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ジョー・サトリアーニ 「ステージに立つと興奮するし、不安になるし、緊張してしまった」

ジョー・サトリアーニが Unstoppable Momentum Tour で訪れたフランスで動画インタビューに応えました。これだけの長編動画インタビューは久しぶり。インタビューに答えながらついフレットボードの上で指が動くところも見所です。内容を和訳しました。

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"Unstoppable Momentum"での作曲について、インスピレーションはどんなところからきているのですか?

基本的には日々の暮らしからさ。軽いテーマでは、朝起きて天気が良くて気分が最高ってところから。重めのは、愛や喪失、悲劇など遠くの地で起きている出来事の報道を読んだり、身近な出来事からきてる。私が音楽に目覚めた頃から、影響を受け、勉強してきた作曲家というのは、聞き手の感情や物語を表現できる作曲家だ。

("Unstoppable Momentum" のイントロ・フレーズを弾いて)見てのとおり、これはサスペンデット・トライアドでベース音が変化していくだけなんだ。("Always With You, Always With Me" のイントロ・フレーズを弾いて)これも同じで、アレンジが違うだけなんだよ。("Not Of This Earth"のコードを弾く)

私はモダンなハーモニーに惹かれるんだ。何て言うか、300年前の西洋音楽にあるようなね。同時に、シンプルでエレガントな音、聞き手の心に入り込むような、素晴らしい感情を呼び覚ますようなサウンドに心惹かれるんだ。それでいろいろと弾いていて、("Always With You, Always With Me" のイントロ・フレーズを弾いて)例えばこのギターコードはとても変わっているんだ。普通のメジャーでもマイナーでも7thコードでもない。パワーコードでもないよね。でもベースラインはとてもシンプルなもので、何百年も使われている音なんだよ、これで聞き手には心地よく聞こえるんだ。

私は普段、何と言うか、遠い空間に私を誘うような要素を探して、どうやったら、とても興味深くて、まだ誰もやっていないようなサウンドに出来るのかってことを考える。そこでハーモニーの構造はこれまで勉強してきたような長年使われているモダンなハーモニーを使う一方で、凄く現代的な要素を加える。これが私のやり方で、音の要素を楽しみながら、聞き手に物語を伝えるメロディを作るんだ。

あなたのファンはフランスに大勢います。この夏は12回ものショウをされますが、フランスに戻った気分はいかがですか?

最高だよ!フランスは私にとって特別な場所なんだ。私がソロ・アーティストとして行ったヨーロッパでの最初のショウは3つあるんだ。1つはロンドンのマーキークラブ、2つ目はモントルーのジャズ・フェスティバル、3つ目はパリのモルモント劇場。フランスのプロモーターとはそれ以来の長い付き合いになる。

エージェントとプロモーターの関係というのはとても重要だ。エージェントは自国でも海外でも自分の代理となってギグを探してくれる。でもリスクを取ってアーティストを呼んでくれるのはプロモーターだからね、音楽を愛し、ビジネスを理解したプロモーターなしでは、私たちはどこにも行けないんだ。フランスのプロモーターは私をこの国のオーディエンスに紹介し、ファンを増やしてきてくれた。とてもありがたいよ。

今回のツアーでDVDは撮るのですか?

いや。今のところそれは考えてないんだ。このツアーはもう1年前に始めて、途中で少し休みを入れている。(ドラマーのマルコ、ベーシストのブライアンが属する)The Aristocrats の活動があったり、(キーボード&ギターの)マイクにもやることがあったり、私もChickenfootのニュー・アルバムのレコーディングに入ろうとしていたし、自叙伝の仕上げもあった。

1ヶ月ほど前からツアーを再始動させていて、12月までは各国を周る予定だ。1ヵ月後にはDVDを撮ろうってことになるかも知れないけど、今のところは考えてないな。

あなたのニックネームについてお聞きします。「サッチ」というのは何からきていて、どんな意味ですか?

いかにもアメリカらしい風習だと思うけど、ヨーロッパや各地から移民として渡米するだろう?皆その出身国らしい名前を持っているんだけど、友達の間ではニックネームに変えるんだ。バドハイマーがバディになったり、サトリアーニがサッチになったりね。20世紀のアメリカ文化らしい変わったところだと思う。皆が古い欧州世界からやってきて、新しくアメリカ人になろうとするんだ。

私の祖父母は1907年ごろにイタリアからニューヨークにやってきた。そして私の両親を育てる中で、イタリア語を話さず、イタリアのアクセントのない英語を話すように育てたんだ。そして私たちが生まれてから両親は同じように、イタリアのアクセントのない、ニューヨーカーらしい英語を話すよう育てたんだ。今のアメリカでは自分の出身について誇りをもって祝う風潮になっているけれど、当時は違ったんだ。だから、そういう時代背景があって「サッチ」ができたんだけど、ただのニックネームだよ。

あなたはノーミスで2時間のショウを演奏できてしまいますが、その秘訣は?

