Stay Together

Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

アンディ・ティモンズ 「自分の持つ才能が何であれ、それを育てていくことさ」

今年のアジア・クリニックツアー中にアンディ・ティモンズがタイの音楽メディアのインタビューに応えました。動画は Part1&2 あり、時にギターを弾きながら数々の質問に答えています。

その中から、興味深かった内容を一部取り出して、和訳してみました。

==========================================

ロック・ギタリストにとって最も難しい課題というのは何でしょうか?

それはプロとして?それとも技術的にということ?

両方です。

うーん、難しい質問だな。そうだな、チューニングを保つことかな。これはとても難しいことで、以前の僕はなかなかできなかったんだ。トミー・エマニュエルに言われたのだけど、「いいか、それが大人の男と子供の違いなんだぞ」ってね。性差別ってことじゃなくて、男は声変わりするだろう、それをチューニングに捉えたことなんだ。きっちりチューニングを保ってプレイすることをね。

ロック界で言えば、いつも完璧なチューニングでプレイをすると言って僕が思い浮かべるのはエリック・ジョンソンジョー・サトリアーニの2人だけだ。彼らは本当に完璧なんだよ。僕は以前よりもチューニングに関しては上手くなったけれど、とても時間がかかった。ギターは完全な楽器ではないことを理解し、そういう不具合が起こることにうまく付き合わなくてはいけない。

チューニングを保つためのハード面でのギアはあるし、いくつか試してみたこともあるけれど、それは完全な解決にはならないんだ。ギターと長い時間向き合って、そのズレに対して異なるキーで少しチューニングを変えたりといったことを学ばなくてはいけない。ロックではチューニングを保つことは難しいよ、なぜならディストーションがアンプで増幅されてズレが強調されてしまうからね。どのジャンルのギタープレイヤーにとってもチューニングは難しい問題だけれど、特にロックでは難しいね。

その質問のプロとして、ということについては、特に今はプロミュージシャンとして生計を立てることは昔以上に難しくなっていると思う。僕にとっての鍵は多様性ということさ。僕はロック・ギタープレイヤーだけれど、ブルースもジャズも弾く。色々な種類の音楽が好きなんだ。そのことが僕にとって助けになっているね。

もちろん僕の情熱はインストゥルメンタルのギタープレイにある。そして様々な音楽が好きだ。何かが本当に好きならやり続けなくちゃね。生活に音楽があるというのは大切なことだよ。

興味深い話があるんだ。ビジネスで成功している友人でギタープレイが大好きな奴がいて、僕とギアのことやプレイ、音楽などの話で盛り上がっていたんだ。その場にいた彼の同僚がそれを見ていて、こう言ったんだ。「ああ、僕にも君らが音楽好きなのと同じくらい好きなものがあったら良かったのにな」って。

はっとした瞬間だったよ。僕らがプレイヤーとして持っている情熱というのは全ての人が人生に持っている訳ではないんだ。僕には音楽やギターのない人生なんて想像できない。僕の人生の中心にはギターがあった。それなしの人生なんて考えられないよ。

もし人生で情熱を傾けられる何かを見つけたら、それで生活ができるかどうかではなく、やるべきさ。だって僕らはどちらにしろ生活費を払っていく方法を見つけなくちゃならないんだからね。

誰かがため息をついてこういう、「ああ、俺はジョー・サトリアーニにはなれなかった」って。そんな必要はないんだよ。自分は自分でいいんだ。ただプロセスを楽しめばいいんだ。ギターとの人生の道のりを楽しめばいいんだよ。僕にはそう思えるまでに何年もかかった。僕は僕自身でいいんだ。

イングヴェイやショーン・レーンみたいに速弾きできなくていいんだ。彼らは彼らのやっていることに長けてユニークで素晴らしいんだから。僕は僕自身のプレイができて満足だし、それを気に入ってくれるオーディエンスが居ることをとても光栄に思うよ。とても幸せだ、そして僕は自分のプレイを上達させていく。

これは誰にも言えることだ。自分を誰かと比べる必要はない。自分の持つ才能が何であれ、それを育てていくことさ。

テクニックについてはどう思いますか?

