ジョエル・ホークストラがカナダのメディア・インタビューに応えました。彼の話を聞いていると、この人は本当に職業として演奏してきた人だなぁ、プロフェッショナルとはこういうことだなあと感心させられます。多岐にわたって興味深い話をしていたので、その一部を和訳してみました。
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君はシェールとツアーしているよね。ヌーノはリアーナとやっていたし、グレッグ・ハウはジャスティン・ティンバーレイクとやっていた。多くのギタリストがポップスターとやるようになったのは、いったいどういうことなんだい?
他の人のことについては何も言えないけれど、僕はただプレイして報酬をもらいたかったのさ。弾くことで僕は上達できるし、それで報酬を得られる。家でギターを抱えてなんとなく弾いているんじゃなくて。僕にとってはギグを得ることが先であって、プレイスタイルについては2番目のことさ。
特定のスタイルでのみプレイする人は沢山いるけれど、僕にとっては違う。何があったのかというと、僕は80年代のロックを聴いて育った世代さ、でも90年代がやってきて、僕はギターソロを弾かなくてもいいミュージシャンになる方法を見つけなければならなかった。その結果、僕は90年代にはありとあらゆるギグをやって生活費を稼いでいたのさ。そうしてあらゆるスタイルでプレイすることを身に付け、ミュージシャンとして成長できたと思う。
Whitesnake のニューアルバムについて教えてくれるかい?
多くの曲をレコーディングしたんだ。デヴィッドがどの曲を最終的に選ぶかだね。だいたい9曲くらいで僕がリフとコード進行を提供しているよ。レブ・ビーチも同様に提供しているし、3人で書いた曲もある。デヴィッドは全曲のメロディと歌詞、サビを書いている。リリースする日が楽しみだよ。
Whitesnake とシェールのライブでは君のアプローチの仕方は違うのかい?
全力を尽くすという点で同じさ。Whitesnake の楽曲はずっと技術を要求される。だから、新しいショウをやるときにはリードプレイなんかは随分準備をする。シェールのショウは決まったプレイを繰り返す。
ライブに向けてはどれくらい練習するの?1晩という訳にはいかないよね?
数週間は毎晩一通りプレイしたよ。僕は前任者デイヴ・ベリーの代役でシェールのライブに参加し始めたから、彼と同じサウンドにすることを心掛けた。彼がそこにいるようなサウンドで皆に変化を感じさせず、快適な状態にしようと考えてアプローチしたよ。
だから彼のプレイを再現したんだ。彼がスライドさせる音、彼のピックアップのポジション使い、そういったことを全て再現する。僕が誰かの代役でギグを受けたときは毎回このアプローチを取る。そのギグを何度もやるようになれば、もう少しリラックスして、自分のプレイを出すようになるけどね。
Whitesnake のライブでは僕のソロもあるし、即興のプレイも好きだけれど、それはそのギグがそれを必要とするかどうかということさ。シェールのショウでバックバンドがジャムを始めるなんてありえない。必要ない。決まったパートを演奏するのみさ。
11月からはTSO (Trans-Siberian Orchestra) が始まるんだね。
ああ、TSOが終わると次はシェールの北米ツアーだ。Whitesnake のツアーが始まるまでは出来る限りやろうと決めたんだ。Whitesnake がいつから動き出すのか僕には分からないけど、それまでに終えられるならシェールの北米ツアーを全てやりたいと思う。
シェールは凄いよね。長年の活躍だ。
ああ、僕の記憶が正しければ、10年サイクルでNo.1ヒットをもう50年続けて出しているんだ。アイコンだよね、ビルボード・アワードの授賞式で彼女のためにプレイしたけれど、素晴らしいよ。一緒に仕事しても、とてもいい人さ。
僕の娘からの質問をいくつかするよ。面白いのもあるからよろしく。
「ギターは何本持っているの?どうしてそんなに必要?」
37か38本かな。スティール・ギターやバンジョーもカウントするかだな。おもちゃのギターもあるよ。必要というか、持っていると楽しいから。年に1度くらいしか使わないものもある。シタールタイプのエレクトリック・ギターがそうさ。12弦のエレクトリックやアコースティックも。あまり使わないけど、使う時にはあって良かったと思うよ。
全ての中で1本だけ選ぶとしたら?
