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ジョエル・ホークストラ Joel Hoekstra’s 13 ニューアルバム『Running Games』発売!

ジョエル・ホークストラのサイドプロジェクト、Joel Hoekstra’s 13 から2枚目のアルバム『Running Games』が2月12日にリリースされました!

当ブログを常時チェック頂いている方にはいかに彼が私の推しであるかご存じかと思いますが、ニューアルバムがあまりに傑作だったので、初めてこのアルバムでジョエルを知った人にも彼がどんなアーティストなのかをお伝えすべく、ライナーノーツ風にジョエルとアルバムの紹介を以下に書きました。

記事下には、ニューアルバムの好きな曲アンケートも用意しましたので、ぜひ回答していって下さい。後日、ジョエルに集計結果を報告しようと思います。

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『Running Games』が遂に完成しリリースされた。前作の『Dying To Live』から5年余り、Whitesnake、TSO、Cher のツアーで多忙を極めていたジョエル・ホークストラが2作目にどんなアルバムを提示してくるのか楽しみだったが、期待を大きく上回る傑作となった。

制作の経緯

2019年2月にジョエルと Joel Hoekstra’s 13 の2ndアルバムについて話したとき、彼は既に全曲の作曲を終えてパートのレコーディングに入っていた。「次のアルバムには良い曲が入るからリスナーに気に入ってもらえると思う」と語った彼の瞳に迷いは微塵もなく、それほど自信作なのかと驚き、完成を楽しみにしていたのだ。あの自信には明確な根拠があった訳だ。1年後に再会したときにはレコーディングはあれから余り進んでいないようだったが、その直後から始まったコロナ禍で参加ミュージシャンの作業が大きく進んだようだ。

元々、前作の『Dying To Live』は彼が Night Ranger に在籍中にハードロックで自分を知るファンに向けて、ストレートなハードロック曲を書こうとしたところから始まっている。自主制作のEPとして始まったプロジェクトは、彼が Whitesnake 入りを果たしたことによって Frontiers の目の止まることとなり、フルアルバムでリリースされた。

アルバムの楽曲

ハードロックと言っても、1作目はスラッシュ・メタルに近い曲調のものから、ポップスに近い曲、更にデュエット曲まで彼の幅広いジャンルの好みを反映してかなりレンジの広い楽曲群だったが、今作では曲のレンジを絞り、本人の言葉を借りると「最もヘヴィなもので DIO 、ライトなもので Foreigner 」の範囲にレンジが設定されている。

的を絞ったと言っても、ボーナストラックを入れての13曲はバラエティ豊かで、ヘヴィなロック曲からメロディックなミドルテンポの曲、ブルースロック、疾走感あるハードロック曲、タイトルトラックの “Running Games” はブラジリアンを思わせるアコースティックギターが印象的な味わい深い〆のバラードとなっている。ボーナストラックは世界市場用と日本限定の2曲あるが、どちらも良曲でボーナストラックにしておくには惜しいほど。特に日本盤の “I Won’t Lie” はこれを日本限定としておくのは世界中のファンに申し訳ないほどだ。

 

ソングライティング

前作でもジョエルのソングライターとしての才能に感銘を受けた。確かに楽曲のレンジが広くアルバムとして聴いたときに混乱したリスナーもいたかも知れないが、今作では王道ハードロック作品として非常にクオリティの高いアルバムになった。ちなみにジョエルは前作でのソングライティングの腕を認められ、Whitesnake 最新作『Flesh & Blood』ではデヴィッド・カヴァーデイルと8曲で共作している。最終的にはプロデューサーとして迎え入れられているのをみれば、彼のアルバムへの貢献がわかるだろう。

参加ミュージシャン

『Running Games』主な参加ミュージシャンは前作と同じオールスターが揃っている。ドラムは元DIOのヴィニー・アピス、ベースは元Blue Murder のトニー・フランクリン、キーボードは Sons Of Apollo のデレク・シュレニアン、ボーカルは Symphony X / TSOのラッセル・アレン、バックコーラスは Sons Of Apollo /TSO のジェフ・スコット・ソート

前作ではボーカルがラッセルとジェフの2人で半々となっていたが、(ラッセルのスケジュール都合による)今作ではリードボーカルは全てラッセルとなり、ジェフはバックコーラスのみという、この上ない贅沢なジェフの起用の仕方をしている。そして2人の声のブレンドが秀逸!前作ではボーカルがハードロック界を代表する2人なのは豪華この上なかったが、今作はラッセルに絞って一貫性を持たせたようだ。リズム隊のヴィニーとトニーはジョエルの求めるハードロックのフィールを表現するのに不可欠なチームで、今作でも見事な仕事をしている。

前作との違いはもう1つ、今作ではキーボードのデレクのプレゼンスが大きくなっている。イングヴェイ・マルムスティーンの楽曲を連想させるような鍵盤とギターのリックの掛け合いがスリリングに長尺で展開する曲もある。曲を重視するため、「速弾きの自己満足的な長いギターソロは入れたくない」というジョエルは前作でギターソロを簡潔にしていたが、デレクとの掛け合いという要素が入ることで、長尺のソロを解禁したようだ。

ミックスとマスターをクリス・コリアーが担当したのも前作と同様だ。前作でジョエルはジェフ・ピルソン(Dokken, Foreigner)に紹介されクリスを起用したそうだが、前作のサウンドの良さに感激したデヴィッド・カヴァーデイルがクリスを起用し、Whitesnake 最新作『Flesh & Blood』のミックス他、過去作のリマスター・リミックスを何作もクリスに担当させてリリースしている。(最近発売された Rock, Love, Blues のトリロジーアルバムも全てクリス)今や白蛇の音をコントロールしているクリスは本作も見事なサウンドに仕上げている。

レコーディング

『Running Games』は全てのトラックを各アーティストが自宅スタジオ等でレコーディングして創られている。コロナ禍ということもあるが、元々地理的に離れて暮らし、スケジュール調整の難しいアーティスト達のため、ファイル交換式でのレコーディングが都合が良いのだろう。ジョエル自身も細部にこだわるタイプのため、納得できるまで気兼ねなくテイクできる今の作業環境は気に入っているようだ。ジョエルのギターは全てプラグインを使って録音されている。Whitesnake 最新作『Flesh & Blood』はスタジオで録られているので音を比べてみても面白いかも知れない。私見だが、少し明るく輪郭のハッキリしたサウンドになっている気がする。

