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ジョエル・ホークストラ 「ハードワークは今日のミュージック・ビジネスの形」

近年のミュージシャンは皆たいてい複数のプロジェクトを抱えて忙しくしています。バンド一つで活動している人はかなりの少数派なのではないでしょうか。

Whitesnake の新ギタリスト、ジョエル・ホークストラも複数のプロジェクトを抱えているミュージシャンの1人です。(Whitesnake加入が決まって、Night Rangerからは脱退しましたが)ただ彼が少し特異に思えるのは課外活動の一つがブロードウェイのミュージカルであったり、年末に行われる巨大な音楽ショウ、Trans-Siberian Orchestra だったりすること。

ミュージシャンと複数プロジェクトの関係について、Guitar International の興味深いインタビューを見つけましたので、一部を和訳してみました。(今年7月末の記事ですので、まだジョエルのWhitesnake加入が発表される前です)

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君はNight Rangerの他にもいくつかショウを抱えているよね?

過去5年間くらいは、だいたい年間400くらいのショウをこなしてるんだ。ブロードウェイの"Rock of Ages"で週8公演、11月と12月にはTrans-Siberian Orchestra でも週8公演やってる。

何て凄い量のショウなんだ!どうやってNight Rangerと両立してるんだい?

上手く行ってるよ。今年のNight Rangerは主に週末のライブをやってる。多分今年は75回くらいで、ほとんどは金・土・日の公演だ。僕はバンドと週末に2~3のショウをやってNYにとんぼ帰りして、平日は"Rock of Ages"に出演してるんだ。

バンドの皆もそれぞれ同じことをしてるんだよ。皆、週末のショウが終わると家に帰るんだ。ブラッドはセッションの仕事をやってるしね。皆それぞれの方法で忙しくしてるんだ。僕の場合はたまたまそれがブロードウェイのショウだってだけさ。

私は君のようなミュージシャンと数多く話してきたんだけど、皆いくつものプロジェクトを抱えている。今日のミュージック・ビジネスの形とはこういうものなんだろうか?

これが新しいモデルなんじゃないかな。僕の知り合いでは一つだけをやってる人なんてもういないよ。もしかしたら数人はいるかな。でも今の時代、それでミュージック・キャリアとして成功するのはとても大変なんじゃないかと思う。音楽を(生計を立てるための)仕事として考える必要があるんじゃないかと思うんだ、だって仕事であれば、毎日働くってことだから。

通常のビジネスの世界であれば、「俺は週に2日しか働かない」なんて言わないだろ?週に5日や6日、時には7日毎日働くものさ。音楽に対してそういう勤勉さを持つってだけのこと。音楽は芸術だけど、それで生計を立てたいのなら、仕事として考えなくちゃ。

なるほど、理解があって同様な考え方を持つミュージシャンと働くことがキーだね。中にはバンドに入ったら、他には何もするな、って考えの人がいるから。

そうだね。Night Rangerの皆は僕が他のプロジェクトをやってるのをずっとサポートしてくれたんだ。質の高いプレイをバンドでやって、活動に差し障りのない限り、他の仕事をするのは問題にならないよ。

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ロック・ミュージシャンと言うと、夜のライブ、朝までパーティ、午後起きて・・・のようなライフスタイルをイメージしてしまうのですが('80s風味)、そういうスタイルは過去のものとなっているのかも。
複数のプロジェクトを抱える、今のミュージシャンのワークスタイルについてはこれで少し理解できた気がします。(年間400公演というジョエルの数字は例外じゃないかと思いますが…だって、1年365日よりも多い。彼ってバケーションてものは取らないの??)

それでは、ギタリストにとってコンサートではなく、ブロードウェイのショウでプレイするというのはどういうことなのでしょうか?その好奇心を満たすべく、ネット検索をしていたら、2012年の興味深い記事がありましたので、内容をまとめてみました。さらにその疑問を直接本人にも聞いてみました。

Premier Guitar の記事まとめ

ブロードウェイ・ミュージシャンの一般的なギャラはどれくらいで条件は?

・基本給 週給 $1,515(オケピ演奏のみの場合。ヒット作ではもっと高い。)
・演奏者組合への加入で医療保険と年金加入できる。
・ショウの上演回数の最大49%までなら無給で休みをとり、他の活動ができる。
・ステージ上に衣装を着て登場するか、1ステージで複数の楽器を演奏する場合はギャラがアップ。
(例えば、衣装を着てステージに立ち、複数の楽器を演奏すれば18.75%のアップ。更なる楽器追加あればプラス6.25%アップ。"Rock of Ages"の場合はこれに該当)

ジョエルが"Rock of Ages"に出演した経緯

「ミュージカル "Tarzan" でサブのギターをやっていた時に、キーボード奏者だった人が"Rock of Ages"の音楽監督だった。Night Ranger のメンバーでその髪型ならぴったりだって言われて、オーディションもなかったんだ。

肉体的にも精神的にも大変な仕事だけど、僕は凄くラッキーさ。ミュージカルの仕事はスキルの向上にも役立つし、ギャラは十分だし、ショウを見に来る関係者とのネットワーク作りもできる。しかも休んで他のギグに行くこともできる。そのおかげで、Night Ranger も Trans Siberian Orchestra もずっと続けてこれたんだ。」

サブのギタリスト、トミー・ケスラー (Blondie)が出演した経緯

共通の知り合いを介して、トミーの Van Halaen をプレイする動画を見たジョエルがコンタクトを取った。
「'80sのプレイスタイル、タッピングとかが上手くて、劇場経験のあるミュージシャンは少ないんだ」ジョエル談
ちなみに、トミーが代役を務めるときは、ロングヘアの鬘をつけるそうです。

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J_roa_f_2上の記事を読む前だったのですが、バンドでのライブとミュージカルの違いについて、本人はどう思っているのか、ジョエルにツイートで聞いてみました。以下和訳。

あなたはロック・コンサートとシアターのお客さん両方を楽しませてるけど、両者に違いはあるの?それはプレイに影響する?

"Rock of Ages"は楽しいし、自分のスキルを保つのにもいいんだ。好きな曲を演奏できるし、自分にギグがない日でも毎晩ギグができるからね!

でもやっぱりそこはシアターだから、もちろん僕は本物のギグの方が好きだよ

ありがとう。じゃあ、もちろん次のWhitesnake のツアーでは思い切りロックして私たちを楽しませてくれそうね。

もちろんさ!

結果的にはやはりもちろん、バンドでのライブに勝るものはなし、ということでした。

とは言え、ミュージカルの仕事はロングラン公演であれば安定した仕事ですし、一つの仕事が次に繋がることもあります。それに同じ劇場で上演される訳ですから、年中旅をする必要もありません。自分や家族の生活リズムも守りやすいのですから、続ける気持ちも分かります。

"Rock of Ages"をいつか見てみたいなぁ。ジョエルによると、映画よりずっと面白いよ!とのこと。