Stay Together

Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

The Aristocrats ライブ@ The Bottom Line 2016.09.07 豚と鶏も鳴く!小話付きインストライブ!

The Aristocrats が来日しました。昨年も来ていた彼らですが、今回はニューアルバム Tres Caballeros をひっさげ、博多、大阪、名古屋、東京のクラブツアー。昨年は素通りだった名古屋に来てくれたので行ってきました。

ライブ会場は自由席制でテーブル付きという、まるでブルーノートな気分。こんなにゆったり見れちゃってお得。インストバンドのライブなので淡々と進む演奏かと思いきや、こんなに面白いライブだとは。感激!今年のベストライブに入りそうな勢いです。

曲ごとにたっぷり話してくれるトークがとても面白かったので、記憶頼りにできるだけ文字起こししてみました。

=============================================================

定刻にステージに登場した3人、拍手の中、メンバー紹介の後、"Stupid 7" に続く曲紹介でガスリーがマイクを取りました。

「"Jack's Back" は想像上のキャラクター、泥棒のジャックについての曲で、僕は彼のサウンドトラックを書きたかった。ファーストアルバム収録の "Furtive Jack" の続編なんだよ」

実は彼らの曲、私は良く分からないなぁ(汗)と思っていたのですが、ガスリーの前置きを聞いて曲を聞くと、正にサントラのよう。誰にも知られないよう、街に戻ってきたジャックがそっと街中を偵察する姿、彼を追いかける怪しい人物の情景が頭に浮かんできて、音楽と完全に一致。あー、こういう楽しみ方ってあるんだなと新発見でした。

彼らの演奏は飛びぬけた演奏力を誇示するためというより、彼ら自身が面白いと思うものを音楽にして、茶目っ気とユーモアと音楽的面白さを追求している感じ。そして実は意外にロックしている。これは面白い!

次はブライアンがマイクを取りました。

「次の曲はこんな話なんだ。俺はナッシュビルからロサンゼルスへと長い道のりをトラックでドライブしてたんだ。その理由は離婚したからで、自分の持ち物を詰め込んで長距離の旅。疲れたのでテキサスのガソリンスタンドで休憩してコーヒーを飲もうとした。

それで車を降りて歩き出すと向こうから見知らぬ女性が凄い剣幕でやってきた。そしておかしなアクセントで怒鳴り始めた。"ちょっと、アンタどういうつもり?よくも私の車にぶつけたわね!" は?そんな身に覚えの無いこと言われてとんでもない、そんなことはしていないぞ。

次にまた見知らぬ女性が突進してきた。"待ちなさいよ!よくも私の姉の車にぶつけたわね!" それにも身に覚えがないと言って振り払って歩き出した。これはコーヒーを買ったら急いで車に飛び乗ってここから離れた方がいいな。

すると今度はまた見知らぬ女性がやってきた。"謝りなさいよ!よくも私の姉の車にぶつけたわね!" なんと三姉妹だったのさ。そこで身の潔白を証明するために、現場を見ていた人に聞いてみた。

あの、すみません、さっき駐車するときに、ここで見てましたよね。私は車をぶつけてなんていません、見ていましたよね?するとその男性は"いや、アンタがぶつけてたよ"と言うので、自分の車を見てみると少し傷がついていた。でもこれは今日ついた傷か?

すると最初の女性がやってきて"シラをきるつもりなら、さぁ、警察に行くわよ、それともお金払うの?" 警察はいい、お金で解決しよう。うーん、100ドルでどう?"200" 150でどう?"決まり"

それでATMでお金を下ろして、150ドル渡すと彼女の態度ががらりと変わって、ハグしてきた。"ありがとう、今日は最悪の日だったのよ"俺は冗談じゃないと彼女を振り払った。曲は "Texas Crazypants" 」

オチはどこかと固唾をのんでブライアンの小話を聞いてしまいました。(笑) 曲はそんなクレージーなお話にぴったりの展開。ブライアンの前に移動されていたタム1つをブライアンが叩き、マルコと掛け合いになるところは面白かったです。

彼らは曲紹介を作曲者がするんですね。全員が曲を書いているから。仲が良く、メンバーが平等で、楽しんでこのバンドをやっているのが分かってきました。ジョー・サトリアーニのバックで弾いてるのと違って、リラックスしてるわ。次はマルコがマイクを取ります。

「コンバンハ、ゲンキデスカ?次の曲は Tres Caballeros で僕が最初に書いた曲。長いツアーから戻って書いたんだ。僕らは3ピースのインストバンドだから、それで演奏できなくちゃいけない。でもこの曲にはメロディをキーボードで入れてしまったから、これを演奏するためには、A:別の楽器で演奏する B:他のデバイスの力を借りる しかない。それでテクノロジーの助けを借りてiPhone6Sにキーボードをプログラムしたよ。上手くいくかな? "Pressure Relief"」

ところが、機器の接続が上手くいかなかったのか、音が出ません。暫く調整に必死になるマルコ。それを待つ間、ガスリーとブライアンがちょっとしたデュオを聞かせてくれます。遂に音が出て演奏開始!

iPhone から音が出ると会場に拍手が!次はガスリー。

「次は1つ前のアルバムから。僕らはコーエン兄弟のある映画が好きなんだ。でも世界的に皆が好きって訳じゃないみたいだね。"シリアスマン"っていう2人の男が対立する映画さ。"Culture Clash" のこのポーズ(両手を拳骨にして合わせるポーズ)はバンドのジョークになってるのさ」

次はブライアン。

「次の曲はある漫画のことを書いたんだ。日本でこの漫画知ってる人はいないと思うけど。XXXXって言うんだけど、わぉ、1人だけ知ってる人がいるね。ある日、俺とマルコでジャムしている時に遊びでとても速いスウィングをしてたんだ。こんなバカげたもの!だけどこれで曲を作ってみよう!と作ったのが "Louisville Stomp"」

その通り、とても早いジャズ・スウィングのクレイジーな曲。それにしても演奏めちゃ上手いわ、彼ら!