ライブ

このメンツを集めてのライブは当然に実現のハードルが高い。しかし2017年に1度だけ Joel Hoekstra's 13 名義でのライブが実現している。私は幸運にもそのライブを観ることができたが、ヴィニー、ラッセル、ジェフ、ジョエルの揃ったライブの迫力は圧巻だった。(残念ながらトニーは都合がつかず)昨年ジョエルは「(Joel Hoekstra's 13 名義で)短くてもいいからツアーしたい」と言っていたが、コロナ禍もあり、更にハードルが上がってしまった。難しいだろうが、いつかどういう形かで再度ライブが実現する日が来ることを期待しよう。

キャリア

ジョエルのギタリストとしてのキャリアを紹介しておこう。彼は少し遅れて生まれた(1970年12月13日生、13は彼のラッキーナンバー)が故に80年代のギターシーンを逃したものの、努力と勤勉さで長い下積みキャリア中に幅広いジャンルとプレイスタイルを身に付けたギターの名手で、正に遅咲きのギターヒーローだ。AC/DCの影響で11歳からギターを始め、ハードロックギターの道を邁進するが、カレッジではジャズやクラシックギターを学び、GITに進んで再びエレクトリックギター漬けの日々をおくる。

多くのギグをこなすうちに Night Ranger のケリー・ケイギーと共演し、ジェフ・ワトソン脱退後、レブ・ビーチをピンチ・ヒッターにツアーしていたバンドでレブの後任となった。今ではレブ・ビーチと共に Whitesnake のギタリストとなっているところも感慨深い。

プレイスタイル

ティーンの頃に師事した8フィンガータッピングの技巧派 T.J.ヘルメリッチから教わった8フィンガーがジョエルの代名詞のように思われるが、何でも弾けるテクニックを持ち、アコースティックの名手でもある。クラシックの演奏家の親を持つこともあり、音楽理論にも強い。スティーブ・ルカサーやジョー・ボナマッサら大物ギタリストたちにも彼の高い技術は称賛されている。通常は Les Paul を愛用(「プレイアビリティを犠牲にしても、コードの響きが重要」と本人談)しているが、ショウに合わせてストラト他様々なギターも弾く。

カナダの老舗著名ロックバンドTriumphのギタリスト、リク・エミット(Rik Emmett)氏からもこんなコメントが寄せられている。(引用元の記事はこちら

「この世にはロックギタリストのエリート・グループというものがある。少数の卓越したプロフェッショナルたちで、完璧な技術と情熱を持ってプレイできる人らだ。ジョエル・ホークストラはその1人で、しかもそこにステージプレゼンスとカリスマ、身体的特徴とを加味するなら、彼は完璧なロック・ゴッドの逸材だ。彼とは共にステージに立ってプレイする幸運に恵まれたし、彼の様々なバンドでの活躍を見て、彼の新曲 "Finish Line" を聴くと、彼は成熟した火を噴く怪物だ。この曲のギターパートからは火花が飛んでいる。彼は長身でレスポールを肩に掛けるとウクレレに見えてしまうくらいだ。私は小柄だからこれには威圧されるし、自然の不条理を感じるよ」

 

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アルバムの好きな曲アンケート作りました、お気軽に回答していって下さい。

 

 

スティーブ・ヴァイ 「卓越と革新、これぞエドワードの代名詞だ」

2021年1月号の Guitar Warld 誌は "A Farewell to the King" と題したエドワード・ヴァン・ヘイレンの哀悼特別号でした。特集ではロックギター界の大物から若手まで多数のギタリストがエディの思い出や彼への哀悼の言葉を寄せており、その掲載だけで12ページもの誌面が割かれました。その中で最も目立っていたのは1ページを使って掲載されていたヴァイ先生の哀悼の言葉です。(1ページ割かれていたのは先生だけ!)

特集号発売から数ヶ月が経ち、GW誌が本記事をウェブで一般公開しましたので、この味わい深いヴァイ先生の言葉を以下に全文和訳してみました。

www.guitarworld.com

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天才の持つ無垢さとは魅力的だ。エドワード・ヴァン・ヘイレンのキャリア全てを通してこれは顕著に表れている。

私たちは「天才」とは知の巨人だと限定して考えがちだが、別の見方をすれば、恐らく「天才」とは、彼らの持つ独自にインスパイアされた創造的直感にシームレスに繋がる能力のことだろう。

「天才」はこれらの直感を苦も無くこの世で表すことができる。優美に、そして言い訳や恐れもなく、これは彼らの自然な生来の創造的状態だ。私たち皆の中にもこれを実現する可能性はある。

エドワードは知的なタイプではなかったが(神に感謝だ)、天才だった。彼は優れた集中力、揺るぎない自信と明白な情熱を備えていたが、彼自身はそのことを自覚さえしていなかった。ただ彼にとっては自然なことだったのだ。音楽ヴィジョンのことになれば、彼は障害にも気付かなかった。

創造的インスピレーションの表現において人が遭遇する障害とは、自らのゴール到達に対する否定的思考だけなのだ。これらの障害は一般に考えられているように外界にあるのではなく、人の内面にある。不安と恐れの思考が人の持つ能力の根を断つのだ、シンプルで創造的閃きを発見し表現する能力は既に備わっているのに。

エドワードはこのような類の思考の餌食に陥ることはなかった。むしろ、彼は自らの至福を追求した。そうする過程で、彼はギターコミュニティ全体を進化させるパラダイムシフトを創造したのだ。彼のゴールは分刻みで設定され、彼は常に挑戦し自らを満足させていた。

何かを特定の手法で演奏するという内面的欲求の経験、そしてそのゴールに到達し、直ぐに別のゴールを設定することは強い興奮を呼び、ひどく病みつきになることだろう。そして彼が全てを達成したとき、その上で歌っているのがサミーであれ、デイヴであれ、関係なかった。彼は構わずモノにする。例外はない。

人が情熱的に物事に取り組んだなら、興奮そして歓びの感情が前面に出て、それが導きとなる。それは強力なスタミナを与え、妥協することなく適切な表現を見つけるために深く深く探求するのを可能にする。しかし、練習のみでは成せない。

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練習は自分自身の独自で創造的アイデアの恐れなき探索と一体とならねばならない。鍛錬が情熱に置き換わるのはこのときであり、それは創造において特に優れた道具だ。

