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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ Part 2 「今を変えればいい。それが唯一変更可能な時間だ」

ヴァイ先生と若手注目ギタリスト、コリー・ウォンの対談続きです。

 1時間超に及ぶ2人の会話の概要をまとめてみました。今週はPart 2 です。

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あなたのニューアルバムには素晴らしいミュージシャンが参加していますが、どう選ぶのでしょう?スタジオでプレイするミュージシャンとツアーでプレイするミュージシャンは選考基準が違うのでしょうか?

アルバムでは曲に最も合うミュージシャンを探した。多様な曲だったので、それぞれに相応しい人を。幸運なことに私が依頼した人の殆どは引き受けてくれたよ。

そして、ツアーのミュージシャンは何でもこなさなければならない。ジェレミー・コルソンはアルバムでもプレイしている。彼は…もし私の耳が聴こえなくなったら、それは彼のせいだね。(笑)彼のヒットは強力で、これぞロックンロールというものだ。彼のタイムときたら、30年間で一度もビートを外したことがない。

フィリップ・バイノーは全てに熟達したミュージシャンで絶対音感がある。私がどのような演奏をしようとも、柔らかいブランケットで包んでくれるのさ。デイヴ・ウェイナーもそうで、彼の記憶力は凄いんだ。私のパートまで全部記憶してくれている。

だから私はとても恵まれているね、素晴らしいバンドがあり、スタジオでは優れた才能の集まりが参加してくれた。

アンプとモデリング・アンプについて、あなたの意見を聞かせてください。

私はモデリングは使わないんだ。一部の味付けにについて使うことはあるけどね。スタジオで聴いていると、サウンドに感心することもあるが、戦地すなわちライブで使用するまで、その実力の程はわからないんだ。

(ツアーで使用することは)トラックに他の楽器と共に積まれ、ステージでは他の機材と周波数で競うことになる。スタジオで良かった音が小さな音になってしまうことがある。モデリングはそこで際立ったことがないんだ。補助的なトーンとしての用途ならいいのだが。

私は長年のキャリアで Marshall 使用時期があったし、ブティック・アンプも試してきた。でも完璧に私のものだという音に出会えなくてね、私はレガート・タイプのプレイヤーだ。スムースでディストーションがかかって、少々コンプレッションの効いたサウンドが欲しい。

Carvin と開発を始めて長くかかったが、Legacy を完成させた。これは完璧に私の求めるものにマッチしていた。だが、彼らが事業を閉じてしまったので、また私はアンプ探しをしなくてはならなかったのだ。それでブティック・オーディオの会社をみつけた。彼らはブティック・アンプの会社とライセンス契約してプリアンプのモジュールを作っていたんだ。

そこで、Synergy とエンドーズ契約して私の Legacy を作ったんだ。少々手を加えたけどね。私は何か録音するときはDIで録っておくんだ、そうするとリアンプできるからね。(レコーディングで)別のアンプを鳴らしていたときでも、結局リアンプして私の Synergy に落ち着くことはよくあるんだ。

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あなたは自分自身のユニークなサウンドが常に頭にあり、ギアもそれを実現するために開発しましたが、きっと僕がJEMを手にとってもあなたのサウンドにはならなくて僕の音がするんでしょうね。

ああそうだ!かつてエディ・ヴァン・ヘイレンが私のスタジオで私のギターとペダルとアンプ、マイキング・システムで弾いたときにも、それはエディの音だった。

他にも、かつてステージに私とサッチがいたとき、ブライアン・メイがやってきたんだ。1音でわかったよ。ビリー・ギボンズが私とサッチの弾いているところにやってきたこともある。1音でそのビッグな音はビリー・ギボンズだった、私とサッチは顔を見合わせたものだったよ。

もし、あなたが時間を遡って、もう一度その瞬間を体験できるとしたらどこに戻りたいですか?また、過去に戻って何か1つだけやり直せるとしたら、何がしたいですか?

面白いね。そうだな、私の音楽人生で最も深遠な瞬間というのは、始まりの記憶で4~5歳の頃だったか、ピアノのキーを押してみたことだ。右に行くと音が高くなり、左に行くと低くなった。

このときに2つのことが起こったのさ、お告げを受けるようにね。1つは音楽の構造を瞬間的に理解したことだ。もう1つは音楽創造は無限だということを同時に感じた。イデアが尽きることはないんだ。幼かったからエゴもないし、未来を考えることはなかった、ただ人生が開かれたような感覚だ。私には無限に音楽を創造することができるという自由の閃きだった。

過去に戻って何かを修正するかだが、お決まりの回答としては何も変えないというのがあるだろう。それが真実だと私も思うが、もちろん私にも遡って変えたいこともある。でも結果的には全てそれで良かったのだ。

対策としては、今を変えればいい。それが唯一変更可能な時間だ。方法としては、過去の自分のやり方を念頭に別のやり方を認識すること、そして変えてみるのだよ。

例えば自分の若い頃のインタビューを振り返ってみると、26、27歳の頃、とても気取っている。こいつは誰だ?ジャック・バトラーか?と思うね。

その頃の何が今振り返って嫌なのですか?

