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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ Part 2 「トーンの質はプレイヤーの頭の中で聴こえている音で決まる」

先週に続きスティーブ・ヴァイライブチャットの要約です。ギア関連トークたっぷりで、細かいことまで覚えていないヴァイ先生はメーカー名を訊いたりするため、何度かギターテクのトーマスに電話していました。ギターファンにはかなり興味深い話が聞けます。

終盤にはギタープレイヤーの為にヴァイ先生が深いお話をしてくれています。

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JEMにしてあるちょっとした工夫

  • これはトーマスのスペシャルなんだ。ヘッド裏に磁石を貼って、レンチを付けてある。トーマスはこういうちょっとした工夫を思い付く天才なんだよ。私はいろいろと調整をするので、すぐにレンチが取り出せないといけないんだ。これを見ているギター職人がいたら、どうかアーム付きのギターで調整にこういう道具が要らないものを作ってくれ。レンチとかこういう道具が必要だなんて時代遅れだよ。君らならできる!
  • そうそう、もうじき Ibanez から素敵なサプライズがあるんだよ。楽しみにしてくれ。
  • ヘッド下のマジックテープで付けるピック入れとマジックテープ開閉式バックパネルもトーマスのスペシャルだ。バックパネルをいちいちネジで開閉するだなんて理解できない。簡単に開閉できるべきだ。
  • Graph Tech の Ratio チューナー (ペグを巻く感覚とピッチの感覚が対応するチューナー、先生が見せたのはピン止めタイプか?)が白JEMに搭載してある。普通はペグを巻いてもチューニングが動かない"遊び"の部分があるだろう、これにはそれがない。動かせばその分チューニングできるんだ。実に素晴らしいよ。
  • 完璧なロックング・トレモロはまだ発明されていない。フローティング・トレモロのチューニングは難しいが、トレモロセッターがそれを8割軽減してくれる。(バックパネルを開いて指し示して)ここのトレモロブロックがこのストッパーに接しているのをショウの前には確認する。このブロックの改良版が創られているんだよね?私はまだ試したことはないのだが。(サステインの向上、トーンを厚くするために素材を変えた新製品が出ているとデイヴ氏が補足)
  • 実はこれが役に立つんだ。(バックパネルを開けてティッシュをとりだす)スプリングの上にティッシュを置くのさ。これは保証しよう、こうしてティッシュをスプリングの上に置くことで、ブリッジ自体の材質が何かということよりもずっと確実にサウンドに対する効果があるんだ。なぜなら、このスプリングが動くとき、PUはその音も拾ってしまうんだ。それはコードを弾くときにも単音を弾くときにも起こる。こうしてティッシュを載せてバックパネルを閉じておけば、驚くほどにサウンドが締まるんだよ。

トーンに大きく影響するもの

トーンを形作るのには多くの要素が関連している。この数十年でギターの部品は大きく進歩してきた。ナットは変わったし、フレットも、PU自体やマウントの仕方、ギター塗装のカラーまで。それにテイルピース・ブロックも。でも私に言わせればどれもサウンドへの影響はマイナーな変化だ。

最もサウンドを大きく変えるのは演奏する会場だ。ステージの床材が全てを変える。会場の壁の材質や仕上げがグロスなのかとか、客席が布製か、床はカーペットか木製か、そういったことがサウンドに大きな影響を与えるんだ。ツアー先ではこれらの可変要素でサウンドが違ってしまう。

会場によって変わってしまうんだから、私のアドバイスはこうだ。自分のサウンドが素晴らしいのだと信じること。そうすることで不安感が消えると、自分のサウンドが気に入るようになる。国が違えば電圧も違ってくる。しかし、私が Carvin アンプを好きな理由がここにあって、何故か彼らのアンプは常に一貫したパフォーマンスなんだ。そして私の EVO や FLO を手に取ればそのトーンは想像できる。他の可変要素は受け入れるんだ。そうでなければ自分の気分に影響してしまう。