このプロセスの結果は卓越と革新であり、これぞエドワードの代名詞だ。彼がトーンと演奏を発展させるとき、彼は自分の意図する通りのサウンドが得られるまで妥協しなかった。

彼が創り出した画期的テクニックは見事に演奏された、なぜなら彼にはそのように頭の中で聴こえていたのだ。更に彼はそれを追求するのが大好きだった。発見の過程そしてゴールの達成は彼の至福だった。彼のヴィジョンの要素の全ては荘重に現実となった。

あのトーン、各音の選択と個性、彼のコードプレイとグルーヴにロックした様、あのヴィブラートそして驚くべきイントネーション、「バッドアス」なサウンド・アティテュード、明白かつとてつもない彼の発見した革新的アイデアの実行は、全て極上で彼の内面の耳の欲求を形にしたものだ。激しいアーム使いが加えられ、それらは完璧な銀の皿に盛られて私たちに強力に提供されたのだ。

しかし、恐らくエドワードの最も魅力的な要素はあの笑顔だったろう。それが彼の音楽的DNAの核だった。彼の顔にはプレイの歓びが表れていた。歓びに溢れた光が彼の書いた曲のハーモニー構造を照らしているのを人は聴いて感じるだろう。そして私たちは皆彼の曲が大好きだ。なぜならその音楽は歓びに溢れた心から生まれているのだから。

素晴らしいよ、彼がこの世にいたとは、何と私たちは幸福なことか。65歳というのはいささか早いが、ギターの年齢にすれば早すぎることもない。この世でエドワード・ヴァン・ヘイレンは彼の黄金の杯を私たちに注ぎ空け、杯が満たされた私たちは至福の境地だ。彼は真の意味で事を成したのだ。

たとえ彼を個人的に知らなくとも、多くの人は彼が親友であったかのように彼の死去に救いがないほど打ちひしがれたろう。彼に直接礼を言いたい欲求、心からの誠意を込めて彼の目を見て、彼が私たちにどんな存在だったのかを表現したい気持ちがあるのだ。

しかしながらわかるだろう、言葉ではあの親密な気持ちを得ることはできない。しかし彼が私たちに遺した無数の人生を変えるギフトを楽しみ続けることでは可能だ。

キング・エドワード、君は並外れた人だった。私たちは感謝している。

 

スティーブ・ヴァイ

2020年10月14日 ロサンゼルスにて 午後5時7分

(エディの死去から8日後)

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ジョエル・ホークストラ & Inglorious / part 2 of 2 :JH13ニューアルバムとマイケル・スウィート新プロジェクト

ジョエルとUKのロックバンド Inglorious のリーダーでボーカルのネイサン・ジェイムズとギタリストのダニー・デラ・クルスとのライブチャット続きです。

 

ジョエルとネイサンはマイケル・スウィートとの新プロジェクトも控えており、その辺りについても少し話しています。以下はチャットの概要和訳です。

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NJ(Nathan James):ところで君のアルバムも僕らと同じ日に発売になる。ラッセル・アレンの声のファンなんだ。彼には俺にできないビッグでファットな DIO ヴォイスがある。君の書いた曲はラッセルの声にぴったりだった。自分のプレイよりもラッセルの声に合わせて作曲しているの?

JH(Joel Hoekstra):ああ、このアルバムでは歌詞もメロディも僕が書いたから。君のアルバムではギターリフを書いて、君がメロディで書くものに十分な余地を残しておいた。僕のアルバムではラッセルの声のレンジを考慮し、またミュージシャンのラインナップに最善の作曲を心掛けた。ドラムのヴィニー・アピスとベースのトニー・フランクリンのリズム隊では DIO 的なプレイが生まれる。

 

でも僕はヘヴィだけでなくもっとライトな曲も好きだ。だからDIO 的なヘヴィネスから Foreigner 的ライトさがある。ラッセルはそのライトなスタイルでも見事な仕事をしてくれた。ラッセルと僕の付き合いはTSOでもう長いから、お互いが良く分かっている。それにバッキングボーカルにはジェフ・スコット・ソートが参加してくれた。史上最も才能過多のバックコーラスさ。彼にリードを歌ってもらうならもう1枚アルバムを作らなくちゃならない位だけど、彼はソロやプロジェクトで忙しいから、バッキングを頼もうと思ったんだ。

前作ではリードシンガーをラッセルとジェフで分けたのだけど、それがリスナーから唯一不満をもらったんだ。それで今回はシンガーを1人にすることにした。でもジェフは作品のレベルを上げてくれたよ。しかも彼は仕事が凄く早い。16トラックあるのに何でそんなに早くできるんだ?って位に。

NJ:レコーディングはパンデミックの去年?それとももっと以前に?

JH:ロックダウンの時には半分終えていた。ヴィニーもトニーも終えていて、ラッセルが3曲終えていた。僕が歌ったガイドトラックはあったから、曲は全て歌詞も書いてあった。パンデミック後、ラッセルに残りを歌ってもらい、僕のギターを入れて、ジェフのコーラスとデレク・シュレニアンのキーボ-ドだ。

デレクは特に信じられないくらい仕事が早かったよ。アルバム1枚を2日で仕上げてきたんだ。13トラックをだよ、クレイジーだ!前作では彼にあまりスペースを残していなかったけれど、今作ではスペースを残し、キーボードとギターで掛け合いする曲もある。イングヴェイの曲みたいにさ、僕の速弾きは余り無いのだけど。

DD(Danny Dela Cruz):ギタープレイヤーには気になると思うのだけど、ギターサウンドはプロジェクトごとにどうしているんだい?

JH:全てはレスポールから始まるんだ。僕はサウンド面でもプレイ面でもレスポールが大好きだから、これで Whitesnake にフィットできて嬉しいよ。最近ではクリーンでもレスポールから出す音が気に入っているんだ。大抵はクリーンならシングルコイルのストラトだろう、と言われるけど。

ニューアルバムでは全てゴールドトップで弾いてて、一部クリーンが欲しい時にストラトで、サステイナーが欲しいときは Jackson PC1 を使った。人にどのギターから始めるべきか?って訊かれるけど、レスポールストラトテレキャスターで全てだよ、後のモデルはそれらに何か加えたものだ。ジャズに行きたいならホロウボディもあるけど。

DD:アンプについてはどう?

