたリッチー、このオーディションは落ちたなと思って、夜出かけて(ちなみにKISSのライブ)帰ってきたら留守電に採用のメッセージがあったそうです。

スタンリーとは機会があればぜひもう一度プレイしたいというリッチー、2年ほど前にレストランで店に入ってきたスタンリーを見つけたそう。でも彼はリッチーに気づいていなかったので、リッチーは給仕の振りをして「お客様、どうぞこちらへ」なんてスタンリーをテーブルに案内したそう。途中でリッチーに気づいたスタンリーとは大笑いしてハグしあったのだとか。イタズラ好きなリッチーでした。

リンク先のPodcastはリッチーの1時間ノンストップ・トークが聞けてなかなか面白いですので、おすすめです。