Whitesnake の新ギタリスト、ジョエル・ホークストラのインタビュー続きです。今週はNight Ranger 加入からブロードウェイのヒットミュージカル、Rock of Ages への出演、全米で大人気の大型ホリデイシーズン・ミュージックショウ、Trans-Siberian Orchestra (TSO) へのレギュラー出演と一気に活動の幅を広げた彼のキャリア、そしてWhitesnakeへの加入まで、大いに語ったジョエルのトーク概要を和訳しました。
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Night Ranger のMonster of Rock Cruise(フロリダから出航するクルーズ船で行われるロックイベント)でのステージを見たんだけど、君とブラッドとの掛け合いが素晴らしかったよ。あれはブラッドとプレイしていくうちに出来上がってきたの?それともリハなしで初めて一緒にステージに立った日からやっていったのかい?
いや、初日に僕はああいうの全部はできないけどいいかって聞いたんだ。僕の記憶ではジェフ・ワトソンは(ジャックやブラッドみたいに)ステージ中を駆け回ってはいなかったから。でも2008年に日本でプレイしたときに、僕が"Don't Tell Me You Love Me" のソロ・パートを弾いて会場を見渡してみたら、アリーナ全員の観客はブラッドしか見てなかったんだ!(笑)そりゃあそうさ、僕はフレット・ボードを見て弾いていたギタープレーヤーでパフォーマーじゃなかったんだから。それでステージでの存在感や観客とのつながりを作る必要性が良く分かった。僕のキャリアの中でとても勉強になったよ。
では、Night RangerとRock of Ages では、Night Ranger が先に決まったんだね。
そうだよ。2007年夏に代役で入って、2008年の始めには、ほぼフルタイムでNight Rangerのギグに参加してた。年によってショウの数は違うよ。年に110公演あった年もあったし。
Rock of Ages は2008年の秋ごろだった。オフ・ブロードウェイで始まったんだ。
Night Rangerのギグがないときも、僕の哲学であるハードワークにのとって忙しくしてるんだ。NYにはオーケストラ・ピットのスタッフをやってる友人がいるんだけど、譜面と音源を渡されてやってみないかって言われたんだ。
譜面を読むのなんてGITで勉強してた時以来だったけど、とにかく覚えて何回かショウでプレイした。それがミュージカルの"Tarzan" なんだけど、このときのキーボード・プレイヤーがRock of Ages の音楽監督で、彼に「君はNight Rangerなの?じゃぁ、Rock of Agesには彼らの曲も使ってるし、ぴったりだよ」って言われて、ひょんなことから僕の劇場キャリアが始まったんだ。
ミュージカルの製作では予算がタイトなため、あまりリハの時間が取られない。本番前には2日しかリハがなくて、しかも照明のチェックなんかをしながら進むから、凄くゆっくり進むんだ。リハをやってるうちに、ああ、こんなの最低のショウかも知れない、1週間で公演が打ち切られるかも。仕方ない、とにかく楽しんでやろうって思った。
直前には演奏曲に手直しが入ったりして不安だったよ。80年代のロックをやる音楽が主役の作品だから、恥ずかしさもあった。でも初上演では楽しいショウに観客が大喜びしてくれた。これはヒット作になるかも、って思った。
根っからのメタル・ファンには、「こんな女々しいショウをやりやがって」なんて言われることもある。でも僕は全く気にしない。一般の観客はそりゃもう毎回大喜びしてくれたんだ。マスコミの批評も関係ない。これはビッグなショウになるって確信した。ショウは2009年にオフ・ブロードウェイからブロードウェイに場所を移し、今日まで2千回以上上演されてる。観客は毎回大喜びで一緒に歌ってくれる。リピーターが多くて、100回以上見たって人もいた。次々に新しい観客も入ってきてるし。このショウは複数の劇団を組んで国内外でツアーもやってるし、クルーズシップ版もあるんだ。
僕にとってはNight Ranger が優先事項だったけど、Rock of Agesがあるおかげで、バンドのギグがあるときはいつでもブロードウェイを休んでギグに行けるようになったんだ。2010年には僕の3つ目のギグ、Trans-Siberian Orchestra (TSO)が始まった。これは友達の紹介でオーディションに合格したんだけど、クラシックのバックグラウンドが必要とされていたから、僕に当てはまったのだと思う。
でもTSOは11月~12月はツアーに出るから、Night Ranger のギグに行けなくなってしまう。2ヶ月休みたいって言ったら、彼らは他のギタリストを入れるというかも知れないから不安だったけど、彼らはOKしてくれて、その間は代役のプレーヤーを立ててくれることになった。
Night Ranger でも大きな会場でプレイしたことはあるけど、TSOの場合は毎晩数万人の前でプレイするビッグ・プロダクションで、クルーも一流の人々がついてる。すごくいい経験を積むことができた。結果、僕はNight Ranger のギグがないときは、ブロードウェイのショウを週8公演やって、11月~12月はTSOのツアーに出るという、3つのショウをこなすことになった。
だからまとまった休みはこの4年間とってないんだ。年間400公演くらいこなしている。でも3つのショウを4年間やり続けるというエネルギーを維持するというのは凄い経験ができたと思う。僕はそれによって、ステージ・パフォーマンスを学んだし、多くの人と出会えた。金銭的にも恵まれて、若い頃のように今月の家賃の支払いを心配しなくてもよくなったんだ。
とんでもないショウの数だ。Night Ranger で作ったアルバムについて教えてくれる?