JH: Marshall と Friedman が好きだ。時折、レブの Custum Audio Electronics を使うこともあるけど、それは電源が既に入ってて、すぐ弾きたいって時だね。(訳者注:Whitesnake スタジオでの話)Victory もクールだ、スタジオにあるMezzabarbaも。『Flesh & Blood』では基本 JCM800 だった。

『Running Games』ではプラグインを使わなくちゃならなかった。自宅のアパートで録音したから、4x12のキャビなんてないからね。それに、もしあって使ったとしたら(騒音で)追い出されちゃうよ。それで、持っているモデリングユニットを書きだしてミックスエンジニアに渡した。あとDIも通して、エンジニアにも好みのDIがあった。彼は今話題の新しい Neural DSPプラグイン)を使うから4つの異なったアンプがあるみたいな感じさ。

DD:僕はプラグインとか使わないけど、いいサウンドだったよ。

NJ:最後に、俺たちの友人マイケル・スウィートがアレッサンドロとプリ・プロダクションを始めたそうだ。彼らと俺と君とマルコ・メンドーサとトミー・アルドリッジの新プロジェクトだ。俺にとっては夢が現実になったみたいだ。マルコとは Dead Daisies のときに知り合っていた。実際、こういうラインナップって俺がセラフィーノ(Frontiers レーベル代表)に話したんだ。これまでのところ、君は何をしている?

JH:マイケルにソングアイデアのギターリフを頼まれたんだ。彼はジョージ・リンチとのプロジェクトの時のように取り組みたいみたいだ。曲の形でなく、イントロリフとかヴァース用とか、僕はアレンジしないでパーツを書く、彼が必要なパートを組み立て、アレンジして曲の形にしている。とても楽しみだよ、こういう形式で書くのは初めてだし、とても協働的なものになる。2人のプロデューサーがいるからよく話を聞いて仕事をしている。ストレートなブルースロックのリフを書いているよ。

NJ:デモを聴くのが楽しみだよ。どんなフィールか知りたくてマイケルに今週末にでも教えて欲しいって言っているんだ。とても楽しみだ。

今日はありがとう、皆は Inglorious と Joel Hoekstra's 13 両方のアルバムを買って欲しい。

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アルバムはどちらも2月12日発売です!

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ジョエル・ホークストラ & Inglorious / part 1 of 2:Inglorious 新曲と Whitesnake ツアー

ジョエルがUKのロックバンド Inglorious のリーダーでボーカルのネイサン・ジェイムズとギタリストのダニー・デラ・クルスとのライブチャットに参加しました。

Joel Hoekstra's 13 も Inglorious も Frontiers から2月12日にニューアルバムをリリースします。ジョエルは Inglorious のニューアルバム『We Will Ride』の楽曲 "Medusa" と "God of War" の作曲に参加しています。ジョエルとネイサンは2016年にTSOで出会っており、Inglorious の1stアルバムの曲 "You're Mine" を共作しました。

以下はチャットの概要和訳です。

 

 

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NJ (Nathan James):今日は参加してくれてありがとう。実は俺たちのニューアルバムからのシングル、 "Medusa" が Planet Rock のプレイリストに入ったんだ、これはUKではデカイことで、俺らみたいな若手バンドには重要だ。それで "Medusa" について君と話したいんだけど。

 

youtu.be

JH (Joel Hoekstra):君らの活動の一部に貢献できたことが嬉しい。君らは注目のバンドだし、君らを新進気鋭とは言いたくないな、既に確立したバンドだが、一方でまだこれから上昇するバンドだ。Whitesnake はもう40年も活動しているバンドだから、これから成功しようとしているバンドに貢献できるのは楽しいよ。

NJ:1stアルバムでも共作したんだった、もう5年も前だ。あのとき、デレク・ショウルマンがTSOで一緒にアメリカにいるんだから、ジョエルと書いてみろと言ったんだ。あれはオマハのホテルだったよね。(訳者注:TSOのリハーサルはオマハで行われる)

JH:ああ、ダブルツリー・ヒルトンだった!(笑)あのときに書いたリフ2つの内の1つが君のアルバムに入って、もう1つは自分のニューアルバムで使ったんだ。"Fantacy" って曲だよ。

NJ:一度一緒にパフォーマンスもしたよね?Monsters of Rock Cruise は最高に良かった!いつかまた乗りたいよ。

 

 

(ビデオ脚注:2017年のMORCライブから。アルバム収録された "You're Mine" (ジョエルは作曲のみ)とジョエルがライブ参加してギターを加えたバージョン(↑)をぜひ比較して聴いてもらいたい。ギター1本でこんなに曲がカッコ良くなるお手本。)

 

JH:ああ。僕はMORCが大好きで固定メンバーだ。毎年楽しんでるよ、僕のハングオーバーセット(訳者注:午前に行われるアコースティックライブ)ではオーディエンスにブラッディ・メアリーを配ってる。そんな風に僕はあそこで変わった慣習を作ってるんだ、最近ではあそこで乗客とバスケの試合をするんだ。とても楽しいよ。

 

 
 
 
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NJ:あの年はTSOのジョディ(訳者注:ネイサンの彼女、Cher のバックシンガーでもあり、ジョエルにとっては Cherバンド仲間)と行ったし、TSO仲間のジェフ・スコット・ソートラッセル・アレンもいた。

JH:(TSOの)クリス・カフリーもいて楽しい年だったよ。

NJ:TSOはもう何年やってるの?

JH:2010年が僕の最初のツアーだから、あの年に雇われてもう10年だなんて驚くね。この冬のツアーがなかったのは不思議な感じだけど、素晴らしいミュージシャンとビッグなプロダクションでアリーナでプレイできるのは素晴らしい経験だ。

NJ:俺にとっても素晴らしい経験だったけど、(1度の参加で辞めたのは)今はこのバンドに集中しなくてはだめだと思ったんだ。でもいつかまた参加したい。

DD(Danny Dela Cruz): "Medusa" のリフだけど、あれはどんなインスピレーションからきているの?音楽的に影響を受けたものは?

