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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

アンディ・ティモンズ ギター人生の初めに手にした300ドルギター3本

アンディ・ティモンズが今年の7月にリック・ホリス氏のポッドキャストに登場しました。3時間超にわたるトークの中から、これまでに聞いたことのない面白い話を一部抜き出して、和訳してみました。

 

アンディはやはりギアヲタですね、ギターのマニアックな話をするときの楽しそうな顔!

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人生初のギグは学校のダンスパーティだったそうですが、その時のギアは何だったの?

ドラマーのいとこがギタリストで地元で人気のローカルバンドをやっていた。それで僕は彼のお下がりのギアを買ったんだ。それは ACOUSTIC のアンプヘッドで、150Wか100Wだった。ソリッド・ステート(トランジスタ回路)で、4x12キャビネット2つ。僕は 青い Dallas Arbiter Fazz Face を持っていて、それを繋げたよ。

初のギグで4x12を2つだって?!

当時は違いも何もわからなかったよ。ギターはクリーム色の Electra レスポールだった。メープルネックのボルトオンで、アーンズビルの楽器店で買ったんだ。300ドルだったんだけど、ブランドネームの入ったギターを買ったのは初めてだった。質流れの品で、僕はそれを買うために床屋で掃除の仕事をしたりして貯金して買ったんだ。

悲しいことに数年後にそのギターは盗まれてしまった。仕事に行く朝、僕が車に置いていたところをね。それ以来、同じものを見つけることはできなかったよ。70年製の Electra は「訴訟ギター」と呼ばれていた。それらは Ibanez Guitars と同じ工場で創られていたんだ。

(訳者注:「訴訟ギター」について興味深いお話は下のリンクでどうぞ)

flypaper.soundfly.com

オーストラリアの友人にこの話をして、このギターを見つけたら教えてと言っていたら、ほぼ同じでヘッドシェイプだけが違うギターを見つけたと教えてくれた。それが Ibanez だったんだ。それは入手できたんだけど、まだ Electra のモデルを探しているんだ。誰か知っていたら教えて欲しい。

16~17歳でギターを盗まれるという体験は辛いものだったよ。ナイフで刺されたような感じで、それまでにないものだった。でも僕は大人のバンドに加わっていたので、彼らは保険に入っていた。インディアナのバンドが保険に入ってるなんて驚きだろう?(笑)

とにかくそのお陰で僕は新品のレスポールを手に入れたんだ。見事にアップグレードした訳だよ。まだ心の傷は癒えなかったけどね。それ以来、決してギターを車に置き去りにしないようにしているよ。必ず持って歩くんだ。

当時のレスポールから今のスーパーストラト・ギターへの変化はどんな進化だったのかい?

僕はカレッジの2年間をインディアナのアーンズヴィルですごしたんだ。16歳の頃から地元のジャズギター奏者のレッスンを受けた。地元のカレッジにはクラシックギターの専攻コースがあったんだ。

バークリーやインディアナの Ball State University の音楽専門校への進学を考えた。母が僕の進学を望んでいたからね。でも地元なら当時のバンド活動をしながら通えると思った。それでクラシックギターのことは何も知らないので、図書館で調べ物をしてオーディションに臨んだよ。ナイロン弦のギターは持っていなかったからレスポールで。(笑)それで合格したんだから、彼らとにかく学生が欲しかったんだろうね。(笑)

僕はギターは弾けたけど、クラシック・ギターを持たない生徒を持った僕の担当教師だった人は気の毒だったね。それで父が援助してくれて Dauphin ギターを買ったんだ。これまた300ドルのナイロン弦ギターで、これはまだ持っているよ。

そこで2年学んだのだけど、やがてマイアミ大学の評判を耳にするようになった。Dixie Dregs が結成されたり、パット・メセニーが行ってたのを知って行きたくなったんだよ。そして編入するとすぐにトップ40バンド(ヒット曲を演奏するギグバンド)に入った。83~84年頃のことだ。ストラトを持っていないとナイル・ロジャースサウンドは出せない。それではギグを見つけられないんだ。

それで現地の楽器店に行くと、ちょうど Fender が(低価格ブランドの)Squire を出した年だったんだ。それで Fender Squire のストラトを買った。皆、嘘だと思うだろうけど、300ドルでね!(笑)黒いピックガード/ピックアップでメイプルネックだった。今でも僕の最高のギターの1つさ。

初年度の Squire はネットで価格が上昇しているんだよ。バックアップを買おうとして知った。シリアルナンバーが「SQ」で始まるものは83/84年に日本で製造されたものを意味する。いいギターだよ。

話を戻すと、僕はその Squire にすぐ黒い EMG ピックアップを載せた、だってルカサーが EMG を使っていたからね。(にんまり)その頃からストラトのフィールがしっくりくるようになった。

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必要以上のギターを持っていると言っていたアンディ。でもアンディの場合はヴィンテージのコレクターということではなく、自分の音楽人生に何かしらの影響があったり、思い入れのあるギターを収集しているそうで、アンディらしいですね。

スティーブ・ヴァイ 「自分がやりたいと思うことをやらないなんてことにはしたくない」

スティーブ・ヴァイが今年の4月に音楽学校を開設しているロブさんのオンライン・インタビューに応えました。

 

インタビューの約8割はヴァイ説法のセッションとなっており、内容としては、「恐れ」の正体がエゴであること、「今に在る」状態になることによって自分の創り出す疑似現実を認識することができる、といった 100% VAI説法 ではお馴染みのスピーチが聞けます。

詳しい内容はこちらの過去記事でどうぞ。

staytogether.hateblo.jp

インタビューの終盤では軽い選択クイズと音楽学生たちに向けた有難いアドバイスが聞けます。今週はこの部分を和訳して以下にまとめてみました。

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それでは二者択一質問です。ハムバッカー or シングルコイル?

ハムバッカー

トレモロ or …あなたにこれを訊く必要はないですね。

22フレット or 24フレット?

