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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ロン・"バンブルフット"・サール Part 1 「メタル/ロック音楽というのは世界共通で、同じスピリット、同じ愛を持っている」

ロン・"バンブルフット"・サールが Everyone Loves Guitar のインタビューに応えました。2時間に及ぶスカイプ・チャットは様々な方面に話題が及び、なかなかに興味深く、ロンさんの人柄が感じられるものでした。

長いトークの中から一部概要を和訳してみました。

 

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君の多彩な経歴の中に「写真を教えた」とありますが、写真をかい?

ああ。Photoshop よりも前の時代のリアルな写真の時代にね。高校の写真クラスで教えていたよ。一眼レフカメラの扱い方とか。

驚いたな。インタビュー前のやりとりをしていて感銘を受けたのだけど、君のハードな勤労倫理というのはどこからきているの?

僕は幼い頃から変わっていて、楽器プレイをしながら、奥では百科事典を読んでいる子供だった。学ぶことが大好きだった。そして教えてくれた人へのお返しとしては学んだことを他の人へシェアすることだ。音楽でも知識でも、誰かから教わってそれが自分のDNAとなって成長でき、その知識をまた人に教えていけば大きな知の成長サイクルができる。

現実世界では人間を分断するものは沢山あるよね、レッテルを貼り区別する。でも音楽はそれを超越してしまうんだ。完璧な例がある。僕が以前バーレーンのバイカーフェスティバルに出たときだ。沢山のサウジ・アラビア人が騒いで楽しんでいたよ。そこで僕はクラウド・サーフィンをやったんだ。想像してみてよ、ブルックリン出身のユダヤ人が山ほどロック曲を演奏してサウジ・アラビア人とクラウド・サーフィンしてるんだよ。こんなことが音楽でなければどうやって起こり得るだろう?僕は世界中のあらゆるところへ行った。君がニュースを見れば日々(国際)問題が告げられるだろうけれど、現地では違った。

僕はパキスタンイスラマバードでもプレイした。そこでは沢山の長髪の少年たちが Metallica と Iron Maiden をプレイしていたし、沢山のクールなメタルバンドや優れたミュージシャンがいてジャムをした。もちろん、危険な地域は実際に多くあった。僕はおとぎ話の理想郷を語るつもりはない。でも彼らと直に知り合って感じるんだ。特にメタル、そしてロック音楽というのは世界共通で、僕らは同じ種の人間で、同じスピリット、同じ愛を持っている。(出身が)どこの国かなんて関係ない。

僕は以前、イスラエルの南部砂漠地帯のバンドをプロデュースしたのだけど、(アメリカの友人たちには)頭上をミサイルが飛び交っているのか質問された。そうじゃない。パレスチナ人とユダヤ人とベドウィン人(アラブ系民族)は協調して生活している。そこは彼らの故郷なんだから互いに戦いたくなんてない。上手く共存しているんだ。そこに利権を求めて他から来た者がその調和を乱すような介入を起こすのさ。実際にはそれが起こっているんだ、TVでは我々がお互いにどんな者なのかを疑心暗鬼にさせようとしている。ありもしない分断や敵対者を創り上げようとしているのさ。

だけど僕は実際に世界を周って彼らを見てきた。実際のところ世界にいるのは、Metallica Tシャツを着て Iron Maiden を弾いてる沢山の長髪少年なんだ。だから僕はまだ世界は破綻を迎えてはいないと思うし、信じられるんだ。なぜなら、恐れという感情は人々を意図的な方向へ向かわせる強力な武器だ。僕らはそれに何度も操られてきた。それはそっとやってきて、僕らは気付くこともないんだ。僕はここで陰謀説とかそういう話をするつもりはないから止めておこう。とにかく、世界には音楽を愛する人が溢れていて、みんなギターが大好きなのさ!

その通りなのかも。

僕はNYで育ったから、多くの人種・文化に触れつつ成長できたのは素晴らしかったよ。民族が違って唯一の違いというのはキッチンでする匂いが違う(料理が違う)ということくらいさ。移民が脅威になるとかそんなのは違う。世界を旅するというのは人生においてとても重要な教えが得られると思う。

僕が初めてアラブに行ったときは、皆が武装しているのかと思っていた。でも実際には素晴らしいもてなしをしてくれて、親切さに驚くほどさ。僕は何も知らない人たちに対して何という誤った思い込みをしていたのかと気付いた。相手について無知であるほど、厳しい意見を持つものさ。全てそういうものなのさ、実際に経験をするまで。知らない人を批判するのではなく、実際に知り合うことだ。

あなたの音楽活動での最初のブレイクというのは何だったのでしょうか?

