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ジョー・サトリアーニ vol.2 「人々の人生に寄り添う音楽を作ることが務めなんだ」

7/24にニュー・アルバム "Shockwave Supernova" をリリースするジョー・サトリアーニインタビュー続きです。

アニメーションの新プロジェクトや、普段の練習方法、ギターを教えた生徒について、ニュー・アルバムのサウンドについてなど、一部を和訳してみました。

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"Crystal Planet" という新プロジェクトについて教えてください。

友人にフレットレスのギターを弾く凄い奴がいてね、ネッド・エヴェットというシンガー/ソングライターなんだけど、彼が私の2013年のアートブックを見て、Unstoppable Momentum ツアーで使えるようなビデオを製作しようと言ってくれたんだ。

私が曲の中から "Rising Truth" を送ると、彼は私の描いたキャラクターが飛び回っているちょっとした楽しいアニメーションを作ってくれたんだ。後で彼に電話して「なんだかこれにはストーリーがありそうな予感がするんだ。何か出来そうだ」って言ったのさ。

彼も同じ気持ちだったんだけど、彼が手を出すべき分野かと迷ってた。で、私たちは話し合ってこう結論を出したんだ。「私たちが何をしようとしているのかは分からないけれど、とにかくやってみよう」ってね。(笑)

多くの人がその哲学に従いそうですね。

私たちはどちらもアニメーターでも作家でもないけれど、やりながら学んでいこうと思ったのさ。もう2年たって、試作版はできているんだ。ネッドはとんでもなく面白い声をいろいろ出せるんだ。彼が殆どのキャラクターの声を演じた。彼はアニメーターの仕事も学んでいる。

今のところ私のアートブックに出てくるキャラクターと私が新しく描いたキャラクターを使っている。それに私が音楽全てを作曲しているところで、これのために300くらいのアイデアは書いたよ。

物語があってそのために作品を作るってのはとても楽しいよ。今私たちはこれを販売するルートに載せるのか、ただ自分たちで販売するのか考えているところだよ。第1シーズンは自分たちで出して、誰にもここをカットしろとか言われないようにしようかと思ってる、ハハ。基本的には、誰かビジネス・パートナーができるまではPGバージョンを作る必要はないんだ。多分9月、Shockwave ツアーが始まる頃にはオンラインで出せると思う。

普段はどのような練習をしていますか?重点的にやっていることはありますか?

私はツアーやコンサートのために練習するんだ。先週のアコースティックのイベントの準備として、アコースティックだけを3週間練習した。それが全てさ。リズム・パート、ソロ、それからスライド・ギターを6弦で弾くために腕の力をつけたんだ。オープンEとGのチューニング、ドロップDのチューニングとあと12弦ギターで。

そういった準備しなくてはいけないものを練習するだけですか?

そうさ。例えば Shockwaveツアー の準備をする場合は、ショウのセットリストを1日に2回通して演奏するのを6週間繰り返す。そうすると自信が持てるんだ。少なくとも4~6週間の準備期間が必要だ。

特段のプロジェクトもなく、ツアーが終わっていて、2ヶ月のオフがあったりすると何か新しいことを学ぼうとするだろうね。アコースティックでトラヴィスピッキングの練習をするとか、ハーモニカの練習をする。

4日間ピアノの練習をして過ごしたことがあるよ。あまりピアノは上手くないんだけど、私はピアノで音楽がひらめいたりするから。本に書いたかも知れないけど、自分にテクニックがないことにストレスを感じてしまうから1日1時間の練習でいい。何かこれから新しいことを始めるなら練習は1日1時間以内、間は24時間は空けるようにするよ。

練習は立ってプレイしますか?

ツアーの準備なら立ってプレイする。レコーディングの場合は立っても座っても構わない。好きなほうにする。立った方がいいだろうね。立て膝をついてギターに覆いかぶさるのは背中と尻に最悪なんだよ。(訳注:立て膝の話はジミヘンのギターを燃やす動作をイメージしたジョークではないかと思われます。)

立ってプレイするときは、腕と手首のアングルが座ってるときとは違いますよね。

ああ、この30年間の私のプレイしている写真を見れば、ギターを高く持ったり、低く持ったり、色んなポジションなのが分かるよ。まだどれがベストなのかわからないんだ。

通常はライブで演奏しない曲を次のライブでやってみようとは考えませんか?

ニュー・アルバムを出してツアーに出ると、最初のうちは、ニュー・アルバムから多数と皆が絶対に聞きたい6~7曲をやるんだ。皆が聞きたいのは"Flying in a Blue Dream" や "Satch Boogie" なんかだ。

オーディエンスの顔を見ると、多分半分くらいは初めて私のライブに来た人で、多分それが人生で唯一なんだと思う。だから私が人気曲をプレイしなかったら大変なことだ。もし私が "Always With Me, Always With You" をプレイしなかったら騙されたと思うんじゃないかな。

1回のライブでプレイするのはだいたい22曲で、それを私の全作品、200曲以上から選ぶんだから大変さ。 "Strange Beautiful Music" や "Is There Love in Space?" のツアーではアルバム曲全部やったような時があったけど、新しいアルバムが出ると次に進まなくちゃいけない。

Shockwave ツアー用のセットリストはまだ組んでいないけど、去年のツアーでやっていたような古い曲を入れ替えて別の古いアルバムから選曲するかも。長い間プレイしていない曲をやるつもりだよ。

あなたはギター教師としても優れていました。優秀な生徒と手を焼いた生徒はどんな風でしたか?