24

ピックは 薄い or ミディアム or 厚い?

厚いの

(弦のゲージ)009 or 010 or 011?

009

フレットボードは ローズウッド or メイプル?

場合によるな、ローズウッド。

アコースティックなら Tayler or Martin?

Tayler

アンプをもっと鳴らすなら、ゲインを上げるかペダルを使うか?

両方

真空管)6L6管 or EL34管?

EL34

アンプは100W or 25W?

100W

ペダルでは ディレイ or リヴァーブ?

ディレイ

同じく、ファズ or オーバードライブ?

違いは何だい?

ファズ・フェイス か チューブ・スクリーマーかという感じ。

多分、オーバードライブ

フェイザー or コーラス?

いい質問だね!(少し考えてから)コーラス

ワウ・ペダル or ワーミー・ペダル?

難しいこと訊くね!多分、ワウ。

ここからはバンド関連です。The Beatles or The Rolling Stones

The Beatles

ジョン or ポール?

ジョン

デヴィッド・ボウイ or ボブ・ディラン

これは難しい。(少し迷って)ボウイ。

Led Zeppelin or Pink Floyd

Zeppelin! (大声)

Pink Floyd のアルバムを1枚選ぶなら、『The Dark Side Of The Moon』or 『The Wall』?

『The Dark Side Of The Moon』でも私は Pink Floyd 派じゃないんだ。

そうですね、Zeppelin には全てに通じる何かが彼らの作品にあります。

ああ、私は成長期に Pink Floyd を聴いたけど、ファンという程じゃないんだ。今では好きだけど、あの頃はロックしたかったから。

近況を教えてください。

今は Patreon に時間を注いでいる。私がレコード会社を創ったとき、ミュージシャン向けに全てを網羅した総合的な巨大ウェブサイトを創りたいと思っていたんだ。いまだに存在していないのだが、1千万ドルもかかりそうだった。それは無理だと思い、プラットフォームができるのを待っていたんだ。

ミュージシャンにとって自身の創造的世界を創り、そこにファンが集い、物を得たりできるところだ。そこで私のチームが様々な媒体をチェックしたところ、Patreon が私に最も合ったプラットフォームだとわかったんだ。とても気に入っているよ。今は月額5ドルなんだ。

www.patreon.com

知っています。多くの価値あるコンテンツがあります。

金のためにやっているのではないんだ、(サブスク料金は)運営資金程度にしかならない。けれど、様々なコンテンツを1箇所に集めるというアイデアがとても気に入っているんだ。多くの時間をかけているよ。

それから、ツアーに出たいので、ソロアルバムの制作に入っている。"Candle Power" や "Knappsack" など何曲かはもうある。あと10曲ほどのアイデアはあるので、アルバムを出してツアーに出たい。

あの2曲はとても衝撃的でした。あなたは常に新たなチャレンジをしていて、とても刺激をもらえます。それにあなたのアコースティックなボーカル曲も好きですよ。『Ultra Zone』の "I'll Be Around" とか。

ありがとう。自分の歌声は好きだが、声が限られるんだ。自分のアコースティック・アルバムで歌うぐらいは大丈夫だが。まあそれは、私のハードコアなファン向けのものだ。創造ということで言うと、自分がやりたいと思うことをやらないなんてことにはしたくない。

多くの時間を使ってなぜ今 Patreon をやるのかと人に訊かれるが、私が今やりたいことだからだ。自分の創造的欲求に導かれるのだよ。

最後に、君の音楽学校の生徒たちにこの言葉を伝えたいと思う。

同じミュージシャン志望の仲間と肩を並べて学ぶ環境にいることは特権だ。特別な時間なんだ。私も経験者だから知っている。後になって振り返るとわかるのだ。君は今、生涯の友人を作っているのだ。やがて音楽ビジネスや他で生涯連絡を取り合うだろう。ここにちょっとした為になる対処法を教えよう。

自分の周りのミュージシャンを支援しよう。ただ親切に親しく接すればいい。これはとても強力だ。そうされることでどんな気持ちになるのか君にはわかるだろう。

特に自分の腕が立つのかそうでないのか、不安になっているとき、人の支えがあるということはどんなに良いか。支えを感じることはとても重要なことだ。これは何かの見返りを得る為ではなく、君がそうすることで君自身が良い気持ちになれるのだ。

誰かが必死で努力して挑戦しているとき、君には2つの選択肢がある。1つは競争本能をむき出しにして、相手を批判すること。もう1つは親しく支援する方だ。自分をなだめて偽るのではなく、誠実でなくてはならない。自分を相手の立場に置いて考えるのだ。

これができれば、君の音楽学校における全ての経験は学びもプレイも人との交流も、また生涯の絆を創る友人も、全てが強力になるだろう。

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終盤のお言葉はまるで Vai Academy の生徒に校長先生が入学の祝辞をお話になっているようです。音楽学校だけでなく、全ての人間関係に応用できそうですね。ヴァイ校長に感謝。

最新の情報ではヴァイ先生のニューアルバムのレコーディングが進んでいることがわかりました。最近、ベーストラックとドラムトラックのレコーディングをしているようです。また、このインタビューから、10曲以上のフルレングスのインスト・ソロアルバムだということが確認できました。完成が楽しみです!

