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スティーブ・ヴァイ 「卓越と革新、これぞエドワードの代名詞だ」

2021年1月号の Guitar Warld 誌は "A Farewell to the King" と題したエドワード・ヴァン・ヘイレンの哀悼特別号でした。特集ではロックギター界の大物から若手まで多数のギタリストがエディの思い出や彼への哀悼の言葉を寄せており、その掲載だけで12ページもの誌面が割かれました。その中で最も目立っていたのは1ページを使って掲載されていたヴァイ先生の哀悼の言葉です。(1ページ割かれていたのは先生だけ!)

特集号発売から数ヶ月が経ち、GW誌が本記事をウェブで一般公開しましたので、この味わい深いヴァイ先生の言葉を以下に全文和訳してみました。

www.guitarworld.com

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天才の持つ無垢さとは魅力的だ。エドワード・ヴァン・ヘイレンのキャリア全てを通してこれは顕著に表れている。

私たちは「天才」とは知の巨人だと限定して考えがちだが、別の見方をすれば、恐らく「天才」とは、彼らの持つ独自にインスパイアされた創造的直感にシームレスに繋がる能力のことだろう。

「天才」はこれらの直感を苦も無くこの世で表すことができる。優美に、そして言い訳や恐れもなく、これは彼らの自然な生来の創造的状態だ。私たち皆の中にもこれを実現する可能性はある。

エドワードは知的なタイプではなかったが(神に感謝だ)、天才だった。彼は優れた集中力、揺るぎない自信と明白な情熱を備えていたが、彼自身はそのことを自覚さえしていなかった。ただ彼にとっては自然なことだったのだ。音楽ヴィジョンのことになれば、彼は障害にも気付かなかった。

創造的インスピレーションの表現において人が遭遇する障害とは、自らのゴール到達に対する否定的思考だけなのだ。これらの障害は一般に考えられているように外界にあるのではなく、人の内面にある。不安と恐れの思考が人の持つ能力の根を断つのだ、シンプルで創造的閃きを発見し表現する能力は既に備わっているのに。

エドワードはこのような類の思考の餌食に陥ることはなかった。むしろ、彼は自らの至福を追求した。そうする過程で、彼はギターコミュニティ全体を進化させるパラダイムシフトを創造したのだ。彼のゴールは分刻みで設定され、彼は常に挑戦し自らを満足させていた。

何かを特定の手法で演奏するという内面的欲求の経験、そしてそのゴールに到達し、直ぐに別のゴールを設定することは強い興奮を呼び、ひどく病みつきになることだろう。そして彼が全てを達成したとき、その上で歌っているのがサミーであれ、デイヴであれ、関係なかった。彼は構わずモノにする。例外はない。

人が情熱的に物事に取り組んだなら、興奮そして歓びの感情が前面に出て、それが導きとなる。それは強力なスタミナを与え、妥協することなく適切な表現を見つけるために深く深く探求するのを可能にする。しかし、練習のみでは成せない。

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練習は自分自身の独自で創造的アイデアの恐れなき探索と一体とならねばならない。鍛錬が情熱に置き換わるのはこのときであり、それは創造において特に優れた道具だ。

このプロセスの結果は卓越と革新であり、これぞエドワードの代名詞だ。彼がトーンと演奏を発展させるとき、彼は自分の意図する通りのサウンドが得られるまで妥協しなかった。

彼が創り出した画期的テクニックは見事に演奏された、なぜなら彼にはそのように頭の中で聴こえていたのだ。更に彼はそれを追求するのが大好きだった。発見の過程そしてゴールの達成は彼の至福だった。彼のヴィジョンの要素の全ては荘重に現実となった。

あのトーン、各音の選択と個性、彼のコードプレイとグルーヴにロックした様、あのヴィブラートそして驚くべきイントネーション、「バッドアス」なサウンド・アティテュード、明白かつとてつもない彼の発見した革新的アイデアの実行は、全て極上で彼の内面の耳の欲求を形にしたものだ。激しいアーム使いが加えられ、それらは完璧な銀の皿に盛られて私たちに強力に提供されたのだ。

しかし、恐らくエドワードの最も魅力的な要素はあの笑顔だったろう。それが彼の音楽的DNAの核だった。彼の顔にはプレイの歓びが表れていた。歓びに溢れた光が彼の書いた曲のハーモニー構造を照らしているのを人は聴いて感じるだろう。そして私たちは皆彼の曲が大好きだ。なぜならその音楽は歓びに溢れた心から生まれているのだから。

素晴らしいよ、彼がこの世にいたとは、何と私たちは幸福なことか。65歳というのはいささか早いが、ギターの年齢にすれば早すぎることもない。この世でエドワード・ヴァン・ヘイレンは彼の黄金の杯を私たちに注ぎ空け、杯が満たされた私たちは至福の境地だ。彼は真の意味で事を成したのだ。

たとえ彼を個人的に知らなくとも、多くの人は彼が親友であったかのように彼の死去に救いがないほど打ちひしがれたろう。彼に直接礼を言いたい欲求、心からの誠意を込めて彼の目を見て、彼が私たちにどんな存在だったのかを表現したい気持ちがあるのだ。

しかしながらわかるだろう、言葉ではあの親密な気持ちを得ることはできない。しかし彼が私たちに遺した無数の人生を変えるギフトを楽しみ続けることでは可能だ。

キング・エドワード、君は並外れた人だった。私たちは感謝している。

 

スティーブ・ヴァイ

2020年10月14日 ロサンゼルスにて 午後5時7分

(エディの死去から8日後)

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