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スティーブ・ヴァイ 「音楽は音楽として聴こえなくてはならない、理論の音がしてはならないのだ」

ヴァイ先生が Jazz Guitar Today のインタビューに応えました。HM/HR系のメディアと違うため、普段よりも深い音楽談義が聞けました。インタビューは昨年の北米ツアー時(10/18のフロリダ、クリアウォーター)に撮影されたようです。

 

インタビューの一部を以下にまとめてみました。

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いつもゲストに訊いている質問があるんだ。夢のプロジェクトは何かと。でも君のオーケストラとの共演ビデオを見たけれど、正に夢を実現していたね。

ああ、その通りだ。世の人々と同様に私の人生には苦難もあったが、音楽ビジネスにおいてはそれがなかった。有難いことに、オーケストラとの共演の話は向こうからやってきた。

オーケストラとプレイするには幾つか心得ておくことがある。私の最初のプレイは思い描いたような幸福感には包まれなかったよ。でも回を重ねて適応したんだ。

譜面は全て君がオーケストラに書いたのかい?

ああ。私は人生を通して手書きで譜面を書いてきた。そして昔は書いた譜面を写譜人に渡してパート毎に複製してもらうんだ。それには大変な時間とコストがかかった。

(訳者注:"Music Copyist" 写譜人とは、作曲家が書いたスコアから、それぞれの楽器パートを書き起こす職人で、熟練した音楽家による作業の模様)

やがて80年代に入り、Finale という記譜ソフトウェアが登場し、私は直ぐに使ってみたよ。でも当時このソフトはユーザーの使い勝手を考慮していなくて、私には使いこなせなかった。でもとても強力な道具であることは間違いなかった。それで私は写譜人に渡した手書き譜面のチェックにそのソフトを使った。そうすれば音を聴いてチェックできるからね。

それから何度か、私は直接 Finale で作曲してみた。でもピーナツ・バターの上を走っているみたいでね、(笑)コツを掴むまでは。結局、嫌になると手書きで譜面を書いていたんだ、その方がロマンティックだしね。(笑)

でも写譜人に渡していると、パート毎にいくつもの間違いを見つけることになったし、オーケストラとのリハーサルを考えると時間の浪費だと思った。そして "Still Small Voice" という曲を書いたときに、自分は Finale 使いのエキスパートになると決心したんだ。

何事も決心すれば可能なんだよ。真剣に学んだし、多くの友人の助けを借りた。クイック・キー(ショートカット・キー)を学ぶことがカギなんだ。しばらくやっているとソフトの利点が見えてきた。何しろ作曲しながら、それを音で聴けるところがいい。それにあらゆることが簡単にできる。でも手書きの良さも別のところであるけどね。何事にしろ、自分が興味を持つことが大切だ。そうでなければ上手くいかない。

君の音楽はメロディがとても共感できる。メロディックで美しいんだ。その創造のプロセスはどうなっているのかい?

いくつかの方法がある。最高のメロディというのは自分自身の内面にある感情の中心に耳を傾けることで生まれる。スケールの中で上手くいく音を探すのではなく、メロディに耳を傾けるんだ。

音楽理論というのは土台としては役に立つ。しかし最も重要なのは自分が内面で聴いているものだ。メロディを書くのはそこが楽しい。オーケストラ用に書いているときは無限の楽しみだよ。

ソロを考えるときは、メロディのときに似ているがアプローチが違う。卓越したミュージシャンは皆がそうだと思うが、今に意識を集中し、内面の耳が(指板を動く)自分の指を読んでいるんだ。私は速弾きも好きで、あれはメロディというよりは、指の持つ記憶によるものだ。でも楽しい。けれど常に腑に落ちる帰結が必要だ。

私は常にメロディを聴いており、詩的な文章を頭の中で作り、それをギターでプレイする。これはとても役に立つ方法だ。

君はテクノロジーを演奏に取り入れ、エレクトリック・ギターでフィードバックを用いての演奏など様々なことをやっているね。

私のサウンドは比較的シンプルなロック・ギターで、ハイゲインとステレオ・ディレイを使う、レガート・タイプのプレイヤーだ。しかしエフェクトを使うことで、よりメロディックな表現が可能になる。つまり、テクノロジーによって創作できる。ブライアン・メイはメロディの上でディレイを使った、メロディ創りのマスターだよ。