スティーブ・ヴァイのギターレッスン「どのように真の意味で聴くか」

スティーブ・ヴァイRage Against the Machine のギタリストで社会/政治活動家でもあるトム・モレロのPodcastに登場しました。

 

Part 1 と 2 に渡る2人の会話は、Part 1 がヴァイ先生の音楽キャリアを語る内容で、Part 2 は2人の共演経験など、ディープな話に入っていきます。

Part 1 の内容は当ブログでも何度か取り上げているので、レアな内容が聞けたPart 2 から興味深かった内容を一部和訳してみました。

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Tom Morello (TM): 俺らが初めて共演したときの話をしよう。スティーブ・ヴァイは愛すべき人物でありながら、粘り強い人でもある。Musicians Institute であるイベントを開こうとしていたんだ。あなたから電話をもらって「こういうことをしようとしている」と聞いた。こりゃ映画『クロスロード』になるって思った。あなたのことは大好きだけど、それはやりたくないと思ったのさ。

それでもあなたは諦めずにまたメールしてきた。それで、「じゃあ、ずっとトークするってのはどう?」って返してみた。俺はロックとギタープレイに関しちゃ過多のインテリだからさ。そしたら「いいよ!」って言われて驚いたよ。しかもメンバーはトレヴァー・ラビンスティーヴ・ルカサー、スタンリー・ジョーダンだった。あれができて良かったよ。

(訳者注:2000年9月21日、 The Los Angeles Chapter of the Recording Academy と Musicians Institute の主催により、Guitars in the Round と題してマスタークラス、ジャムセッションが行われた。ジョー・サトリアーニも参加している)

Embed from Getty Images  

イベントの前日に連絡があってさ、「リズムセクションが要るね、スティーブみたいにアンプを持って来て」ってことで、こりゃあ彼は演奏なしの話を反故にしたってことか?と。「デモンストレーションが必要になるかも知れないから、念のために」ってことで。もう逃げようがなかった。実際に映画『クロスロード』になったよ。全員の分のアンプがあってさ。

俺に言わせるとスティーヴ・ルカサーは同業者でも最も優れた音楽理論家で、他の誰よりもセッションをこなしてきた達人だ。スタンリー・ジョーダンは多分、史上最もテクニカルな技術の高いプレイヤーだ。指を10本使ってショパン風の(タッピングを)するよね。そしてスティーブ・ヴァイだろ、それで俺だよ。R2-D2 やらアヒルが鳴いてるような音を出すのが俺。

それでサウンドチェック、俺のはGコードを一発弾いて「OK!」だった。スタンリー・ジョーダンなんて譜面全部を弾いてた!

Steve Vai (SV): ああ、そうだった!思い出したよ。

TM: しかも彼はあちこちで止まって(PAと)調整してたんだ。スティーブ・ヴァイに騙された!と思ったよ。でも結果、俺たちはとても素晴らしいときをすごした。

SV: 皆いいかい、我らのトムはあの状況で、私の微かな記憶によると、君のプレイは素晴らしかったよ、正にあそこで必要なプレイだった。君の素晴らしいところはそこさ、必ず見事にやり遂げること。

TM: ハハ、まるで映画『クロスロード』になった。トレヴァーの反応は温かかったのを覚えている、もちろんあなたも。ルカサーはびっくりしていたね。スタンリーは「それが音楽かよ?」って顔してた。(笑)

SV: ショウの後で彼がやってきて、「観客に警告しておくべきだったのでは」と言っていたよ。(笑)

TM: Gコードがうるさいからって!(笑)

ところで俺たちには共通の知人がいるよね、ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』のクリエイターのダニエル・ブレット・ワイスだ。彼にギターレッスンをしてあげたそうだね。

彼から電話があって、スティーブ・ヴァイからレッスンを受けるからどうしたらいいかと訊かれた。それで「彼を感心させようなんてするな。ただ行ってプレイしたら、為になるアドバイスをくれる」と言っておいた。でも彼はあなたからソロを習いたいとか言ってた。

それで彼はあなたのところに行って、何か弾いてみて、と言われて弾いたら、「いや、チューニングし直し」と言われた。それでチューニングしてからまた弾くと、「そのコードはチューニングが合っていない。コードのイントネーションを注意深く聴いて」と言われた。そこから何度も、更にベンディングしてもずっとチューニングを言われたそうだ。まるでマントラ真言)のようにね。

彼は最初はフリジアン・スケールやらをどう使いこなしてソロを弾くか、みたいなことを学ぼうと思って行ったのだけど、その代わりに「どのように真の意味で聴くか」という瞑想の授業になったそうだ。チューニングが北極星のような道しるべになる体験だったと。

世界には様々な種類のギタープレイヤーがいて、そこで競うには様々な方法があるけれど、俺はこの30年間チューニングを保って弾いたことが無い。(笑)俺はチューナーを持っていないんだ!だからチューニングが合ってない!

SV: 私はいつも真に弾きたいと思っているギタープレイヤーに応えるんだ。楽器を愛している者にね。彼らがどれ位熟達しているかは関係ない。

ダンにはヌーノのライブで会った。少しジャムしたんだよ、彼は実に熱心だった。私はドラマのことを何も知らなくてね、ヌーノに『ゲーム・オブ・スローンズ』の監督で脚本家であるダンに会って欲しいと頼まれた。

私はダンに「それってビデオゲームなのかね?」と訊いてしまったよ。(笑)(全米大人気のドラマなのに)私はテレビを観ないから知らなかったんだ、そしたらダンが最初のシーズンを送ってくれてね、その結果私はあのドラマ全シーズンをまる2回観たんだよ!

ダンは全くのギター青年でね、彼にレッスンをしてあげたくなったんだ。彼はギタープレイができる、しかし多くのプレイヤーが長きにわたって妥協してしまっていることを教えたくてね。チューニングが合っていないとプレイは難しい。ギタープレイヤーなら指で解決するものだ。楽しい時間をすごしたよ。

TM: 彼はあのレッスンを肝に銘じているようだ。あなたのプレイを注意深く観察したと。プレイに注意を払い、「今にある」ということにね。

SV: ああ、彼はいいプレイヤーだったよ。

TM: 俺が最後に観たあなたのコンサートは Generation Axe だった。ギタープレイヤーの夢のライブだ。とても個性の強いプレイヤーの集まりだよね。何と言ってもザックがワイヤレスになった公演だ!ロビーやら階段やらいつもどこかにいる。(笑)イングヴェイがいる側のステージは何だか中世のヴァイブがあるね、彼用のスモークマシンと照明がある。

SV: それらは彼がリクエストしたものだ。私はメンバーの誰もが自分のショウを観せて欲しかったんだ。もしオーディエンスの中に入っていきたいなら、好きなだけやって欲しかった。ヌーノが話したいなら好きなだけ話せばいい。

イングヴェイはとても個人主義の人物だが、彼は素晴らしいんだ。面白いし、頭が切れる。音楽脳があって、プロに徹している。彼は客を喜ばせる術を知っていて常にやり遂げる。君もいつか参加してみないか?

