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Green (@ribbon_bear) が毎週好きな音楽ネタを語ります! Since 2011

ジョエル・ホークストラ 参加プロジェクト Echobats 1stシングルリリース!

7月3日、トニー・ハーネル(TNT)、ジョエル・ホークストラ(Whitesnake, TSO)、ジェームズ・ロメンゾ(White Lion, Megadeth)、マット・スター(Mr.Big, Black Swan)、エリック・リーヴィー(Night Ranger)が参加する Echobats がシングル "Save Me From Loving You" をリリースしました。

 

予告の告知段階で、70年代ロック、クラシックロックのタグが付いていたのでクラシックなオールド感の楽曲を予想はしていましたが、ここまでポップ路線とは予想していなかったので、新鮮でした。サビのメロディが自然と口をついて出て一緒に歌ってしまうようなキャッチーさも良いです。

参加者の顔ぶれを見ると、多数のバンドに顔を出している人が多くて、いかにもプロジェクトという感じがします。集まった経緯など詳しい話を聞いてみたい。"Save Me From Loving You" がトニーとジョエルの共作ということなので、トニーからジョエルに話が行ったのでしょうか。

マット・スターはレブ・ビーチの参加した Black Swan にも参加していましたね。彼は現役白蛇ギタリスト2人とプロジェクト活動している訳ですね。エリックはジョエルが呼んだのでしょうね。Night Ranger で仲良さそうだったし。

マットとジョエルのそれぞれ2人の元気なお子さんがこのビデオではMVPだったのでは。(笑)ジョエルが子供たちをネットの世界に登場させるのは恐らく初めて。仕事とプライベートを分けたい人なんだろうなと思っていましたが、今回は特別だったのかな。

ジョエルが弾いているギターが Silvertone 1449 (多分リイシューモデル)というのも意外。オリジナルは60年代にシアーズのカタログで売られていた、ビギナー向けのギターのようですが、60/70年代の曲のヴァイブを再現するのに良かったのでしょうか。(ちなみにこのギターは『リミットレス』というアメリカドラマの第1話に登場します。薬の力でギターが上手くなった主人公の手元を差し替えたのがジョエルなのですw)

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ミックスとマスターを担当したのが、ジョエルの Joel Hoekstra's 13 "Dying To Live" を手掛け、現在はデヴィッド・カヴァーデイルの下で Whitesnake の作品を幅広く手掛けているクリス・コリアーです。ジョエルから声が掛かったのかもですね。リリースは Mercia Records から。今後EPが出るのか、アルバムが出るのか分かりませんが、まずはシングルで反響を確かめてからということでしょうか。

「このビデオは家に籠っている俺たちがただ身の回りのもので録った。俺は英国にいて近所に電話ボックスがあって、他の皆は米国にいた。全くの即興で楽しんだよ。曲とメロディは60/70年代ぽくて、俺の撮影もその感じでやった」トニー・ハーネル海外メディア記事より)

なるほど、電話ボックスはそういうことだったのか。(笑)ジョエルも家の近くのセントラル・パークで一部撮影していますね。

トニーとジョエルの共演は2017年のMORCで観ました。その年はTNTのボーカルとしてトニーが参加していたにも関わらず、ロニー・ル・テクロが病気との理由でバンドが乗船できず、トニーが急遽友人のロン・"バンブルフット"・サールを連れてきて、ロンさんとのアコースティック・ライブをやっていました。その後トニーはTNTを脱退しています。(TNTの出入り多過ぎw)

以下のビデオは2017年のMORCでのトニーとジョエルの共演です。

 

 

最後にジョエルの今後のソロ活動について。

Joel Hoekstra's 13 のセカンドアルバムリリースは年内から来年ごろ

ミックスに入っているようですので、間もなく完成。レーベルは未定。
ミュージシャンは前作同様、ヴィニー・アピス、トニー・フランクリン、ラッセル・アレン、デレク・シュレニアンでジェフ・スコット・ソートがバッキング・ボーカルのみで参加

このプロジェクトのミュージシャンをツアーに集めるのは難しいので、別のミュージシャンになるかも知れませんが、ジョエルが自分のプロジェクトで短いツアーをやりたいという話(2020年2月)をしていましたので、いつか実現するといいな。

その他ジョエルの活動については過去記事で。

staytogether.hateblo.jp

ジョー・サトリアーニ 「ツアーはキャンセルする。誰の命も危険にさらす訳にはいかない」

ジョー・サトリアーニがニューアルバム『Shapeshifting』のリリースをするもコロナ・パンデミックによりワールドツアーをキャンセルした内幕などをインタビューで語っていました。生々しい話はなかなかに興味深く、そしてサッチの人柄が伺える内容でしたので、一部を和訳してみました。

guitar.com

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ツアーできないことがわかっていて、『Shapeshifting』をリリースするのは奇妙な気持ちではありませんでしたか?

このアルバムがいつ世に出るにしろ、音楽が永遠に(ファンの)手に届くことで私は大きく息を吐いて「よし、タイミングはどうでもいい」と言えるんだ。自分のコントロールできることがある場合には出来る限り最善の成り行きを得られるけれど、そうでない場合には自分にコントロールできることはない。今回は後者が起こった。私にとってはもうそこに現実があったんだ。何かが起きている、とても悪いことだが、私たちは対処しなくてはならない。私がアルバムを出したからといって、バンドとクルーをツアーに強制するなんてありえない。

例えあの時期にツアーをやろうとしてもできなかったのでは?

ノーと言わない国もあった。フランスは一番長びかせていた。フランスのプロモーターにとっては悲惨だったよ。彼は最後の瞬間まで「来ないなんて言わないでくれ」と言い続けていた。一方で他の国は全て「もちろんです、来ないでください」だったというのに。

ニュースを見て、その決断をしなくてはならないと理解したときはどんな感じでしたか?

理解して欲しいのは、アルバム制作に費用をかけ終え、ツアーに支出して出発直前のときには、大きな予算が動いているということだ。旅費でおよそ$100,000を既に支払っていた。でもこのビジネスでは鉄の精神が必要なんだ、そういうものさ。

最初、私が皆に電話をしたとき、「いいか、ツアーはキャンセルしなきゃならない。アルバムのプロモートの為に誰の命も危険にさらす訳にはいかない。ここは現実的になろう」と言ったのさ。

難しい決断だ。でもそれ程ではなかった。私は医療界にいる友人たちと話して、このウィルスが世界のどの地域でピークを迎えるのか予想を訊いたんだ。ちょうど私たちがツアーを組んだ欧州で起こっていたから。

バンドとクルー皆がツアーしないことに合意すると、次にパートナーたちにどう対応するかを考える必要があった。彼らは私たちが興行できるよう大金を投資しているんだ。

会場の使用料も。プロモーターは会場と使用契約を結んで会場を借りるし、様々なビジネスが進行している。チケットを完売しライブが行われるまで多くの人が神経をすり減らしているんだよ。ツアー最後までハラハラの連続さ。

そして今回のことが起こった。これは有り得る最悪のシナリオだ。私は既に全員分の搭乗券と滞在費用を支払っていたからね。バスもチャーターしていた、全てだよ。長年親交のある友人のプロモーターも既に費用を払っていたが理解してくれた。一部の国では、会場が返金を拒んだんだ。パンデミックなんてない。政府はそんなことを言っていない。だからこの金は返せない」チケット販売から彼らが得た金だったが、もちろんチケットは返金しなくてはならない。恐ろしい悪夢だったよ。

バンドとクルーに伝えるのは辛かったですか?