今はアメリカで大規模なツアー中だね。

2024年の半ばまではツアーなんだ。今年(2022年)は欧州ツアーをやって、作曲したオーケストラ曲の録音もした。その後は南米で Rock In Rio に出た。そして北米で53回のショウをやっている。

2023年2月には南米とメキシコをツアー、終わったら直ぐに欧州と東欧ツアー、5月にはオーケストラとの共演、そのすぐ後から北米ツアー、夏にはできれば Generation Axe で欧州ツアー、その後はオーストラリア、アジア、インドネシア、アフリカ、インドに行って年末を迎える。

2024年2月にはどうやらG3ができそうだ。エリック・ジョンソンと初回のG3リユニオンさ。その後で何か起こりそうなんだが、これはまだ言えない。それで私の大規模な世界ツアーは終了だ。

あなたはレコード・レーベルを運営しているね。

ああ、もう何十年もやってきたが、今は休業中なんだ。音楽ビジネスが大きく変わり、とても厳しくなってきた。それで私は決断せねばならなかったんだよ。私の所有している作品カタログをオランダの Mascot Label に渡したんだ。通常業務や作品の配給をしてもらい、今後私の作品も彼らを通じて出す。『Inviolate』は(私のレーベルの)Favored Nations から Mascot Label を通じてリリースした。

プレイにおいてキーやスケールを考えることはあるのかい?

やっていることに拠るね。土台として役立つんだ。例えばAマイナーコードを聴いているとしよう、私にはそれがどこにあるのかわかる。それが変化したとき、耳を頼りに感覚を切り替える。1つのスケールやキー上でプレイしているとき、スケールを上下することもあるのだが、スケールというのは私にとってフレイバーなんだよ。スケールというのはそれぞれに個性があるんだ。

ニューアルバムに "Little Pretty" という曲があるのだが、大人のコードを使っている。その曲のソロでは反復するコードパターンを使いたいと思った。全てのコードチェンジが完全に異なり、直前とは全く異なるコードだ。ジャズのように早く変化していく。

そのコードをジャズ・ミュージシャンに渡してみたとしたら、普通に分析しても上手くいかないだろう。全てはハイブリッドの合成スケールなんだ。だからスケールを覚えてもコードが入って来て、スケール上で成り立つ音を条件反射でプレイするしかない。

私はそれを避けたかったので、 "Little Pretty" のソロはちょっとした作曲だ。そもそも私にはああいうコード上で即興のソロは弾けない。まあ、それを何人のギタリストができるのかは不明だけどね。(笑)だから私の書いたソロはメロディなんだ。そこでは理論やスケールが大きく役立っているが、究極のところ、その通りのサウンドにはならない。

音楽は音楽として聴こえなくてはならない、理論の音がしてはならないのだよ。理論やコンセプトに依って作曲するというのは、それらが役に立つ時期はあるだろう。それを学ぶことで、その要素は背景として役に立つ。しかし、最終的には自分自身を知らねばならない。音楽的な自分の空間を創らねばならないのだよ。フォーカスを変えるのだ。自分のしていることを理解しつつ、自分の空間を開き、聴いて反応するということ。

以前、エリック・ジョンソンに訊いたんだ、彼のライブでのソロがどれくらい事前に決めたプレイで即興はどれくらいかについて。彼はおよそ65%が前者だと言った。残り35%は意識が身体を離れているということだった。あなたの場合はどうかな?

私のソロショウについていえば、6割は決めたものを繰り返している。私のソロにはメロディが多く含まれているからね。そのメロディが曲でもある。そして3割程度は即興だろうね。

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24年半ばまでのツアー予定が判明しましたね。ビッグニュースとしては、初回G3のラインナップが復活すること。昨年のzoom同窓会でやろうという話が出ていましたが、皆が忙しいのにスケジュール合うのだろうかと期待薄に思っていましたが、実現するそうです。どこをツアーするかは言っていませんが、恐らく北米でしょうか。日本にも来て欲しいなぁ。

staytogether.hateblo.jp

それに、23年夏の欧州 Generation Axe ツアーが実現すれば、初の欧州進出になります。元々、パンデミック前にはGAでの欧州ツアーが計画されていたようですから、やっと実現ですね。その前に延び延びになっているGAライブアルバム2枚目を出して欲しい…