君はいつも素晴らしい活動をしている、音楽への貢献をありがとう。

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緊張してヴァイ先生のギターレッスンを受けに行って、冒頭からずっとチューニングを指摘され続けたら心が折れてしまいそうですが、ダンさんはその指摘の裏にある深い教えを学んだようですね。

ダンさんは Fender社が特別制作した Game of Thrones の限定ギターでドラマのテーマ曲を弾くセッションにも登場しています。左端の帽子を被っていない白いテレキャスを弾く人物が彼。ヌーノやトムも参加。(下の動画参照)

 

この限定ギターの「ラニスター家」デザインのギター(ヌーノが弾いているもの)をヴァイ先生は購入しており、「Fender がこのような限定シリーズから1本だけを分けてくれることはレアなんだよ」と以前お話されていました。当初は先生の Fender コネクションかヌーノの力添えかと思っていましたが、ダンさんの力添えかも知れませんね。

関連の過去記事はこちら。

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Whitesnake Part 2 ディノ・ジュルーシック「そのビデオをデヴィッド・カヴァーデイルが観たんだ」

 先週に引き続き、Whitesnake 加入が発表された、注目のディノ・ジュルーシックの最新インタビュー和訳です。

 彼が全米興行収入トップ5に入るTSOに参加したいきさつや、ディノがカヴァ様の目にとまったきっかけとなるビデオなど、興味深いお話でした。

 

 

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2016年ツアーから参加したTSOについて、いきさつを教えてくれる?

2016年2月に父が部屋にやってきて、「Trans-Siberian Orchestra
って知ってるか?」と言うんだ。「もちろん、ラッセル・アレン、ジェフ・スコット・ソート、アル・ペトレリだろ、何で?」と訊くと、新しいシンガーを探していて、オーディションに呼ばれているとのことだった。即座に「絶対合格してみせる!」と言ったよ。

課題曲は Savatage の "Handful of Rain" だった。最高のオーディション曲だ。彼らが送ってきたのはピアノバージョンで、バンドのつもりで歌ってくれとの指示だった。ビデオを送っても2週間返事がなくて、失敗したかと思っていたら、ポール・オニールからのメッセージがきたんだ。

「8曲送るから、対面でオーディションするまでに覚えてくれ」というもので、準備してフロリダに飛んだ。1曲目は "Good King Joy" で低音から始まるんだ。それを聴いて選考者が「低音も出るのね?高音のためにオーディションに来てもらったけど、低音も歌えるのね。あなた多分合格よ」と言われたんだ。数日リハーサルしていたら、ポール・オニールが来て彼と何曲かやった。デヴィッド・カヴァーデイルと並んで最も生粋の本物さ。

ポールとは "Hey Can You Hear Me Now" もやった。彼はスティーブン・タイラーやレイ・ギランなど何人ものシンガーでこの曲を試してきたけど、彼の思い通りのシンガーをみつけていなかったんだ。低音のパートから高音へと持ち上げていかなくちゃならない。

僕は両方できるから、彼は僕で満足したようだった。この曲をレコーディングするためにタンパへ向かう日だったよ、彼の訃報を知ったのは。実際に2018年にはバンドバージョンであの曲をレコーディングしたんだ。ツアーではあの曲をアル・ペトレリとやった。コロナで全てが止まっているから、あのレコーディングがどうなったのか、知りたいと思っている。

 

今年の冬はTSOのツアーがあるのではないかと思うけど、まだ何も連絡はないので、家で待っているところさ。TSOは僕のキャリアに扉を開いてくれた。多くの人と知り合ったし、最初のツアーでポール・ロジャースと共演したんだ。クレイジーだよ。TSOは神に与えられたチャンスで、メンバーはまるで家族のようだ。

SNSによると君はこの数年で50曲以上書いたそうだけど、今後それらをレコーディングしてリリースする予定はある? Whitesnake もあるので、その辺りは調整がいるのかな?

今はリリースの予定はない。法的なステップを踏んでいるところだから。多くの曲はプログレッシブな一方でキャッチーなもので、歌詞もリスナーが共感できるものだ。凄くテクニカルな曲でもOKさ。

コロナ後にやってみたことがある。複雑なインストゥルメンタル曲を取り上げて、そこにボーカルを加えてみたんだ。ヴァージル・ドナティ、キコ・ルーレイロ、Liquid Tension Experiment の曲でやってみた。

 

結果は素晴らしいものになったよ、誰もそれらがボーカル曲になるなんて思わなかったものだ。マイク・ポートノイもジョーダン・ルーデスも気に入ってくれた。実際にそのビデオをデヴィッド・カヴァーデイルが観たんだよ、そう聞いた。(訳者注:上のビデオ参照)

来年5月から Whitesnake のツアーだそうだけど、それ以外に君のソロやプロジェクトなどの活動予定はあるの?

法的問題が片付くまでは難しいんだ。長らく計画していたアルバムもあるんだけど、それまでは棚上げだ。素晴らしいオファーも、参加できなかったアルバムの話もあった。クールなギグの話もあるんだ。ゲスト参加したアルバムでメロディと歌詞を書いたけど、それはもうすぐリリースだ。ジェフ・スコット・ソートのデュエット・アルバムも、もうすぐ出ると思う。彼とミュージック・ビデオも撮る予定だったけど、レーベルに拒否されたんだ。

音楽以外のことでも、時間があればやりたいことはある?