もちろんだ。自分の得ている情報のせいで楽観的だった人もいた。地域のコミュニティで医学発展の最前線にいて国際的に他の医者たちと仕事をしている友人たちが私にはいるので、彼らに話を聞くことができるんだ。彼らは赤い旗を振っていた、信じがたいことにね。TVをつければ「ディズニーランドはまだ営業してる!」なんてまだ言っていたときだ。

多くの人にとって辛いことだったよ、よくわかっている。ギターテク、ドラムテク、皆が仕事を失うんだ。現地や旅行関係のクルーにも絶望的だ。ライブをやるのに必要な人たちが皆今は家にいるんだ。

でも結局のところ、チケットに名前が載っているのはあなたなのですから、もし誰かが亡くなれば取り返しがつきません。

そうなんだ。そのリスクを冒す価値はない。SARS のときに私が言ったのがそれだ。「ロックの為にバンドやクルーを犠牲にするなんて思うかい?とんでもない」1ミリ秒だってそんなことは考えない。決断は明らかだった。それはG3の短いアジアツアーだったけれど、反感を買った決定だった。アジアのパートナーは皆、何年も私に腹を立ててなかなか再訪できなかった。「あいつはまたキャンセルするに違いない」と言われてね。

あなたはこの件全てでとても良識があり、賢明です。

一番重要なことを肝に銘じているんだ。ファン、コミュニティ、そして家族の健康と安全。そして自分が生き残ることも大事だ。

そして他のことにも気付く、音楽が全てさ。アルバムは完成している、ではなぜリリースしないなんて有り得るんだ?ファンにニューアルバムを約束したのに、収益を心配してそれを取り消すなんてすべきじゃない。ビジネスは自ら道をみつけるだろう。私は『Shapeshifting』というクリエイティブな記録を誇りに思っている。参加者はこの作品に持てる全てを注いでくれた。だから「これは家に籠っている人々に完璧な贈り物だ。マスク、手洗い、消毒の日々を忘れられる音楽を届けよう」と思ったのさ。

そうですが、「発売を延期しよう」というレーベルもあります。

それは全く起こらなかった。私たちはすぐさまSonyと相談し、実に率直な意見交換ができた。「この音楽で何を達成しようとしているのか」が最大の課題だった。そして答えはいつも通り、ファンに届けようだった。音楽を届けるんだ、それを念頭に置けば、「なぜ止める必要がある?」となった。アルバムはミックスもマスターもされ完成して、私たちは準備万端だった。

実際、私の創作者の立場としては、「今リリースする必要がある。来年には(クリエイティブ面で)別人になるだろうから」だった。私はそういう人間なんだ。アルバム制作を終えたら、次に進みたい。仕方ないのさ、私はアーティストだから。何か創る、それを世に出す、そして次に進む。

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正にそれをしている訳ですね。今は1度に2枚のアルバム制作をしていると。

そうだ。今回のツアーバンドでボーカル入りのアルバムとインストゥル・メンタルのアルバムを創る。ボーカル入りアルバムについてはまだスタイルを決めていないけれど、インストアルバムの方は10~11曲が入ってきている。楽曲構造に大きな違いがあってとても興奮しているよ。

『Shapeshifting』にはロックの確かなアティテュードがあった。グルーヴや前面にくるギターサウンドはクラシックだ。新作では変わったコード形式とキー移動を多用し、異なるグルーヴを使う。バンドが即興して展開できるよう、スペースを皆に用意するつもりだ。それはつまり、長い曲になるということだから、ロック・ラジオでは気に入られないだろうね。

各自がリモートでレコーディングするのですか?

リモートでやる。私とキーボード奏者のレイのパートは1~2ヵ月の間にできてしまう気がするんだ。彼はシドニー在住で私はサンフランシスコだ。ケニー、ブライアン、エリックはカリフォルニア南部にいるので、必要があれば集まれる。

通常とは大きく異なりますね。いつもはスタジオで全員集まり、あなたが決断しながら進めますよね。リモートでは送られた音源にあなたが驚くかも知れません。

ああ、それでいいんだ。今回は私が意図的な決断をして、バンドアルバムにすることにした。音楽は私だけでなく皆を反映したものになる。どういう風にアルバムをリリースするのかまだわからないけれど、ツアーに出られるようになったら沢山の音楽があるってことに興奮しているよ。

2021年のツアーはどんな形になるのでしょう?

それまでにはワクチンができると想像している。それに、どうやってファンをイベントに集めるか考え出されるのではないかと思う。そこはそれほど難しい問題じゃないと思うんだ。難しいのは演者と技術担当者だ。CDCやWHO等からの推奨やガイドラインに従っては、私たちが通常することができないんだ。どうやってギターテクと6フィート離れて仕事ができるというんだい?

あなたの友人のギタープレイヤーはこの状況にどう対処していますか?

幾人かはほぼ私と同じだよ。スティーブ・ヴァイがいい例だ。彼と話していたんだけど、この状況が私たちにとってはちっとも異常ではないんだ。私たちは自分の洞穴に潜ってギターと音楽制作に没頭できるから。子供の頃から私たちはちっとも変っていないんだ。

成功したビッグなバンドにいる友人はこういう時のために貯蓄してある。彼らの陣営は「2021年でも2022年でも、その時には世界のスタジアムを制覇する」と言っていて、彼らは悲観していない。

一方で、私の友人の中には家賃を払うため週に5日クラブで演奏する人もいて、彼らにとっては本当に厳しい状況だ。パーティやイベントで演奏する人も知っているけれど、とても苦しんでいて気の毒だ。ミュージックストアを経営する友人もいるけれど、彼らにとっても酷い状態だ。
今は皆の安全を願っているよ。

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SARSのときにG3のアジアツアーをキャンセルした話がでてきましたけど、2003年ならヴァイ先生とイングヴェイのときですね。そのメンツで日本も来る予定だった?

それから今後のライブでのオーディエンスの感染防止策については何か方法が考え出されるだろうと楽観的だったサッチですが、ミュージシャンとクルーたちの舞台裏での感染防止策には不安な意見でした。確かに対オーディエンスと同等に対策が必要でしょうから、その問題も解決されなくては。

2021年のコンサート アーティストに厳しい条件

北米のコンサート・プロモーター最大手 Live Nation がタレント・エージェンシーに送ったメモが音楽系メディアに掲載され、アーティストの反感を買っているようです。

www.rollingstone.com

今年中のコンサートは諦めムードが漂い、来年には再開されるのかと気になるところなので、どんなメモが送られたのか内容を確認してみました。

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Live Nation Memo to Talent Agencies 概要

前例の無い状況に直面しているため、2021年におけるアーティストとの契約には以下の変更を加える。

 

アーティストのギャラ2020年レベルから20%減額

チケット料金:価格の決定権はプロモーターにあり、変更することがある。

支払い条件:アーティストはフェスティバルの1ヶ月前に10%の前払いを受ける。契約内容を完全に満たすことを条件に残金はフェスティバル後に税金とプロダクション費用を差し引いて支払われる。

ストリーミング:フェスティバルでのパフォーマンスが収録され、TV放送・ライブ配信・オンデマンド配信・ラジオライブ配信されることをアーティストは許諾すること

グッズ販売:フェスティバル後2週間以内にアーティストは売上高の7割を受け取る。

渡航費及び宿泊費アーティスト負担

スポンサー:フェスティバルでのスポンサー契約は制約なしにプロモーターが取り仕切る。アーティストはステージ上で又は舞台セット上でブランドの宣伝はしない。

非競争条項:(フェスティバル開催地から特定の半径内で出演者がコンサートを開催してはならない規定)事前の書面による許可を得ず違反した場合にはアーティスト料金の減額やイベントから除外し、前払い金の返金を求める。

保険:天候や不可抗力によるフェスティバルの中止に備え、アーティストは自己のキャンセル保険を備える。プロモーターは責任を負わない。

アーティストによるキャンセル:契約に反してキャンセルする場合、プロモーターにアーティスト報酬の2倍の額を払う

売上過小によるキャンセルアーティストのギャラは25%

不可抗力:COVID19 やこれに近いパンデミックを含む不可抗力によりアーティストがパフォーマンスをキャンセルする場合、プロモーターは料金を支払わない。アーティストは自己でキャンセル保険を備えること。

会場の収容能力が抑えられる場合:会場又は政府等の指導により、会場の収容能力が抑えられる場合、プロモーターは契約を終了することがある。この場合、アーティストは事前に受け取った料金を返金する。

 

我々はこのような変更の重大性を十分に認識しており、慎重な検討の結果です。フェスティバル・ビジネスを継続させるためにこれらの変更が必要であることをご理解ください。これはアーティストとプロデューサーだけでなくファンのためなのです。

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2020年以前の契約がどういうものか知らないので何がどう変わったのか分かりませんが、とりあえずアーティストには相当厳しい内容になっていそう。

コロナで大打撃を受けた Live Nation が不確定要素の多い来年のコンサートをどうするかということで、必要に迫られて出してきたのでしょうね。今年6月のアリーナツアーのキャンセルが遅れに遅れていたのはチケットの返金を避けるために延期した予定をアナウンスするため、アーティスト側と交渉していたのだと推察します。

プロモーター最大手だからこれだけ自分の条件言えるのでしょうけど、今年の収入が吹っ飛んでしまったアーティストには相当に厳しい。プロモーターが負うリスクを大幅に軽減した感じ。来年のコンサートはどうなるのだろう?

