今週はヴァイ先生の Inviolate 欧州ツアー機材のうち、ペダルボードとラック機材の解説です。最初はトーマスに話を聞いて、サウンドチェック後に先生にインタビューする段取りだったようですが、トーマスの撮影を始めたところに先生が登場、「サウンドチェック後に時間がなくなるかも知れないから」とのことで、先生自身がシグナルパスの説明を始めます。(待ちきれなかった方に1票。笑)
なお、正確なシグナルパスを知りたい方は11:24時点辺りに経路図が映りますのでご参照ください。先生はお話好きなので、楽しい解説が聞けます。以下にまとめました。
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あなたに解説していただけるとは光栄です。
シグナルパスに沿って説明しよう。まずは脳から指令が出て、腕と指に伝わる。そしてギターからシールドを通って、ペダルボードに入る。
(左から)DigiTech Whammy DT ペダル、シグナルは(隣の)ワウペダルに最初に入る。私はそれが好きなんだ、それからディストーション・ペダル。私の Jemini だよ。
まだ今もこれを使っているのですね、嬉しいです。
これは素晴らしいんだ、私の拘りで Ibanez にカスタマイズしてもらったからね、これは2つのペダルなんだよ。だって多い方がいいだろう?そしてシグナルはWhammy ペダルに入る。
そしてこれがとても重要なスイッチ(Jemini 上の大きなスイッチ)だ。これがなければ私はどうやってショウをやったらいいのかわからない。送風機だ。
私がこれを使うのは風で私の髪がなびいてクールに見えるからだと皆は思っているだろうが、実のところ、まあその理由も一部は事実なんだが、こういう小規模なクラブは暑くなるから、手が(汗で)湿るとプレイできないんだ、スケートリンクと同じさ。これで掌を乾燥させるんだよ。
そしてこれが、Synergy のスイッチシステム(MIDIコントローラー Mastermind LT)だ。とてもシンプルで、トーマスが全てカスタマイズした。こっちの(左側VAIロゴシール)スイッチがVAIモジュールの選択で、こっちが Bassman モジュール。これは "Little Pretty" なんかでクリーンで使っている。
全ての曲はここのプログラムに入っている。(Fractal フットコントローラー FC-12) 全ての曲のパッチがプログラムで変更される。
全てプログラムされているのですか?それとも一部はマニュアルで操作するのでしょうか?
全てここに入れようとしているところだよ、殆どはここに入ってる。素晴らしいよ、全てを思い出さなくてもいいし、スイッチの切り替えに忙しくなることもない。リハーサル時にはこれがなくて、スイッチの切り替えを練習しなきゃならなかったんだ!
そして右端にあるのがボリューム・ペダル。そしてシグナルがペダルボードから出ると、Synergy のラックに入る。Synergy は素晴らしいんだ、あらゆる種類のモジュールをここに入れられるからね。これは真空管の入ったプリアンプ・セクションなんだ。つまりモデリングじゃなくて本物の真空管なんだ。元のアンプ・ブランドからライセンスしてきた本物の回路が載っているプリアンプ・セクションで、誰かの作ったコピーじゃないということだ。
Synergy から出たモノ・シグナルは Fractal AXE-FW Ⅲに入り、ステレオになる。それがこの Fryette パワーアンプに入るんだ。素晴らしいパワーアンプだよ。そしてシグナルはキャビネットに入る。
本物のキャビネットが使用されているのを見て嬉しいです。2022年においては残念なことにもはや(ライブでキャビネットを見ることが)一般的ではありません。
面白いことに、私はこのツアーでインイヤーモニターを使い始めたんだ。過去に何度もトライしたのだが、2~3曲でもういい!と外してしまっていた。でも今回はやってみることにしたんだ。このツアーでは私のプレイも少し変わってきているからね。インイヤーモニターはきっちりと楽器の音を返してくれる。慣れれば全ての音符を聴けるんだ。
このパワーアンプからは私のモニターにシグナルが入る。これはマイキングされていなくて、私は頭から自分の音を浴びている。
他にも面白いものがあるんだ。このラック上にあるコンピューターは Fractal のプログラム用なんだ。ここに全てのプログラムが入っている。様々なセッティングがあるんだが、Hydra は別物なんだ。
今回のツアーには Hydra は持参できなかった、私には肩の手術があったからね。それで面白いのは Hydra は信号をイーサネット・ケーブルで出力するのだが、そこには全てのネックの信号が含まれる。
Hydra のMVでは Brain という Ibanez のスプリッターボックスが登場しているが、あれをツアーに持ち出したくはなかったんだ、とても重いからね。それでラックスペースに収まるように、これを創ってもらった。
cat6 イーサネット・ケーブルはここに繋がり、4つのアウトプット口から、12弦、7弦ギター、ベース、ハープの信号が出る。それらは全て Fractal に入る。4つのインプットがあるレアなのが Fractal だ。4つのステレオ信号にして出力でき、4つのシグナルにどのようなエフェクトをかけることもできる。
そして7弦ギターの信号はこのパワーアンプに入るんだ。他の3つはどこにでも出せる、モニターやPAやどこでも。ただここにはターキー(Hydra)がないんだ。
訊きたかったのですが、"Teeth of the Hydra" のアレンジ・バージョンをやる予定はないですか?
いや。陳腐になってしまうだろう、皆が見たいのはそれじゃないからね。Hydra のパフォーマンスが見たいだろう。
あの曲のレコーディングは曲を書きながらしていたから、イントロ、バースという風にパートに分けてやっていたんだ。立ちながらどうやって弾くかを考えながら。あれは重いんだ。皆に重さを訊かれるけど、量った結果を知らないんだ、でも感覚では1,000ポンドくらいに感じる!そしてビデオ撮影のために、1ヶ月くらい練習をした。
できれば2023年に戻って2度目の欧州ツアーをしたいと思っている。1度のツアーで周るには広いからね。その時には Hydra を弾こう、まずはどうやってあれを移送するか考えなくては。
素晴らしいです、楽しみにしています。
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この後はトーマスがラック裏側の配線を見せてくれています。Generation Axe 時の機材搬送の苦労話なども。ちなみに機材にはインプット口に赤、アウトプット口に緑の印を付け、色分けした一覧表でケーブル管理がされているようです。(さすがトーマス!)
上のペダルボードの写真で、VAIロゴが映っている画面はライブ中のステージスクリーンに映し出される映像とシンクロしていて、先生の確認用だそう。この画面と先生用モニターの間にある四角のボックスは電源でしょうか?
7月1日のイタリア公演では、ライブ中にリグがダウンしてしまい、仕方ないので先生が歌ったようです。(笑)この投稿にトーマスのアシスタント、アレックスがコメントをつけています。彼によるとトーマスはペダルボードには独立した電源(BigJoe power bricks)を使うので、ダウンしたのはペダルボードではなく、アンプの方ではないかということ。アンプは会場の電源(欧州規格の電圧)を使うから、とのこと。原因は何だったのでしょうね?
Hydra のシグナルパスについては、先生がMV撮影時の話をしていますので、過去記事でもどうぞ。