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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ロン・"バンブルフット"・サール 「去年が僕の最後のツアーになるところだった」

Sons of Apollo での欧州ツアー直前に、ロン・"バンブルフット"・サールが、メディアのインタビューに応えました。

ロンさんの発言からは人格者な人柄が伺えますし、自身の健康問題についてもオープンに話しています。私は読みながら泣いてしまいました。長いインタビューから一部を編集し、和訳してまとめました。

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Rbt_tokyo_2ミュージシャンにとっての“成功”をどう定義しますか?

そうだな、成功を定義するには多くの方法があると思う。きっと始めの頃にはビッグなアリーナでプレイして大金を儲けることだと思うだろうね。でも全てを成し遂げたり、ゼロから全ての過程のどこか全てにおいて、成功とは満足感のことであり、得る物が全てではないのだと理解するんだ。実は自分が与える物こそが満足感になるのさ。

ミュージシャンには2種類あるんだ。何を得られるかを尋ねる者と何を与えられるのかを尋ねる者。「与える」精神を持つ者は何らかの形で成功を得られる人物だ。成功とは何百万枚ものアルバムが売れることや、毎晩プレイする会場に何万人もの人がいることかも知れない。それが通常は我々が成功と呼ぶものだ。

けれど、今際の際にはそこからは何も得られないのさ。人々に与えることで得られる満足感の方がずっと大切だと思うんだ。幸福になることさ。幸せが一番大切なことだろう。満足感や幸福感なしには、他のことなんて何の意味もない。もしそうでなければ、なぜ多くの“成功した”ミュージシャンが自殺したんだい?大切なのはコントロールすることさ。自分で選択できる状況まで創り上げ、自分がやりたいこと、それをいつやるか、について自分でコントロールすること。

僕が一番幸せなときがいつかわかるかい?50人を相手にギタークリニックをやるとき、この時が一番幸せさ。僕にとってはそれが成功なんだよ。僕が孤児院で10人の小さな子供たちにプレイして、子供たちが笑って笑顔をみせて楽しんでいるとき、それこそが僕の成功だ。

別のことも随分とやった。10万人の人の前でプレイするのはクールだったけれど、それで幸せになるのではない。自分が生きている理由を自分に問いかけなくてはいけない。この世に生きる短い間に、世界に何か影響をもたらせるのか、貢献をしたのか?エンターテイメントはいいことだけど、僕は教育の方が重要だと思う。何かの方法で、人々が耳を貸してくれるときに、より良い人生、インスピレーションを与えたり、ポジティブになるよう意欲をかきたてたり、より健全な方向へ導く助けをしたり、こういうことを僕は“成功”と考えるんだ。

その例に、昨日もらったメールがあるんだ。「あなたは覚えていないかも知れませんが、あなたは子供の頃の私のギター教師でした。私は20年教師をしています。あなたが教えてくれたことは私にとってとても重要で、私が本当に必要としていたときに、私を助けてくれました。ありがとう」僕にとっては、これが“成功”だよ。これこそが僕のしていることを続けようと動機付けしてくれるものだ。ライブをやることがそう思わせるのではない。こういうメールが僕にミュージシャンになった理由を思い出させてくれて、それが重要だと思わせてくれるんだ。

「僕は無駄に人生を過ごしたのか?何か意味のあることができたのか?」と自分に問いかけるとき、自分の存在や運命なんかを考え、それをやっている理由やその価値があるのかを疑問に思うとき、思いがけず、ああいうメールが届いて、「イエス」と言えるんだ。そう言えたのなら、誰かが辛いときに手助けができたということで、それを多くの人にできたのなら、それこそが本当の“成功”だ。

昔からあなたのチャリティ活動やクリニック活動には感心し、敬意をもってきました。あなた自身も困難がありましたよね。少し前には腫瘍が見つかったのでしたね。その経験はあなたの音楽に何をもたらしましたか?

2014年以来腫瘍を5つ切除している。

最後の腫瘍には Gladys と名付けましたね。

そうだ、Gladys は2014年のだ。Ester と Ethyl はその次ので2016年だった。緊急手術をしなくちゃいけなかったんだ。それから、去年の始めに、更に2つできて。それで今ではこの厳格な主義を始めたんだ、タバコの煙には決して近付かないって。主治医によると、タバコの煙が原因だそうだ。僕の身体から切除する箇所が無くなってしまうよ。本当のところ、音楽にはとても腹を立てているんだ。ツアーしてずっとタバコの煙を浴びること、そのせいで腫瘍ができた。もうツアーするのを諦めようと思ったところだったんだ。去年が僕の最後のツアーになるところだったけど、今は Sons of Apollo で忙しいよ。

あなたにとってツアーが危険だと聞いた後なので、今のツアーを楽しんでいるのは喜ばしいです。

自分にできることをするだけさ、体に良いものを食べて運動をする。主治医が言ったのだけど、悪いことが起こるのは避けられないんだ、その通りだよ。病気にはなる。そういうことは起こるけれど、上手く対処できるかは、自分の身体をいかに上手く大事にできるかによるのさ。運動をして、良いものを食べ、癌の予防をすること。そうすれば癌に勝てる可能性も大きくなるんだ。

キャリアにおいて、作曲のスランプに陥ったことは?どう対処しましたか?