私は名声をつかみ、エゴに囚われた経験とそこから突き落とされた道のりで多くを学んだ。それは個人的に絶対に必要な経験だった。

誰もがそれぞれ異なっていて考え方が違う。それが我々の個性で創造的性質だ。私にはそれがわかっていたから、他人がしていることは気にならなかった。他人との競争というのは考えなかった。ところが私は人気や名声に持ち上げられ、エゴに囚われてしまった。そして時代が変わり、突き落とされたのだよ。

その状況下でも、私にとって良いアイデアは良いものであり、私のすべきことは自分にとって良いアイデアを見つけ、作品を生み出すことだった。それだけが私の欠点を補う取柄だったから。

自分が心から愛する重要なことであれば、それは作品に入り込む。そしてそれは、一部の心から共感する人々に届くのだ。それこそが自分の本当の聴衆なんだ。私には長年に渡って、そのように私をサポートし、ついてきてくれるファンがいて幸運だったよ。

あなたの話を聞いてとても感心しているのですが、あなたはエゴに囚われても、それを自己分析して理解し、音楽に対する尽きることなき見解から自分そしてオーディエンスに音楽を届けています。

私にあったスーパーパワーというのは皆と同じ力で、それは自分を刺激するアイデアに従うという決断をすることだ。自分に実現可能だと思う刺激的なアイデアを追求するんだ。これは誰にも当てはまることで、何をするにしても、自分のしていることを楽しむということだ。

そこには恐れはない、成功するかどうか、などという未来に対する投影がないのだ。熟達するために何かをしなくてはならないと、自らを強制して取り組むというのは、その過程を楽しむことはできないだろう。しかし、情熱に突き動かされるのであれば、それは強力だ。人々が理解するのに最も難しいこととは、恐れることなど何もないということだ。

とても説得力があります。僕は作曲時にスランプになることがあって、「これは自分の過去作に匹敵する作品だろうか」と思うのです。

それはよくあるんだ。創作の行き止まりに入り込んでしまうことはある、スランプだ。そこに恐れが入り込むんだ。もう良い曲が書けなかったらどうしよう?とね。これがエゴだ。私は全て経験した。

それで言えることは、創作過程とは季節のようなものだ。インスピレーションが湧き、その創作過程には満ち引きがある。潮が引いたとき、創造の力は回復途上で準備中なんだ。その時期は休養で、やがてはインスピレーションがみなぎるのだと思うこと。

心配するには及ばない。なぜなら自分の過去の作品群が示すのは、やがて波は来るから準備しておけということ。恐れていては波を見逃してしまう。そしてインスピレーションが湧いても、恐れから失敗を恐れたり、様々な思考を招いてしまうが、思考の質を自ら変えることが君にできることであり、それが重要だ。

素晴らしい考えです。最後に Hydra ギターについて教えてください。

映画『マッドマックス』を見て思い付いたもので、Ibanez が私の構想を実現してくれた。そのギターで曲を書くことが目的だったが、スタジオにあった Hydra の前を通る度に早く弾けと言われているようだった。

遂に6週間程の時間を作って取り組んでみたよ。初めは不可能に思えたことでも、一旦取り組んでみれば、不可能ではなくなるのだ。パート毎に取り組んでいったよ。時間さえかければ、私には可能だとわかっていたからね、結果には満足しているよ。

今日は本当にありがとうございました。あなたの話にはとてもインスパイアされます。お話ができて光栄でした。

こちらこそありがとう。実は君に質問があるんだ。君は今は何をしているんだい?今後の予定は?

現在の Vulfpeck と Fearless Flyers and Cory Wong の活動を拡大していきたいと思っています。Fearless Flyers のニューアルバムの作曲もしていますし。レコーディングの準備とか。今はツアーを終えたところで、自分のサウンドアイデンティティを確立していきたいですね。

君には色々聞きたくてね、もう時間がなくなってしまったが。

あなたの求めでしたら何でもしますよ。ぜひいつか何かご一緒したいですね。

私のニューアルバムはもう仕上がってしまったが、次の制作では君に何か(音源を)送りたいんだ。

もちろんやります。ぜひお互いの作品で弾きましょう。

うれしいね、やろうじゃないか。でも Hydra じゃないけどね。(笑)次はどこかで会おう。

ぜひ、このあと連絡先を交換しましょう。今日はありがとうございました。

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インタビューの締めが凄いことになっていましたね。ヴァイ先生はコリーに関心ありまくりのようで、逆ナンパ状態でした。(笑)

ヴァイ先生が他のミュージシャンのアルバムに参加したことは多数ありますが、ヴァイ先生のスタジオアルバムにゲスト参加したギタリストは何人いたでしょうか?(デイヴは先生のバンドメンバーなので除外すると、B'z の松本さんだけ?)コリーと先生のコラボがどのような形で実現するのかわかりませんが、これは楽しみです!

ちなみにコリーの曲にサッチがゲスト参加した曲はこちらです。