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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ 「自分自身の創造性と共感できないことをしても、名声などよりも重要な何かを失うのだ」

2023年の Inviolate tour が3月24日のリスボンから始まりました。今回の欧州ツアーはスペインを手厚く、前回周れていなかった中/東欧諸国を重点的に訪問するようです。その後はギタークリニックで西側諸国を周り、6月は南米ツアーの予定。来日が待ち遠しいです!

初日のリスボン公演の直前に収録したインタビューが公開されていましたので、その中から一部を以下にまとめました。

 

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セットリストはどのように組み立てるのですか?

セットリストの準備はお気に入りの時間だよ、ショウ全体を感じ取れるからね。もし自分がオーディエンスとして席で観ているとしたら、と考えて準備するんだ。エネルギーの満ち退きを感じたいし、ずっとエネルギー全開のショウというのではなく、バラードの時間も欲しい。

このツアーが少し違うのは、私は余り喋らない。ただプレイするだけさ。皆が期待する曲を何曲かは入れる。"Tender Surrender", "For The Love Of God", "Bad Horsie" などで、これらの曲は私のカタログの中からファンが聴きたい曲だろうと思う。

それから私は自分のカタログの中から今までにプレイしていない曲を選ぶ。今回のツアーではそんな曲が少々ある。

(訳者注:Inviolate tour で演奏している該当曲: " Lights Are On", "I'm Becoming", "Dyin' Day")

それから通常はニューアルバムから2~3曲をやるのだが、今回は新曲を多めにやっている。(通常の場合)私のカタログの曲というのはとても多岐にわたっていて、時にはとても重厚だったり、相当なプロデュースが施されていたりする。4人のミュージシャンがライブで再現するのは難しいのだ。でも今回のツアーではニューアルバムから5~6曲プレイしている。

通常は(新曲が多いと代表曲が聴きたい)ファンを不安にさせますが、ニューアルバムをリリースするというのはファンに聴かせるためですから、新曲を披露しないのは勿体ないです。

ああ、通常ファンは「ああ新曲か、古い曲の方が好きだ」となるのだが、『Inviolate』へのファンの反応はとても強力で、批評家の受けもとても良いんだ。こんな62歳のインストゥルメンタル・ギタープレイヤーに対してね。

私はもっとプレイしたいんだ。それに新曲はいわばライブ演奏を前提に創られている。ライブで上手く作用するんだ、だからこのツアーで多くプレイしている。

そして Hydra を持ってきましたね!

そうだ。前回の欧州ツアーでは肩の問題があって持ってこれなかったからね。Hydra はスタンドに立てている。ビデオでは腰ストラップで装着したけれど、重くてギターのように動かないんだ。Hydra に身体が動かされてしまうから、その場でしっかり立っていなくてはならない。ちなみにレコーディングはスタンドに立てて弾いたよ、その方が楽だからね。

ライブ前のサウンドチェックで何人かのファンに訊いたのだけど、スタンドか私が持って弾くのかどちらがいいかの答えはスタンドだった。その方が全てを観察できるからという理由だ。良かったよ、あれは重いからね。

初めてライブ演奏する曲があるそうですが、凄く良くて「なぜ今までプレイしなかったのか!」と思いましたか?

ああ。ドラム・ギター・ベースのトリオのようにレコーディングした曲がある。『Alien Love Secrets』や、"Frank", "Boston Rain Melody" などはひたすらプレイするのが楽しいよ、ギター曲だからね。詩のようで、何物にも囲まれていない。プレイしたものが直接オーディエンスに差し出されるんだ。

だがセットリストを作るときは、私は満ち退きを加えたい。私には多くのバラード曲がある。(アルバムの)7th song だね。ショウ全部をバラードにできるくらいの曲数があるが、ショウで適切な位置に設定したバラードなら良い。

つまり、"Tender Surrender", "For The Love Of God" は弾かねばならないから、バラードはあともう1曲くらいだ。それで私のカタログから選ぶのだよ。

私はあなたを尊敬しています、ジャンルに固執することなく、常に音楽の領域を超えて開拓しています。楽器についても同じで Hydra もその1つですね、それがあなたというアーティストの本質なのでしょうか。

そうだね、この道に進む人の動機は様々だが、そのジャンルでのトップを目指し、そこにフィットしているかを重視しているアーティストもいると思う。それはそれでいい、私も何度もやった。

しかしソロ・アーティストとして、私はどこにも完全にはフィットしないと思った。そして自分の関心ある音楽はあまり聴衆受けしないと思っていた。

しかし、音楽ビジネスそして音楽全般において素晴らしいことの1つは多様性だ。様々なアーティストから提供される楽曲には大きな多様性がある。そして真剣に考えた結果、私は自分にとって自然に感じることをしている時が最も幸せだとの結論に至った。

もしそこを妥協してしまったら、それでも商業的成功を収めることがあるかもしれないが、自分自身の創造性と共感できないことをしても、常に自分を欺き、名声などよりも重要な何かを失うのだ。

良く聞く決まり文句だと思うだろうが、私は身を持ってこれが真実だと発見した。アーティストは自分の創造的本能に従うより他に選択の余地がないものだ。そしてその結果、自分に相応しいオーディエンスを見つけるのだよ。その意味で、私がどんな変わったことをしようとも、私にはサポートしてくれる素晴らしいオーディエンスがいる。

だから Hydra にしても他の新曲にしても、私はまるで催眠術をかけられたようにそのアイデアが湧いてその方向に突き進み、歓びを追求してアイデアが膨らむに任せたのだ。

そして注意すべきことは、「そんなことできっこない」などと否定する小さな声だ。自分の恐れが語りかけていることを認識しなくてはならない。それに耳を貸さず、言い訳無しに、自己の創造的本能に完全に身を投げ出すことだ。そうすれば歓びに満たされる。

ミュージシャンの誠実さを感じると嬉しいです、そしてフェイクであるときには分かります。

ああ、多くの人にはわかるのさ。していることに真に繋がっているときが。