Live Nation は大規模なコストカットをすると言っていたし、収益回復圧力は大きいのだろう。でも自分だけ強欲なことを言っても、アーティスト他の共業者利益も守らないと産業全体の未来は明るくならないと思うな。

 

スティーブ・ヴァイ 60歳の誕生日に新曲発表!自分に課した5つの挑戦

スティーブ・ヴァイが6月6日の誕生日に恒例の Alien Guitar Secrets ストリーミングを再開、そこで新曲を発表しました!"Candle Power" はヴァイ先生が自分に普段自分がしないこと、ギタープレイにおいて快適でないことにチャレンジするという実験的な意欲作で、新たなテクニック joint shifting を活用しています。それでいながら、曲を聴いてみると不思議でメロディックなヴァイ音楽のサウンドそのものと感じます。さすがヴァイ先生!

今週はそのストリーミングでの新曲解説の一部概要を和訳したものと、ヴァイ先生にコメントを寄せた Generation Axe 仲間のコメントを取り上げます。

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60歳になるというのは興味深いね。これまでの人生で最も気分がいい。これまでの人生で素晴らしい機会に恵まれたこと全てに心から感謝している。多くのレコーディングやツアーを行ってきたし、賞を貰ったり、雑誌の表紙を飾ったり、多くの素晴らしい会社や人々と仕事ができた。

その中で最も有難く感じているのはその過程で人々と築いた繋がりだ。これはリアルで今に至るまで続いている。こうして築いた人との繋がりこそが報酬なんだと発見した。成功はいいものさ、それには試練を伴う。しかしその試練など私には大したことではない。

私は自分に挑戦を課すのが好きなんだ。60歳の自分に課したのは、自分の快適なゾーンから大きく離れることだった。

1.ストラト・スタイルのギターを弾く
ストラトは好きなんだが、私には上手く弾けないギターだ。JEMは私にとって楽に使える楽器だがストラトでは苦戦しなくちゃならない。でもそこには特定のトーンがある。

2.クリーン・トーンで弾く
過去に数回やったことはあるが、私にとってはノーマルではない。

3.アームを使わない
私にとっては身体の一部を取り去ることだ。

4.ピックを使わない
フィンガーピッキングの練習はしてこなかったから大きな挑戦だ。

しかしここで、私の本能がもう1つの挑戦を求めたんだ。それが暫く実験していた joint shifting で、複数の弦をベンドしながら別の弦を押さえて、ベンドを戻しつつ、別の指ではプリングオフするんだ。これは本当にとても難しかったが、サウンドは実に素晴らしかった。

曲はシンプルにベースとドラムとギターのトリオだ。

タイトルについて説明しよう。パンデミック下でのロックダウンについてのものだ。混乱が起きているものの、多くの人が助け合っている。そうして他人を助けようとする姿にはとても勇気づけられる。暗がりのキャンドルを思い出したよ。私たちは皆、暗がりのキャンドルのようさ、それが集まることで星のように明るく照らすのだよ。それがコンセプトだ。

 

ビデオのギターについて説明しよう。私はストラトが好きなんだよ。16歳のときに初めてのストラトを手に入れた。そしてこのギターは…。何年も前に最高のストラトを探そうとしたんだ。ハリウッド大通りにある3、4の楽器店でオールドヴィンテージのストラトを探した。90年頃だったかな。$25,000程の貯金を用意して、(金がかかっても)構わなかったよ、私は最高のストラトが欲しかったんだ。

沢山試した結果、$500の日本のストラトにした。(訳者注:その日本製ストラトはオフィシャルサイトに掲載されています。こちら)それで沢山レコーディングしたよ "The Boy From Seattle" も弾いた。ヴィンテージギターにはロマンスがあるが、私はコレクションしようという気にはならないんだ。私は特定のサウンドや機能のあるギターが好きなんでね。それから年月を経て、Ibanezストラト・スタイルのギターを創ろうとした。ここで弾いているのは Ibasrat とでも言おうか、JEMの一種だ。テールピースを外してハードテイルにした。ヴィンテージPUを載せてある。

アンプは Synergy のクリーンチャンネルで、Deluxe だったかな、それで出力は2つに分けてあり、アンプはジョー・サトリアーニに借りた Lazy J だ。鍵はオープンキャビネットのもたらすアンビエンスだよ。もう1つの鍵は部屋だ。Harmony Hut のレコーディングルームには天井に6つのマイクが取り付けてある。それが素敵なアンビエンスを創り出すんだ。トーンについてはざっとこんなところだ。

(ここからは曲を分割して作曲やテクニックを解説しています)

(メインリフ)ここで私は3音をベンドしている。あまり見かけないテクニックだ。ここで言いたいのは、世界にはとてつもないテクニックを備えた野心的なプレイヤーが沢山いる。私はこのアイデアをシェアしたいと思う。彼らにはこのアイデアを使ってもっと先へ進めて欲しい。そうやって私たちは発展するんだ。このコンセプトを使って1曲全部を創るところを想像してみてくれ。私はコードを押さえてベンドしている。とても難しいよ、しかしサウンドはユニークだ。

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"Candle Power" はリフのアイデアから始まったそうで、カセットテープに録音して「永遠の戸棚」に入れてあったとのこと。カセットということからアイデア自体は何十年も前にあったのですね。しかし、実際の演奏は困難を極めたようです。2019年4月頃のインタビューで難しいテクニックに取り組んでいる話をしていました。練習でボロボロになった指の写真も投稿していたので、下の過去記事をチェックしてみてください。こうして曲の制作背景を辿って完成した演奏ビデオを見ると感慨深いですね。

 

staytogether.hateblo.jp

 

尚、現在オフィシャルサイトでは曲にちなんだキャンドルを販売しています。プレオーダーすると高音質の音源がダウンロードできるそうです。

ストリーミング中にありますが、ヴァイ先生は21歳のときに里子支援のチャリティを始めたそう。月に$100~数百を今に至るまで続けているとのこと。近年は Extraordinary Family に賛同して理事をやっている先生、Jamathon でのチャリティ活動も記憶に新しいですね。

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"Candle Power" の反応 Generation Axe メンバーより

ヌーノ・ベッテンコート

彼は過去のクリップから世に知られた革新的傑作を簡単に選ぶこともできたというのに、60歳にして彼は自分の快適なプレイスタイルを全て取り去るという挑戦を課した。

トシン・アバシ

凄い!僕も60歳になっても意欲的革新者でありたいよ。誕生日おめでとう!

トシンの投稿へのヴァイ先生リプライ

ありがとう。君がその驚異的才能でギターシーンに現れなかったら、私が必要とする自分を追い込む意欲を持てなかったかも知れない。君が60歳になったら、何をしているのか想像もできないよ!

 

サトリアーニ+ヴァイ+ペトルーシ G3 トーク・セッション 「自分も最高の自分になろうと奮い立つ」

6月6日はスティーブ・ヴァイの誕生日です。ヴァイ先生、誕生日おめでとうございます!明日7日の朝4時(日本時間)には先生のFacebookで誕生日スペシャルのストリーミングが予定されており、新曲とビデオが公開されます!

さて、6月2日の早朝にサトリアーニ+ヴァイ+ペトルーシのG3が揃ってトーク・セッションが行われました。サッチの Club Joe Streaming Sessions は今回が3回目ですが、ゲストがライブ参加してのトーク・セッションは初めてです。この3人が一堂に揃うのはギターファンとしてワクワクしますね!

