7/24にニュー・アルバム "Shockwave Supernova" をリリースするジョー・サトリアーニがメディアのインタビューに答えました。ギター・プレイについて、ニュー・アルバムについて、アコースティック・プレイについてなど、超ロング・インタビューで興味深い話をしていましたので、一部を和訳してみました。今週は第1部です。
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年齢を重ねたに関わらず、柔軟な身体を保つ秘訣は何ですか?若い頃より沢山練習していますか?
いい質問だね。私が14歳の頃はまさか58や59歳になる自分がまだギターを弾いてるなんて思わなかった。特別には歳をとって演奏することがどんなことかは考えないものさ。人生では様々な段階で自分の身体に異なる問題が起こってその度に対処してきたんだ。
どんなことでしょう?
スポーツを楽しんでいたときに起こったこともあるし、長いことバスで寝て移動するツアーをしていると首や手首に影響がでることもある。そういったことさ。簡単に言えば、自分の身体が訴えることに注意深く耳を傾けて対処することだ。どこかで無理をすれば、それはやがて自分の身体的な演奏力に現れることになる。まぁ、私は自分を甘やかし過ぎないようにしてるだけだ。修行僧って訳じゃない。
例えば誰がそうでしょうか?
私の友人スティーブ・ヴァイのような自制心は私にはちっともないね。健康であるために規律を守るということに関しては彼はヨーダのようだ、私にはできないよ。だから私は何でも程ほどに自戒してやっているのさ。
少し付け加えるとしたら、ギタープレイというのは、そうだな言い換えると、私たちは人々に音楽を届けようとしている。人々は特段私たちの演奏技術に注目している訳ではなくて、私たちが作る実際の音楽と演奏されたその内容に心を動かされるんだ。
その通りです。
我々ギタープレイヤーにとって大切なことは、もしこの部屋に我々3人だけとしてギターやテクニックに関してざっくばらんに話していたとすると、「左腕の表側の調子はどうだい?」なんて事だったりする。でも一度ステージに立ったら、そんな話をする訳にはいかない。観客は高揚し、楽しい時間をすごしたいだけなんだ。
だから我々はそういった身体的な懸念事を克服して自分自身に大切なのは音楽なんだということを自覚させなくてはいけない。音楽で魔法を起こすことが大切なんだ。その背後にある仕組みを説明するのは難しいんだよ。
ニュー・アルバム "Shockwave Supernova" のコメントではあなたはこのアルバムで最高の演奏をしているけれどもそれは技術についてのみでなく、音楽そのものが人々に語りかけているということなのですね。
私はとても幸運なことに自分が作曲したいこと、表現したいという思いが大きくなっているんだ。その思いは力強く流れていて、私はなんとかその溢れる創造性に追いつこうとしている。そういうところは良い側面だ。音楽の持つ物語を伝えるためにはいくつかのテクニックが必要だけれども、それ自体は目立たせず、あまり注意を引きたくないという状況のバランスを取ることが悩ましいよ。
製作上の決断はどうしているのですか?
誰かに褒められるためにやっているんじゃないということを常に意識するということだと思うよ。意味分かるかな?自分というアーティストの宣言として作品を製作しているのだから、たとえ誰かに「あぁ、これは嫌いだ」って顔面を叩かれるような反応を受けようが構わないという強さを持たなくてはいけない。
そういう時にはどう感じますか?
「いや、でもこれは技術的に難しいんだ。だからこれはいい作品なんだ」なんてその人と議論するなんてことはできない。そんなことしても仕方ないんだ。自分の作品を気に入らない人がいるということを認めなくてはいけない。
演奏技術というのはあくまで自分とギターの間だけのことであって、曲を聞く人々には関係のないことだ。だから私は音楽制作において演奏技術に焦点をあてることはしないよ。
ライブでプレイするのが一番難しい曲はどれですか?
間違いなくライブで演奏するのはバラードが一番難しいね。"Unstoppable Momentum" や "Satch Boogie" みたいなクレイジーな曲は沢山の車線があるハイウェイみたいなもので、どの車線を行っても目的地に辿り着ける。意味分かるかな?これが私の分析さ。
"Love Thing" を演奏するときはイントネーション、フレージング、ワウワウ(エフェクター)のフィードバックをコントロールすることが全てだ。まさに崖の先端にあるただ一つの歩道みたいなもので、道を踏み外したら即死しかねない。私が書いたバラードはどれもプレイが難しいよ。
ニュー・アルバム収録の "Butterfly and Zebra" は素晴らしいバラードです。タイトルはジミ・ヘンドリックスの"Little Wing" の歌詞からとったのでしょうか?
もちろん!それに気付いてくれたのは君だけだよ、おめでとう!このタイトルはもう1年くらい頭にあって、知り合いに話してからずっと待っていたのに誰も何も言ってこなかったんだ。だから君が最初だよ。拍手のボタンがあったら押してるところだ!(笑)
この曲はメロディ部ではほんの数個の音符しかありませんがとても魅力的です。このような演奏をどう完成させたのですか?
