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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーヴ・ルカサー 「俺より優れたプレイヤーになくて、俺にあるものはアレンジャーの耳だ」

スティーヴ・ルカサーがギタリストへのアドバイスを語りました。

www.guitarworld.com

さすが、長年のキャリアと幾千のスタジオ仕事に裏打ちされた言葉は重みがあります。(言葉がダーティだけど、笑)

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1.耳と心を開いておくこと

俺は1日のうちに SlipknotCarpenters を聴いてもキモくなったりしない。でも、いつだって甘美なコードが好きだ。ピアノで TOTO のバラードを書いたんだが、俺の音楽人生の始まりは高校だ。ポーカロ兄弟に会ったおかげで新たな音楽に目覚めたんだ。ジャズやファンク、ロスのスタジオミュージシャンがプレイしている音楽にな。それで俺の音楽趣味が広がったんだ。

俺はいつも新たな音楽を探してラジオ局のチャンネルを回してる奴だった。ジャズやジャズ・フュージョンに魅了された。ジョン・マクラフリンアル・ディ・メオララリー・カールトンリー・リトナー、ジェイ・グレイドンなんかが好きだった。

彼らは大物で、俺はああなりたかった。スティーリー・ダンの "Kid Charlemagne" でのラリーのソロには衝撃を受けた。彼はジャズ・ガイだってのにロック・サウンドで弾いていた。イケてたね、お気に入りだった。

「ロックスター」になるとか、ヒットレコードを出すなんて夢は持ってなかった。そんなのは起こりっこない話だ。俺はただプロのミュージシャン、スタジオミュージシャンになりたかった。それなら実現可能な仕事だ。俺は結局、Midnight Special みたいな多くのテレビ番組で様々なシンガーの後ろで弾く変な18歳のガキになった。

 

2.チームプレイヤーたれ!

ボズ・スキャッグスの仕事を得たのは19歳のときだった。彼は最高だった、俺をステージで引き立ててくれたんだ。それでジェフ・ポーカロは俺が TOTO に相応しいと思った。そしてやってみたら、それが上手くいったんだよ。

大事なのは2度目のお呼びがかかるかってことだ。プレイして、再びお呼びが掛かるくらい良ければ、認められる。つまり、ギグの重圧に耐えられるってことだ。クリエイティブにその場で、デモ無し、リハーサル無し、次の展開の説明無しに、自分のパートを弾けるってことだ。

G-Em-Am-D って書いた譜面が渡されたら、何を弾く?曲のヴァイブはわかる、ドラマーはちょいとばかり叩き始めるからグルーヴはわかる、皆が弾いている中で、曲全体がうまくまとまるようなパートを思い付かなきゃな。

 

3.タイムが全て

俺より優れたプレイヤーになくて、俺にあるものはアレンジャーの耳だ。もし俺が他のギタープレイヤーと仕事していたら、彼のパートと上手く合うものを何か思いつかなくちゃならない。俺はジェイ・グレイドンやレイ・パーカー Jr. やディーン・パークスみたいなレジェンドとプレイした、ああ幸運だったのさ。でも自分が何か貢献しなきゃならない。

俺は素晴らしいミュージシャンが録音の赤いライトを見て、緊張に押しつぶされる姿を見てきた。優れたリズムギター・プレイヤーでなくちゃならない、良いフィールと完璧なタイムで一貫してなくちゃな。

著名バンドでソロを弾くような人らのオーバーダブもやった。でも彼らがクリックに合わせてリズムギターを弾くと、スウィングは無いわ、固いし、タイムが揃っちゃいない。それで俺が替え玉になってそのパート全部を弾いたもんだ、タイムきっちりにな。誰のことかは言えないけどな、秘密保持契約がある!それに、ソロを弾くときに最初の2小節で自分の腕をひけらかす必要はないんだぜ。

 

4.ちょいとばかりチューニングがずれた方がいいこともある

『Thriller』で弾いたとき、クインシー・ジョーンズはずっと俺に裁量を与えてくれた。"Human Nature" では「これはR&Bのラジオ局で流したいんだ、ファンキーにしてくれ」と言われた。それで俺は(伝説のエンジニア)ブルースに「ちょいと試してみよう。ダイレクトにプラグインして変わったサウンドを出そう」と言ったのさ。

パートを思い付いて、ダブルトラックで録音したが、2番目のトラックのテープは少々再生を遅くした。ちょいとばかり調子を外した感じにするためだ。ほら、Beatles がよくやってたみたいに。2つのトラックは少々互いに擦れ合って奇妙なコーラス感を出してた。クインシーがそれを気に入ったのさ。"Beat It" はマイケル・ジャクソンのリフだ。俺が少し変えてプレイすると、彼は踊り出した。俺の2フィート先でマイケル・ジャクソンってダンスをな。

俺は24歳で、成功したぜ!と思っていた。"Beat It" ではエド(エディ・ヴァンヘイレン)のギターソロを除く、ベースとギターパートの全てを俺が弾いた。全部で Marshall を使ってたら、クインシーから「音がデカ過ぎる。これはクロスオーバーヒットにしたいんだ。お前の持ってる小さいアンプを使ってみてくれ」と言われた。それで俺が手持ちの Fender Deluxe をディストーションを落として使ったのが、完成版レコードの音だ。


5.モチベを上げるには、嫌な仕事をしろ!