確かに大変だけど、そのおかげで僕は、例えばブラッド(ギルス)が手に怪我をしてしばらくNight Rangerのギグが無いという事態になってもRock of Ages があるから生活できるんだ。
"Somewhere In California" は僕がNight Rangerに参加して3年目頃に制作した。ファンが喜ぶようなクラシックなNight Ranger の曲をやろうってことになった。ギターやキャッチーなコーラスのある曲をさ。その後アコースティックのライブ・アルバムとそのDVDも作ったし、今年は"High Road" もリリースした。僕はこれらに参加できて幸せだし、今後振り返っても僕が在籍した時期は素晴らしい時期だったと言える。
そしてWhitesnakeからダグ・アルドリッチが脱退した訳だ。
不思議なことにあのニュースが出る前夜に僕はダグにメールしてたんだ。調子はどうかっていう普通の近況交換さ。ダグはただ近々ニュースが出るって言って、それが何かは言えないと言ってた。そして翌朝にツイッターをチェックしてみると、僕を推してるツイートを見て、何だ?って思って、ダグ脱退のニュースを知ったんだ。僕は普段からギグやオーディションの情報は注意してチェックするようにしている。リッチー・サンボラの時だって、何が起こっているのか探ってたよ。
とにかく、今回は僕の尊敬する人たちが僕をデヴィッドに推薦してくれていて(追記1)、うわぉ、じゃあ僕も自分でデヴィッドにメールを出さなきゃって思ったのさ。それで5月にデヴィッドと会ってジャムをしたらいい感じで、8月にアルバムのレコーディングをするからまた来てくれって言われた。でもたった1回のミーティングで上手くいったからって、どうなるか分からないし、Night Ranger の皆に言うのも嫌だった。しかもニュー・アルバム"High Road" が6月にリリースになるところだ。タイミングが悪いよ。
8月にレコーディングに行って凄く上手く行って初めて、ああこれは本当に実現しそうだって思ったよ。それで、Night Rangerの皆にこのギグをやりたいって伝えて、僕らにとっていい方法を探そうって言ったんだ。
Whitesnakeの何が魅力的だったのかい?
デヴィッドはロック界のレジェンドで、人柄も素晴らしい。そして強力なミュージシャンだ。それにこのバンドに在籍したギタリストのリストは魅力的だ。サイクス、ヴァイ、ヴァンデンバーグ、僕の名前も入れたいよ。ニュー・アルバムは強力なロック・アルバムで早く皆に聞いてもらいたいんだ。来年はツアーに出るから、僕にも新しいファンが出来ると思う。これは僕にとって大切なこと。
Night Ranger ではツアーというとどうしてもアメリカを周る日程がメインでほぼ固定されていたけど、Whitesnakeではヨーロッパ、南アメリカ、アジアなんかにも行く。それにNight Ranger ではニュー・アルバムを出しても、セットリストの多くは固定されていたから、僕は新たな挑戦をしてステップ・アップしたいんだ。
ニュー・アルバムの作曲は誰がやったの?君とレブは一緒にレコーディングしたのかい?それとも別々に?
作曲については僕には答えられない。Whitesnakeらしい強力なブルース・ロックの仕上がりになってる。レコーディングについては、両方だよ。半分づつくらいかな。最初の頃はレブがWINGERのギグがあったから、その間はデヴィットと2人で作業した。レブが戻ると一緒にプレイしたよ。彼は素晴らしいギタリストだ。僕らはそれぞれプレイスタイルが違って、異なるサウンドを持ってるけど、同様なテクニックも持ってる。僕はこれまで自分と同じくらいに(タッピングの)プレイをするギタリストとは演奏したことがないんだ。だからそれを生かしたハーモニー・プレイも盛り込まれてる。
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追記1
人気DJのエディ・トランクがラジオで語ったところによると、ダグの後任に誰がいいかとデヴィカバ様から照会を受けたエディが数人の名前を挙げたうちにジョエルの名前があったそう。デヴィカバ様はエディの番組That Metal Show で演奏したジョエルの映像(追記2)を見てジョエルを気に入ったとの話。
追記2
そのThat Metal Show ではゲスト・ギタープレイヤーは番組のオープニングやCMの前後に客席で20秒のギターソロを披露します。たった20秒のギターソロでどうやって自分を印象づけるか?これを考えたジョエルはこれまでの出演者と同様に速弾き勝負に出るだけではなく、アコースティック・ギターやエレクトリック・シタールを持ち込んでプレイし、(どちらも番組史上初の試みだったそう)自分の音楽性をアピールしました。デヴィカバ様がこの番組映像を見てジョエルに目をつけたのなら、ジョエルの作戦は成功したと言えそうです。