3人のリラックスした楽しそうなトークの概要を和訳してみました。

以下、JS:サッチ、SV:ヴァイ先生、JP:ペトルーシ です。

 

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懐かしい最初のG3映像を観てみましょう。振り返ってどうですか?

SV:ジョーと私は同じ町で育って、同じ学校に行き、皆が知っているようにジョーは私のギター教師だった。私にとってジョーとプレイするのは、クリスマスみたいなものさ。私にとってギターは全てで、ジョーは教師であり、メンターでもあり、本当にギターが上手かったから常に刺激された。自分の部屋でギターを弾き続けるのはいくらでもできるけれど、誰かと一緒にプレイするというのは私にとって強力な進化だったよ。

最初にジョーからG3の件で電話をもらったとき、私のことを思ってくれて感激したよ。もちろんジョーが言ったように、プロモーターを説得したり、乗り越えなくてはならないことはあったけれど、コンセプトが素晴らしかった。私たちは皆ギターが大好きなんだ。ジョーが言ったように、もし私たちのギターヒーローたち(ジミー・ペイジジェフ・ベック)が一緒にショウをやったらと想像したら興奮した。

私のキャリアでは Alcatrazz でイングヴェイと比べられたり、DLRバンドでエディと比べられたり、Whitesnake でも同じことがあった。でもそれらの経験はとても強力で私自身の目標を上げることになった。その感覚をG3では毎回味わっている。彼らは人生の全てをギターに捧げたプレイヤーたちだ。彼らはギター界のトップにいて、それぞれユニークな個性を持っている。そんな巨人たちに囲まれて競うなんてありえない、そもそもできないのだから。

G3では他の状況では得られないような何か推進力を感じるんだ。自分も最高の自分になろうと奮い立つんだ。それに私たちが体験した様々な冒険はたまらない!ツアー自体が楽しくて、全部ジョーが用意してくれるんだ。「サウンドチェックも、フルセットもやらなくていい、一緒にジャムするんだ、クルーのことや何かも心配しなくていい、このツアーやらないかい?」って銀の皿にのせて差し出されるんだ、もちろんイエス!だよ。

ではここでファンの質問から。各人の機材の好み、モニターなど全てを用意するのは簡単でしたか?仲間意識でシェアしたり、うまく行きましたか?

JS:全てが完璧に行くなんてことはめったに起きないんだよ。これにはスティーブに答えてもらいたいな。自分のセットを強烈にプレイして楽屋に戻り、その熱気が冷えた後でまたジャムの時にステージに立たなくてはならないだろう?

SV:そうだね、サウンドチェックでは全てが順調だったのに、ステージに出てプラグインしてちょっと音出ししてみると、あれ?ということになっていたり。立ち位置の数インチで聴こえる音が違ったり、突如自分がとんでもなくデカイ音になったりする。大抵なんとか対応するものさ。

JS:そうだ。ステージの端まで行くと自分の音が聴こえるけど、ビジュアルを考えると立ち位置はそこにできない、とかあるよ。

SV:ある夜なんて自分が弾いてる音が全く聴こえないなんてこともあった。勘で弾いて、何とかなってるよね、って。(笑)

JS:そうそう、自分の指板上の指を見て、(音は聴こえないけど)多分いいんじゃない?とか。(笑)確かにデカイ音を要求する人とか、皆の音が聴こえないという人とかいたよ。ゲストにはステージに立ってアンプやセッティング全てが快適であるように時間を取ってもらった。だってそうじゃない状況がすぐに起こるんだから。(笑)

SV:ジョーは覚えているかな?いつかのG3でレコーディングしているとき、これからジャムってときに舞台袖で君が「アンプがダウンした」って言ったとき。音が出たり出なかったりしてただろう?

JS:ああ、それ!それは東京だよ!

SV:それで私が言ったのは「弾いてるフリしろ、後で直せばいい」だった。(笑)

JS:あれは辛かったよ。JSXをコントロールするMIDIペダルの問題だった。あの頃はMIDIのチャンネルスイッチコントローラーがクールだった頃で実はいい考えじゃなかった。"Smoke on the Water" のソロをプレイする直前にダウンしたんだよ。リッチー・ブラックモアに誇らしく思ってもらいたかったというのに、ペダルを踏んだ瞬間に切れてしまったんだ。「こうなるのか。何て情けない。今夜私のギアに悲運が訪れるなんて」と思ったよ。有難いことに、エリックが音を何とかしてくれた。

(2004年のG3ポスター、サトリアーニ+ヴァイ+ロバート・フリップ を見せて)このロバートの脚には秘密があるそうですね?

JS:そう、ロバートは座って弾くだろう?だから彼がG3に参加するとき、彼がギターを持って立っている写真がなかったんだよ。それで彼の脚を探さなくちゃならなくて、実はポスターのは私の脚なんだよ。(笑)これはスティーブとイングヴェイとのフォトセッションのものなんだが、あの時はなぜかカントリー・プレイヤーみたいにギターを上の方で持って写真を撮っていたんだ。そのお陰で別のショットで「使える」脚があったという訳なんだ。ロバートも気に入ってくれたよ。

ここでジョン・ペトルーシを迎えましょう。皆が揃ったところでファンからの質問です。自分があの曲を書いていたら良かった!と思う他のG3メンバーの曲は何ですか?

JP:僕から。この2人には本当に多くの素晴らしい曲があって、何度も盗ませてもらったし、インスパイアされた。ジョーの曲では "Always With Me, Always With You" が大好きな曲の1つで、妻との結婚式でも使った。とても美しいよ。スティーブの曲では "For the Love of God" を聴くと感動して涙が出るし、同時に自分のギターを(自分にはとてもあんなプレイはできないと)燃やしたくなる。

JS:私が2人のプレイを見ていて学んだことは、私にはとても2人の曲はプレイできないということ。どの曲も盗むなんて無理だよ、私には弾けないんだから。だからこの質問の答えはないなぁ。G3ではいつも2人のプレイに圧倒されて楽屋で練習しなきゃ!と思っていたんだ。

SV:私も同じだよ

G3の経験がキャリアに何か刺激をもたらしたことはありますか?

JP:実はG3が僕のソロキャリアの出発点になった。僕はバンドをやっているだけだったんだ。"Six Degrees Of Inner Turbulence" のレコーディング時だったよ、電話をもらったのは。G3は正に象徴的なイベントで、トップリーグの人しか参加していない。だから本当に僕が?と思った。夢じゃないかと。だからこの話は「ノー」と答える話ではなくて、「どうやろう?」というのが問題だった。カラオケで Dream Theater をプレイするのか?ソロ曲なんてない。それでツアーの為に曲を書いたんだ。それが初ソロアルバムになった。

それにG3ツアーで多くを学んだ。2人はソロアーティストだから全て知っているだろうけど。「オーストラリアへのギアの輸送費はいくら?」とか「それ自分で払うのか?ドラマーのギャラも僕が?」とか。それにジャムでプレイするのに、2人から頂戴したリックが沢山あるのに、何をやめておくべきかって緊張してたよ。(笑)

JS:G3ではジャムで並んだ時、舞台上手からソロを始めるってルールがあるだろう?すると私は3番目なんだ。1人目が弾いて「それやろうと思ってたのに、ちぇ!」と思って、2人目がプレイして「まただ!ちぇ!」となって、もう舌で弾こうかなって。(笑)特別ゲストが参加したときなんて、ギタリストが6人もいる。そうなると私の番になる頃には(弾くことがなくなって)コードを弾いて腕を上げておくだけにしたくなる。(笑)

SV:私がG3ジャムで一番好きなところは、2人の強烈なプレイにインスパイアされて、最高の自分を出そうと、自分が引き上げられるところだ。

ジャムはどれくらい事前に計画されているのですか?