57年製 Les Paul Goldtop のリイシュー。僕のお気に入りさ。
ライブでミスしたときの対処法は?
プレイを続けること。ミスは誰にだってあるし、続けるしかないよ。それに僕はいつも素晴らしいミュージシャンたちと仕事をしているから大丈夫さ。
Whitesnake でプレイしていて、(ミスしないかと)緊張するソロはある?
ないよ。
そういう経験は全くないのかな?
そうでもないよ。Night Ranger の "Don't Tell Me You Love Me" のソロは毎回僕をナーバスにしてた。オープニングのピッキングパターンは信じられないくらい速いのさ、ジェフ・ワトソンが書いたパートだね。
ジェフはあれをアップとダウンビートのピッキングで弾いていたんだ、アップストロークで入るエコノミーピッキングみたいなやり方だ。(訳者注:こちらにピッキングを解説したジェフ・ワトソンの動画アリ。↑↑↓のパターンなんですね~)
あのダウンビート1をダウンピッキングで弾くのは一生練習してもできないよ。だから僕のアプローチはただのオルタネート・ピッキングだ。あのスピードでプレイするのは難しいんだよ。特にラジオの生放送でアコースティックであれを弾いたのは悪夢のようだった!
好きなディズニー・プリンセスは?(笑)
あまり知らないんだけど、シンデレラはプリンセスだよね。それでいこう。バンド名にもあるから。(笑)
君のソロアルバムが好きなんだけど、 Joel Hoekstra's 13 の2作目の予定はないのかな?
ああ、レーベルとの契約の話は随分と時間がかかってる。でも僕の作業をそろそろ始めようかと思っているんだ、契約の話が後になっても。だから答えとしてはイエスで、僕は2作目を創りたいと思っているけれど、どうなるのかは分からない。
次のアルバムでもラッセル・アレン、ジェフ・スコット・ソートに歌ってもらって最高のものにしたい。1作目と同じことが出来たら最高だね。僕らは Monsters of Rock Cruise で1度集まってライブをやったんだ、最高だったよ。(訳者注:その時のライブレポートはこちら) アルバム制作はとても楽しかったし、また大好きな人たちとアルバムを創りたい。
僕はただアルバムを創る為にアルバム制作をするのはやりたくないんだ。今やアルバムではレーベルは十分な収益を得られないし、アーティストもそうだ。今日では制作費が回収できるかどうかという位さ。数ヶ月間必死に働いても収入にはならないんだよ。僕の収入の殆どはライブ演奏からきているのさ。
そうだね、今のバンドは皆ライブで稼いでいる。この前、Sons Of Apollo でジェフを見たよ。彼はとてつもないね。
ああ。僕は前回と同じメンバーでアルバムを創りたいけれど、彼らのスケジュールを尊重しなくちゃならない。Sons Of Apollo は素晴らしい成功を収めているし、僕もジェフが成功して嬉しい。彼がまだ僕のアルバムに興味があるかは分からないけれど、成り行きをみよう。
今後の予定は?
これからシェールのライブで豪州に行くんだ。それが終わるとTSOのリハーサルに入る。その途中に1日抜けて、南米へ行って Guns N' Roses のオープニングで Whitesnake のライブがある。1週間程度の間に僕は3つの異なるライブでそれぞれ全曲プレイするんだ、チャレンジだよね。
どうやってそんな全部を覚えられるのかい?
ほぼ毎晩セットの音楽をヘッドフォンで聴いて曲を覚えるのさ。僕は四六時中そうしている。
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さすが苦労人ジョエル、代役を務めるための準備の仕方がこれぞプロ!職人ミュージシャンという感じ。プレイスタイルの個性で売ってきた人ではないので、こういうアプローチなんだろうなぁ。
"Don't Tell Me You Love Me" のソロ、動画では楽々弾いているように見えていたのですが、やはりジェフ・ワトソンのパートは難しいのですね~。