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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ポール・ギルバート 60's Mind の元ネタと指タコの科学的研究

ポール・ギルバートが行った MI(Musicians Institute) での学生向けトークセッション&パフォーマンス映像が公開されました。なんと2時間半にも及ぶビデオ!

プロフェッショナル目指して音楽を学んでいる人に向けたトークは内容が難しくなりそう?いえいえ、ポールにかかればこんなに楽しいセッションになってしまうのです。あまりに面白かったので、トークセッションの概要を和訳してみました。(質問と回答がかみ合わないところも笑える)パフォーマンスの部分も実に面白いのでオススメです。

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君は17歳でここにやってきたんだよね。

1984年当時、僕が最初に受けた印象は、皆が素ン晴らしくでかいヘアスタイルだってこと。(笑)その少し前に Def Leppard が出てきて、超カッコイイ髪型だった。僕はストレート・ヘアだったから、ヘアサロンに行ってパーマをかけたのさ。最高にクールだったよ。でも髪は伸びるからね、2回・3回とまたパーマをかけたんだ。そしたらもうちっともクールじゃなくなってしまった!

という訳で僕がここにやってきた時(ポールがMIに入学した当時)には、僕のパーマヘアは全然イケてなかったんだ。ギター・センター(LAにある楽器ショップ)に行ったら、カウンターにいる店員の兄さんが超カッコイイ、ブライアン・メイみたいな髪型しててさ、僕にはこんな髪型にはなれそうもないって思ったよ。

でも、僕は悲惨な髪型だったおかげで、女の子は誰も僕に興味なんか持たなくて、彼女がいなかったからギター練習に集中できたんだよ。(笑)だから、そう、まずはパーマをかけて練習に集中しよう!僕の場合、MR.BIGが上手く行ってヘア・メタルのカテゴリーに分類されたから、僕のヘアも最後には成功したってことかな。

近況を教えてくれる?

数年前に僕はすごくイラついていたんだ。ブルース・ソロを弾いていたときに、僕はスケールも分かってるのに、何かが思っているのと違うという感じだった。そもそも僕は間違っていたんだ。音楽というのは僕の耳に聞こえるもので、僕自身から発せられるものだ。決してスケールとか視覚的に捕らえられるものからできるんじゃない。

僕のキャリアはスケールを最速で弾きまくることで作られてきたんだけど、そういうのは大衆に受けるっていう類のものだった。僕はそういうプレイの上を目指したいと思って、シンプルなものを弾いていたんだ。でも、シンプルなものを弾くっていうのはとんでもなく難しいんだ!何でできないんだ!ってイライラしたんだけど、落ち着いてじっくり取り組んでいくうちに、今までとは全く違う音楽の道が開けたんだ。

MIに入ってギター専科で学んで、スケールを高速で弾くのが楽しかった頃はとにかく弾きまくったよ。でも3年もしたらそういうピラピラした自分の音を聞くのに疲れちゃったんだ。僕はそもそも音楽ファンだからね。それでビーチ・ボーイズとか沢山のポップ音楽を聞いて、作曲の方向に向かったんだ。ギター・プレイよりもね。だから MR.BIG では 60's Mind とかそういう曲を書いてた。

自宅にスタジオを持ってからはそこでの作業に熱中したね。いろいろ試して、ソロアルバムで大量のオーバーダブをやったり、エンジニアやプロデュースを経験した。それから僕は日本語を熱心に習い始めたんだ。そこで初めて自分に苦手なものがあるっていう感覚を知ったんだ。僕には得意じゃないことが沢山あるけど、そういうことについては、僕は即座に諦めるタチなんだ。(笑)高校でフットボールをやったときにはすぐに諦めたよ。でも日本語は何とかなるんじゃないか、って思ったんだ。

僕の日本語習得の速度は凄く遅いのだけど、これも僕が新たな音楽の道を見つけたことと同じだよね。8歳の頃、僕の頭には音楽があってそれをギターで弾くことがゴールだった。それは今も同じ、頭の中の音楽を弾きたいんだ。

MR.BIG であなたの作曲やプレイはどのように影響を受けたのでしょう?