JH:ネイサンは古風な Whitesnake タイプだと思っているので、ブルースを考えた。どうしてスライドのリフにしたのかは覚えていないけど、Whitesnake の『Flesh & Blood』でもスライドを使った曲を書いたから。Joel Hoekstra's 13 では DIOっぽいヴァイブだからフィットしないんだ。だからスライドを使ういいチャンスだと思ったんだ。僕はスライドのプレイが好きだし。それでスライドのリフを思い付いた。

コーラスに思い付いたのはスライドに合わなかったのでそれはフレッテッドで弾くことにした。コーラスはメロディックで、リフはブルージーにしようと。そしてプリ・コーラスは Zeppelin ぽいヴァイブだ。リズムセクションのためにスペースも残した。そういうのがリズムセクションに喜ばれるからね。「やった!(ギタリストが)やっと一瞬プレイを止めた!これでハイハットかスネアの音が通る」って(笑)

とにかく、クールなリフとブルースベースのクラシック・ロックで君らに貢献しようと思ったんだ。あとは少しネイサンが手を入れる余地を残して。リスナーに気に入られて良かったよ。君は実に良いプレイをしていたね。

DD:それは嬉しいよ、肩の荷が下りた感じだ。あの曲は最後に残していたんだ、スライドプレイを覚えなくてはいけなかったから。

JH:君がリフプレイを説明するビデオを見たんだけど、ベテランのスライド・プレイヤーに見えたよ。すぐ覚えたね。君のプレイはどれも素晴らしいよ。

DD:ありがとう、凄く嬉しいよ。僕が教えているギター生徒はよくジョエルみたいになりたいと言うんだ。プレイスタイルが多様でどんなスタイルもプレイできる。そういう多様性はどう身に付けたんだい?

JH:必死だったのさ!(笑)80年代ってどんなヴァーチュオソになれるかってことがギタリストの関心だったろう?本当に上手いリズムギターが弾けるようになる前からファンシーなリックを弾こうとしていた。僕はある時点でこれに追いついたんだと思う。僕にとって良かったことはハリウッドのGITに行ったこと。初めて家を遠く離れてロスへ行き、有名になってやるって思ってた。でも僕にとって一番良かったことは僕がGITを出たところで Nirvana がブレイクしたこと。腕利きギタリストになるぞって夢は一瞬で地に堕ちて燃え尽きた。

DD:ギターソロも消えてしまったよね。

JH:でもそれが僕にとって実のある時期になったんだ。92年かな、そこから2008年に Night Ranger に参加するまではクールなソロを弾こうなんてことではないことを何でもやった。ミュージシャンとしての腕を鍛え、自分の価値を上げるため、どんな種類のギグでもやった。人生としては厳しい道のりだったけど、最終的には僕はずっと良いミュージシャンになれたと思う。何に対しても心を開いて、曲の為にプレイするということ。速弾きを競うようなことではなく、優れたミュージシャンになるということが重要だ。とにかく、生活費を稼ぐために必死でどんなスタイルのプレイも覚えた。

NJ:ダニーが参加して2年になるけど、俺の思い出は2019年のフェス出演だ。週末のショウで2度 Whitesnake と一緒だった。でも最初のは、俺たち自動車事故に遭って、その3時間後にステージに立ったんだ。

JH:ハハハ!笑ってごめん、でもこれぞロックンロールな体験だ、君の自伝本にとっておきなよ。

NJ:とにかく、スイスのフェスとベルギーのフェスで Whitesnake と一緒だったんだ。後者のは多分、このバンドでの最高のショウだった。メインステージであのラインナップの中でビッグなギグをやったんだから。それにデヴィッド・カヴァーデイルに会えたのは俺の人生で最高の日だから決して忘れない。俺は全くの Whitesnake ファンの1人だ。それにあの日ダニーは君の側でプレイを見ていたよ。KISS、 Def LeppardWhitesnake が一堂に会した日なんだ、決して忘れない。Whitesnake で忘れがたいショウというのはある?

 
 
 
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JH:大きなショウは沢山やったから…僕はこの歴史あるバンドの僅かな一部になれてただ嬉しいんだ。僕は何も知らずにバンドに加わったけど、嬉しい驚きはデヴィッドだった。人として素晴らしいし、常にポジティブだ。トミーはレジェンドだし、レブは実に本当に優れたミュージシャンなんだ。レブも様々なセッション等で多くの経験を積んで学んだプレイヤーでいいシンガーだし、優れたリズムギタープレイヤーでもある。彼のフラッシーなタッピングが目を惹くと思うけど、彼は素晴らしいミュージシャンなんだよ。

ミケーレは歌が上手いし、彼のバンドではベースを弾いてる、マルチプレイヤーだ。マイケルは才能のあるプレイヤーだし、多様なプレイヤーが集まっている。トミーみたいなロックの殿堂級の人から僕とミケーレみたいに、ここにいられて光栄って新入りまで。バンドはとてもウマが合うし、僕らの共通点はユーモアかも。皆面白いんだ。ミュージシャンの人生は厳しいけど、僕らは面白い奴らになろうとしてるんだ。Whitesnake のツアーバスでは笑いが途絶えることはないのさ。

(Part 2 に続く)

 

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ジョエル・ホークストラ 「ギターソロよりも曲に重点を置いている、フォーカスしたのはメロディだ」

ジョエル・ホークストラがメディアのインタビューに応えました。ニューアルバムの作曲について、また音楽ビジネスの現状についてなど語っていますので、以下和訳してみました。

myglobalmind.com

ジョエルのサイドプロジェクト、Joel Hoekstra's 13 のニューアルバム 『Running Games』 は2月12日に海外/国内盤発売です。あと1日ズレていれば発売日も13日になったのに、ジョエルもきっと残念がっていそうです。(13はジョエルのラッキーナンバー)

参加ミュージシャンは前作に引き続き、ヴィニー・アピス(D)、トニー・フランクリン(B)、デレク・シェリニアン(Key)、ラッセル・アレン(Vo)、ジェフ・スコット・ソート(B Vo)で、ミックスは今や Whitesnake のミキサー、クリス・コリアー。

全曲のサンプルはこちら。

 

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"Running Games" をアルバムタイトルに使ったのはなぜですか?

このアルバムでは、前作のようにテーマを持って臨んだのではなかった。前作には最初からテーマがあったんだ。ニューアルバムでは全て作曲を終えてから、全ての曲には「逃げる/逃避」といった共通のテーマがあると感じたので、タイトル曲を最後に書いた。始めこのアルバム用に何曲かヘヴィな曲を書いていたけど、アルバム全体をまとめるのにこの曲を書く必要があると感じたんだ、良い締め括りにね。

"Hard to Say Goodbye" のようなメロディックな曲を書くときには、リフまたはメロディのどちらから書き始めるのでしょう?

