Stay Together

Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

スティーブ・ヴァイ EVO Experience @大阪 iPhoneの中身拝見!

7月10日、スティーブ・ヴァイ大阪公演の前に開催されたEVO Experienceに参加してきました。私は昨年の東京で開催されたEVOには参加したのですが、この時は参加者50名近い規模でした。今回の大阪はそれに比べるとぐっと小規模でより親密な体験ができました。

Billboard Live の会場に入ると、ステージのセッティングがされており、スタッフの皆さんが今夜の公演に向け、忙しそうに準備に追われていました。ステージ前にスツールが用意されており、その目の前にテーブルとイスが並んでいます。私はスツールの目の前に座ってしまいました。どうしよう、ヴァイ先生と距離1mで向かい合うことになる、と思うだけで血圧上昇。

■Q&A Session

ヴァイ先生を拍手でお迎えすると、先生はサングラスを少しずらして、じっくりと全員の顔を見渡しました。今回の来日で開催された東京でのEVO参加者や長年のファンである面々の顔をみつけては、「あー、君また来たんだね」とにこにこと頷いていました。「じゃぁ、質問を受けよう。何でも聞いていいよ」と本当に私の目の前に座ったヴァイ先生に緊張maxです。

Vai_evo_osaka2014

参加者の方々の質問は主にギターに関するもの、創作活動に関するものなどでした。

作曲についての回答をされるヴァイ先生が例として自分のiPhoneを取り出し、アイデアが浮かんだら録音しているボイスメモを何件か聞かせてくれたのは興味深かったです。

「最初から素晴らしい曲を書こうとしてるんじゃない。アイデアが浮かんだらこうして、何も考えずにビートやメロディを口ずさんで、自分のためにメモを残してるんだ。」

創作活動に関するお話は過去のインタビューなどで話してらっしゃった内容に近かったですので、ご興味のある方は過去記事をご参照下さい。 

staytogether.hateblo.jp

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The Story Of Light のアルバム・ジャケットでもお馴染みのアーティスト、アンドレア・コブさんの話からアートについてのお話をされたヴァイ先生はノリノリでした。

「私は絵なんて習ったこともないし、人の顔を描いたりなんてできないけれど、去年、中国に行ってから絵を描きたくなって、何も考えずに描き始めたら楽しくなって、どんどん描いて、さらに色もつけるようになったんだ。」

そう言って、再びiPhoneを取り出し、画像を次々と見せてくれました。その数はおそらく20枚以上。ヴァイ先生の描く絵はファンなら見かけたことのある謎の図形やマークの抽象画が多く、最初は白黒の絵だったものがペイントされてカラフルな絵が多数出現。今年の母の日にピアさん(奥様)のために描いたという赤いバラ(多分)の花束の絵も誇らしげに見せてくれました。

「こうして絵を描くというのは何のルールもないんだ。ただ楽しいから自分を表現しているだけで、上手いとか下手だとか、他人がどう思うか、なんてことは気にもしない。自分を評価なんてしないんだ。

これはギター・プレイでも同じだ。ミュージシャンは成功すると他人の目を気にして自分のプレイの味や個性を失ってしまうことがある。もっと成功しなくてはいけない、もっと売れるレコードを作りたいっていう過大な期待に押し潰されずに、自分を自由にしてアイデアに熱中する喜びを見出すことだ。」

 

そんな中で、私は少し毛色の違うことを聞いてしまいました。以下がその内容です。

私「今年、あなたはロシア、ウクライナをツアーでまわりましたね、あれは他のアーティストが皆ツアーをキャンセルしている時期でした。ツアー後にあなたのオフィシャル・サイトであなたのコメントを読みましたが、あなたの信念を感じて大変感動しました。しかし、あのように困難な状況でどうしてあそこへ行くという決断ができたのですか?とても勇気のいることです」

先生「まず最初に、私はそれほど危険だとは思わなかったんだ。本当に危険であれば行かないよ。でも報道されているほど危険ではないと思ったんだ。

そして、私がアメリカ人であるとか、白人であるとか、イタリア系であるとか、宗教が何か、身長がどれだけあるとか、ミュージシャンであるとか、政治思想が共和党なのか民主党なのか、そういった情報というのは人を表すごく表面的なことでしかない。そのラベルの下にはずっと深くて広い人としての中身があって、それこそが真に重要なものであり、それはあなた方についても、ウクライナの人々についても全く同じだ。

政治なんてものにはうんざりだよ。子供がおもちゃの取り合いをしているようなものだ。
それに私はミュージシャンだからね、演奏をして人々を楽しませるのが仕事だ。ウクライナの人々だって、真の中身のところでは純粋に音楽を楽しみたかったんだ。

でも実は、私たちがウクライナを去ってから2日後に戦闘が始まって、主要道路や空港が閉鎖されてしまったんだ。」

私「危機一髪じゃないですか!」

先生「確かにそうだね、でもあと1秒のところで列車に乗り遅れるのも5マイル手前で間に合わないのも一緒だろう?だから、無事に帰ることができたし、問題ないよ。言っておくけれど、別に「私はスティーブ・ヴァイだ!紛争地域へも駆けつけるぞ!」(片手を振り上げてスーパーマンのポーズ)なんて気負った訳でも何でもないんだ。ただそれほど危険ではないと思ったから行ったんだ。」

以上がヴァイ先生との会話です。質問してからずっとヴァイ先生を見つめてトランス状態だったので、自分の質問を日本語で言いなおすことを忘れ、気が付けばヴァイ先生が私の質問を通訳さんに説明して聞かせてくださってました。(汗)

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上の質問の元になったヴァイ先生のコメントは、今年のロシア・ツアー時にメディア取材に答えたもので、vai.comのnews 5月29日記事にあります。あまりに品格のある文章だったので、訳文が書けないと思って挫折していましたが、多少の粗に目をつぶって、以下に原文と訳文を記載します。

“Music does not follow the rules of boundaries and borders. It flows with undiscriminating freedom into all open ears. It’s one of the things in the world that all people, regardless of where they are from or what they believe in, can enjoy if the music resonates with them.
To survive as a species we will eventually need to understand the necessity for unity. Music can act as an elusive yet potent unifying inspiration.”

音楽は、境界線や国境などの定めに従うものではない。それは聞く耳を持つ全ての人へ自由かつ無差別に届くものだ。音楽はこの世界において、ただそれに共感すれば、全ての人々が出身や宗教にかかわらず楽しむことのできる数少ないものだ。
我々人類が生存していくためには、最終的に結束の必要性を理解しなくてはならない。音楽は手に捉えられないが、人々に結束をもたらす強力なインスピレーションとなりうるだろう。

あの時期にウクライナのツアーをやったことについて、ヴァイ先生は別に特別なことじゃない、という感じで話してらっしゃいましたが、私にはとても勇気と信念のいることじゃないかと思えます。そしてヴァイ先生の信念は上の文章に表れていると思うのです。