こういう曲は自分1人で作業しなくてはならない曲だね。デモを作って皆に聞かせ一緒にプレイなどしたら皆の影響を受けて気がそれてしまう。これはメロディを想像しながら家のピアノで作った曲で、それから様々な楽器での演奏を考えたんだ。
私はアコースティック・ギターのリードをプレイするのが真に優れたギタリストの証だと思ってきました。アンプやエフェクターの力に頼ることなく自分の指だけがその音を生み出すからです。アコースティックのアルバムを製作することは考えたことありますか?
ああ、それは私のやりたいことリストに入ってる。10年ほど前から、ポスト・イットに「アコースティックの練習をすること」と書いてスタジオの壁に貼ってあるんだ。1日の仕事を終えてからエレキギターの腕を落とさないよう磨いておくための練習は何時間もかけているから、アコースティックの練習をする時間を作るのは難しいんだ。
でも1日1時間と決めて練習を始めてからスタジオ・アルバムにおけるアコースティックの比重はChickenfoot アルバム同様に大きくなっていった。12弦、6弦、それからバンジョーなんかをプレイするのにChickenfoot は最適だった。私がアコースティックで書いて持ち込んだ曲に対して彼らは良く受け取ってくれたんだ。
先週はAcoustic For a Cure という慈善コンサート(5/15実施)をチャド・スミス、サミー・ヘイガーそれからジェイムス・ハットフィールド、リンダ・ペリーとやったんだ。素晴らしい夜で皆がアコースティックを演奏したんだ。
私はリンダのセットの最後でステージに上がって、彼女のギターを掴んで彼女と彼女の弟のジョンと(パーカッションにはチャドも参加)"Communication Breakdown" をプレイしたんだ。ジミー・ペイジのソロをギブソンのジャンボでアンプ直・ノーエフェクトでプレイするのは恐ろしかった!これぞ大人の男の証明じゃないか!ハハハ(笑)
いつかはアコースティックのアルバムを作る予定ですか?
ああ。時間はかかるけど取り掛かるつもりだ。私の手は間違いなくエレキギター・プレイヤーの手だ。自分もアコースティックが上手く弾けるって思う度に、トミー・エマニュエルのライブDVDを見ては自信喪失しちゃうんだ。(笑)
あなたの作曲はメロディが起きている時又は寝ている時に浮かぶのでしょうか、ジャムするうちに自然と出来ていくのですか、それとももっと構成を考え、あるコード進行を発展させて作っていくものでしょうか?
決まったやり方はないんだ。自分で制限もしない。実際、私はカオス的で真逆のアプローチが好きなんだ。そういうのはしょっちゅうだよ。先日も元はChickenfoot用に書いた曲のデモを私のSFアニメシリーズに使おうと決めたところだ。
新しいギター・パートのメロディを考えていて、「よし、歌えるようなメロディならどうだろう?そうじゃなかったら?歌えないメロディだけど、派手な見せ場だったら?キーを変えたらどうなる?」って次々試していったのさ。
Chickenfoot のニューアルバムの予定はありますか?
見込みはなさそうなんだ。凄く悲しいけれど、もうアルバムは作れそうもないって感じてる。一緒にプレイできる別のバンドを探さなくちゃいけないなって気持ちになってきたんだよ。でもちょっと悪いなって気持ちもある。ずっと彼らを追いかけてきたし、先週はチャドとサミーと会ってとても楽しい時間がすごせた。でも思ったんだ。彼らは私がニューアルバムを作ろうって言うのを聞きたくないんだってことは知ってるから、もうそれを言うのはやめよう、ってね。
自分のバンドを作るのですか?
分からないよ。私は今は"Shockwave Supernova"の発売に向けて産みの苦しみの真っ最中だし、SFアニメの"Crystal Planet" にも深く関わってる。だから手一杯かなと思うんだ。でも知ってのとおり、私はこれから3週間後に1週間のオフがあるって言われたら何かやり始めてしまうだろうね。
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残念ながらChickenfoot は終わりを迎えてしまったようです。あんなに素晴らしいバンドなのに勿体無い!ライブ見たかった~。このバンドに対する姿勢がサッチとサミーで随分違っていたことがどうにもできない障害だったのでしょうか?
このあたりについてはエディ・トランクのpodcastを聞いてみると(6/18 と6/25分)2人それぞれの考えが分かります。アーティストとして新しい音楽を創造することを使命と考えるサッチと、ニュー・アルバムに時間と資金をつぎ込んでも結局オーディエンスは以前のヒット曲が聞きたいだけじゃないかと考えるサミー。
Chickenfoot は新曲を聞きたかったなぁ~