譜面を書いて作曲をやりたいね。シンガーとしての影響とは違って、ギターで作曲するとリフ主体になるけど、キーボードではフュージョンプログレッシブの要素が強まるんだ。音楽でやりたいことは沢山あって、ロックに固執してはいない。

音楽以外では、卓球に時間を使っている。それに大のテニスファンでテニス観戦に音楽よりも時間を使っているかも。大のロジャー・フェデラーのファンなんだ。

オリンピック・テニスは観てる?

もちろん。多分、ジョコビッチが世界制覇するだろうね。彼はセルビア人だから、(僕と)ほとんど同じ言語を話すんだ。こう言うと(セルビア人との紛争の過去があるから)クロアチア人に怒られるだろうけど。構わないよ、国籍よりも人間自体が重要なんだ。好きな選手のテニスの試合があるときは誰にも邪魔されず一人静かにテレビ観戦したいよ。

テニスはプレイするの?

するよ、父がテニスのコーチだった。でも卓球の方がずっと多くプレイする。前のTSOツアーではラッセル・アレンを卓球で酷く打ち負かしたから、聞いてみて。(笑)今年TSOのツアーがあったら、インスタグラムでラッセルとの卓球戦を中継するから見てよ。ラッセルは凄く面白いよ。一方で彼は最高のシンガーの1人だ。

(インタビュー終わり)

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ディノ君の Whitesnake 入りには驚きました。バンド側の発表にも、今回のディノ本人のインタビューにも彼がバンドで何をするのかは一切触れられていません。

カヴァ様とボーカルを分け合って、もうカヴァ様が出せない高音を担当するということ?そして将来的には、KISSで検討されているのと同様に、カヴァ様のツアー引退後もバンドはディノがボーカルでツアーを続けるのでしょうか?

それからもう1つ興味深いのは、Frontiers がディノとの訴訟に入り、ディノを排除しようとする動きがある最中にカヴァ様がディノをリクルートしたということ。

ディノとしては活動が停滞する中、来年の収入が確保され、名前も売れるありがたいギグに違いありませんけど、カヴァ様は Frontiers と仲が良いはず。レーベルが排除にかかっている若手アーティストを救ったのはなぜなのか気になります。彼の才能にほれ込んでのこと?

ところで、ディノ君がテニスファンで、その上私と同じロジャー・フェデラーの大ファンと知って、好感度爆上がりしています。(笑)

 

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Whitesnake  Part 1 ディノ・ジュルーシックを新メンバーに来年のフェアウェル・ツアーを行うと発表!

7月28日(現地27日)、来年5月のUK&アイルランドツアーを発表した Whitesnake の投稿には驚かされました。これまでに6月のフランスやスペインでのフェス参加が発表されていましたので、新たな欧州の日程が出てきただけかと思いきや、誰も想像しなかった発表も同時に行われていたのです!

whitesnake.com

「才能あふれるディノ・ジュルーシックを Whitesnake に迎えることに感激している。2年前にザグレブで(前座を務めた)彼を見てからずっと注目していたんだ。皆が彼を気に入るだろう!」

デヴィッド・カヴァーデイル

新たにディノがコラージュで加えられたバンドイメージに彼がマイクを持って加わっている意味を想像して興奮止みません。

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さて、ディノは若干29歳ながらにHR/HM好きには優れたボーカリストとして知られた存在。近年注目を集めたのが、2020年1月に発売されたジョージ・リンチとのプロジェクトアルバム『Dirty Shirley』。2016年からはTSOに参加、ディノを中心に結成されたバンド Animal Drive で18年にデビューアルバムを発表しています。

しかし、6月18日のディノの投稿によると、15か月の沈黙を破り、彼はレーベルの Frontiers Records と訴訟状態にあること、 Animal Drive は解散したことを明らかにしました。既に完成している Animal Drive の2ndアルバム発売を複数回に渡ってレーベルに延期されたことや、ツアーエージェントとの協力を解消したことが原因のようです。

これを見たときには才能あるディノの将来を心配したのですが、カヴァ様というビッグな雇用主がついたようで、ホッとしました。でも Whitesnake といえば Frontiers Records との良好な関係がありますよね、ディノの訴訟は丸く収まるのでしょうか?

このような驚きのニュースの直後、7月29日にディノの最新インタビューが入ってきました。その中から興味深い部分をまとめて和訳してみました。

 

 

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ディノ!凄い発表があったけど調子はどう?

凄いよ。このことが決まってしばらく経つのだけど、夢みたいだし、「みたい」どころか、本当に夢だよ。ずっと自分が音楽を聴いて育ってきたバンドから突然、デヴィッドから電話が来たんだ、バンドに加わって欲しいと。「どうして?僕はシンガーだよ?」と訊いたら「ああ、君はシンガーだが、キーボードもギターも弾くだろう。君の全ての才能をバンドで活かしたい」と。このオファーを断るなんてできないだろう?もちろんイエスだ。

映画『ロックスター』の正夢みたいだ。

ああ、あの映画は観たよ。あれからデヴィッドがメッセージをくれるんだ。「ディノ、(発表を受けて)お祝いしてるかな?」って。僕は「デイヴィッド、あなたが僕にメッセージを送ってくれることに感激しているよ。僕が Whitesnake に参加することを祝わないなんてことできないよ、信じられない事なんだから」

君の両親は音楽をやっていて、君は幼くして舞台に立ったのだよね?

