ヴァイ先生が若手注目ギタリスト、コリー・ウォンのPodcast "Wong Notes" に登場しました。
近年では Dirty Loops との共演でも注目されたモンスター級のリズムギタリストであるコリーの番組は好評で、継続すること既に数年。彼のインタビューは深みがあって面白いので私は時々聞いています。
最近ヴァイ先生が「現代の注目すべきギタリスト5人」の1人に選んでいるコリー。そんなコリーとヴァイ先生のインタビューは楽しいものになりました。プリンスのスタジオでの幻のジャムの話まで!1時間超に及ぶ2人の会話の概要をまとめてみました。今週はPart 1 です。
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調子はどうですか?
とてもいいよ。でも君は実に素晴らしい活躍をしているね。君のプレイを見るのを私がどれだけ楽しんでいるか、君に言わなくちゃね。
あなたの口からそう言われるなんて、大きなことです。ありがとうございます。
いつの時代にも、その世代で特定のプレイを見せて輝くギタリストがいるものだが、君のリズムプレイが完璧にロックインしているのは、実に素晴らしいよ。
うれしいです。
君のビデオをもっと見たいから楽しみだ。
では一緒にやりましょう!
それはいいね、君とジャムしたいんだ!
もちろんです!ギターが最もクールな楽器であった時代に、楽器における自分の声を見つけ、シーンで際立ったあなたですが、それはどうやったのでしょう?
私は自分が楽しいと思ったことを追求しただけだ。自分の本能に従ったのさ。
私が君のプレイをチェックするようになって、私には明確にわかったよ。君は自分にとって真に面白い事を突き詰めているんだ。君のしていることにおける腕が実にパワフルなのはそのせいさ。
君は自分が速弾きでないと言ったけれど、君があのように音楽と繋がっているのだから、必要ないだろう。(速弾きかリズムかは)表現が違うというだけで、パワフルであることに変わりない。
それにリズムプレイを学んでいる人たちはまだ途上で、リズムとの繋がりができていない。ギターをかき鳴らしながら繋がりを探しているんだよ。彼らにはまだ理論しかないんだ。だからプレイが知に偏ったものになる。そういう構造というのは役割もあるが、必ずしも真に効果的なプレイの土台とはならないのだ。
そうですね、技術力の優れたプレイヤーが必ずしも音楽的でないとは限りません。表現力の優れたプレイヤーが必ずしも技術力が低い訳ではなく、これら2つの要素は両立可能で、あなたはその最良の例です。理論に傾きすぎているというプレイヤーの場合、どんなことに注意を向ければ良いのでしょう?
直感だ。もし速弾きが好きでそれに惹かれるなら、思う存分やればいい。そうでなければ、それは幻想だ。練習に没頭できないのなら、それはさほど興味が無いということだ。
それと、良く訊かれるのだが、「音楽理論を学ぶべきか?」だが、君が興味があれば自然と学ぶだろう。もし興味が無ければ、学ばないだろう。それで構わない。興味があり、自分の本能に従うなら、自ずと没頭して学ぶものだ。人が喜びを感じるのは真の創造的衝動に従っているときなんだ。それが満足感や達成感というものだ。
あなたは成功と達成感というのを同時に成し遂げています。ニューアルバムにおいても更に楽器での可能性を広げています。あなたにとって何が最も達成感をもたらすものでしょうか?
そうだね、世間で言う「成功」とは金だったり名声だったり、それはそれで良いモノさ。だが、私にとって達成感というのは創造的なアイデアが湧いて閃き、ただ実行する、その過程は喜びに溢れ、その先にあるのは達成感さ。
自分の期待を上回る作品が仕上がったときの歓びは極上だよ。他人がどう感じるかではない、自分自身の直接的な体験が重要だ。もちろん皆が気に入ってくれたらそれも嬉しいのだけどね。
ニューアルバムでは変わったベンディングのプレイもみせていましたね。
ああ、"Candle Power" だね。私はときに面白いアイデアを思い付き、ユニークなものにしたいときに、何か制限を課してみるんだ。この曲ではクリーン・トーンでアームのないギターを使って、ピックを使わないことにした。更に同時に2音以上をベンドするというテクニックにもトライしたよ。
とても大変だったが、思った通りの効果があった。このテクニックを使って若いプレイヤーが次にどんなことをしてくれるのか、楽しみに待っているところだよ。
それは楽しみです。あなたはギターで人の心を掴むメロディを奏でることができます。一般原則として、それはどう可能なのですか?
