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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ロン・"バンブルフット"・サール ライブ@ Musicland Key 心斎橋 2019.03.23 臭いジャケット物語

Img_2289_1 昨年は Sons Of Apollo で来日してくれたロンさんが早々とソロで再来日してくれました。前回のソロ来日もとても楽しかったので、(前回のレポートはこちら)もちろんロンさんに会いに行かなくては!ロンさんのソロショウには少し早めに行くことがポイント。今回も開場時間少し前に行くと、開場時刻前には入場が始まりました。(やっぱり)ファンの為に演奏をしに来たのだから、開演まで待たせることはないよ、というロンさん哲学には本当に頭が下がります。

大阪は楽器店のイベントスペースのこじんまりとした会場でした。アコースティック・ギターは前回と同じく Cort で、Line6 Helix LT に接続し、そのままPAアウトしていたそう。足元には Morley のスティーブ・ヴァイシグネチャー・ワウペダルがありました。ワウも多用していて、アコギの音じゃないみたい。さらにルーパーを多用しての楽しい演奏。アコギにワウを使うって珍しいよね。私の好みを言えば、アコースティックには独自の温かいサウンドがあって、それを聴くのも良かった。特にあの小さな会場なら生音でも全員が聴けると思う。

日本に着いてから時差ボケが治らないそうで、ロンさんは前夜は一睡もできなかったのだとか。確かに顔色が少し悪いなぁ。開場から口数の多かったロンさん、今日はおしゃべりモード全開の様子。午後7時の開演まではまだ随分と時間があるというので、面白いツアー話をリクエストしてみた。

「よし、じゃあ、Sons Of Apollo ツアーでの、僕の臭いジャケットの話をしよう。今着ているこのJKは大変なトラブルを招いたんだ」

【ロン・サールの臭いジャケット物語:Sons Of Apollo ツアー編 】

Sons Of Apollo は去年ワールド・ツアーをやったけど、長くツアーに出ていると、僕らは少しずつ(人間から)猿人になってしまうのさ。これは誰だってそうだよ、少数の人間が狭い空間でずっと一緒に過ごすと、とてもゆっくりだけど、やがて原始人に退化してしまうのさ。

それで、去年の日本から始まって欧州や中東を周った7週間ほどのツアーでは、終盤に近付く頃には僕らは少々壊れていたんだ。マイクはイタリアで窓を割ったし、デレクは「俺はマエストロだ!もっとスポットライトとスモークを!」がもっと激しくなった。ジェフは違う方向に行ったな。「ツアー予算をこうしたらどうだろう?」「こういう出費をまとめてこうしたらどう?」とか彼は賢くなったんだ。ビリーは僕たち全員を殺してしまいそうだったよ。僕はずっと(ツアーバスの)寝台ですごすようになった。睡眠不足が続いておかしくなっていた。

ツアーに出ると、ショウの後に汗だくの洗濯物ができるだろう?でもそれはショウの後ですぐ洗濯する訳ではないんだ。臭い衣類はバッグに詰め込んで、ただツアーバスに乗るんだよ。そして次の会場に行って、そこやホテルにランドリー設備がないか探す。僕はクルーたちに洗濯の順番を譲るんだ。だって彼らは朝から夜まで懸命に働いているんだからね。それから洗濯したいバンド仲間に順番を譲っていると、時間がなくなってしまい、「まぁ、明日やろう」となるのさ。

そうしているうちに、洗濯をしなくなってしまって、「うわ、このジャケット、臭うな」となってしまった。「まぁいいさ、だってこれは(ショウの間の)2時間だけ着ればいいんだから」と思っていた。僕だって洗濯はするんだよ。でもあまり優先事項にしなかったのはマズかったのかも。

