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キップ・ウィンガー 「『Seven』には抽象的な暗示が含まれている」

ティーヴン・パーシーのギタリストである Erik Ferentinos の Podcast にキップが登場しました。

ミュージシャンが聞き手にいることもあって、話題は音楽を中心に繰り広げられ、なかなか中身のある内容でした。その一部を以下にまとめました。

 

 

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ニューアルバムの最終曲は特に心に残ったよ、まるでオーパスのようだ。"It All Comes Back Around" は7分ものの大作だ。美しく複雑な曲で、ナッシュビル交響楽団からの賛辞を受けたいみたいだ。曲として更に一歩進んでいるようだね。

ありがとう。実のところ、あれはアルバムのお気に入りの1つだ。"Headed for a Heartbreak" 第2弾みたいな。意図せずに書いた曲で、俺は鍵盤に向かって悩んでいた。レブはスタジオを行き来していて、俺はずっと作曲に取り組んでいた。

どのインタビューでも言っている話だけど、名作は偶然に生まれるものなんだ。素晴らしいアイデアを組み立てるって訳にはいかないんだよ。暗闇で手探りをしているうちに、偶然アイデアが降ってくるんだ。

曲の中盤はオーケストラ曲のようで、エンディングは Winger 恒例の長いソロで、レブが好きなことをやれる。

君はロック・ガイで、収録曲の中には AC/DC や KISS のようなヴァイブの曲もあるよね。俺の好きなバンドは Rainbow なんだけど、"Stick The Knife In And Twist" は "Death Ally Driver" 的なヴァイヴを感じるんだ。

考えたことはなかったけど、確かにそうだ。ヴァースが特にそうだね。

どうしても似た曲というのは多いよね、7音(ダイアトニック・スケール(全音階、1オクターブが7音))を使うのだから。ロックのコード進行は似通っているし、その上で上手くいく音というのは決まってくる。でも君らの音楽は一貫性があり、ロックファンにはお勧めだ。"Broken Glass" も古き良きヴァイヴの曲だ。

この曲の面白いところはポール・テイラーの参加だ。言っておくけど、全てのアルバム曲にオリジナルメンバー全員が参加している。"Broken Glass" ではギターソロを弾いたのはポール・テイラーなんだ。これまでのアルバムではやったことがなかった。実はポールは優れたリード・プレイヤーなんだよ。それでポールに弾いてもらった。いい仕事をしてくれたよ。

最初の頃に書いた曲だ。サビのアイデアがあって、そのメロディをギターでオクターブ違いでレブに弾いてもらい、俺はただそれに合わせて歌ってみたのさ。レブが帰って、いつもレブがリフやら書いたものを俺たちでアレンジするんだけど…

いつも2人で作業するのかい?それとも彼は自分のスタジオにいるの?

俺はそういう作業の仕方は嫌いなんだ。俺がそれをやったのはパンデミック中にマイク・ポートノイ、アンディ・ティモンズ、ジェフ・スコット・ソートとやった、"She Said She Said" だけだ。

 

俺には明確に聴きたいモノがあって、ミュージシャンと向かい合い、彼らに指示をするということではないが、レブとはお互いを信頼していて、彼には俺の意図がわかるんだ。彼には「そこを直してくれ」と伝えれば十分だが、遠く離れていてはできないんだよ。

俺たちはデモは作らないし、リフにしてもトラックにしてもその場で録音する。その瞬間に集中してやるんだ。1音をプレイする前から俺はトーンを完全に設定している。ギターサウンドはアルバム前にもう出来ているんだ。そういえばこの話はしたことなかったな。

所有のものとか、特定のアンプのモデラ―を使うのかい?トーンはどう創っているの?

レブのギターからジョン・サーの制作した Custom Audio のアンプヘッドに信号が入り、リイシューの Marshall 2466 cabinet greenback から Shure KSM32 でマイキングして、プリアンプは Naim 272 で最後は Pro-tool に入る。モデリングは使わない。別に(モデリングを)見下してる訳じゃないんだ。

ああ、例えばソロなんかにはいいかも。

そうだ。俺には違いがわかる。多くの人にはわからないけど、俺にはわかるんだ。ライブ使用には良いよね、毎晩(会場にある)アンプが何か心配しなくていい。俺たちは昔ながらのやり方でやってて、会場のギアを借りるんだ。どの Marshall かな?って感じで。

ああ、俺は Marshall JCM900 を頼んで、いい個体に当たるよう祈るんだ。あとは Boss ペダル4個とケーブルを持込んで本番さ。それと、パーシーに聞いたのだけど、80年代はアルバムの制作費が天文学的だったようだ。今では機材も進歩してずっと安くできる。

ああ、俺のイスタンブールにいる友人の息子はガレージでプラグインを使って録音して素晴らしいサウンドを仕上げている。彼は天才だよ、今はそういうことができる時代だ。俺はいい機材を持っているが、自宅で録れる。

どんな音楽にしろ、それがどう制作されたのかは意味が無い。重要なのは結果であり、音楽の持つ感情なんだ。知的で卓越した音楽であっても、リスナーが感じるものがなければ、失敗なんだ。成功した音楽だけが激しく人の感情を揺さぶる。

今の音楽は俺にはわからないが、人々の共感を得ている。プロダクションでクールだと思うものはあるよ。

アルバムでは曲のサビで人の心を掴んでいるよね。

俺は古いタイプの作曲家だ。曲は上昇していかなきゃいけない。サビで飛び立つんだ。俺は前人の足跡をたどっているだけだ。ところで君のラスト・ネームはギリシャ系?

そうだよ。Winger はドイツ系だよね?

ああ。曾祖父の一家はロシアからドイツへの移民だった。ロシアの家系というのは嬉しいよ、ロシアの作曲家は最高だからね。俺の意見ではロシアとフランスの作曲家が最高だ。

ところで、君はダイアトニック・スケールに7音があると言ったよね、でもそこには(半音をカウントすると)12音あるんだよ。

その通り。

そこはどこまで推し進めるかによるけど。ニューアルバムのタイトル『Seven』には抽象的な暗示が含まれていて、俺たちが出発したところから一周して、円を閉じるのではなく、バンドの歴史と歩みを包括するものだ。前のアルバムから10年だから、俺たちが次のアルバムを創れるのがいつになるのかはわからない。

もしかしたら、俺はこのバンドのミュージシャンシップを示すために全くプログレッシブなアルバムを創るかも知れないけれど、(これまで)俺たちは全てをやってきた。アルバムの曲はそれぞれ、俺たちがどんなバンドなのかを示す要素の一部が込められている。バンドの歴史を示すものだ。

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キップの次のクラシック・アルバムはクラシック界のビッグ・レーベルである Naxos Records から出るそうです。本人もワクワクしている様子。

割愛しましたが、中盤ごろに今年初めてパーシーのバンドでMORCに乗船するというエリクさんがMORC常連のキップにクルーズがどんな体験なのかを説明してもらっています。

私自身も何度かMORCを体験しているので、クルーズの話をキップから聞くのも楽しい。キップが本当にクルーズを楽しんでいるのがわかります。

ご興味のある方は私が書いたMORCガイドをどうぞ。

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