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ジョー・サトリアーニのギターレッスン  「指板上の音が分からないなんてのはクソだ!」

ジョー・サトリアーニが少年時代を過ごしたロングアイランドの自宅で近所の少年たちにギターレッスンをしていたこと、その生徒にスティーブ・ヴァイが含まれていたことは有名です。またサッチがカリフォルニアに拠点を移してプロデビューするまで、ギター講師をしてカーク・ハメットやアレックス・スコルニックを教えたのも。

今回はサッチのギターレッスンに焦点を当て、関係者の証言を集めてみました。特にヴァイ先生のコメントには感動します。

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昨年の "Surfing to Shockwave" ツアーに先駆けてサッチとヴァイ先生の対談として作られたこのビデオ、Part 2 では2人のギターレッスンの話(12分ごろ)になり、ヴァイ先生が初出しのエピソードを披露しています。その部分を和訳してみました。(現在 Part 3 まで公開されていますが、続きの Part 4 はどうなったのでしょう?)

スティーブ・ヴァイ

私は暗記するというのが得意じゃなかったんだ。でも初めて行った君のレッスン(当時ヴァイ13歳、サッチ17歳)で「ギターの指板上の音を全て覚えろ」と言われた。そんなこと出来るわけないと思いながら次の週レッスンに行ったら、君が言ったのは「よし、2弦上にあるF#を弾いてみろ」だった。え?って戸惑ってたら、そこでレッスンは終了だった。

君はノートにこう書いたんだよ、私は今でもそれを持っているんだ。「指板上の音が分からないなんてのはクソだ!」ってね。その日しょんぼりと家に帰る道が私のターニングポイントになったんだ。これからは完璧な準備をしてレッスンに臨もうと決めたんだ。

ジョー・サトリアーニ

ハハハ・・・(そのエピソードは全く記憶にない様子)、多分レニー・トリスターノにやられたことを君にやってたんだろうな(笑)

(訳者注:17歳の頃、サッチが音楽レッスンを受けたジャズピアノスト。生徒に厳しい先生だったそう。当時の話はこちらでどうぞ)

以下はサッチの自伝本 "Strange Beautiful Music" の1部を翻訳してみたものです。

スティーブ・ヴァイ

彼は驚くほどに高い基準を設けて、私をそこへ引き上げてくれた。彼はそうして全ての生徒に尽くしてくれたに違いない。彼は無欲の教師で、彼の全ての知識を差し出すんだ。しかし、最も重要なことは、彼は生徒を刺激してギターで自分自身を見つける助けをしてくれることだ。

彼は私に自分らしく考え、自分自身の声を楽器で見つけるよう教えてくれた。彼にはまるで尽きることのない情報の倉庫が常にあるようだった。彼のフォーム、スタイル、エクササイズ、スケール、コード、理論などの教えは彼自身がそれを習得した例を見せてくれるので、とても分かりやすかった。私は彼自身が習得したものを教えてくれるのをこの目で見ることが出来たのだ。それは最も豊かな類のインスピレーションだった。

それに彼は学業をおろそかにしなかった。私は学校でも平均以下の生徒で、学校の授業を理解して覚えるのに随分と苦労していた。でも、ジョーが何かを覚えろと言ったら、無条件で完全に記憶したのさ。自分が深く尊敬する人物に期待されるとどれ程のことが出来るのか、実に驚きだね。

午後4時以上に楽しい時はなかった。木曜の午後は町の向こうにある彼の家まで歩き、彼の部屋に座ってレッスンを受けるのだ。彼の部屋ときたら、またクールなのさ。彼の部屋は壁中がロックンロールのポスターで覆われていた。選び抜かれたレコードの棚、アンプ、ギター。

レッスンは私にとって人生で1番重要なものだった。あれは宝だ。私が当時抱えていた個人的な困難からの逃避先だった。レッスンは私の聖域で、それだけが私にとって大切で全力で集中するものだった。当時の私の生き甲斐は先週のレッスンからいかに学んで成長したかをジョーに認めてもらうことだった。彼の部屋にいるだけで最高の気分だった。

人は人生において困難な時期にあると、心理的なエクササイズをやるものだ。人生で自分が安心で満ち足りて幸せで安全な時や場所である「幸福の場所」を思い浮かべるのさ。私にとってそういう場所のひとつは10代のジョーのベッドルームとギターレッスンだ。

ジョー・サトリアーニ

13歳のスティーブ・ヴァイを目の前にして「この子は俺よりも上手くなる」と感じて衝撃だったよ。直感で分かったんだ。1つ確かなことは、私がスティーブの何気ないプレイを目にしたように、自分の目の前の才能に気付いたら、その才能に降伏し自分の知識を全て教えるしかないんだ。