それに自分が臭いときって、自分では気にならないものなんだ。僕なんてときには「いい匂いじゃん」って思えてしまった。自分にとっては「興味深い」匂いでも、他の人にとってはそれはもう気分の悪くなるような臭いなんだ。それで、楽屋のカウチに座ったときに、ジャケットを丸めてカウチの裏に置いていたら、ビリーは別の部屋に行って何時間も戻らないんだ。後で知ったけど、彼の鼻はとても繊細みたいなんだ。デレクは鼻をクンクンして訝しんでいたよ。どうやら皆はジャケットの臭いが不快だったんだ。それなのに誰も教えてくれなかった。

どうやら僕が「クソ最低な生ごみの臭いがする」ってことは皆の共通認識でバンドの中での大問題で、僕には秘密だったようだ。ツアーが終わってから、バンドの電話会議をしたら、ビジネスの話の後で僕のジャケットの話題になった。僕はそんなに臭い大問題だとは夢にも思わなかったから、大変なショックだったよ。ビリーには「90%のバンドの問題はあのジャケットだ。あれは臭い!」って言われた。僕は「どうして教えてくれなかったんだよ!」って。「何で教えなくちゃいけないんだ?」「だって、僕は臭いなんて思わなかったよ、興味深い臭いだと思ってた」「あれは生ゴミの山の最悪な匂いだ!ツアーでは誰か臭い奴がいることもあるからな」って具合だった。僕は臭い人間じゃないんだ!そんなことこれまでに1度もない!「いい匂いがするね」って言われたことだってあるんだ!

余りにショックだったから、僕は知っている人全員にメールを送ったんだ。「僕が臭かったことある?」って。「そんなことないよ。むしろいい匂いだった」って返事が来たんだ。それでむしろ混乱してしまった。自分でももう分からない。それで今度はSOAのツアークルーたちにメールしたんだ。「ツアーで僕は臭かった?」って。そうしたら誰も返事をくれなかった。後日、その1人に会ったときにもう一度訊いてみたら、「いや。あれはジョークだと思っていたよ」と言われた。それ以来僕にとって匂いは個人的な大問題として残った。

それで店に行ってフレグランスのコーナーで1時間くらいずっと試していたら、(名前がいいから)AXE の Apollo っていうボディスプレーを見つけたんだ。これで毎日スプレーするようになった。もう僕は臭わないぞ!

それで、今年3月4日から6日まで、ビリーの昔のバンド Talas がNYの著名なジャズクラブ Iridium でプレイすることになって、彼が電話をくれたんだ。「ライブに来て何曲かプレイしないかい?」って。「もちろん、3日とも行くよ!」って答えた。これは僕がビリーに「臭わない男」だって証明するチャンスだ。でも3月2日と3日は僕自身のソロの仕事が入っていた。3日のショウの後、5時間ドライブすれば家に帰れるからしっかりシャワーしてたっぷりスプレーしてビリーに会いに行くつもりだった。

ところが、3日は大きな雪嵐に見舞われて、大雪になった。「こんな天候で車の運転をしちゃいけない、危険過ぎる」って言われたけれど、僕はシャワーを浴びようと家に向かって車を走らせたんだ。だって「ビリーの匂いテスト」に合格しなくちゃならない!ハイウェイは大雪で、他の車は走っていなかった。吹雪で数メートルも視界がない状態で、除雪作業の車もまだ出ていなかった。僕の時速は30kmくらい。ここで道から外れたらもう誰にも見つけてもらえないだろう。失敗したなと思ったよ。この調子では家に辿り着くには12時間かかるかも知れない。それで近くに住んでいる友人に電話して泊めてもらうことにした。

ようやく友人の家に着くと朝の5時だった。車を停めて大雪をかき分けて家に入って眠った。数時間後に友人から、「悪いけど、君の車を動かさないといけない」と言われて、雪の中、シャベルで雪をどけて車を動かせるように作業したんだ。寒かったのでこのジャケットの上にもう1枚着て1時間ほど必死で雪かきをしたら、もう2日シャワーを浴びていない上に大汗をかいてしまった。シャワーを浴びなくちゃと思っていたら、ビリーから連絡が入ったんだ。「やあ、午後2時に来れるかい?」うわ、5時って話だったのに!これじゃシャワーを浴びられない!