もし俺が今キャリアを始めるとしたら、レコード契約のある奴との仕事を探す。バンドを探してるシンガーだ。それならまた声が掛かる可能性があるし、きっとそうなる。バンドの1員になりたいなら、競争率は高いが、自分自身と自分の音楽が十分良ければ上手くいくだろう。

ガキの頃には俺も嫌な仕事をした。一生ドライクリーニング工場の掃除だなんて御免だったぜ!子供には皆、嫌な仕事をさせて本当にしたいことに目覚めさせるのがいいと思う。

 

6.稼ぎたいなら、曲を書け

俺は今でもデヴィッド・ペイチと毎朝6時に電話で話す。彼はツアーできる体調にないが、俺と一緒にバンドを経営しているんだ。去年11月のライブストリームの為に新しいバンドを揃えて、それが上手くいった。俺は TOTO の過去15のバンド編成全てに参加してる。

 

デヴィッドは主席作曲者だ。"Hold The Line" も "Rosanna" も作曲して "Africa" はジェフと共作した。彼がいつも言うんだが、良い曲を書いて、腕利きのミュージシャンにプレイさせれば、最高になるんだ。

彼には作曲するよう勧められ、一緒に曲を書いた。『TOTO IV』の頃には皆が作曲してたよ。書かないよりも金になる。いい仕事をすればもっといい金になる。今ではTOTOのセットでソロ曲もプレイする、アルバムの購入者の多くは同一だからだ。でも世界は変わっちまった。TOTO で30億回ストリーミング再生されてる、30億だぜ!その金はどこに行ったんだよ?

 

7.厳しい世界だ

(音楽ビジネスってのは)単純な世界だ。誰かに顔面を殴られケツを蹴られても起き上がり、「チクショウ、もう一度やってみろ!」って言う。それができなきゃ辞めるんだ。この世界のビジネスは感情的にはそういうもんだ。顔面パンチさ。「イエス」よりも「ノー」がずっと多いし、マジで重圧がある。

(レコーディング中の)赤いライトが点灯したら、(良い演奏を)キメるのか、ヘナヘナになっちまうのか?「ロックスターになるのは簡単だ、誰でもなれる」なんて人は言う。「俺は俳優だ、セリフを覚えられるし、簡単だ!」とも言う。じゃあやってみせろよ!ジャック・ニコルソンの隣で演技するのがどんなに簡単なのか見せろってんだ!

俺たちギタリストにとっては、時速9千万マイルで弾くよりシンプルに演奏することを学ぶのはずっと難しくて退屈だ。速弾きにはレベルがあって、俺は低いレベルにいる。かつて俺がジョージ・ハリソンのプレイを学んでたら、皆にスゲー奴って思われたもんさ。今じゃ小さな子供がYouTubeでスティーヴィー・レイ・ボーンみたいにプレイしてる。俺は違う時代に育ったんだ。

 

8.エフェクトはほどほどに

80年代ってのは何でもやり過ぎたってことで有名だ、コーラスやディレイなんかだ。何枚かのアルバムでそういうエフェクトを使った。プロデューサーがそういうサウンドを求めるんだ。「この曲にはどうかな」って言ったもんだったが、欲しがられるんだよ。

ギグに雇われると「Bradshaw を持ってくるだろう?」って言われたもんだ、(訳者注:Custom Audio Electronics のボブ・ブラッドショウ制作リグのこと。ルークのリグを組んでいたのは彼だった。ルークのオフィシャルサイト資料はこちら彼らが求めてたのはあのサウンドだった。TOTOのファーストアルバムでは、金と時間があったんで、サウンドの実験やギターのレイヤーを試した。でも人の音楽に雇われたときは、求められるものを提供しなきゃな。

デジタルFXパッチのメーカーに「ルーク」ってのを創ってもらったんだが、フランジャーやらリバーブやら、まるでクソみたいなサウンドだった。「俺のサウンドがこうだと思ってるのか?」と思ったけど、そういうのを使い過ぎてたのは俺なんだ、恥ずかしながらそうだったのさ。

Bradshaw のリグを手に入れて直ぐ、教則ビデオ Star Licks を収録した。そういう時代だったのさ、服装も髪型もドラッグにMTVも、イッちまってる時代だったのさ。

 

9.自分の音を見つけろ

音を聴けば俺には良いモノはわかる。Snarky Puppy は俺のお気に入りバンドの1つだ。それに Animals As Leaders のトシン・アバシはエイリアンだ!俺は音楽スノッブなんだ。でも俺は本当に上手いプレーヤーが好きだ。ザクザクした四連符をプレイして光速でハーモニック マイナー・スケールを弾くようなナリキリ野郎じゃなくてな。

まあ、それはそういうモンで、音楽スタイルとして意図的にやってるのかも知れないが、俺が子供の頃はジェスロ・タルLed Zeppelin の聴き分けはできたぜ。

息子のトレヴのバンド Levara は TOTO をヘヴィにしたようなサウンドだ。息子が自分のソロを書いてあるとき俺に言ったんだ、「父さん、単にブルースを弾いたりしないよ!」それでこう言った。「いいじゃないか、自分のニッチ分野を見つけたんだ!」それが重要なんだ。自分のニッチ分野、サウンド、立ち位置を見つけること。誰も全てはプレイできやしないんだ。

(訳者注:5/14にデビューアルバムをリリースした Levara ですが、その僅か4日後の18日にトレヴの脱退を発表しています。そんなのってアリ?現在のトレヴは Invisible Friends という新プロジェクトに進んでいる模様です)