ここで各メンバーに缶ビールが配られ、全員が一息。それぞれの手元にある豚とニワトリのゴムのおもちゃを紹介。どうやらこれには名前が付いている模様(笑)次はガスリー。

「これには面白い話はないんだ。僕らはツアーに出て疲れ果てることがあるだろ、そんな疲れたオフの日を書いた曲だ。"Pig's Day Off"」

マルコがカウントをブタ君にやらせたところに笑いました。あんた達、本当に面白いね!そして次はマルコ。

「僕はドイツで生まれ育って、ロスに移住したんだ。ある日、家でドラムを叩いてたらスマホが変な音を出すんだ。見ると"竜巻発生、シェルターへ急いで避難"と通知が来てた。何だこれ、と思ったけど無視してドラムに戻るとまた鳴ったんだ。

それで竜巻を確かめようと窓の外を見てみた。すると空の一部がヤバイことになってたんだ。これはマズイと思ったけど、木造の家には地下室のシェルターなんてない。どうしようかと考えて、空を見ると青い空が広がってる方もあるのに気付いた。そっちへ行けばいいんじゃないかと思って、車で向かうことにしたんだ。

急いで家を出て、ハイウェイを走ると、不思議なくらい車がいないのさ。とにかく走ってるとブライアンから電話があった。仕事の電話で"今ちょっといい?"って感じだったけど、いやー、今はちょっとって、必死で車で逃げたよ」

「竜巻が来て車で逃げる奴なんていないよな。"ツイスター"って映画見たことあるだろ?車で竜巻にのまれたらどうなるか分かるよね?(笑)」 とブライアン

「とにかく、そのことを曲にした。竜巻にドラムを叩かせたらどうなるかを考えたんだ」

と締めたマルコの激しいドラムで始まり、曲の途中からはドラムソロへ。パワーあり技術あり、延々と繰り出すプレイの数々に感嘆。そうだった、彼って予習もせずに Dream Theater のオーディションに行って最終選考まで残ってしまう人だった(笑)マルコの小話は今日一番笑えたかも。話す表情としぐさとか、落語に通じるものがあるよ。そして次はブライアン。

「"Breaking Bad" ってお気に入りのドラマがあるんだけど知ってる?そこからインスパイアされた曲なんだ。この曲を書いているときに、何故か頭の中にメロディが浮かんできて、俺たちはインストバンドだけど、歌を入れなくちゃと思ったんだ。

それでガスリーに歌ってくれるかって聞いてみると、ノー(ガスリーがギターで返事)だった。それでマルコに電話したら、イエスだった。だから俺たち2人で歌うよ。でも皆にもそこでは手伝って欲しい」

"Breaking Bad" は悪人が沢山出てくるかなり話題になったドラマ。"Smuggler's Corridor" は怪しげでラテンの香り漂う哀愁のメロディ。

一旦演奏を止めたブライアンがコーラス部を歌い始めます。歌詞のない短い発声フレーズ。「ラララーラー」そしてオーディエンスに繰り返し歌わせます。

「俺たちはインストバンドだから、必然的にオーディエンスは95%が汗臭い男どもだ。でもたまにボーイフレンドに連れてこられた女性がいることもある。さぁ、次は女性オンリーで歌うぞ!声が小さい!知ってるよ、日本女性はとってもシャイなんだろう?よし、助っ人を呼ぼう。彼女と練習してくれ」

女性のスタッフ/お友達?がステージに登場して再び練習。何度かやって、やっと全体で合唱して終わりました。インスト聞きに来て歌わされるとは思わなかった!さて、次はガスリー

「史実に基づいた出来事から書いた曲だ。ケンタッキーで1876年に起きた話。空からあまりにも意外なものが降ってきた、それは肉なんだよ。死んだ馬の肉を食べたハゲタカが集団で空を飛んでいたとき、一羽が具合が悪くなって食べた肉を吐き出した。他のハゲタカも同じように一斉に肉を吐き出した。それでケンタッキーの町に肉の雨が降ったんだ。"The Kentucky Meat Shower"」

カントリー風のイントロが始まると、もうドラマを見ているように馬の死体に群がるハゲタカや肉の雨が降ってくるシーン、驚く町の人々まで想像ができちゃう。彼らの音楽って実はとてもシネマティックだったのね~。

アンコールは1曲で "Get It Like That" これで最後とばかりにブタとニワトリのおもちゃが乱れ飛び、ブタが鳴く(笑)

素晴らしいテクニックに感嘆しつつ、小話を聞きながら表情豊かなサントラ曲を楽しむライブでした。彼らのライブはこれまでに体験したことのない趣向を凝らしたシロモノ、ああ楽しかった!

本日のセットリスト

01. Stupid 7
02. Jack's Back
03. Texas Crazypants
04. Pressure Relief
05. Culture Clash
06. Louisville Stomp
07. Pig's Day Off
08. Desert Tornado (with drum solo)
09. Smuggler's Corridor
10. The Kentucky Meat Shower
encore
11. Get It Like That