素晴らしいバンドがいることが大きい。バンドのおかげでミスのない演奏や即興の十分な空間が持てて、気を張ることなく、演奏その瞬間に集中しオーディエンスに向き合うことができるんだ。私が思うに、ロックンロールのショウをやるということはプレゼンテーションをするってことじゃない。

ショウとはその日足を運んでくれたオーディエンスとの正に一期一会の貴重な時間なんだ。何を演奏するにしても彼らとその瞬間の一部になることが大切だ。だからできるだけシンプルに演奏することが大切だし、普段の2倍はハードに沢山の音をプレイする場面もある。だって彼らのおかげでこんなにエキサイティングな気分になれるんだから。バンドはそのことを理解して一緒にやってくれなくてはいけない。それともう一つの秘訣は練習すること。昨日は練習していなくて、今夜のショウに向けて十分準備できているか確認しているところさ。

"Not Of This Earth" から "Unstoppable Momentum" まで27年経ちましたが、練習や考え方、演奏について変わったことはありますか?

成功することによって、ライブ・パフォーマンスへの理解が深まったと思う。当初は恐らく自分の演奏力の40%程度しかステージで発揮することができなかった。ステージに立つと興奮するし、不安になるし、緊張してしまって、ショウを終えると本当のジョー・サトリアーニを見せることができなかったと落ち込んでた。何か自分に出来ていないことがあると思っていたんだ。

その状態は88年まで続いていたと思う。その年には私は新しくソロ・アーティストとして活動を始めたんだけど、何をどうしていいのか分からなかった。ステージを動き回って演奏するのか、じっと立って演奏するのか、ジャズっぽくか、フュージョンぽくか、ロックかメタルかどんな感じにすればいいのか。88年の1月から3週間、私はソロ・アーティストだったんだけど、その直後ミック・ジャガーのツアーに参加して何をどうしたらいいのか、霧が晴れるように理解できたんだ。

ソロ・アーティストからミックの9人のバンドメンバーの1人になってすごく安心したよ。だって、ステージにはミック・ジャガーがいるんだ!ロックンロール最高のエンターテイナーがステージを走り回ってるんだからね。ステージには他の楽器のプレイヤーがいてさ。そうして私は次第に理解するようになったんだ、自分らしくあればいいんだって。ミックが言ってくれたんだ、毎回最高のショウをやろう。でもそれは君がキース・リチャーズやミック・テイラーになる必要などなくて、ただジョー・サトリアーニでいればいいんだってね。

ミックのツアー後にソロとしての活動に戻ったんだけど、どんな風にオーディエンスに100%の自分を見せたいのかってことが分かるようになったんだ。"Surfing With The Alien" のレコーディングを終えて、その曲をどうライブで演奏し、オーディエンスが見て楽しめるショウにするかがとても重要だった。じっと立って演奏することはできるけど、そんなの見てても面白くないからさ。

ミックからは多くのことを学んだ。彼がどうローリング・ストーンズの曲や、自分のソロ曲を選んで、それをライブで生きるように料理するかをね。でも彼は決して自分を変えたりはしなかった。自分であり続けたのさ。その様子を見ることができて、ロックンロールへの信念が強くなったよ。

次のソロ・アルバムの方向性を聞くのは時期尚早でしょうか?

半分ほど曲を書き終えたところだ。新しいバンドでまだツアーに出ているから、多分南米ツアーの後に今のバンドメンバーを念頭に曲を書こうと思ってる。彼らはとてもユニークなプレイヤーで、今の4ピース編成バンドは今までの私のバンドとは違うところがある。 今は曲が先にあって、それをバンドに演奏してもらってるけど、皆の演奏を知った上で、彼らが演奏する前提で曲を書いて、ライブで演奏できたらいいと思ってね。

2015年頭に始められたらいいけど、マイクのソロやThe Aristocratsのニュー・アルバム、Chickenfootのニュー・アルバム、私のソロ・アルバムがあるから、今はなんとかスケジュールのパズルを解いてるところさ。

Chickenfootのニュー・アルバムのラインアップや発売日については?

オリジナル・ラインアップで作るよ。チャドにも会ったし、少し前にはサンフランシスコでサミーとショウもやってる。皆がいろいろやってて忙しいけど、できれば年末にはレコーディングに入れればと思っているんだ。曲はもう書けているし、あとは皆が何を最初にレコーディングしようって言うかだ。2015年は創造の年になりそうだよ。

G3ツアーについて教えてください。

多分2015年の後半にアメリカから始めると思う。アメリカでG3はしばらくやってないからね。でもラインアップについては言えないよ。

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ギア・フリークの方のために割愛した部分を付け加えますと、サッチはIbanezと新しいギターに取り掛かっている模様。今回のツアーにパープル2本とブルーの3シングルコイルPUのプロトタイプを使っているようで、どうなるかはまだ未定。Marshallアンプについても新しいモデルが出るようですが、こちらについてはまだ話せないとのことです。

これまでサッチのブログ記事を読んで頂いた方は今回の記事であれ?と思われたかも知れません。今までは「俺」と訳していた"I"を「私」に変えました。フランスでのインタビューのせいか、サッチは言葉を選び、慎重に話している印象を受けました。多くのギタリストの兄貴分であるサッチの言葉は「俺」とした方がしっくりくると思っていたのですが、今回は悩んで変えました。

そんな悩ましい一人称の訳について、9月号のBurrn!でドンピシャのコラムを染谷さんが書かれていて、いたく納得しながら読みました。(笑)