Queen+アダム・ランバートを前回観たのは2020年1月末だったので、今回はちょうど4年振りの来日公演となる。
2020年2月からコロナ禍が始まり、世界はパンデミックの混乱に陥り、国境は閉鎖され、ライブミュージックは途絶えた。2023年から日本ではやっと国境が開かれ、海外アーティストの来日公演が再開した。
私にとってQALはコロナ禍前、最後に観たスタジアム公演であり、普通の世界の最後のライブミュージックの記憶だ。
2020年2月に渡航先のアメリカのホテルで帰国前にTVをつけると、横浜港に停泊する日本のクルーズ船の乗客の様子がヒステリックに伝えられており、私には何が起きているのかわからず、一抹の不安と共に帰国便へ搭乗したのだった。それから暫くして世界は国境を閉ざし、長いパンデミックの閉鎖世界を迎える。
コロナ禍で変わってしまった世界を生き抜いてきた私にとって、(いや恐らく多くの人にとって)QALはパンデミック終焉の象徴となる公演なのだ。(もちろん、この病との闘いはまだ続くのだが)
ほぼ満席となっているナゴヤドームのスタンド席に座ると、ライト側前方で、視界が開けて見易い。前回はアリーナ席で段差がなく、前に立つ人の身長によっては視界が遮られる状態だったので、段差のあるスタンド席は見易かった。
定時を10分ほど過ぎたところで、場内が暗転し光と音の渦からロジャーやメイ博士が登場し、アダム君も登場。ド派手な衣装で楽しませてくれるアダム君は近年更にパワーアップしている。今回は映画『Watch Men』から飛び出したような、スーパーヒーローのいでたち。
そして始まったのは “Radio Ga Ga” !え、もうこの曲?終盤に盛り上がった頃、スタジアムの全員でハンドクラップしたい曲なんだけど。とまどいつつも、サビでのハンドクラップはしておいた。
サウンドのバランスはスタジアムならこういう感じかな、と思う。ただ冒頭数曲ではボーカルやギターにかかるエフェクトが強くて、それは曲のイメージに合わせているのかも知れないけれど、アダム君のボーカルをもっとシンプルに聴かせて欲しいと願った。
“Another One Bites the Dust” もショウの冒頭で早々と登場。ベースが主役の曲だからギター音量が控え目になるのかもだけど、メイ博士のカッティングの音をきちんと聴かせて欲しかったのは前回と同じ。
“Bicycle Race” ではド派手なバイクにアダム君がまたがり、スクリーン向けに様々なパフォーマンスを。スタジアム公演ではカメラに向けてパフォーマンスするというのがエンターテイメントになるのだなぁ、と感心した。
アコギを手にしたメイ博士が花道まで出て来て、オーディエンスに挨拶。
「ナゴヤノミナサン、コンバンハ!マタココニコレテ、トテモウレシイデス。イッショニ、ウタッテクダサイ」
”Love of My Life” のメロディが12弦アコースティックで美しく響き、客席は合唱タイム。ドーム内にはスマホの白いライトが波打って暗い海に光が漂っているよう。終盤にはスクリーンにフレディが登場し、一緒に合唱。ここで涙する人多数。
「日本の人の為に作った曲だよ」、と始まったのはもちろん “Teo Torriatte” 。スクリーンには日本瓦の屋根が印象的な門が映し出されて、そこにメイ博士の映像と日本語の歌詞までながれる。そしてアダム君もバンドも参加して、盛大に歌い上げる!
こういう素に近い歌声のアダム君は高音までクリアで力強く、本当に素晴らしい。最後はオーディエンス全員でアカペラ合唱。この4年間を思ってなぜか涙が浮かんできた瞬間。
スクリーンに登場したのは若き日のロジャーがドラムソロを叩くところ。そのまま今の本人によるソロに続いて、”Under Pressure” へ。
“Tie Your Mother Down” はロックで好きな曲なんだけど、余りにカントリー・アレンジされていて最初わからなかったくらい。博士のギターソロでは存分にあのトーンを味わえて幸せ。
曲が終わるとアダム君によるオーディエンスとのコール&レスポンス。今回のツアーではフレディ版に替えてアダム君でいくのだろうか。(実際には終盤にフレディ版があった)
“I Was Born to Love You” の前にはアダム君から「僕らは本当に日本が大好きだよ」と。この曲はおそらく日本スペシャルということかなと思い、調べてみたら海外ではやっていなかった。日本ではCMにフレディが出演して歌っていたもんねぇ。
ギターソロではステージ上の櫓に登ったメイ博士が小惑星の上に立ち、宇宙空間で演奏しているような演出。この惑星の映像は博士が加工したものと違うかな?確か以前、リュウグウの3D画像をJAXAに送ったりしていたよね?確かその後の研究にも博士が参加していたような… お歳を召してもこれだけ多彩なギターソロを聴かせてくれて、お元気そうで感激。博士は今回、アダム君に負けないくらい衣装替えが多いな。
“Is This the World We Created…?”、”A Kind of Magic” は前回聴けなかった曲で嬉しい。アコギの伴奏のみで聴くアダム君の歌唱は感情豊かで、伸びがあり、美しくて、こういう削ぎ落したところで実力が突出しているんだよね。
“Killer Queen” ではうって変わって、ステージの楽屋で鏡に向かうディーバなアダム君のコミカルな演技を歌と共に楽しむ演出で楽しかった。”The Show Must Go On” の歌唱は鳥肌モノで超ドラマチック。
アンコールの “We Will Rock You” が終わるともう次で最後だなぁと思っていたところで “Radio Ga Ga” が始まる!冒頭に演奏されたので残念に思っていたこの曲が最後にもう一度ショート版で演奏されるとは、嬉しい!
盛り上がったオーディエンス総立ちでサビに合わせてハンドクラップする一体感がたまらんよ。メイ博士がジャケットの下にフレディの描かれたTシャツを着ているのも嬉しい。
“We Are the Champions” でさあ大トリ。皆でシンガロングして、充実感を味わいながら思い返したのは、この4年間。やっとやっとコロナ禍を経て、私たちは皆生き残ってここに居る。正に “We Are the Champions” ! 困難を乗り越えた私たちのアンセムのよう。
煌めく紙吹雪とメンバーの姿を見つめながら、喜びを噛みしめた夜。2時間超えのマジカルな時間をありがとう、QAL!
本日のセットリスト
01. Machines (Or 'Back to Humans') / Radio Ga Ga
02. Hammer to Fall
03. Another One Bites the Dust
04. I'm in Love With My Car
05. Bicycle Race
06. Fat Bottomed Girls *
07. I Want It All
08. Love of My Life
09. Teo Torriatte (Let Us Cling Together)
10. Drum Solo
11. Under Pressure
12. Tie Your Mother Down
13. Crazy Little Thing Called Love
14. I Was Born to Love You
15. (You Take My Breath Away) / Who Wants to Live Forever
16. Guitar Solo
17. Is This the World We Created…? *
18. A Kind of Magic *
19. Killer Queen
20. Don't Stop Me Now
21. Somebody to Love
22. The Show Must Go On
23. Bohemian Rhapsody
encore: Ay‐Oh Freddie on screen
24. We Will Rock You
25. Radio Ga Ga
26. We Are the Champions
(* は4年前にはやらなかった曲)