その曲は最初にメロディがあったんだ。しばらくメロディが頭にあって、多分このアルバムで最初に書いた曲だ。Whitesnake で日本にいるときに書き始めたんだ。(訳者注:恐らく2016年、前作の発売が2015年10月だったので、1年後には次作のライティングを始めていた模様)ツアー中僕は大抵近くを散策するのだけど、時折アイデアが浮かぶんだ。ウィーンにいたときにスクラッチ・ギターを録った。(訳者注:スクラッチ・ギターとは、曲を記録するために録音するギターパート。ここでは恐らくメロディパート)

作曲時には曲のバランスに気を遣っているんだ、メロディ主体の曲とヘヴィでギターリフを土台にした曲というように。ヘヴィな曲が好きな人、キャッチーな曲が好きな人の両者を満足させるバランスには目を見張るよ。メロディから先に書いた曲が3~4曲、残りはリフから書いた曲だ。僕はリフを書いているときでも、頭にコーラス(サビ)のアイデアがある。コーラスが強力なら、ヴァースにメロディを書ける。メロディを探すのに声を出して歌ったりもする。

ギターリフからのみ作曲を始めるバンドもあるけれど、僕には時として難しいんだ、どんな曲か想像ができなくて。仕事をする相手によってプロセスは異なる。1990年代や2000年代には僕はポップス系のソングライターと仕事をしていたのだけど、彼らはナッシュビル的な「コーラス・アウト」の思考様式で作曲していた。コーラスから始めて曲を生み出すんだ。僕はそういうやり方をする傾向があるね、僕がやるのはハードロック/ヘヴィメタルだけど。

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"Cried Enough for You" や "How Do You" のような曲では壮大なプロダクション・アレンジがみられます。TSO曲のプロダクションに影響されましたか?

僕は共に働く人やその状況に影響されるから、TSOの影響は何らかあるだろうね。でもそれらの曲ではアルバム参加メンバーの影響の方が大きいだろう。"Cried Enough for You" には Black Sabbath ぽい陰鬱なアコースティック・パートがある。"Children of the Sea" みたいな感じだ。ボーカルメロディがリフを辿るのも Sabbath ぽくしている。ヴィニー・アピス(ドラムス)とプレイすること自体もそのヴァイブを加えることになっているだろう。

あなたは多くのバンドで活動していますけれど、ソロアーティストとして独自のサウンドを見つける重要性についてどう思いますか?

ずっとソロアーティストとしてのサウンドはあったんだ。何年も前には数枚のインストゥルメンタル・アルバムを出した。でもこのプロジェクトは僕の別の分野のサウンドだ。この2枚のアルバム(JH13)は僕が現在やっている音楽、僕のインストゥルメンタル・アルバムとは対照的な分野に興味のある人に届くものだ。僕にとってはつまるところ、曲のヴァイブ、ボーカルが誰か、演奏者が誰か、サウンドのあるべき姿にかかっている。

ドラムスはヴィニー・アピスで彼が独自のユニークなスタイルで土台を創ってくれた。トニー・フランクリンのベースはヴィニーに完璧にフォットする。トニーが前作でヴィニーの起用を勧めてくれたんだ。そしてボーカルのラッセル・アレンがぴったりくる。

彼らとまた仕事することにした理由は何でしょう?

リスナーが期待するブランド又はサウンドが重要ということさ。アルバム毎に全く違うサウンドというのにはならない。継続性さ、それに今回は前作の作曲スタイルにフォーカスしてみたんだ。あのアルバムではボーナストラックの "Kill or Be Killed" が Metallica 的なヘヴィさがあるところから、"What We Believe" では全く違うヴァイブまであった。

レーベルからはもっと範囲を絞ってフォーカスするよう言われたよ。時には僕にとってそれは難しいんだ、僕の作曲の幅が広いから。僕が好きなアルバムは全ての曲が同じように聴こえないものだ。でもリスナーにはもう少しフォーカスしたものが必要で、アルバムを再生したときに期待したあるヴァイブがあることでアルバムを聴きこめるんだ。

 

2019年のインタビューでもジョエルは2ndアルバムの楽曲に自信を持っていました。

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ニューアルバムで典型的な自分の作曲とは違うと思える曲はありますか?

それに近いと思えるのは "Running Games" だね。アコースティックとパーカッションだけの曲で、ヴィニーとデレク(シュレニアン)はこの曲で弾いていない。だから、少し違うけれど、意識的にアルバム全体をまとめるつもりで書いた曲だ。

アルバムのギターソロでこれまでにやったことのないことで自分に挑戦したものはありますか?

いや、ただ自分のプレイをしていいテイクを録っただけだ。僕はあまり多くのことを詰め込まないようにしているんだ、継ぎ合わせぽく聴こえないように。まとまりのあるテイクが欲しいんだ。このアルバムはギターソロよりも曲に重点を置いている。ギターソロに燃える情熱と多少の速弾きは重要だけど、フォーカスしたのは曲のメロディだ。

曲またはソロでいつも使うお気に入りのエフェクトはありますか?

余り多くのエフェクトは使わないんだ。ディレイを少しとモジュレーションを掛けてファットなサウンドにするのが好きだね。ソロにリバーヴやコーラスを掛けるのは好みじゃないんだ。

このアルバムの曲の中で、Whitesnake の『Flesh & Blood』アルバム用にデヴィッド・カヴァーデイルに提示したものはありますか?

『Flesh & Blood』はデヴィッドがコーラス(サビ)を書いてそこから書き上げたアルバムだ。歌詞もメロディも全て彼が書いたんだ。まあ、いくつかのリフは彼に聞かせたかもね。

以前とは異なり、成功したバンドの主要メンバーであってもソロプロジェクトやサイドバンドとの掛け持ちが許容される風潮となりましたが、その変化についてどう思いますか?

あまり語りたくない人もいるだろうけれど、全てを推進するのはビジネスだよ。1つだけでやれる人なんて僅かしかいない。これで生計を立てるなら、1年中働く必要がある。でも1年12ヶ月活動するバンドなんてあるかい?多くはないし、特に(コロナ禍の)今はそうだ!