SV:ジャム自体は全て即興だよ。いつもはジョーがメールで事前に聞いてくれるんだ。ジャムはどうしたいか、アイデアがあれば出してくれと。フリーのジャム部分はあるけれど、その他はオーガナイズされているんだ。

JP:G3で一番好きなところは、毎晩ジャムが終わってから、互いに感想をシェアしてプレイを教え合うところなんだ。ステージでどんな面白いことがあったとか。それに憧れていた人たちが人間的にも寛大で素晴らしく、友人になれたことに感激したよ。

それから、南米ツアーの初日、あれはエリック・ジョンソンもいたときだ。僕のアンプが壊れてしまい、真空管もダメになっていたんだ。僕はまだエリックに会ったことがなかったのだけど、エリックがアンプをチェックして「ああこれ、多分直せるよ」と言って直してくれた。そこでやっと自己紹介したんだよ。このツアーで得られる仲間意識や連帯感は素晴らしいね。

SV:私は随分前に学んだのだが、ツアーというのは人生の一部なんだ。だから規模や金じゃない。人柄に問題のある人とのツアーは惨めなものになってしまう。共にすごして楽しい人たちとの絆が本当の価値なんだ。それにG3の裏側のプロダクションについて言うと、実に完璧だ。全てがスムーズで見事に準備されている。

JS:ファンには「次のG3はどんな顔ぶれ?」って訊かれるけど、こっちが誰が観たいかを教えて欲しいと思っている。誰ならG3を発展させられるか?2020年のファンのムードはどうなっているのか。ユニークなG3にしてくれるのは誰か。

丁度いい。ファンから入ってきたG3で観たいギタリストのフィードを読み上げます。バケットヘッド、ニタ・ストラウス、ビリー・ギボンズ、カーク・ハメット等々続く。プリニ(Plini)は一番多い回答ですね。

(プリニにJPもSVも頷く)

JP:プリニの問題はロングアイランド出身のイタリア人じゃないところくらいだね。(笑)彼は素晴らしいよ。

このビデオを観せよう。G3 Live in Tokyo のコメディビデオ(1:07:05から)

(訳者注:ヴァイ先生とサッチが本当は互いの指のタコを見せあっている映像に声が載せてあり、「近くにネイルサロンある?もう剥がれてきちゃって」「キラキラの紫いいね!」…と2人がネイルカラーを見せあう設定になっている)

SV:(爆笑)これ初めて観たよ!

JS:そうなの?誰かがこの映像を面白いコメディにしたんだ。この動画を使いたいと思って連絡を取ったのだけど、向こうから返答がなくてね。でもいつ観ても面白いよ!

(訳者注:このあと暫くG3で起こったハプニングの話で盛り上がります。フィラデルフィアの楽屋でジョンの天井から人が落ちてきたこと、欧州G3のJS+SV+スティーブ・モース+ゲスト:アル・ディメオラ時にサッチの左手親指が貼れて9本指でプレイした話、クアラルンプールのフェスにG3出演した時、時間が押してサッチがプレイしたのが午前4時で、フェス運営の不手際で機関銃を持った警官にショウを強制終了させられたこと等)

ファンからの質問を取り上げます。指板を視覚的に記憶する方法は?アルペジオやトライアドなどで。

SV:うーん、それらはバックグラウンド情報に過ぎない。そういう情報からのアプローチは意識してはしない。そういう内容が必要なときはプレイ中に自然に頭の後ろから引っ張ってくる。普段は耳に導かれて弾く感覚だ。

タイム感を鍛える方法は?

JS:メトロノームとプレイする。

SV:ああ、それからドラムマシーンを掛けたり、誰かとプレイする。

G3が変えたことは?

JP:それまでは Dream Theater のジョンでしかなかったけど、ジョーやスティーブとプレイして自分のレベルも上がったし、自信もついた。

最近聴いたアルバムでお気に入りは?

JS:うーん、実は毎朝インスタグラムを開いて凄いギタリストを見ては震えているんだよ。そして練習しなくちゃと思うんだ。自分が別の世紀の遺物みたいに感じる。20代の若者みたいだけど、彼らを見れて嬉しいよ。彼らは本当にギターが好きで、音楽に身を捧げている。とても刺激を受けるよ。

SV:マッテオ・マンクーゾ(Matteo Mancuso 動画リンク)やダニエレ・ゴッタルドを知ってるかい?彼らは驚異的だ。

JS:ジェイソン・リチャードソンは知ってるよね?友達かい?彼には肝を冷やされるよ。

JP:もちろん!

JS:それからもう1人は日本人だ。ヨー???読めないなぁ。皆の方が名前わかると思うよ、正にびっくり仰天のプレイなんだ。

(訳者注:サッチが発音に苦心して名前がわからないと思っていましたが、後日 Yo onityan のことだと判明しました。YG誌の試奏動画はこちら。ここでヴァイ先生が日本人でもう1人、ギタリストの名前を口にしていますが、聞き取れません。わかった人は教えてください!1:26:52のところ)

ベーシストのブライアン・ベラー(サッチのツアー・ベーシスト)からの質問です。自分でベースを弾いたお気に入りの曲といつもデモで弾く愛器を教えてください。

JSとSV:ブライアン!(笑)

JS:(Fender Precision bass を見せて)これだ。ネックが細くていいんだよ。72年製。5弦が欲しい時はあっちの部屋にある Ibanez を使う。"If There Is No Heaven" (『Shockwave Supernova』収録)のベースはギタープレイヤーが弾いたってベースかな。ジョンはどう?

JP:ベースもときどき弾くけど、あとプログラムのベースも使う。でもベースプレイヤーに全て差し替えるよ。

SV:私もデモでベースを弾くけど、やはり私が弾くとギタリストっぽさが出るから、本当のベースプレイヤーに弾いてもらわないと。ジョーはこの72年製の Precision bass 覚えてる?これは妻のピアが VIXEN で弾いていたものだ。

JS:わお!このベースはギタリストが弾くのにネックサイズもいいし、サウンドもいいよね。

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G3 Live in Tokyo のDVDを見直しましたが、最後のジャムでサッチのギアにハプニングが起きていたとは思えないのですが、本当にこのときのハプニングだったのかな?あと、特典映像の面白動画ですが、サッチの反応からして有名な動画みたいですね。面白いので全部観たいのですが、YouTube からは見つからず。知っている人がいたらぜひ教えてください。

セッション中の会話で、ヴァイ先生誕生日のストリーミングで公開する新曲の話が出たのですが、ヴァイ先生がサッチに送って聴いてもらったようでした。今も2人は新曲を聴かせ合ったりしているのだなと、ほっこりしました。

キップ・ウィンガー 「天才的な創造の瞬間は狙って得られるものじゃない、偶然に得られるんだ」

今年の1月後半に公開されたキップ・ウィンガーのインタビューの一部を取り上げます。この時期にはまだコロナ危機によって世界中がロックダウンされるなど誰も知らず、普通に今年1年の見通しを立てていた頃です。

クラシック作曲についてのコメントが深いです。目標を持ってチャレンジする努力の人、キップらしい。今朝のFBライブでの発言要旨も終盤にまとめました。

 

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あなたは私がこれまでに耳にした中で最も驚きに満ちたキャリアを持っていますね。

これはただ「より優れた作曲家になりたい」という俺の人生の探求の旅の結果なんだ。俺は音楽にすっかり魅了されてしまったんだ。俺には日々頭の中で聴こえる多数の音楽があって、これを作品の形にできるかどうかなんだ。これは俺にとって恵みであり、まあクラシック作曲をしているときは拷問でもあるんだけど。

ちょうどナッシュビルのオーケストラに交響曲第1番を書き上げたところなんだ。随分と苦しんだけど、報われたし、心が洗われた。この作曲過程で俺は自分自身のことを1から学んだと感じている。持って回った言い方に感じるだろうけれど、俺の書く曲の多くは自伝的で、書き上げたばかりの交響曲も同様だ。この世界で作曲することが俺の使命のように感じていて、作曲で生活できるというこの恵みに応えようとしているんだ。

ロックからクラシックの世界へというのは普通、大きな飛躍ですよね。でもあなたの多彩な背景がそれを自然にしたのでしょうか?