それは難しい質問だな。多くの小さな事の積み重ねが次第に大きくなっていったのだから。30年の水面下での積み重ねがある日注目されたという感じだ。子供の頃から録音に興味を持っていて、機材を手に入れてからは友達のレコーディングを頼まれるようになった。

やがてソロを頼まれたり、プロデュースを頼まれたりと枝葉が増えていったんだよ。スタジオを持ち、エンジニアもやるようになった。そんな風に、自分のできることを人とシェアしていくと、どんどん枝が広がっていったんだ。プレイヤーとしてゲストソロを弾いたり、曲を書いたり、人と共作したりバンドを作ったり。

そのうちにインディペンデント映画で曲を使わせて欲しいと言われて、その分野にも入ることになった。そうやって広がるのさ、自分がこの世界と繋がりたいと思っている限り。

誰もが巨大なクモの巣上の点なんだ。それは世界を大きく包み込み、共に震え、動き、脈打っている。それが僕たちなんだ。誰もがその一部になるのさ、僕らは何かを創り上げるまで個人ごとの繋がりさえ知らないのかも知れない。

僕は自分の部屋で友達を教え始め、友人が楽器店を始めたので、そこで教えるようになった。そして何かの縁で音楽学校での教育に参加した。楽器店の生徒の親が私立校を運営していて、そこの音楽プログラムを頼まれたり。僕が20代の頃の話だよ。地元で始めたバンド活動が次第に大きくなっていったり。

6歳のときのバンドで僕は自分で紙吹雪を作って撒いたのだけど、36歳で初めて Guns N' Roses のコンサートに立って紙吹雪を浴びたときには、とても楽しくて笑顔になったよ。あれを全部自分で切らずに済んで良かったなって。(笑)

あらゆることが次の何かに結びつくんだ。それはハシゴを一段ずつ昇ることになる。ジャンプしてしまったら、自分に必要な大切な成長のステップを飛び越えてしまうことになる。一夜にしてブレイクはやってこない。一歩ずつ進んでいくのさ、鍵は辞めないことだよ。

自分が経験した何かは1つのブロックとなって1つ1つ積み上がり、それらが集まって今の自分自身を創るのさ。音楽とは自分が何者かということの真実が投影されたものだ。自分の経験や感情が詰まっていて、聴き手はそこから創り手がどんな人物なのかを感じ取る。

その通りだ。そこで訊きたいのだけど、君のアルバム『hands』の "hands" には強烈な歌詞があるね。あれはどんなことを歌ったのかい?

あれは、自分にクリエイティブ面の裁量権があまりないレコード契約のことで、僕には権利がなかったし、レーベルの創ろうとしていたブームに沿うことは僕には違和感があった。それで「ロン・サール」からニックネームなのかバンドネームなのか、「バンブルフット」として自分のレーベルで再出発した頃なんだ。

なるほど、良くわかったよ。"drunk" も興味深いね。

コントラストさ。音楽的にはバラードなんだけど、歌詞はキツイ内容だ。(ロンさん、歌いだす)声がイマイチでごめんよ、昨日はストーリー・テラーのショウをやったんだけど、1時間半予定のショウが楽しすぎて3時間歌ってしまったんだ。

『9.11』の"Raygun" "Hole In the Sky" もブルージーで好きだよ。

"Ray Gun" は僕のフレットレスでその音が出せるぞって楽しんで創ったよ。でも隠れた意味としてはセックスのことさ。最後のソロはその場での思い付きだった。

"Don Pardo Pimpwagon" も凄いね。これはドン・パルド(アメリカ人アナウンサー)へのオマージュとか?

ああ、僕の声は彼に似ているから。60年代の影響がある曲さ。クインシー・ジョーンズがジャズを取り入れたりしてたよね。フルートのように聴こえる音があるけど、全てはギター・シンセだよ。しかもライブで切り替えながら全部自分でプレイした。

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君の音楽経験でのトップ3を挙げるとしたら何?

難しい質問だな、沢山あるから。何かの瞬間ということではないけれど、僕がまだ音楽をやっていられて、それを楽しんでいること。それを聴き手の皆も楽しんでくれていたら、それが最高のことかな。

ある瞬間ということで言えば、ツアーで燃え尽きてしまうことがあるのだけど、僕は元々は内向的な人間だから、多くの人に囲まれると多くのエネルギーを消費してしまうんだ。もちろん自分で楽しんでいるのだけど、終わって寝る頃には完全に疲れ果ててしまう。逆に20時間でも止めずに皆とプレイしたくもなるのだけど。

例えば10月のピッツバーグでのショウから毎日移動をしながらショウをやってドュバイに飛ぶ前に3日休めるはずだったんだけど、Sons of Apollo のニューアルバム用のビデオ・写真撮影で集まらなくちゃならなくて、結局、睡眠を諦めてロスへ往復するんだ。

体調管理が大変ですね。

うん。糖分を取らないようにしているよ。砂糖は白い悪魔なんだ。糖分を採らなければ身体のエネルギー・レベルを一定に保つことができる。それに断食もいいよ。断食で感覚が鋭くなるし、体内が浄化される。僕は間欠的に断食をして糖分を採らない。

食品が体調の8割を決めるんだ。大企業が食品を扱う前、曾祖父母の時代は食品が薬でもあった。彼らの時代のような食事をすることだ。僕は自分よりも良い生涯をすごした食品(例:放し飼いにされ牧草を食べて育った牛など)を食べたい。

(Part 2 に続く)

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ロンさんの世界観、そしてキャリア構築のアドバイスは心に響くものがありました。

来年発売される Sons of Apollo のニューアルバムのプロモーション写真で見られるロンさんは長旅直後の徹夜明け状態ということですね、お疲れ様でした。ニューアルバムが楽しみです。