これはもう僕の宿命なんだよ。この臭いジャケットを着てビリーに会わなくちゃならないんだ!(泣)それで会場でビリーと再会して挨拶して握手したりハグするのも短くして、なるべくビリーに近づかないようにした。楽屋の食事では玉ネギがあったらそれを出して玉ネギの匂いが広がるようにしたり。とにかく、ギグはやり終えたし、ビリーの様子だと問題なかったようだ。なんとか「ビリーの匂いテスト」に合格したんだと思う。家に帰ったら最初にジャケットを洗濯したよ。

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その後もロンさんは開演時間までしゃべり続け、「逮捕された話&逮捕されるに違いない番組を制作しようとした話」、「ウリ・ジョン・ロートとのツアー、そこで再会した女性」、「チキン・レズビアン・オニオン!の言葉遊び」等でオーディエンスをゲラゲラ笑わせてくれました。

その言葉遊びを Sons Of Apollo が活動する来年続けちゃおうかな、でもそうしたら彼らに解雇されるかな?でもトニー・マカパインは歌える?なんてブツブツ言ってるロンさん、トニーのことは頭にあるのかしら?(笑)

開演時間を過ぎてやっとプレイを始めたロンさんですが、この日は言葉遊びが止められないようで、シリアスなアコースティック・ライブとはなりません。(笑)いつになったら真面目に歌ってくれるのかな?そうこうしていると、Police のカバーが始まりました。ルーパーを使って、ソロではワウも多用しての「それアコギですか?」な演奏と見事なボーカル。真面目にやってくれたら素晴らしいのよ。(笑)

"Somebody To Love" でのオーディエンス合唱、"Oh, Darling" でのブルージーなソロも良かったけれど、"One More Try" が始まったのには驚きました。これまでに数回ロンさんのソロライブを観てきて、だいたいの持ちネタは聴いてきたかなと思っていたので、この曲を聴かせてもらえるとは予想していませんでした。この切なく悲しい曲、ジョージ・マイケルの歌は素晴らしかったけど、ロンさんの歌はまた格別の味わい!鳥肌くる!さっきまで「チキン・レズビアン・オニオン!」とかやってた人とは思えません!プラグを全て外してから、最後にもう1曲とプロモーターさんに促されて、アコギ生音でプレイしてくれた "Don't Know Who To Pray To Anymore" はぐっとくる音色でした。 

楽しい時間をありがとう、また来てね!

本日のセットリスト(ほぼフルコーラスを演奏したものだけ)

01. Every Little Thing She Does Is Magic (The Police cover)
02. Dazed and Confused (Led Zeppelin cover)
03. Somebody To Love (Queen cover)
04. Oh, Darling (The Beatles cover)
05. One More Try (George Michael cover)
06. Used To Love Her (Guns N' Roses cover)
07. Wasted Years (Iron Maiden cover)
08. Sweet Child O' Mine (Guns N' Roses cover)
09. Don't Know Who To Pray To Anymore

【News! ロンさんが Asia のリードギター/リードボーカルに!】

4月3日に発表されたニュースには驚かされましたね!今年の6月からの7週間ほどの Yes と Asia の北米ツアーで、ロンさんが Asia のリードギター/リードボーカルを務めると発表されました!今後さらにツアー日程が追加されるようなので、来日があると嬉しい。

実は3月24日の名古屋ギタークリニック/コンサートの開演待ち時間中にロンさんはこの大ニュースを口止めしつつ、皆に話していました。(笑)

・このバンドのボーカルを務めるにあたり、発声方法、歌い方をまるきり変えなくてはならない。別のキャラクターになって演じるように歌う。
・ギターパートとボーカルラインが全く違うので、弾きながら歌うのはとても難しい。

とのことでしたが、自分はチャレンジすることが好きだから楽しみだとのこと。ロンさんのパフォーマンスが今から楽しみです。

Asia201906