その通りだ。俺は独学でやってきたタイプで、クラシック曲のオーケストレーションなんて習ったこともなかった。35歳で学び始めたんだ。ピアノとギターの作曲や譜面の読み方は知っていたけれど、本当に深くクラシックを学び始めたのは35からだ。バレエをやっていたので、バレエ曲を深く学ぶことはあったから、クラシックを学ぶことも自然なことだった。クラシックを学び始めたのは、バレエ曲を作曲したかったからなんだよ。

兄弟のバンドでロックをプレイしていたけれど、俺は憑りつかれたようにクラシックを聴いていて、クラシックの作曲がしたかったんだ。でもまさかオーケストラが俺の曲をプレイするとは思わなかった。俺の能力を少しばかり超えた目標だと思っていた。

オーケストラと仕事をする上で、ロック・ミュージシャンとしてのキャリアが障害になったことはありますか?

最初はあったよ。ロック界の奴がクラシックをやりたいんだなって思う人もいた。ロック・ミュージシャンがクラシック曲を書いたなんて言って、クラシックの人に「ああ、こいつは何を言っているのかもわかってないな」って思われるのは毎度のことだ。それが事実なことも多い。ここで名前は出さないけれど、クラシック曲を書いたと言ったロック・ミュージシャンが実際には十分なモノを提示できなかったことはある。オーケストラと演奏したポップ音楽て感じだったり。

俺は純粋主義者だし、コンテンポラリー・クラシック音楽の熱心なリスナーだ。そこから学んだんだよ。コンテンポラリー・クラシック音楽の世界で正当に受け取ってもらうためにはとても小さな渦に適応して通らなくちゃならない。とは言え、俺の作曲は自然にやっている、何しろ音が聴こえているんだ。

そこはあなたの音楽を聴いていると明らかに感じます。バンド Winger の音楽も普通のバンドよりも際立ったものがありますし、あなたのソロ音楽はロックというよりも、プログ・ロックというサウンドに感じます。

ああ、その通り。Winger には常に見かけ以上のものがあるんだ。その理由はバンドにはいくつもの秘密兵器があることだ。ロッド・モーゲンスタインとレブ・ビーチは驚異的なミュージシャンで、トップレベルだ。彼らと同じステージに立っているといつも俺は何て人たちとステージにいるんだろうと感嘆する。ジョン・ロスとポール・テイラーもそうだが、レブとロッドは特別なんだ。俺は優れたミュージシャンに曲を書くのが好きだから、彼らにはどんどん難しい音楽を投げるんだ。

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"Seventeen" だって歌詞を取り除いて、曲だけを聴いたら大抵のバンドの曲よりも複雑だ。別にそうしようとして書いたのではなく、ただ俺たちにはそういう曲が聴こえていたんだ。あのリフはレブが15歳で書いた。彼はアレンジャーというタイプではないから、それでどうしたらいいのか分からなかった。そういうのは俺が得意だったから、彼とコンビを組んだのは天の贈り物のようさ。俺の不得意はレブに備わった特質で、その逆もそうだ。

そのような仲間はバンドでもオーケストラでも、違いを生む力ですね。クラシックを学ぶ道というのは大変だったのではないですか?

ああ。ナッシュビル交響楽団が俺にアルバム制作を依頼してきたんだ。交響曲第1番とヴァイオリン協奏曲だ。彼らは "Conversations With Nijinsky" を演奏したから、指揮者のジョン・カルロスとは友人なんだ。彼は素晴らしいい指揮者で音楽家だ。ナッシュビル交響楽団も優れていて、グラミー賞を13回受賞している。その楽団員もとてもユニークで、彼らはナッシュビルのポップやカントリー・ミュージックをセッションでプレイしているからだろう。彼らのタイム感は驚異的なんだ。

ある日ジョン・カルロスにランチに誘われて、「交響曲第1番を書いてくれよ!」と言われた。俺はビビったよ、何を書けって言うんだ?って。1~2ヵ月考えてこの挑戦を受けることにしたんだ。とても大変だった、今月やっと書き上げたよ。彼が俺にできると思ってくれて幸運だ。普通は俺みたいな人間に楽団が作曲を依頼するなんてことはない、ジュリアード卒だとか博士課程を修めたような作曲家にいく話だ。ジョン・カルロスのクールなところは型にはまらないところだ。従来とは違うやり方を試そうとする。

クラシック音楽ではロック音楽と違ってどのように曲の物語を創作するのでしょう?

俺は直感に従うんだ。俺の場合、作曲を進めるに従って物語がやってくる感じだ。誰もが言うだろうけど、皆最初は恐る恐るなんだ。もしくはとても不安でどうなるのか分からない。暗中模索しているのさ。天才的な創造の瞬間は狙って得られるものじゃない、偶然に得られるんだ。

だから、最良の方法は毎日作曲するんだ。そして筋肉をつけ鍛えておきながら、偶然が訪れるのを待つんだ。俺がやっているのはそんなことだ。ジムに月1回通って素晴らしい肉体になるのを期待するなんてできないだろう?毎日鍛えるんだ。労働者階級的な精神さ。毎日準備していれば、ある思いも寄らないときに珠玉がやってくるんだ。

作家が本を書くにはと訊かれ、毎日書くことというのと同じですね。

あらゆる芸術がそうだと思う。絵画も彫刻も。人生の全てにおいて。何かに秀でたいとか、自分の可能性を育てたいと思うのなら、毎日真剣に取り組むしかないんだ。

ミュージカルの 『Get Jack』 について伺います。上演はされているのですか?

今は上演劇場を探しているところだ。何度かワークショップをやって、何度も(脚本と曲を)書き直している。ラボとしてワークッショプの開催を模索しているんだ。上演するというのは大金がかかる話なんだ。可変部分がとても多い。演劇界にいる人なら、上演に漕ぎつけるには何年もかかるって知ってるよ。だからひたすら頑張っている。

あなたのキャリア発展においてアリス・クーパーの影響はどれほどあるのでしょうか?

彼のバンドにいたことで信頼を得ることができた。多くを学んだよ。彼は寛大で最高のプロフェッショナルだ。だから彼の組織に属すことはロックスターの博士号を取るようなものさ。俺はウェイターだったのに、3ヶ月後にはアリスとアリーナツアーをやってた。高速で学んだ日々だった。それまでに何百万ものギグをやってきたけれど、俺はモトリー・クルーみたいなタイプのロッカーじゃなくて、ドラッグはやらなかったし、今は酒も飲まない。俺は最高のパフォーマーで最高の作曲家になりたかっただけなんだ。俺はそれに集中していた。そんな俺にはアリスの一団は完璧だったのさ。俺が加わったのはアリスが何年も断酒した後で、ギグに集中していた。俺がその後、前進していく為の基礎を築くことができた。彼は祝福して俺を見送ってくれた。

今後の予定を聞かせてください。

交響曲を終えて、レブと Winger の新曲を書き始めたところだ。ソロアルバムの曲も4、5曲程できていて、ツアーも沢山ある。3月にはソロのアコースティックでオーストラリアとニュージーランドに初めて行く。Winger でMORCに参加するし、オースティン・バレエ団が2月に "Ghosts" を上演するし、Winger のツアーもある。

ロック音楽は今後どうなると思いますか?

全くわからない。俺はコンテンポラリー・クラシック曲を聴く位なんだ。気に入ったバンド位しかロックは聴かないんだ。自分の音楽制作に集中しているから。

クラシック音楽は(商業的に)メインストリームになることはあるでしょうか?