ああ、父は80年代に有名になったポップロック・バンドのギタリストだった。子供の頃は父に最も影響された。その頃聴いていたカセットは Iron Maiden, Van Halen, 初期のBon Jovi, Whitesnake, ZZ Top, ジェフ・ヒーリー, T-Rex だった。別のカセットもあって、そっちは シェール,フィル・コリンズ, TOTO, ジノ・ヴァネリ, Chicago, Rush, Yes なんかだ。

そうして、ロック、HR、プログ、フュージョン、ポップなんかを全て吸収していった。高校になって Pantera を聴いてメタルに目覚めたよ。Dream Theater でプログメタルに開眼したり。それからHMにのめり込んでいった。

9歳の頃からキーボードを弾き始めた。ギターを始めたのはずっと遅くて、父は何も教えてくれなかったから、独学で覚えた。数年後にベースを始めたけど、ベースの方を盛んに弾いている。歌は1996年(4歳)からずっとやってる。

驚かされたのは君がかなり若い頃から作曲をしているということだよ。

子供の頃から作曲した方がいい。最初はまるでダメなものさ、子供の頃にそれなら構わないだろう?でも歳をとってからそれではキツイ。20か21歳の頃にはクールなコンセプト・アルバムを書いた。クロアチアではかなり受けたよ。(訳者注:91~95年に起こったクロアチア紛争を元にセルビア人兵士が書いた本をテーマとしているそう。元は舞台演劇用に作曲したもの。彼はキップ・ウィンガー級の才能かも知れません!)

という訳で、僕は主にシンガーでありソングライターなんだ。それが Whitesnake に加入して、そのどれでもないなんてね。(笑)でも僕はシンガーなんだ。それに将来的には(デヴィッドと)何か共作するかも知れない。

まあ、僕にはミュージシャンとして複数の顔があるから、どれかを利用できる。僕はシンガーであることだけに頼りたくなかったんだ。僕は全てを自分でやりたかった、ミックスやプロデュース、作曲、楽器演奏も。かつて、僕のバンドが国の別の場所にいて、レコーディングできないことがあって、僕は全部を自分でやる必要に迫られた。今では全て問題ない。Animal Drive の2ndアルバムではベースプレーヤーがプレイできなくて、僕がベースを弾いた。

Animal Drive の名前が出たけど、レーベルと問題になっているね。そのアルバムはまだリリースされないのかい?

ほぼ仕上がってからもう2年になるよ。傑作ができたと思う。何人かの知人に聴いてもらった。プログレッシブでキャッチーで、Kings X と Dream Theather と Winger、それに Pantera と Alice In ChainsTOTO が出会ったような感じ。プログレッシブな曲で始まって、最後は僕がピアノを弾いた、ビリー・ジョエルっぽいタイプの曲で終わる。凄く良いんだ。

でもレーベルとの訴訟になってしまったから、ここでは何も言えないんだ。残念ながら僕の嫌いなビジネスが愛する音楽を台無しにしてしまった。僕はこのアルバムを諦めてはいない、たとえ20年待つことになったとしても、いつか必ず日の目を見せたい。

タイトルは『For The Blind Man』でメインの曲をジェフ・スコット・ソートに聴かせたら、「これは素晴らしい!」って絶賛してくれたんだ。これを誰にも聴かせられないなんて悔しいよ。

ボーカルトレーニングはいつどこでやっていたの?

子供の頃に少し習ったけれど、声変わりしてからは独学だ。どういう訳か高音が出なくなり、手術したことがあるけど、それ以降、声はどんどん良くなっていて、2019年は最高の調子だった。去年と今年はギグがなくなったからわからないけど。

ジョージ・リンチが『Dirty Shirley』で君のトラックを聴いて、もっと上のレベルのギターを弾くべきだったと言っていたね。

ああ、ジョージみたいなギターレジェンドから、あのコメントをもらえるなんてクレイジーだよ。デモを聴いたときに、僕は「ギターのゲインをもっと上げてもらえますか?」ってジョージにメールしたんだ。返事はなかったけど。(笑)

"Higher" って曲を聴いたときは驚愕したよ、7つのセクションがある曲なんだ。これだ!と思ったよ、僕は何か他と違うものが好きなんだ。あの曲は Frontiers がリリースしないと言ってきて、ジョージが激怒したんだ。僕は間に入って、少なくともデジタルのボーナストラックにしてくれとレーベルに言ったんだ。結局はアルバムに入って良かったよ、曲の評判もとてもいいんだ。

 

 

(Part 2 に続く) 

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ディノがカバーしたデヴィッド・カヴァーデイルのボーカル曲を貼っておきます。彼の声はぴったりです!

 

ジョエルとディノはTSO仲間なのですが、まさか Whitesnake でバンドメイトになるとは!

こちらの "Judgement Day" 、ディノは最高この上ないです!カヴァ様の声が最高潮だった頃の迫力を思い出させてくれるよう!

 

ジョー・サトリアーニ Part 2「1つ重要なことはクリーンでダイレクトなサウンドを録音すること」

ジョー・サトリアーニがギタートーンについて語った Guitar Player 誌記事の続き、後半です。

リグについて、レコーディングについて、シールドについて、とギア関連のお話がいろいろ読めます。ギタリストにとっては興味深い内容かも。

www.guitarplayer.com

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当時でも、あなたはボブ・ブラッドショウ(スティーヴ・ルカサーも使用した著名なリグビルダー)の大きなリグを使わなかったですよね?

使ったことはない。私が気に入らないことが、あれには2~3あるんだ。例えば、シグナルの扱われ方が好きじゃない。私には自然に聞こえないんだ。いつも何か奇妙なフェーズが起こっているのを感じてしまう。

私がステージでステレオで鳴らそうとするといつもTV放送や会場でのフェーズ問題(特定周波数帯が干渉されること)にぶつかるんだ。どう処理されるのかわからないんだ。

一方で私の好きなクレイジーなギターのライブ録音は全てモノラル録音だ。シンプルで生々しく、全てがそこにある。音波の干渉なんてないんだよ。

それに気付いたのだけど、いくつかのペダルをラウドなアンプのクリーンチャンネルに繋ぐだけのリグでは、芸術的に洗練されたシステムを使う私の同輩よりも問題が少ないんだ。

ああいうシステムは毎晩故障して、作り上げるにも維持するのにも大金がかかる。ミュージシャンはシステムを世界中に配送するけど、それにも大金がかかる。それに1つが壊れたときのためのバックアップも要るんだ。問題が多いし、やっかいだと感じるよ。

今では多くの人がコンピューターで十分に洗練された録音が可能です。宅録で良いギタートーンを得るコツはありますか?