幅広い音楽表現を創る助けになるものだ。でも僕にとっては音楽が最も重要だ。ギタープレイヤーはテクニックに熱中してしまうけれど、もちろんある程度はそれでいいんだ。でもテクニックに熱中しすぎて音楽そのものを忘れてしまいがちだ。バランスが大切なんだと思う。僕の大好きなギタリストたちは凄いテクニックを持っているけれど、決してそれを使い過ぎない。テクニックというのは速弾きをするようなことだけでなく、とてもシンプルなフレーズを美しく表現することでもある。

ほら、たったこれだけのシンプルなフレーズだけど、簡単なことではないよ。僕はこのタッチを身に付けるのに生涯かかっているし、弦それぞれのサウンドの強弱もある。これらは全て異なるテクニックなんだ。だから、テクニックを学ぶことは良いことさ、でもバランスが大事だよ、全ては音楽を演奏するためなんだから。テクニックは道具なんだ。

Atasia


ギターは何本持っていますか?

うーん、わからないな…多分100本くらい。クレイジーだと思うよね。これには事情があるんだ。僕はヴィンテージの Ibanez ギターを収集していたんだ。90年代には質屋でとても安く買うことができた。沢山のプロトタイプが様々なギターで作られていたんだ。

良く使うギターは10~15本位で、ヴィンテージの Fender や Les Paul 、12弦の RickenbackerGretsch を何本かと Epiphone 。お気に入りのアコースティックでは、63年製の Epiphone Texan で、これはポール・マッカートニーが "Yesterday" を弾いたのと同じギターなんだ。Beatles が関係するものだと手が出ちゃうんだよ。ジョン・レノンGibson J-160E とかも。そういうのが僕のレコーディング・スタジオで使うギターだ。その他にも感傷的な理由で持っているのが Danger Danger 時代に使った KRAMER の何本か、プロトタイプだよ。   

ピックは何を使っています?

ピックは僕のトーンの重要な一貫した要素さ。僕は1984年からこれを使っている。Tortex Dunlop の1.14mmだ。好きなサウンドのピックという訳ではないのだけど、この形状を基に僕のサウンドを創り上げたんだ。他のピックも好きなんだけれど、これでないと僕のグルーヴを創り出せない。Fender も使ってみたけど、これでないと音のメリハリを出せないんだ。ほら見て、僕のピックを持った指の爪はいつもこうしてすり減ってしまうんだ。僕が爪と指の肉を使っているからだよ。うん、ピックと指で弦に触れているんだ。これがとても重要で僕のサウンドの細部やハーモニーの要素を創っているのさ。

あなたのモットーや哲学を教えてください。

そうだね、歳をとって強く思うようになったのだけれど、人生でしているのと同様に音楽でも振舞うようになったね。僕は自分のことだけでなく、人のことにもとても注意を払う。人ごみの中を歩くときでも他の人への礼儀をもって歩くようにしている。それは音楽でも重要なことで、自分の周りを気遣い、その状況に適応するということさ。君に聞かれて初めてこれを言葉で説明したけれど、外の世界でも音楽の世界でもそういう繊細さを持つということ。僕は皆に良い人間でありたいし、自分の周りのこと全てに対して敬意を持って接したい。

音楽でもそうしたい。例えばとても自分勝手な人がいたとしたら、きっとその通りの演奏をするだろう。それはそれが適切な状況ならいいだろう、けれど僕は自分のプレイをしながら、周りに目を配りその状況に溶け込もうとする。誰かの邪魔をするのではなくて、誰かとダンスしてその状況をより良いものにしたい。そういうことかな、僕の人生哲学というのは。

世界は以前よりも分断されてしまったと思う。政治的な状況、そして社会的に起こっていることなどを見るとね。でも僕は自分と出会った人には誰でも敬意を持って接するべきだと思うんだよ。誰だって尊重されるべきだし、誰だって愛されたいんだ。ポジティブになることはとても簡単なんだから、ネガティブになるよりも、誰かの人生に良い影響を与えたい。

僕たちが皆、そういう態度で互いに接することができたら、ずっと良くなるよ。これは僕がアメリカ人の視点で言っていることで、僕の国では多くの分断が生まれてしまった。皆が互いを尊重できれば…ここではそういう姿を沢山見たよ。東南アジアをツアーしたけれど、皆とても礼儀正しくて思いやりがある。

=======================================

終盤のトピックでは珍しくアンディが政治や社会について語りました。最近はテイラー・スウィフトの発言が注目を集めましたが、現状を憂うアーティストは多いのでしょうね。