いい質問だ。クラシック音楽というと人々はベートーベンとかそういう音楽だと思い込んでいる。1950年以前に書かれた音楽は古典なんだ。それらは永遠に残るものだけれど、一方で存命の作曲家で一般の人にも親しみやすく、クールな作品を書いている人もいる。また超アヴァンギャルドな作風の人もいる。俺もまた少しながら曲を書いたしね。

楽団のミュージシャンにとってもライブ演奏が収入源なんだ。これを続けるためにはファンがライブに通ってサポートするしかない。だから楽団のコンサートに行ってプログラムを見て、コンテンポラリーの楽曲をチェックして欲しい。そうしなければ、ベートーベン(のような古典)を聴くしかないんだ。もちろんそれらは優れた楽曲だけれど、美術館に行って200年前の作品を眺めるようなものだ。今とは関連が無い。

俺がいつも「ライブ・ミュージックをサポートしよう!」って言ってるように、かつては著作権で収入が得られたけれど、Youtube やその類のもので全て吹き飛んでしまった。今ではどのジャンルのミュージシャンもライブ演奏で生計を立てているんだ。


5月30日朝6時(日本時間)キップのFBライブより

交響曲第1番の印刷譜面を手に取って、103ページあるところを見せてくれました。10月にナッシュビル交響楽団が初演する予定。
・キップのソロアルバム用に5曲ほど書けているそうで、その曲はロッド以外のドラマーが叩くようです。
・ヴァイオリン協奏曲の作曲に着手。
StageIt で複数回のストリーミングライブをやる予定。ソロアルバム楽曲を演奏。
・Rock'n Roll Fantasy Camp でロックボーカルのコースを教えるそう。6月13日の1回のみで、20人限定のオンラインコースのようです。
・1983年にアラン・パーソンズから貰った手紙を読み上げてくれました。キップは彼にデモテープを送ってプロデュースを依頼していたようですが、丁寧なお断りの手紙でした。


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最後のコメント「今ではどのジャンルのミュージシャンもライブ演奏で生計を立てているんだ」が重く響きます。コロナ危機によって、多くのミュージシャンに最後に残された収入源のライブが途絶えてしまったのですから。ライブ・ミュージックはどうなってしまうのでしょう?(関連記事はこちらこちら

2週間ほど前にキップはライブ・ストリーミングのプラットフォーム StageIt で配信するアンディ・ティモンズのライブを視察していましたので、キップも始めるのかなと思っていたら、そのようです。キップのようにギター1本でソロライブができる人には最適のプラットフォームだと思います。キップならかなりの数のオーディエンスを集め、配信を収入源にできると思います。

2月のMORCで少しキップと話すことができたのですが、交響曲第1番が素晴らしい出来らしく、「生涯最高傑作」だと話していました。自己を投影し、全身全霊を注いだ作品だそうです。その話になると饒舌でご機嫌でした。初演の日が待ち遠しいですね。

それにしても、MORCのライブでレコーディングが機材トラブルでダメになってしまったのが悔やまれます。もし良いレコーディングができていたら、今のようなツアーのできない時期に少なくともライブアルバムを発売することができたでしょうに!今年のMORCのライブは彼らが特別にレア曲を準備してパフォーマンスしてくれただけに、悔しい。

staytogether.hateblo.jp

Winger の新譜制作については、キップはファイル交換で Winger の作曲はしない為、レブがキップのスタジオで過ごせるようになるまでお預けとなっています。近所に住んでいてくれたら良かった!

最後に先月公開されたオールスター版の "Better Days Comin'" ビデオを貼っておきます。バンドがファンや仲間のミュージシャンに呼び掛けてできたビデオです。アリス・クーパーやクラウス・マイネ、アラン・パーソンズなどのビッグ・ネームが参加して話題になりました。私はリッチー・コッツェンのコーラスが秀逸だなぁと感激しました。

 

ロン・"バンブルフット"・サール コロナ危機後のコンサートの変化:ストリーミング併用と技術革新の可能性

4月後半に公開されたロン・"バンブルフット"・サールのインタビューは、コロナ危機後のコンサートの変化など、とても興味深い内容でしたので、一部を和訳しました。

今後起こるコンサートの変化について、思慮深いロンさんらしく様々な可能性を語っています。直接のミート&グリートが無くなる世界はとても残念だけれど、一方でストリーミングの分野は益々発達しそうです。

 

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今の状況で調子はどうですか?

いいよ、ニュージャージーの自宅に籠っているところだ。時間という贈り物を与えられたのだと思うようにしている。時間というのは常に手からこぼれていくのに、思いもしなかった時間を与えられているんだ。もちろん、医療やライフラインの最前線で命を危険に晒しながら働いてくれている人々に敬意と感謝の気持ちを持っている。ここ(NY州)では大変なことになっているからね。

時間があり余った僕たちにとって、今は学習し成長する最良の機会だと思う。新しいことをやったり、新しい技術を身に付けたり。僕らは普段の生活をぐっと低速に落とさざるを得なくなったけれど、そのせいでストレスの元だった慌ただしい競争に参加しなくても良くなった。実はもっとすべき大切なことがあったんだ。この時間を楽しみ、もっと心の平穏を得る、言葉にするとヒッピーぽいけれど、僕はそう思っているんだ。

今は自宅スタジオですごし、音楽制作に時間を使っている。これまでは忙しくてできなかったことだから。だから僕は今の状況をありがたく活用して、自宅にいることで自分も他人も健康でいられるよう責任ある行動をしている。それしかできることはないからね。この状況では皆が困難に耐えて回復すること、人間は元々そういう性質なんだ。そしてこの時間に良い目的を見つけることだ。

"Planetary Lockdown" という新曲を出しましたよね。

何でこんなタイトルにしたんだろうね(笑)(配信リンクはこちら

今の状況の最初の頃、欧州にいましたよね。全てが閉鎖され始めるときでした。

一番最初は中国にいたときだ。(昨年)11月の終り頃、僕は Cort Guitar のチームとアコースティック・ツアーをやっていた。韓国と中国に行ったのだけど、中国での最終日だ、食用ではない動物を食べた3人が病気になったとレポートが出ていた。でもそれは武漢じゃなく北京近郊のどこかだった。僕らもそこから1時間くらいのところにいたんだ。そしてそれから1ヶ月も経たないうちに武漢からのニュースが出始めた。(それが起源なのか)もちろん可能性の話ではあるけれど、世界中が活動停止のボタンを押す事態になった。

その後、Sons Of Apollo で欧州をツアーしていたとき、僕らは20のショウを予定していたけれど、4回のショウを終えたところで中止して帰国しなくてはならなかった。僕らは状況がエスカレートしていくのか、事態がどんな方向に向かうのか、だとすればどこまでショウを実施できるのかを慎重に検討した。バスのことも考えなくてはならなかったんだ、フライト移動の後、途中からツアーバスを使う予定だったけれど、その日程のショウはできないので、バスをキャンセルした。

プロモーターたちと話したのだけど、ある人には「(キャンセルするとは)訴えてやる!何も問題なんてないじゃないか、お前らは臆病者だ!」って言われたよ。でも1週間後には、その人の国は完全に閉鎖されてしまったんだ。同じ人が「俺が間違っていた。君らが無事だといいのだが。できれば延期日程を話し合いたい」って言ってきた。

 

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これは僕らが謙虚に思い起こす事例になると思う。僕らはこの世界において、ただのゲストでしかない。僕らが全てを取り仕切っている訳ではないし、僕らは優越する種でもない。自然界がほんの少し動けば、僕らは死に絶えてしまう。僕らは今あるもの全てに感謝するべきだ。健康であること、互いに助け合うことなどね。これは人間が全能ではないという注意喚起なのだと思う。

ツアーはいつ再開できると思いますか?

わからないよ。今のこの状況では僕は何の計画もしない。僕らがかつてのアナログな世界にいつ戻れるのか、それまでは現状を受け入れてこの生活を続けるよ。今の状況はストリーミングについての技術発展を早めるだろうね。以前からあった会社 StageIt (訳者注:ストリーミング配信のプラットフォームで多くのアーティストがこのシステムを使ってライブ配信をしている)がある。

1つの場所からショウをやって配信できるとして、今はレイテンシー(訳者注:データ通信の遅延時間のこと)問題がある。スカイプで誰かとジャムしようとしても、君が弾いた音は相手に半秒遅れて届くし、それを聴いてプレイした相手の音が君に届くのにも半秒ズレる。全員が同じタイムを共有できない、これが大きな問題だ。

思うに、今多くの人たちがこのレイテンシーを減らそうと試みているはずだ。これを想像してみて欲しい、全員が異なる場所にいるバンドメンバーが同時にシンクロでプレイできて、皆が同じタイムを共有できる世界。もしこれが実現したら根本から変わるだろう。

 

それに人々はこの生活様式に慣れていくのだと思う。外出制限が解除されたとして、もうツアーをやりたくないと言う人が出てくるのではないだろうか。「自宅から直接、相方向のショウを配信したい」とね。

それにこう言う人も出てくると思う。「クラブに深夜までたむろして、1時間かけて運転して帰るのは嫌だ」とね。「家で観るよ。夕食を食べながら観れて、コンサートに出かけるのと同じだ」そう考えるだろう。

僕らが以前の生活に戻ったとしても多くの残留効果が残るのではないかと思う。これは消えてなくならないんだ。今僕たちが経験している生活は今後も新たな様式として続く。

あなたに賛成です。今後コンサートが再開されるとして、小さな会場になりますか?スタジアムやアリーナでのコンサートはもう開催されないのでしょうか?