僕の人生はずっと作曲スランプで時々そこから抜け出してアルバムを創っているのさ。ツアーではたいてい音楽漬けになってクリエイティブになれないんだ。それを回避するよう努力しなくちゃならない。ただ書かなくちゃいけないのさ。

世界の優れたコメディアンでも作家でもどうやったのかと聞けば、皆が同じことを言うよ。毎日毎日書くのさ、出来が良くても悪くてもね。クリエイティブでいるための練習なんだ。最善の方法は毎日書くことだよ。僕がやっているかと言えば、やっていない。やらなくちゃいけないか?そうだ。スランプになりたくなかったら、何かを毎日書くよう、自分を強制しなくちゃいけない。

若いバンドへのアドバイスはありますか?

僕が子供の頃に学んだのは「出来ない」という言葉を使わないことだ。自分の身の回りにあるものを上手く使うんだよ。そういう意識を持たなくてはいけない。全てのことが整うのを待つんじゃない、身の回りに十分にあるんだ、自由に使えるものが沢山ある。「ブッキング・エージェントがないから出来ない。レコード契約がないから出来ない。スタジオがないから出来ない」などと言ってはいけない創造力は通貨になるんだ、創造力には限界がない。バンドが前進していくのに必要なのはそれだけだ。

音楽を自主制作する人、エンジニアやプロデューサーへのアドバイスはありますか?

自主制作では沢山の試行錯誤が付き物だし、レコーディングする度に何か新たなことを学ぶと思う。経験が全てだから、数多くのレコーディングをするべきだ。そして、耳が最大の機材なのを忘れてはいけない。世間には大量の機材やソフトウェアがあるけれど、そうじゃないんだ。大切なのは耳なんだよ。どんなものでもいい音にできるんだ、ただしっかりと聴いて自分の耳を信じるんだ。漠然としているかも知れないけど、それが真実だ。

2人が同じソフトウェアを使うとしよう、1人はパラメーターを凝視してこれはこうしなければと考えている。彼らは本当のところは聴いていないんだ、誤った方向に向かっている。もう1人はただ聴いてこう言う。「これは凄くいいのだけど、これがちょっと必要だ」

あまり深く掘り下げない方が良いときもあるんだ。機材が多すぎると、全部使わなくてはと思うかも知れない。だから、最高のアドバイスはシンプルにしていい音にしようということさ。それができれば、細部の装飾に集中できる。

いい音、自然な音にするんだ。サンプルやドラムトリガーに頼る人が多過ぎる。ドラムは生きた本物の楽器であって、人間の叩き方、チューニングのされ方に反応するんだ。それを失ってはいけない。ドラマーはドラムマシンじゃないんだよ。そのプレイには個性や人格があるんだ。それを量子化して捨て去りたくはないだろう。そんなことがされていたら、ジョン・ボーナムはいなかっただろう。グルーヴやポケットやラグも個性もないプレイになっていた。ドラムサウンドに個性を持たせることを恐れてはいけない、本物にするんだ。

今、あなたがギターテクニックの面で取り組んでいることはありますか?

最近、5音か7音の連符で変わった方向のエコノミー・ピッキングのパターンをしているのに気付いたのさ。Sons of Apollo のクレイジーな曲で自分がどう弾いたのかを覚え直した以外にはこれといってテクニカルなことはしてないなぁ。

僕にとって最近一番のエクササイズは無意識にやったことを覚えたことかな。ギターソロをレコーディングするとき、最大の問題は採譜せずに、弾くがままに創ってしまうことだ。いいかげん学ばなくてはいけないのだけど。結局、いつかそれをライブでプレイしなくちゃならないのに、自分が何をやったのか分からないのだから。

録音をゆっくりと再生して、どの音をどの弦で弾いたか、特定のコードや一連のフィンガリングを思い出すんだ。少しずつ思い出したら、全部を紙に採譜してというのを繰り返す。こういう無意識のソロを再現しようとするのは大変な練習になるよ。