私がほんの数ヶ月前に出来るようになったことを彼に教えると、次の週には彼が私よりも上手く弾けるようになっているのを見たのには感激したよ。「いいんだ。教師なら知ってることを全て差し出すんだ」と自分に言い聞かせた。そうするのは教師の倫理基準だと思う。

カーク・ハメット (Metallica リードギタリスト)

当時でも彼は今と同様のサウンドがしていた。彼のギタースタイルの全てのパーツは当時既に揃っていた。彼のテクニックとスタイルには完璧に驚かされたよ。彼が最初に俺に言ったことは「よし、俺のレッスンを受けるのなら、そこからしっかり学ぶことが条件だ。もし翌週のレッスンに来てもマスターしていなかったら、君はお互いの時間を無駄にしていることになる。君がレッスンを受ける必要はないということだ」だった。

要は、彼が言ったのは翌週のレッスンに来るときにはしっかり準備して来いということだ。それで俺はレッスンを受け、全てをその週にマスターして、翌週のレッスンに出た。そこから成長していった…俺は多くのことをジョーから学んだ、特にテクニックについて数多くを。同時にあの感覚が何よりも重要で全てだと学んだ。

だから俺は常に多くのテクニックのプレイヤーとしてよりもむしろ、感覚を持ったプレイヤーであろうとしてきた。俺は常に、たとえ5音でも5千音と同様に十分に語ることができるという事実を心に留めていた。それを学んだことは俺にとってとても、とても重要だった。

ラリー・ラロンデ (Primus リードギタリスト)

ジョーはプレイヤーのレベルを見極めるのがとても上手かった。当時の俺はとても低レベルだった。どんな風だったかと言うと、ジョーは来週学ぶ課題を課すんだ。それは何かの練習で、例えばスケールだったりする。次のレッスンでは、彼は俺に本当に学びたい曲を持って来させる。彼はその曲を2秒で把握してしまうんだ。

そして、先週の技術課題をクリアすることが出来たら、彼はエディ・ヴァン・ヘイレンでもランディ・ローズもリフの弾き方を教えてくれるんだ。つまり、これは練習の動機づけで、彼が生徒に学んで欲しいことを練習させるんだ。この方法はその週の技術レッスンが何であろうと、本当に俺を練習の鬼にさせた。

それは大抵は反復練習で演奏という視点から言えば楽しいものではなかった。けれど、それは指を動かすのには実に基礎的な練習だった。ルーティンのようにして、ギターネックの上から下まで指を移動させて弾くのだ。そこで1つでも間違えたら彼は最初からやり直しさせた。

そうして俺は毎週毎週ハードな練習をやったものだった。俺が個人練習する時でも、たとえ1つでも間違えたら最初からやり直しする規律を彼は植え付けたのだった。その方法は本当に良い練習方法だった。そして彼が音楽理論、音・スケール・コードが共にどう働くのかを教え始めた時に役に立った。その当時の俺にはチンプンカンプンだったけどね。

始めの数ヶ月間は彼がそういうことを教えると、俺は頷いていたんだけど、実は混乱していたんだ。でもある日、今でも覚えているのだが、それら全てのことがピンときて、「そういうことか!」ってなったのさ。あれはギタープレイヤーとして、とても驚くべき瞬間だったよ。

以下はこちらのインタビューの1部を訳してみたものです。

アレックス・スコルニック (Testament リードギタリスト)

ジョーのギターレッスンを受けたのは14歳の時だ。あれは他人の言う事を聞かずに自分で正しい決断をしたいい例だと思う。なぜなら、当時の彼はまだビックネームの"ジョー・サトリアーニ"じゃなかった。彼はただのギター講師で、とても厳しいと生徒から恐れられていた。

彼はレッスンをとても真剣に捉えていた。いいかい、カリフォルニアのバークレーでは勤労者倫理ってのはちょっと違うんだよ、NYやロンドンや東京とは違う。スローペースで、皆が自分のペースでやってるのさ。そこで彼は生徒が真剣にやっていないと、ほんの数レッスンで振り落としていた。彼はプロの世界でやっていけるミュージシャンを育てようとしていた。

彼のレッスンは最高だった。とても小さな部屋で、彼が俺のプレイを聞いてアドバイスしてくれる、そして一緒にプレイするんだ。彼は素晴らしかった。彼のプレイを聞くのは素晴らしい体験だった。俺はあんな風にギターが演奏されるのを聞いたことがなかった。知人の何人かには彼のレッスンは真剣過ぎるし、厳しいから止めておけと言われたけれど、実際には彼のレッスンが最高だったのさ。

Img_1808

写真は2016年の G4 Experience で撮影されたサッチ、アレックス、ヴァイのスリーショットです。

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私はサッチのレッスンについて語った"Strange Beautiful Music" でのヴァイ先生のコメントが大好きです。2人は何と美しい時間を過ごしていたことか!
サッチのレッスンは相当厳しかったようですが、これ程多くのギタリストを輩出しているのも凄いですね。