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スティーブ・ヴァイ Flex-Able 36th Anniversary: Part 4『Flex-Able』の誕生

Flex-able 36th Anniversary』ライナーノーツの続きです。

完成したLPを手にしたヴァイ先生は、次にそれを販売する方法を考えます。そして一般的なレーベルとの契約に納得がいかず、独自の方法を模索します。先生のビジネス脳が常識を打ち破る!

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Flex-Able』の誕生

プレス工場から届いた最初の『Flex-Able』LP1箱を受け取ったときのことは生涯忘れないだろう。それを腕に抱き、甘美な達成の喜びを味わったのだ。遂にできた。全て簡単で楽しかったと思えた。

このLPが私を金持ちで有名にしてくれるなどという妄想じみた期待を全くしていなかったからだと思う。そんなことはあり得ないと思えたし、正直に言って、私には不要だった。

ただLPを手にして、友人や家族に送るだけで興奮した。だが、天には別の計画があったのだ。

これは風変りで奇妙なアルバムで、私のギター超絶技巧愛を反映した数曲、("Attitude Song", "Call it Sleep", "Viv Woman")や、私の作曲愛を反映した曲、("There's Still Something Dead in Here", "Junkie", "Salamanders in the Sun")や、私の可笑しくて奇妙なもの愛を反映した曲、("Little Green Men", "Lovers Are Crazy", "The Boy/Girl Song")などがある。

アルバムは支離滅裂で当時でもいつの時代でも、どんなジャンルにも合わなかった。無論、ザッパの影響を明らかに受けていて、真正直なアルバムだ。

私は選択に向き合った。アルバムを世間には発表せず、今後も自分の楽しみとしてアルバムを制作し、採譜とギターレッスンで生活費を稼いでいくのか、それともこのアルバムをまともにリリースするために少し頑張ってみるのか。

そこで思ったのだ、「いいじゃないか。どうにかリリースしてみたらクールかも知れないし」

最初は一般的なレコード契約を探してみた。数社のレーベルにアルバムを送付したところ、どこも興味を示さなかったが、Enigma Record は違った。彼らは一般的なレコード契約同様に前払い金1万ドルを提示した。当時の私にとっては莫大な金額だ。

Enigma Record はマスターの権利を得、レコード1枚あたり25セントのロイヤルティを私に払うという。しかし、それで彼らは前金を回収するのだ。マーケティングとプロモーションは彼らが責任を持つ。

この契約は私にとって納得いかなかった。彼らにアルバム全ての権利を1万ドルで渡し、レコード1枚あたり25セントのロイヤルティの合計が前金に達するまで追加のロイヤルティは受け取れない。

私が前金分をロイヤルティで払い終わるまで、表面的にはアルバムを無料で彼らに渡すようなものだ!その契約を私の弁護士に見せたところ、レコード業界の仕組みを説明して、それは一般的な契約で、悪いものではないと説明された。

私は何かに利用されることには強い抵抗がある。必死の状況でなければこんな契約に縛られるなんてあり得ない。

少し調べたところ、レコード会社はレコードを販売店に置くため、配給業者にレコードを販売していることがわかった。もし私が直接、配給業者と取引できれば、レコードレーベルとの中間取引を飛び越えられる。

問題は、配給業者は普通、アーティストからのレコードを仕入れず、主にレーベルと取引することだった。

ある運命の日だ、私は Important Records Distributors のクリフ・カルトレリから折り返しの電話を受けた。彼は私の事をフランクと制作したアルバムで知っており、1,000枚のLPを1枚当たり$4.10で買うと言う。

これは素晴らしかった、なぜならLPの製造コストは1枚当たりたったの79セントだったのだ!こちらの方がアーティストにとってフェアな契約に思えた。私はこれが比較的前例の無いことだとは知る由もなかった。

しかしながら、この契約では私が自分のレコード・レーベルを所有する必要があった。それで再び、私は電話帳を取り出して、どう実現するのかを調べた。

もしクリフ・カルトレリが私を信じてサポートをしてくれなかったら、私が自分の為だけに私的な音楽を創り続けていた可能性は全く大きい。

(Part 5 に続く)

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ヴァイ先生の恩人であるクリフ・カルトレリさんについては、こちらの過去記事もどうぞ。

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