DLRバンドのリユニオンについて

分からない。今の私は自分の直感に基づいて行動している。以前デイヴも含めて皆が集まった時には素晴らしい時をすごした。けれど今はタイミングを逃してしまったように感じる。もちろん先のことは分からないし、私たちは連絡もとっているけれど、今は皆が忙しい。私は(リユニオンよりも)自分の頭の中にある音楽をアウトプットすることに集中している。

次のVAIアカデミー

次回はエリック(ジョンソン)に登場してもらおうと真剣に考えている。彼は実に素晴らしいプレイヤーだし、人柄もいい。前回参加してもらったときも好評だった。誰か他に提案はあるかな?エリック・ゲイルか、彼は素晴らしいね。彼のビデオを最近観たよ。彼は(音楽との)一体感が凄いし、活力にあふれている。

ギタープレイヤーにトーンについての教え

究極のところ、トーンはプレイヤーの手に宿るものだ。そしてアンプから発する。トーンの質はプレイヤーの頭の中で聴こえている音で決まる。例えば、ここでギターを手に取って弾くとしよう。その音がどうかということは耳で聴いているのではなく実は頭の中の音を聴いているんだ。そういう場合には多くの知的なタイプのプレイを思い付く。

メロディの質と同様にトーンの質は頭の中で聴こえている音に基づくのだ。だから、トーンを改善したければ、頭の中でどんなトーンを欲しているのかを聴かなくてはならない。単にプラグインして弾いてこれはいいとか悪いと感じているよりも、自分が探しているトーンがわかっていれば、それに役立つ道具についても自然と視界に入るだろう。

しかし、本質的なトーンの質というのはアンプがクリーンかどうか、どんなPUを使うか、セットアップがどうかということよりも、頭の中で聴こえるトーンを得るよう弦を弾こうとすることにある。頭の中の音に繋がった感覚で弦を弾くということだ。

これには多くの可変要素がある:ピッキングの場所や角度や強さや押さえ方。しかし、これら全ての事はプレイヤーの心的状況を表しているのだよ。怖れや不安など自分自身の心の状態、その姿勢が音に現れるのだ。そこに立ち戻って改善するのだ。それが私に言えることだ。

現在の自分にはあと少し届かないことを達成できる自分を想像してみるのだ。そうすればやがて自然に君の手が必要な位置を探り出し、指が動きだすだろう、私もまだそうして努力しているところだ。自分でトーンの上達を願う限り、それは可能なのだよ。

過去の偉大なプレイヤーが歳をとり、魔法的な感覚を失ってトーンが悪くなることがある。私も自分自身で経験済みだ。トーンへの集中力が欠けること、いやそれよりも常に成長し続けようという熱意が欠けることが原因だ。それは起こりえる。考えるとワクワクするようなメロディやトーン、ギグなどのアイデアを頭の中で思い浮かべること。それを実験するのだ。どうやって実現するのかということは考えなくていい。ただそういうアイデア自分のゴールを思い浮かべるのだ。それを持ち続けること。それに必要な要素は実は常にあるのだ。でも前向きな気運を持っていなければそこにアクセスすることができない。

さて、私は機材について話すのは好きだが、オタクではないんだ。楽譜やオーケストレイションについては完全にオタクなんだけどね。アンプやプリアンプ等、物質的な機材についての研究というのはそれなりの意味があるし、ワクワクして面白い。しかし、想像力についてもっと焦点を当てるべきだ。

自分の目指すものを心に想い描くこと、それを達成したとしたらどんな感じなのか、それを想像するんだ。でもそれは幻想やエゴに基づいたアイデアであってはならない。これらはいとも簡単に真の創造的アイデアを装うことがある。それらは頭の中で違う音がするんだ。

「こうでなければならない」というように切迫感を持っている。「有名になるまで、成功するまで」満足しないといったことだ。それは考え方として真逆になってしまっている。自分の状況に満足していれば、周りの事全てを良いと感じるだろう。そういう時には、上達することが喜びになるんだ。

自分を刺激するアイデアを追求するという本能に従うことはエゴとは正反対のことだ。その状態であるとき、君の元へやってくるものを感謝の気持ちで迎えられるだろう。前向きで感謝の姿勢を持って創作活動ができるんだ。その時にこそ、最高のアイデアが生まれるんだ。私はそう信じているよ。