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スティーブ・ヴァイ 初めの30年間 ドキュメンタリー公開

Video Podcast制作家のアラン・ベリーさんが数年をかけたプロジェクトである、スティーブ・ヴァイのドキュメンタリー『Steve Vai - His First 30 Years the documentary』を9月7日に公開しました。脚本はヴァイ先生との共作です。

 

www.thetapesarchive.com

これまでヴァイ先生があちこちで話してきていた生い立ちからアーティストとして大成するまでのエピソードが、ここまで詳しくまとまって映像化されているのは初となります。しかもヴァイ先生全面協力なので、秘蔵写真や映像が多数使われており、ヴァイ・ファンには感激の内容になっています。

幼少期~青年期

これまでに聞いたことのある内容が殆どでしたが、初めて見る写真が多数で楽しいです。ヴァイ先生のお父様の声を先生自身が演じているのも楽しいですね。(クレジットには Reckless Fable とありますが、これはヴァイ先生の偽名で Western Vacation で使っていました)

でも、先生がアイスクリーム・トラックでバイトをしていたエピソードは初めて知りました。(笑)

トラックの冷蔵庫でビールを冷やしていたとか、ウェストベリーのお金持ちお嬢様の家でパーティをやって騒ぎが大きくなり警察が来たので、家の裏に駐車していたアイスクリーム・トラックに乗って、素知らぬ顔をして現場から立ち去ろうとしたところを警官に止められても、アイス販売時と同様に「何にしましょうか?」と返し、「もういい」と警官から解放された話に笑いました。

高校生の頃、ジョー・ディスパーグニーさんとの悪ガキ青春時代のお話はこちらの過去記事で詳しく読めます。

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2人で夜中に食べた「とろとろツナ」の話はそこで読めますが、その翌日にヴァイ先生がお腹を壊していたこと、そこでママのお手製アイスティーと間違えて料理油を飲んでしまい、吐いたことは初耳。(笑)それにしても冷蔵庫に何で料理油が入ってるの?先生、話を創ってない?

しかも体調最悪の中、アイスクリーム・トラックを返しに行く途中の寄り道ドライブスルーで車をぶつけて、ジョーを電話で呼ぶ始末になるとは。(笑)

バークリー&ザッパ時代

バークリー時代の話、フランク・ザッパとの話も過去記事で幾度も取り上げてきました。

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ザッパ時代のかなりクリアな映像も多数使われており、感激。中でもザッパから学んだことのうち、最も重要なこととして語られる「誠実さ」のエピソードには心打たれました。

ASCAPが著作権料の算出に使用するリード・シートの採譜仕事をするにあたり、小節の数によって権利料が増加するため、曲を変えない範囲で小節数を増やすかをザッパに訊くと「曲本来のままにしろ、そんな方法で金を稼いだりせん」と言い放ったザッパの言葉が先生その後の人生の道しるべになっていたのですね。ザッパとのエピソードはこちらの過去記事でも。

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Flex-Able』

"Attitude Song" が実はアリス・クーパーのオーディション用に前夜書かれたもので、タイトルはそのまま "The Night Before" であった。この話は以前聞いていましたが、興味深いエピソードです。

この頃、先生がギターレッスンをして稼いでいた当時のものと思われるノートが画面に登場しますが、これも興味深いです。

Alcatrazz と映画『Crossroads』

『Crossroads』の見せ場、ギター・デュエルのシーンでは、元々はライ・クーダーラルフ・マッチオのギター講師だったアーレン・ロスのプレイが使われる予定だったことは驚きでした。しかもそれが Sound Cloud で聴けるとは。

デイヴ・リー・ロス

この当時の話は過去記事にまとまっています。先日公開されたヴァイ先生とライターのグレッグ・レノフ氏とのインタビュー音源はこちらのGW誌特集記事の取材音源でした。

 

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それにしても、"Just Like Paradise" を『ビバリーヒルズ高校白書』のテーマ曲にというオファーがあったのに、金額がショボイという理由でデイヴのマネージャーが話をデイヴにも伝えずに断っていたという話は初耳で、何と勿体ない!と叫びたくなります。デイヴが未来の大金を失ったのは明らかですね。

この話で思い出したのが、全く正反対となるジョー・サトリアーニの話。『Surfing With The Alien』発売後に冬季オリンピック委員会から曲の使用許諾の依頼があり、サッチのマネージメントは賢かったので、「使用料は要らないから、曲を使うときには曲のタイトル・アーティスト名・アルバムの情報を画面に入れてくれ」と交渉。無料のサントラが手に入ったオリンピック委員会は試合の放送時にサッチの曲を多数使い、サッチ側は大きな宣伝効果を得たという、デイヴの場合とは真逆のマーケティング戦略でした。

JEM誕生

ヴァイ先生がパフォーマンス・ギターにスペックを渡して必要なギターを創ってもらったのはクニオ・スガイ氏という日本人の職人さんなのですね。そのとき制作された4本のギターは先生のギター・アーカイブで見たことのある特徴あるギターばかり。これがJEMの原型。

Ibanez がヴァイ先生獲得を狙って、先生の実家へクリスマス時期にギターを送ってクリスマスツリーの下に置いてもらったエピソードも面白い。営業努力の賜物でした。

Whitesnake と『Passion And Warfare』

デイヴが先生のソロ活動に反対していて、PAW アルバムの完成が遅れていたんですね。ところで、マザーシップ・スタジオが2016年にラッパーの 2 Chainz にUS$2.6Mで売却されていたということですが、当時の記事によるとUS$1.5Mとなっています。ちなみに先生はこの不動産を87年に33万ドルで購入していたそうなので、さすが先生は投資にも強い。

"Liberty" に AC/DC からサウンドサンプル使っていたとか面白い話も続々。"Ballerina 12/24" の声がインタビュアーさんのだったとか、"The Riddle" に使われている驚きの録音も。先生って本当に子供の頃から録音マニアで何でも録音してたのね。物持ち良いし。

"Answers" で使われている7音モチーフがザッパから教えられたものをアレンジしており、『Flex-Able』はもちろん、Alcatrazz "Wire and Wood" でも使っていたエピソードも興味深い。

『Passion And Warfare』の販売を渋った Capitol Records と別れて、クリフ・カルトレリさんと連絡をとり、Relativity Records から販売となったエピソードは仕事をする人の Passion がカギになる例ですね。アルバムの大成功を思うと、クリフさんに拍手を送りたい。

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ヴァイ先生結びの言葉

「私の身に起きた全てのことは、それ自体で完璧だったのだ。たとえ当時はそれで後退したり、地位なのか何にしろ喪失するように思えても、1つ1つが何かに繋がった。完璧だったのだよ」