僕が初めてハーモニック・メジャー・スケールを学んで凄い発見だと思ったことがあるよ。数学的にきっちり形の整ったスケールなんだ。僕が初めて書いた曲は全部そのスケールで書いたんだ。次にThe Beatles の "You're Gonna Lose That Girl" で驚いたのはルールに縛られない曲づくりだ。最初はEコード、次は3コードなら正しくはG#mにいくところが、ドミナントなんだ!発見だったよ。今でもここで学んだことは僕の音楽的基礎になってる。

でもMR.BIG で皆とプレイするときには、「それはミクソリディアン・スケールだ!」なんて誰も言わないよ。ロック界の偉大なプレイヤーにはそういう音楽言語を使わない人が沢山いる。でも音楽自体については皆が理解しているんだ。MR.BIG では曲を参照して会話してたよ。ミクソリディアン・スケール= "Strawberry Fields Forever" って感じで。

あなたの作曲アプローチについて教えてください。

ティーヴ・モースの話をしよう。彼とはThe Beatles のトリビュートで知り合ってメールのやり取りをしてたんだ。当時の僕はフラストレーションがたまって、ダークサイドにいたんだ。ちっともプロセスを楽しんでなかった。でも彼はとても楽天家で、明らかに自分のしてることを楽しんでいたんだ。僕はそれから学んで、仕事を楽しむように務めたんだ。自分が楽しんでいなければ、いい音楽はできないんだ。

作曲の仕方は人それぞれだけど、小さなアイデアでも、そこから整えて膨らませていけばいいんだ。僕がMR.BIG で書いた曲、Green-Tinted Sixties Mind は自分でも気が付くのに20年かかったけれど、ここは(弾いてみせる) "Are You Sleeping, Brother John?"(童謡)から頂いているんだよ。(笑)

次世代のミュージシャンへのアドバイスをお願いします。

さっき楽しむことが大事だと言ったように、この仕事はとても楽しいけれど、努力を要する仕事だ。ギターの名手になりたくて僕はここに来たけれど、それだけじゃない興味もあった。自分の愛すること、やりたいことを追い求めるんだ。音楽の喜びというのは、ギタープレイヤーには1人で部屋にこもって弾いていたい人もいるけど、人と協働することさ。自分の快適なゾーンから抜け出すことにもあるんだ。永遠に準備してちゃいけない、海に飛び込むんだ。

音楽がデジタル化してビジネスが変化していますが、それについてはどう思いますか?

僕の妹がフォトショップ(画像編集ソフト)の使い方を教えてくれたよ。人の頭を別の人のと取り替えたりね、凄く面白いんだ。(笑)

ここは見事に噛み合ってなかったですねぇ。そこが面白いんですが。このあとアルバム宣伝用のバイオを書く話を始めるんですが、ポールはそのあたりで何が言いたかったかを忘れてしまった模様。(笑)

あなたのキャリアを形作ってきたものは何だと思いますか?

最初はダウンストロークだね。僕がギターを始めて最初の数年はなぜかアップストロークしか使わなくて、しかも6弦だけで弾いてたんだ。でもHEART の "Barracuda" で何であんなに速く弾けるんだ?ってなって、ダウンストロークを知って感動したよ。

最近はB.B. キング の人差指ベンド(チョーキング)だね。たった3年前のことだよ、僕はそれなりに確立されたギタープレイヤーだというのに、僕の人差指の指先は柔らかくて、人差指ベンドをすると「ひぃ~」って位に痛かったんだ。

それでどれくらいで指にタコができるか科学的に研究したんだ。6週間だったよ。でもそれをずっとメンテナンスすることが重要さ。B.B. キング はツアーで毎晩のように弾いてたんだから。僕にはギタークリニックのツアーがあったんだけど、その1週間前に日本へ行かなくちゃいけなかった。僕の妻は日本人で両親に会いに行った1週間はギターを弾かずにすごしたんだ。その間の僕は指のタコに「消えないでくれ~」って祈ってたよ。(笑)

クリニックが始まるころにはタコが消えちゃってて、指が痛くなったのさ。そこでゲージ009のから1弦を2弦の位置に張って、以下全部ずらして張り、1弦のところにゲージ008の弦を張ったんだ。(ギター弦はゲージが細い方がベンドし易い)音はヘンテコになったけど、ベンディングは楽になった。これはビリー・ギボンズ(ZZ Top)の話をヒントにしたんだよ。

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最後の人差指ベンディングのためのタコ話には大声あげて笑ってしまいました。ポール流の人差指ベンドが痛くないギター弦の張り方、誰かやってみて!チューニングは普通にできるんだろうか?

6弦 032 5弦 024 4弦 016 3弦 011 2弦 009 1弦 008