デジタル・レコーディングは評判が悪いけど、実際はデジタルよりもアナログ録音の方が酷いものが多い。単に年代のせいだけどね。いや、でも数十年したらもっと多くの酷いデジタル録音が増えるかも。(笑)

でもデジタル録音について言うと、1つ重要なことはクリーンでダイレクトなサウンドを録音することを心掛けること。自分のギタープレイから良好な、圧縮されていない、EQ処理されていない、ダイレクトシグナルを得ることができれば、プラグインやリアンプを使って他のアンプを通しサウンドを再構成することができる。

リアンプは私がいつもやることの1つで、ジョン・カニベルチ(サッチの長年のレコーディングエンジニア)が Reamp box を発明してからやるようになった。君がクリップや色付けのない純粋で正統なサウンドを求めるなら、それにより多くの柔軟性が生まれるんだ。

(訳者注:ジョン・カニベルチ作の Reamp box はヴァイ先生も愛用しており、Patreon で公開中の Alien Guitar Secrets: EP11 "Micing Guitar Cabinets" でその使用を実演しています。とても興味深くてギタリストにオススメです)

でも忘れてならないことは、コンテクストが全てということ。"Rumble" で言ったように(先週の Part 1 参照)、ダンスホールに行ったと思っていたらバンドがプレイしていたというような。

もちろんそれは、君が今、現代プログレッシブ音楽をレコーディングしようとしているならイメージが違うだろう。あらゆる状況において、意図がコンテクストを決めるんだ。

ギタートーン談義においてシールドについて余り語られませんが、とても重要な要素の1つですよね?

実際にそうなのに、十分な関心が全く払われていないね。私は常にサウンドに影響を与えないシールドを求めてきた。シールドを比較してよりラウドでフィデリティな(原音に忠実)ローもハイもしっかり出るものを見つけられるだろう。

悪いシールドというのは、キャパシタンスについての話になるけど、ギターシグナルがギターから出てシールドに入ったとき、どんな周波数帯でも切り取られたり減退していたりして欲しくないものだ。

数少ない例外を除いて、短いシールドを使うと上手くいく。なぜならシグナルが移動する距離が短くて済むから、長いものに比べて周波数の損失が少ない。これは簡単に実験できるよ。

Telecaster と Vibrolux (Fender amp) を手に取ってみて。2フィートのシールドと3フィートのシールドと40フィートのシールドを準備する。すぐにどのシールドが良いかわかるだろう。

『Surfing with the Alien』をレコーディングしていたとき、短いシールドを使うというアイデアに熱中した。熱中しすぎて自作の Mogami (著名な日本ブランド)シールドを作る程だった。

ジョン・カニベルチは特定のパートをレコーディングするために、私がプレイする立ち位置の限定される長さのシールドを見つけてくる程だった。それはもう、固定の位置から動くこともできないシロモノだった。4フィートのときもあって、コントロール・ルームの入口に立っていたり。少々クレイジーだったけれど、上手くいったんだ。

最近はスタジオでもツアーでも D'Addario のシールドを使っている。全てのギグでだ。普段よりも大きかったり小さかったりする会場の場合は、私のギターテクのマイクがやってきて「この長さのシールドに換えておいたよ、10フィートは節約できるからな」と言う。私たちは皆、それがどれ程ギターサウンドに違いを生むか、わかっているんだ。

ある種、可笑しいのは、金の無かった若い頃、経済的なことが非常に重要で優先させなくてはならなくて、私は常に安物を使っていた。予算を顧みては、「どうしてもあのペダルが欲しいから、安いシールドを買えば数ドルは節約できる」となっていた。

でもギターシールドを買うというような場合には安いということが常に最良ではない。私がさっき言ったことに戻るんだ。人はギアに刺激されたいものだ。君がプレイして創造したいと思うサウンドをもたらすものでなくてはならない。

だから、もう少しシールドに投資したいと思うのならすればいい。そしてもし「8フィートのシールドではオーディエンスに飛び込めないから40フィートのが欲しい」と思うのなら、長いシールドほどサウンドに影響が出ることを思い出すといい。必ずしも大きい方が常に良いとは限らない、長いことも同様だ。

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サッチの言葉を読んで、やはり良い機材がいいよな、とお買い物に走るギタリストが増えたりして…(笑)

ところで、サッチの話に出てきた「芸術的に洗練されたシステム」をツアーに持参してよく故障して困っているギタリストは誰のことなんでしょうね?G3の参加者かなあ?

 

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ジョー・サトリアーニ Part 1「君の手:ピッキングの仕方、弦の押さえ方、それがトーンの最も重要な決定要素だ」

ジョー・サトリアーニがギタートーンについて語った記事が Guitar Player にて掲載されていました。サッチがここまで細かく機材について話しているのは珍しい気がしますので、以下和訳しました。

以前読んだ本で、サッチにとってリードギターのトーンとは、歌手の声と同じだから、曲で表現したい内容によって最良の音作りをするという話がありました。興味深いインタビューでしたので2週に分けて掲載します。

www.guitarplayer.com

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ギタートーンについての考えを聞かせてください。

トーンは終わることのない魅力的なコンセプトだ。まず第一に、トーンについて興味深いと思うことは、それがいかに主観的なことかということだ。何が良いトーンで、何が悪いトーンなんだ?そこには良いも悪いも無いのかも知れない。なぜなら、あらゆる音楽芸術においてコンテクスト(文脈)こそが全てだからだ。