ここで僕の別の考えを言おう。2つを組み合わせる試みがあるのではないかと思う。アリーナでのコンサートはあるのだけど、それはまたストリーミングされるんだ。スクリーンがあって、選ばれた何人かの人がいる。要は何人かをステージに上げてバンドと歌わせるみたいなことさ。

今はその代わりに誰かを分割したスクリーンに招き入れることができるよね。ファンから誰か選んで質問してもらうとか。そういうことを加えて1つのライブショウにできるのではないか?そうなったら面白いのではないかと思うよ。

新しいVIPの仕組みを想像してみよう。従来の「バンドに直接会って、握手して写真を撮ったらさっさと消えてくれ」みたいなナンセンスの代わりに、デジタルでストリーミングを使った何か、例えば1曲一緒にジャムするとか。そうして考えると可能性は無限大にある。ファンやバンド、皆のために何か特別なことができるのではないか。

ミート&グリートの話が出たのは興味深いです。今後ファンと直接触れ合うことに躊躇しませんか?

この後、人々は直ぐには以前のように握手したりハグしたりしないと思う。今の状況に慣れてしまったから、皆が注意深くなるだろう。

今後劇場が再開されても、人数を制限し、人々は互いに距離を取り合うのでしょうか?

劇場で互いに2メートル距離を取って座っているところを想像してみて。これが終わっても人々は病気にならないように注意深く行動するだろうから、隣に座ることや接触は避けるだろうし、咳をしたら銃を取り出したかのように見られるだろうね。

外出制限が解除されても、奇妙な状況だよ。バンドは皆ツアーに出られなくて、いつ再開できるかの賭けをしているようなもので、世界中の多くの会場は2021年いっぱいはすっかり押さえられている。そしてその会場の半分はいまだ再開されていない。どうやって支払いをしていくんだ?
この先6ヶ月、僕らはビジネスができないけれど、請求書はやってくるんだ。でもこれは僕らだけの問題ではない。皆が食も住居も必要だ。皆が仕事をできずにいて、政府の仕事は十分に全員を救えるほど迅速ではない。ではその結果何が起きるのか?公ではなく私のセクターで相互扶助が始まるのか、ただ恐怖におののくのか。

既にそれは始まっていますね。バンドはツアー再開が待ち遠しいのでしょうか?

今まで忙しすぎて家にいられなかった人たちがペースを落として、家族との時間が持てて喜んでいるというのはあるけれど、ツアーを恋しく思う人も多いね。実のところ僕はツアーは好きじゃないんだ。教えることとプロデュースすることが好きなんだよ。でも今は心からツアーが恋しい。街から街を移動し、自分たちの仕事をやって、数時間汗まみれになり、持てる全てを注ぐんだ。それにツアーバス。僕はツアーバスで最高の眠りにつけるんだ。僕の小さな棺桶、10時間だって眠れる。

イスラエルの Dodies というバンドをプロデュースしたそうですね。

Dodies!アルバムが24日にリリースされるんだ!素晴らしいバンドなんだよ。彼らはテキサス郊外にいて、僕はそこへ出向いて共同プロデュースすることになった。2人の若者のうち1人はカート・コバーンのような詩的魂の持ち主で本物で真っ当、正にアートというタイプだ。もう1人のドラマーもそうなんだが、彼は片手でグルーヴを生み、片手で鍵盤を操りベースを弾く。The White StripesRadiohead のようなグランジっぽい味があって、素晴らしい曲を書く。(アルバム試聴はこちら、MVはこちら

今後の予定を教えてください。

カバー曲をアコースティックでプレイしてレコーディングしている。(リリースされたEPはこちら 現在はもう1枚のアコースティックEPを制作中)それから "Planetary Lock Down" のようにソロの新曲も。今度はもっとクリエイティブなタイトルを思いつかないとね。それから、Sons Of Apollo の新曲も書き始めるよ。

あと、僕のソロバンドのドラマーでUKにいる、カイル・ヒューズとビリー・シーンがベースで、僕がギターとバッキング・ボーカルを担当して、僕の友人のミラン・ポラック (Milan Polak) の為にプレイする。素晴らしいシンガーでギタープレイヤーでソングライターだ。

数年前に "Devil On My Shoulder" という曲を書いたんだ。トーマス・ラングがドラムでベースはデヴィッド・エルフソンだ。これはチャリティソングだよ。次の曲はアルバムに入っているのだけれど、新しいバージョンになる予定だ。次もチャリティに寄付するよ。

そんな感じだ。あと時々スカイプでギターレッスンをやったり。ミキシングやマスタリングやソロなどもあるけど、出来るだけ数を絞ろうと思う。注意がそれないよう作曲に集中したいから。そうじゃないと僕は書けなくなるんだ。

Asia については、2020年にツアーをという話があったのだけど(現状では)実現しない。2021年には Asia は数回コンサートをやる予定で、Sons Of Apollo はワールドツアーがまるまる残っている。ツアーを中断したところに戻って再開する。そのツアーの合間には自分のイカレたことをやり、アコースティックのライブやクリニックをやるよ。

Sons Of Apollo の新曲制作についてですが、バンドが離れていてどうやるのですか?

僕らは常に連絡を取り合っている。過去の2枚のアルバムでは僕とデレクとマイクのメールのやり取りがあって、曲やリフのラフなアイデアをドラムビートにギターを入れて僕が送ると、デレクがキーボードパートのアイデアMIDIのファイルなんかで送ってきて、そういった未完成曲のアイデアが山積みになっていて、取り掛かりがあるんだ。それらを持って集まりジャムをして、曲の方向性を探り、やがて1日の終わりには曲が完成するのさ。だから今はアイデアを出し合っているところだ。

今は直接会って話すことができませんが、ファイル交換とか以前とは別の制作アプローチをとるのでしょうか?

直接会えなければ、何か別の方法を見つけるしかないよ。今はこれが世界中の心境なのだと思う。「何であろうと、どんな方法であろうと、必要なことをやる」

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〈割愛したロンさんの小ネタ〉

・昨年、中国に行く前には南アフリカに行って、ペンギン見物をしたらペンギン風邪(?)にかかって、その後のカナダツアーで声が出なくなり、スティーヴン・ホーキング博士が使っていたようなボイス変換アプリを使ってツアーをしのいだというロンさん。中国に行く頃には非常に注意深くなっていて、N95のマスクも備蓄してコロナ対策は既にできていたそう。

・Sons Of Apollo の欧州ツアーでキャンセルしたバスは2週間で$36,000ほどだったそう。(ドライバー人件費と燃料諸経費込み)

 

〈今後のコンサートについて、私的感想〉

ロンさんが語っていたように、レイテンシーを解決したストリーミング技術ができれば、大きな革新となりそう。5G通信の世界では可能なことのようなので、技術革新がコンサートのあり方を変革してしまうのかも。一方でこのインタビュー動画自体にレイテンシー問題が激しく現れているのは笑えますね。

それから、ミート&グリートについて、ロンさんが 「バンドに直接会って、握手して写真を撮ったらさっさと消えてくれ、みたいなナンセンス」と言っているところも興味深いです。ツアーの収入源としてミート&グリートをやっているけれど、ロンさんとしては納得していない気持ちの表れなのかと。2月に Sons Of Apollo のミート&グリートに参加したときも、ロンさんは写真撮影後に最後までファンと会話したり個別の写真撮影に応じていました。ファンへの愛情を感じます。