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ジョー・サトリアーニ 「人々は耳じゃなくて目で音楽を聞くようになった」

ジョー・サトリアーニインタビューに答えました。普段とは違う質問に、なかなか面白い話をしていましたので、その一部を和訳してみました。

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あなたは沢山のインタビューを受けていますよね、ぜひ答えたいと思っているのにまだ誰も聞いてこない質問はありますか?

最近まったくされなくなった質問は、ハーモニー進行やスケールのユニークさについてだね。80年代には Guitar Player や Guitar World のインタビューを受ければ、ベースライン上のコードシェイプの新しい使い方なんかを深堀した内容になったものだったよ。

今じゃ誰もそういう質問をしなくなった。とても残念だよ。今じゃ実際の音楽制作やプレイの解説よりもブランドや有名人、ギア関連の記事ばかりになってしまった。まあ、でも私が長く彼らと付き合いすぎたからなのかも、そうすると私の問題だな。

今では学校で音楽教育が行われないのですから。学ぶ人が減っているのですから、音楽理論について質問する人が減ったということかも知れません。

その件について私の見解は、音楽ビデオの出現によって人々の音楽鑑賞スタイルが変わったと思うんだ。カメラは人の演奏シーンなんて撮りたくないんだ。カメラ目線の人物を撮りたいんだよ、レンズに映り込みたいって人をね。

MTVが悪いという訳ではないけれど、テクノロジーがミュージックビデオを作り出して、そのチャンネルが席巻すると、「私に従え、私がお前のマスターだ!」と言うように人々を取り込んでいったんだ。人々はこれまでと違うスタイルで音楽を取り込むようになった。耳じゃなくて目で音楽を聞くようになったのさ。

音楽理論とは何の関係もない。1986年と今とで、音楽理論を知っている人は同じくらいだと思う。その点については何も変わっていないんだ。

そうですか?

誰も音楽理論に関心はないんだよ。インターネット時代の前、MTVが登場する前には、ロックが聞きたければ自分で聞こうとするか、演奏されているところへ行かなくてはならなかった。インターネットで3秒で見つけるなんてことはできなかったんだ。今では誰もが簡単にネットで音楽を聞けるんだ、全てビジュアルなんだ。文字を打ち込んで検索して、ビデオを見る。全てが短時間だ。

American Idol の状態さ。曲は全て1分5秒、それでスーパースターになれるんだ。4分もの力強い音楽はどうなったと思う?誰もそれを聞くだけの時間がないのさ。

100年前には大衆音楽というのはラジオやインターネットで広まるものではなくて、譜面という形と生演奏によって広まりました。今ではとても受動的に音楽を聞いていますが、あなたが先ほど言ったことよりも多くの理由があるのでは。

作曲家とその作品の使われ方には常に葛藤があったんだ。ベートーベンの真実を言おう。彼だって生計を立てなくちゃならなかった。彼は生涯を通じて貧乏で病弱だった。そんな彼が収入を得ていたのは出版からだったのさ。彼の著作を印刷して、他国の出版社へ大量に売っていた。

彼の出版社は彼に言い続けていたんだ、「もっとシンプルで富豪の奥方が客間で演奏できるような曲を書いてくれませんか?」これが彼に突きつけられていたプレッシャーだ。

まるでプロデューサーがこういうのと変わらないよ。「曲は3分20秒以内の長さじゃなきゃダメだ。ラジオでは3分30秒以上のインスト曲はかけないからな」これが80年代、90年代と私が言われ続けてきたことなんだ。このプレッシャーが分かるかい?

だから貧しいベートーベンは頭を掻きながら、なんとか生活費を稼ごうとするんだ。「わかった。シンプルなのがいいのだったら、シンプルな曲を書こう」ってね。でも彼は自分を抑え付けられないんだ。そしてつい、クレイジーな楽曲を書いてしまう、だってベートーベンなんだから。だから思うに、物事がどれだけ変わっても、結局人々は変化しないんだ。

素晴らしい意見です。すみません、随分と話が脱線してしまいました。

とんでもない。私は毎日2~3時間のインタビューをやったっていいんだ、それが毎回違う内容なら一層いいね。

ビンテージギターの収集はしていますか?(このサイトはビンテージ ギターのサイト)

私はいいコレクターじゃなくてね、感傷的なタイプのコレクターなんだ。

中古ギターには元のオーナーの魂というか、"mojo" があると思うんだ。非現実的だとは思うけど、私は神経質なプレイヤーだから、ついつい「よし、このギターは彼のものだったんだから、これにはきっと何か宿っている」と思ってしまうんだ。

69年のオリンピック・ホワイトのストラトを持っている。これぞヘンドリクスが注文したに違いないってものだろ?実際に私は何枚かのレコードでこれを使ってみたんだ。でも私の音はヘンドリクスみたいにはならない、クソ!(笑)どうやったら彼のようにあのギターを鳴らせることができるのか不思議だよ。60年代半ばのストラトはマジカルだからね、でも69年はどうだろう?

違いは何ですか?

専門家じゃないけど、素材によると思う。木材は何が手に入るか分からないから。初期のもののような中音域が出せなくて、ポリ・フィニッシュ加工を始めたことで、少しプラスティックな感じになって、音もそうなんだ。ネックの形状は全く私の好みじゃないね。61年から64年のモデルの方がずっと好きなんだ、あと50年代中から後期のも好きだ。これは私の手には合うってことだから。

PUは軽く、高音域向けに改良していた頃で、50年代のPUみたいにゴツくなかった。それでもヘンドリクスは美しい音楽を作ったんだよ。

ついこの間、スティーブ・ヴァイがヘンドリクスのネイキッド・ギター音源のリンクを送ってくれてね、それは初期3枚のアルバムのギターの生音なんだ。その素晴らしい音色にもう度肝を抜かれたよ。彼は何という、10億に1人の天才だったんだ、と。それと同時にいかに粗くて生々しかったかも。弦を引っ張る音や、フレットの雑音、それにあちこちで強すぎるディストーションを聞ける。

ギター音だけを抜き出した音源を聞いていると、ああ、そのPUは高過ぎるよ、フレットの修理したほうがいい、って指摘したくなるけれど、そうやって音楽は作るものじゃないだろう?ギターというのは単に道具であって、人間の精神こそが最終的に楽器を支配するものなんだ。

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ヘンドリクスの生ギター音源についての話は、サッチとヴァイ先生の日頃のメールのやりとりを垣間見た気分で、楽しい。

5月7~8日のタホ2公演限定で、Chickenfoot がライブを行いました。即日にライブ動画を探しまわりましたよ!メンバーが楽しそうにライブをやっている姿はいいですね~。特にこのバンドをやりたかったサッチは嬉しそう。やはりこのバンドはカッコイイ!!!新曲をライブ初披露した訳ですし、どうにか続けていってもらいたいです。