優秀な生徒はもちろん皆が知ってるとおり、カーク・ハメット、スティーブ・ヴァイ、チャーリー・ハンターなど。彼らを教えるのは本当に楽しかった。彼らはとてもやる気に溢れていたからね。やりにくい生徒というのは、キャリアに対する不安を抱えていて、上手くならないことにストレスを感じていたんだ。でもそういった生徒は上手くなりたいというのに見合うだけの練習をしていないんだ。

例えば、医者に行って「髪が減ってるんだ。どうにかしてくれ」と言って、「どうにも出来ない」と言われるのと同じなんだ。彼は医者に腹を立てるだろう、医者の言葉は彼が聞きたかった言葉じゃないからだ。

私は当時20人くらいの待機生徒を抱えていて、週に60時間くらい教えていたと思う。そこへ誰かがやってきて、「よう、とにかくカッコよく弾けるように教えてくれ、基礎練習とかはいらないから」って言ってきたら、私は「うせろ」と言って立ち去るだろうね。

こういう生徒はパスして正解さ、なぜなら次の生徒はラリー・ラロンドで「僕は先生が先週教えてくれたことは全部練習しました、これです」ってことかも知れないからね。それが生徒として正しい態度さ。

優れた教師には何が必要でしょう?プレイヤーとして素晴らしいけれど教師としてはそうでないような人も多いですし、一方で教師としては素晴らしいものの、才能のあるプレイヤーではない人も沢山います。あなたはその両者であり、素晴らしいです。

私は最初の数分、注意深く生徒の演奏を聞いて彼がどんな演奏がどんな分野で出来るのかを掴む。そして彼らがレッスンで何を学びたいのかを理解しようとするのさ。それから最も重要なことはあらゆる自分の知識を気前よく彼らに差し出すことだ。秘密を隠すなんてことはありえない。「これを教えたらコイツは俺から技を盗んで俺よりも有名になってしまうかも知れない」なんて思ってはいけないのさ。

でもそれは多くのギター教師が考えてしまうことでしょうね。

教師になったら、そういう事に関しては私欲を捨てなくちゃいけない。「よし、私がこれまでに得た彼に役立つ知識の全てを教えよう」という気持ちでなくてはいけないんだ。そう思えるようになったら、生徒との素晴らしい関係が築けるようになる。

長いキャリアの中で達成した一番気に入っていることは何ですか?

ファンから私の音楽を結婚式や何か人生の重要な節目に使ったという連絡をもらうことだよ。これこそが本当の成功さ。なぜなら人々は音楽を必要としていて、我々がミュージシャンである限り、人々の人生に寄り添う音楽を作ることが務めなんだから。

音楽賞みたいなものは実際のところ何の意味もないんだ。もちろん、売上の数字は音楽で生計を立てているミュージシャンにとって非常に重要だ。でも何の賞を取ったとしてもそれは見かけだけの勝利に過ぎない。そんなものは一時的で、翌年には誰かが受賞するんだ。じゃぁ、何の価値があるんだ?ってことなのさ。

でももし誰かから、息子を埋葬するときに彼が好きだった私のレコードを入れたと聞いたら?ワォ!これこそ重大だ。

クリエイティブでいる秘訣はありますか?

クリエイティビティということに関して錆つかないようにいるために最良の方法は創造し続けることだと思うんだ。世間的には気分を変えるとか、休暇を取るのがいいと言うけど、常に何かに取り組んで仕事を進めていくことの方が上手く行くと思うんだ。

"Shockwave Supernova" 最後の演奏を終えたときの気分はどうでしたか?

最高だったよ。長い間のうちで初めて私は自分自身に満足感を許したんだ。ジョンとこのアルバムの製作を始めるときに音にこだわることを決めていたんだ。ディストーションのかかったギターが全編にあふれているけれど、最高にダイナミックで優れたオーディオ体験を作るんだと。ギター音楽でそういうレコードを作るのはとても難しいんだ。

私にとってラジオやTVでのオンエア、ビデオゲームへのライセンスを意識する必要は全くないと気付いたからなんだ。そういった媒体はレコードの音質をひどく制限してしまう。

私のファンは本当は高い音質を聴きたいはずだ。彼らはこの音を静かなところで思い切り大音量で聴きたいのであって、圧縮され、歪められたマスター録音なんて要らないんだ。hi-fiサウンドがいいんだよ。

昨年ジョンと過去のスタジオアルバムをリマスターして高音質に仕上げた経験のおかげで、スタジオで我々が聴いているダイナミック・レンジのサウンドを取り戻すことができたんだ。

私はミキシングの最終日に、「よし、私たちがスタジオで聴いているのと同様のサウンド体験をファンにプレゼントしよう」と言ったんだ。他の圧縮された音楽とライセンスを意識して競う必要なんてないんだ。ジョンをマスタリング・エンジニアに指名して「君しかできないんだ、やってくれ」と頼んだのさ。

彼のスタジオでニュー・アルバムを聴いて、「ワオ!初めて音質に最高に満足できるものができた!」って思ったよ。レコードレーベルが15曲入りのアルバムをOKしてくれたのも驚きだった。彼らは「ああ、ジョンのマスタリングは素晴らしいし、そういう音にすべきだろう。ファンのためにやろう」と言ってくれたんだ。だから私はこの仕上がりに最高に満足している。

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想像ですが、息子を埋葬するときにアルバムを棺に入れた話は、ファンから聞いた実話ではないかと思います。音楽家冥利に尽きると同時に実にヘヴィなエピソードです。

昨年の全スタジオ・アルバムのリマスター作業でサッチはハイレゾ音源のファンになったようですね。彼のオフィシャル・サイトではニュー・アルバムCDにサイン入りポスター(デザインがクール!)とハイレゾ音源ダウンロードのパッケージを販売しています。これを買うと去年発売されたクローム・ドーム(全スタジオ・アルバムのハイレゾ・リマスター版)が欲しくなる仕組みだろうか・・・(汗)