結局のところ、それが原因さ。曲のストリーミングで稼げる人なんていない、レコーディングから対価が入らず、今はライブで稼ぐこともできない。おかしな理由からそういう話をするのはクールじゃないんだ。皆はミュージシャンがその話をすると欲深いと思うんだ。そうじゃない、生計を立てようとしてるだけなんだ。思うんだけど、皆はミュージシャンが皆富豪だと思ってるのじゃないかな、それは全くの間違いだよ。裕福なミュージシャンがいないと言っているのではないよ、かつて何百万枚ものアルバムセールスを上げた人たちだ。

でも僕らの多くは一般の人たちと同じなんだ。成功したって印象を与えたいならこの話はカッコよくないのだろうけど。正直に言って、僕はこれをアートへの愛でやっている、僕のソロアルバムはアーティストとしての表現活動なんだ。お金になんてならないからね、ただ僕が愛することをするチャンスなのさ!

アルバムのプロモーションのためにライブストリーミングはやりますか?

ラッセルから先日電話があって、アコースティックのライブストリーミング・ショウについて話したよ、僕ら2人だけで。彼は近くに住んでいるから、2人なら集まっても安全だろう。フルバンドを集めて飛行機で移動してホテル滞在するのは難しすぎるから。皆を危険にさらすべきじゃない。

ストリーミング・コンサートの多くが上手くいかなかったのは、コロナ陽性テストや、そもそも成果を出す前に費用がかかるからだ。今は難しい時代だよ、もしショウをやることになったらアルバムからの曲とその他の曲になるだろう。できるかできないかわからないけど。

 

2017年に1回だけ実現した Joel Hoekstra's 13 のセットリストはこちら。

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Whitesnake について何か最新状況で言えることは?

まだ未定だ。僕らはデヴィッドが空にバットマンの印を上げるのを待っているのさ。(笑)それが上がれば全員集まるよ。今のラインナップが好きだし、デヴィッドとの仕事も好きだ。安全で適切な時が来たら、皆で集まるのを楽しみにしている。いつかツアーに戻れるのを願っているんだ。

とは言え、僕は今のこの状況に集中して、再びツアーに出ないかのように仕事を続けるつもりだ。僕はそういうアプローチをしている、そしてまたツアーに出られるようになったら嬉しい驚きに浸るよ。

エンターテイメント業界にいるあなたにはツアーが再開される時期について何か見通しはありますか?

皆と同じようにニュースを聞くだけだよ。今の時点では政治家が采配しているけれどこれからは、コンサートに人々が来るのかは彼ら次第だ。皆と同じように僕らも待っているんだ。僕はその間何もせずに座っているようなことにはしたくない。

かつて無い程に忙しいよ。アルバムを仕上げたのはその一部だ。毎週アーティストのセッション仕事をしているし、いくつかの楽曲でゲスト演奏もしている。週に30のプライベート・レッスンをしているし、Rock & Roll Fantasy Camp のマスタークラスでも教えている。リモートでのミュージックビデオにも幾つか参加したし、Cameo もやっている。その合間に家で父親の仕事も、毎日休みなしさ。

それに Frontier レーベルのプロジェクトのマイケル・スウィート(Stryper)とネイサン・ジェイムズ(Inglorious)とアレッサンドル・デル・ヴェッキオ(co-producer)のアルバムにギターリフを提供している。(訳者注:このプロジェクトは他にドラムスでトミー・アルドリッジ(Whitesnake)とマルコ・メンドーサがベースで参加します)

 

それから、ジム・ピートリック(元Survivor)がプロデュースするアルバムにも参加している。今はこうした人たちと仕事ができる大きなチャンスなんだ。

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スティーブ・ヴァイ Part 2「君の創造的意図の価値を損なうのは唯一、君の思い込みだ」

スティーブ・ヴァイが昨年末に登場した次世代ギタリストたちの運営するポッドキャスト The Guitar Hour Podcast からの一部概要和訳の続きです。

theguitarhour.libsyn.com

今週も有難いヴァイ説法が目白押しです。ヴァイ先生は年末に腕の手術をしたようなのですが、順調に回復されることを祈ります。

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あなたには常に創造的アイデアが湧いてくるのでしょうか?何か戦略的に自分をインスパイアする必要があったことはありますか?

私は誰もが潜在的に天賦の才を持っていると考えている。その才というのは、シンプルで満足感を伴い、オーガニックで人を惹きつけ、そこに恐れはなく、失敗や未来への恐怖もない。個性的な創造性の発揮だ。それは些細なことにも発揮される。料理や教育、政治や数学、音楽かも知れない。何でもいいのだよ。それをすると気分が良く、創造力を感じられるもの。多くの場合は他者を伴う活動だ。

自らの非凡な才能に自在にアクセスできる天才というのは、例えば私が見てきたのは、フランク・ザッパ、デヴィン・タウンゼント、ジェイコブ・コリアー、トミー・マーズなどだ。彼らは常に創造的な状態にいられる。私には彼らのような才能はない。彼らのようだったら良かったと思うよ。

私が何かを閃くには妖精が舞い降りて創造的衝動が生まれる必要があるんだ。それがあったら、何とかそれを記録に残す。重要だから言うのだが、君の創造的意図には価値があり、それを価値のないものにするのは唯一、そこに価値はないという君の思い込みだ。わかるかな?君がしていることで、たとえ僅かでも興奮を覚えられることがあれば、私のアドバイスはそれを記録することだ。私はそうしている。

私に閃きが起こるのは4~5%の割合だ。でも私はこれを増幅できる、閃きを記録しているからだ。例えば、"For The Love of God" も "Candle Power" も、あの短いフレーズのアイデアがあっただけだ。私は13歳からずっと浮かんだアイデアを記録して「永遠の戸棚」に保存しているんだ。こうすることで自分のインスピレーションを再現して天才を真似ることができるんだ。"Candle Power" でもあのリフのアイデアを取り出してその上でプレイすることで、元のインスピレーションが自分の創造性に火を点けることになる。少なくとも私にはこの方法が上手くいっている。

多くのアーティストが常にはインスピレーションを得られないことで悩んでいると思いますので、今の話はとても参考になります。

私たちの敵の1つとして心理的時間がある。実際、それを信じ込まない限りは何の力も持っていないのだが、それ故に君が継続して活動する障害となるのだ。例えば何か達成できなかったから落ち込んだとして、それは自分がある時間枠の中で達成することを望んだのではないか。