ギターサウンドを曲に適応させようと考えるとき常に、最初に自問しなくてはならないことは、「この楽器で何が言いたいのか」ということ。自分の意図を考慮すること、それがコンテクストになる。最終的には自分が繰り広げようとするものに対してそのトーンが適切で良いものかをコンテクストが定義するだろう。

例として1958年のリンク・レイのインストゥルメンタル"Rumble" がある。当時誰もこんなものを聴いたことはなかっただろう、親世代はもちろん。コードのシンプルさは完璧で、それによって唸るような不埒なギタートーンを印象付けている。クラブかダンスホールで喧嘩か何か邪悪なことが起きているように聴こえる。今聴いても、違う時代、違う場所に連れ出されるようだ。つまり、あの突出したサウンドにはコンテクストが見事に包まれているんだ。リンク・レイの意図が伝わるよ、彼は何をやりたかったか明確だったんだ。

ギターサウンドで最初に衝撃を受けた曲は何でしたか?

ギターを弾く前からエレキギターに魅了された。でもギターを手に取る前には全ては魔法のようだった。ギターのこともアンプのことも全く知らず、全てが謎だった。ただロックのサウンドが好きだった。

The Who の "I Can't Explain" のオープニングのコードは、正に魔法のサウンドに感じた。シンプルでありながら、同時に「どうやってあれを捕らえたのだろう?」と思わずにいられない。一連のコードが押し寄せ、動くことができないんだ。ああいうものに感じ入る。

何年も後に、Bigsby トレモロユニットを付けた68年製の Fender Telecaster を手に入れた。そしてこれは私が聴いてきたレコードのようなサウンドが出せると思った。やがてネック側PUを活用する方法を考えるようになり、ラリー・ディマジオのPUを見つけたんだ。ニューヨークにいるこの男がハムバッカーPUを作っていて、ノイズの心配なくビッグなギターサウンドにしてくれるという話を聞いた。

あの初期の DiMarzio PUを私のギターに載せることで、トーンに対する私の耳が開かれたし、それで私に何ができるのかという意識も変革した。

それがギターやギアの重要なところだ。それら道具が一連の新たな扉となること。自分が思い描くこと、そして実際に創造するものの間に障害など欲しくはないはずだ。楽器によって励まされ、新たな方向性に導かれることを望むだろう。私にとってはあの68年製 Telecaster によって様々な小さな変化が起こり始めた。

ギターを購入する際、トーンに関してはどんなことを知っているべきでしょうか?

ギタリストは常にある特定のサウンドを得る方法を探すだろう、しかしまず最初に自問すべきことは、「自分はこのギターで何が言いたいのか」だ。そしてそれに対する回答に従うことで、結果として適切なギターを見つけることができるだろう。手に取って心地よいギターを見つけたのなら、手を離すなんて不可能だ。

ギターには何かがあるんだ、しっくりとくるとき、だたプレイしたいと刺激される。自分が気付く前にそのギターで曲を書き、常にジャムしている。それが自分のプレイに影響し、究極のところ自分のトーンに影響するんだ。

ピックアップやアームや、アンプやその他のものよりも何より、ギターを弾く君の手:ピッキングの仕方、弦の押さえ方、それがトーンの最も重要な決定要素だ。だから、真に自分を刺激するギターを持つことの重要性は言い尽くせない。

トーンに関して、アンプ選びで考えるべきことは何でしょう?

購入に際しては注意深く自分のニーズに合っているかを考えねばならない。もし君が多彩な用途を求めるのなら、恐らくそうだろうが、単機能でないアンプを選ぶことだ。あるタイプのサウンドを要するギグがあるかも知れないが、設定の面倒なしで大音響にしたいこともあるだろう。

そして翌日には全く異なるサウンドを要する状況に会うかも知れない。だから素早くそのトーンを出したいだろう。長年にわたるカバーソングの演奏やギターレッスンを経て私はその結論に達した。必要なアンプは柔軟性があり、信頼でき、大きすぎず、複雑でないものだ。

スペースは多くの人にとって問題で、近年のデジタルアンプはキャビネット真空管や変圧器やスピーカー付の伝統的なアンプに対する確実な選択肢だ。

例えば、Fractal Audio の Axe-Fx (プリアンプ/エフェクト)はコンパクトで使い易い。それに直接PAに繋ぐこともできる。今日では多くの人がデジタルアンプを選んでいて、それは彼らがやろうとしていることに合っているからだ。

ペダル・エフェクターと Axe-Fx のような(ラック式)エフェクターの比較についてはどうですか?

私にとっては二者択一ということではない。ペダルは動かせるから、どのようにも設置できる。リヴァーブをディレイするか、ディレイをリヴァーブする?もちろん、それはどんなラック機材でも可能だ。

今の私のスタジオでは Big Bad Wah (ワウペダル)、Shanks のゲルマニウムディストーション・ペダルと小さなチューナーが Marshall JVMプラグインされている。ここで、ワウペダルの前にディストーションを繋いだらどんなサウンドになるかみてみようと思うかも知れない。ちょっとばかり粗雑だが、同時にプレイし易く、時間もかからないだろう。

Axe-Fx はエフェクトをどのようにも再アレンジできるが、少しばかり時間がかかる。基本的にはコンピューターを扱っているのだから、タイプしたり、マウスやパッドを使うことになる。足元に並べたペダルを扱うのとは随分と違うんだ。

そのような違いは脇に置いて、重要なのはサウンドだ。私の最後のツアーでは、ディレイとリヴァーブを扱うのに Axe-Fx を最もシンプルな方法で使うに至った。これの最大のメリットは他のどのデバイスで同じエフェクトをループさせるよりもシグナル処理が優れていたことだ。

私のギターサウンドはまるでエフェクト・ループに繋がっていないように聴こえたよ。つまり、それがシグナル処理の質だ、もしくはユニット自体の質と言おうか。透過性の高さで、システムに入れてもそれに気付かないほどさ。 

(Part 2 に続く)

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