曲が語りかけてくるんだよ、どんなメロディが必要なのか。これはメロディ・プレイヤーの場合だね、リズム・プレイヤーでも構わない。
メロディというのは人間の話し声に似ているんだ。コンマや抑揚や、疑問符、感嘆符があって、人間の会話にはフレーズがある。言葉はなくても構わないんだ、それを音に形作るんだよ。
メロディでもソロでも私は話すようにプレイしている。そうやるとスケール練習のような音にはならない、話し声のようになるんだ。そして人生における感情を載せて弾くとメロディにおけるダイナミクスがいかに違ってくるのか驚くだろう。私はそうしてメロディを弾くのが好きだよ、でも時には全て忘れて思い切りワイルドに速弾きしてみるのも楽しい。
現代のギターヒーローはどんな人物だと思いますか?
君だよ。
とても寛大ですね。わぉ!
いいかい、私は本気だよ。私のようなギタープレイヤーはもう飽きられているさ。ファンクしてグルーヴしていてインスパイアするギタープレイヤーが待ち望まれている。それがギターヒーローさ。
今のギターは10年・20年前とは異なったやり方でフィーチャーされています。音楽におけるギターの役割として。ですから、現代のギターヒーローはどんな人物像で、ギターの役割、音楽はどんな方向に進むのでしょうか?
ジャンルによるだろうね。あるジャンルにおいてはギターにスポットライトが当たるだろうし、時には後退するだろう。思うに、現代のギターヒーローというのは、曲をパワフルで効果的に伝える能力を持った人物だろう。
ギター音楽はもう人気が無いという声も聞くが、いいかい、ジェフ・ベックが 『Blow By Blow』を出したときだって、別にギター音楽は人気ではなかった。サトリアーニが『Surfing With The Alien』を出したときだってね。ギターヒーローがギター音楽を人気のものにするんだよ。パワフルで他人をインスパイアするんだ。
素晴らしいです。ところで私はミネアポリス出身で、ペイズリーパークで育ったようなものです。確認しなくちゃならない伝説があるんですよ。
私のバンドのベースプレイヤーのソニー・Tから聞いたのですが、あなたのバンドがミネアポリスに来たことがあり、プリンスがあなたをペイズリーパークに招待してジャムに誘ったとか。そこでソニーとドラムスのマイケル・ブランドが準備万端でいたところ、プリンスは現れず、それでもあなたはソニーとマイケルとジャムしたそうですね。
ペイズリーパーク史上最もクレイジーでとんでもない即興ジャムを1時間やったとか。彼はそのビデオを見つけたと言っていました。このジャムは毎晩キャンバスに描くようなものだから「キャンバス」という名前にしてツアーしたいと言っていましたよ。この話は本当ですか?
本当だ。(笑)私は大のプリンス・ファンでね、ミネアポリスでライブがあったとき、妻の兄は長年ペイズリー・パークで働いていたんだ。プリンスがペイズリー・パークを開放するというので、ライブ後にバンドと行ったんだよ。
もう午前2時とか3時とかの深夜だったので、ソニーとマイケルは家で寝てしまっていた。でもプリンスのメッセージがあって、彼らは起きてスタジオに来たんだ。それで彼らとジャムしたんだよ。
彼らは凄かった、マジックのようで、ジャムしまくったよ。もう夜が明けて、私は次のライブ会場に向かわねばならなかった。それで去ろうとすると、誰かがやってきて「ボス(プリンス)があなたの電話番号を知りたいそうです」と言われた。それで電話番号を渡したよ。
でも教えられたところによると、実はプリンスは別の部屋に居てずっとジャムを観ていたそうだ。ステージはカメラ撮影されていた、彼はそれをバックステージで観ていたというんだ。彼は顔を出さなかったけどね。
それから数か月後にニュージーランドでライブをしていたら、誰かにブートレグへのサインを頼まれた。それはVHSビデオで、あの夜のジャムだった。だからあの映像があることは知っていたよ。
ソニーがデジタル化したビデオを持っていますから、あなたに送りますよ。僕も見せてもらいます。
私も楽しみだよ。
(Part 2 に続く)