天がこう告げているのかも知れないだろう、「その時間概念は正しくはない」とね。君が興奮するアイデアに熱中して創造しているとして、期限といったものはそれを変えてしまう。君が自己の至福を追求する限り、君は期限よりも早く良い品質の成果物を仕上げるかも知れないし、期限よりも後になってより良い成果物を仕上げるかも知れない。

しかし、君が心理的時間に縛られ始めると、つまり「今仕上げなくては」といった心理で時計の示す時間とは違うものだ。例えば、「27歳までに有名にならなければ、俺の人生に価値はない、落伍者だ」というようなものだ。これが心理的時間だよ、幻想だ。君が仲間と楽しんで創造的時間をすごしているところに現れる恐れ。成功しないかもという恐れだ。恐れも心理的時間も実際には実在しないもので、君の創造性を妨げるのだ。

あなたの創造的な時間の掛け方について知りたいのですが、あなたはこの20年間ではスタジオアルバムの発表が少ないです。これは心理的時間とは違って、作品に掛かるべき時間が自ずとあるということでしょうか?

わかるよ。これは私にはやりたいことが他に沢山あるからなんだ。私が起床している時間の8割は音楽にかけているのだが、それは全てがスタジオアルバムに対してではないのだ。それに以前に比べて意識的に仕事をスローダウンしているんだ。

今はボーカル入りのアコースティックのアルバムを制作している。これが思ったよりも難しくてね。随分と時間をかけたよ、正しくやるために。別に技術の高い演奏ではないのだが、メロディックなDNAを楽しんでいるよ。私の「永遠の戸棚」にはそのDNAを持った素材が沢山あるんだ。それに私の声は音域が限られているし、時間がかかるんだ。もうこれにかかる時間を気にするのはやめた。これが他者へのインスピレーションになることを祈っているよ。

自分が置かれている状況がどこであれ、感謝の気持ちと楽しむ気持ちを持つことだ。「今どこにあるか」というのは何をどう演奏するか、演奏技術の習熟度に関わらず、経済状況や家族/恋愛状況、事業環境に関わらず、所有機材の量に関わらず、君が持つもの、持たないものに関わらず、それら全ての状況と手を携える方法は見つかるのだ。それが全てを変える。そこからどこを目指すのかを考えるのは簡単だろう。健全で、ストレスのない精神的な安定の状態にあれば、自らに備わった創造的本能がより一層増幅するのだから。

エゴが邪魔をしているのかどうか見分ける方法はありますか?

もし君のしていることに何か抵抗感や緊張感があるときや、心の中で不満を述べていたり、イライラが募っていたり、我慢していたり怒っていたりするとき、それはエゴが君の創造的な至福の邪魔をしているのだ。逆に、何かをしていて、明瞭感があり、時間経過を感じなかったり、意欲があり、見事に進められたり、問題点がチャンスに感じられたり、それは君が天賦の創造本能に従っているということだ。それが君本来の姿だ。

なるほど。一方であなたの過去作品では弾き手に高い演奏技術が求められます。あなたは今でも至福を追求するとこのような曲を創りますか?

私は今も発展途上なのだよ。今取り組んでいるアコースティック作品がある。アコースティックでは私の従来の演奏の様にディレイやディストーションをかけないからね、アームも使えないんだ。(笑)でも楽しいのだよ。今取り組んでいる奇妙なコードがあって、ネックのハイポジションで弾くのだが、親指はこんな風なんだ。これを弾くのに瞑想しているよ、完璧なサウンドが得られるまで。

私のプロセスというのは、完璧なサウンドを得られ、ミスがなくなるまでひたすら取り組むというものだ。トーンの質に全神経を集中する。そうして、弾くということを考えなくてもいいレベルまで到達したら、そこで初めて音楽制作のスタート地点に立ったと言える。

弾くことを考えなくてもいいレベルに達すると新たな境地が開いて指の動作の記憶ではなく自分のプレイに別のものが注がれるのだ。

私は長いことこういう(訳者注:音声では不明ですが、画面上で手を見せていると思われます)弾き方をしていたので、来週腕の手術をしなくてはならないんだ。とにかく、思うように弾くための葛藤はある。しかし問題などない。

なぜなら私はフランク・ザッパとの仕事の経験から学んだからだ。「挑戦を止めなければ、失敗することなどない」のだよ。フランクから渡された難解な譜面を見て、不可能ではないと思ったのだ。諦めなければ自分にできない訳はないだろうと。"Candle Power" のジョイント・シフティングもそうだった。私にはとても難しかったが、(諦めなければ)私にはできるとわかっていた。挑戦は至福を追求する過程なのだ。

(Part 2 終り)

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ヴァイ先生が腕の手術をしているのにはとても驚きましたが、インタビュー中にも皆に大事ではないので心配するなと言っていますし、手術後にCameoをやっている映像ではお元気そうで、既にギブスも取れて右手も動いていますので安心しました。

ところで、心理的時間の話のところで、「もうこれにかかる時間を気にするのはやめた」と仰っています。これは歌モノのアコースティックアルバムにまだ時間がかかるということ。(悲鳴)いつになったらエレクトリックのニュースタジオアルバムができるのでしょうか…

それに、 Generation Axe の2枚目のライブアルバムに数年前の Jamathon ライブ音源もありますね。いつできるのだろう…(遠い目)

スティーブ・ヴァイ Part 1 「君の意志に反して起こることが、結果的には君にとって最善の結果をもたらす」

スティーブ・ヴァイが昨年末に次世代ギタリストたちの運営するポッドキャストに登場しました。

David Beebee, Tom Quayle, Dan Smith & Jake Willson による The Guitar Hour Podcastでは75分ほどに渡ってヴァイ先生のトークが聞けます。彼らの Patreon(有料会員制サービス)に登録すると、公開ポッドキャストに含まれないトークも聞けるようです。

ヴァイ先生のお話の一部をざっくりまとめて和訳しました。今週はPart 1 です。

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2020年という変わった年はあなたにとってどうでしたか?

確かに変わった年だったね、だが私にとっては通常とあまり変わらなかった。私は基本的に自宅スタジオで暮らしているからね。ミュージシャン同士が集うようなものはできなかったけれど。でもロックダウンの中でも技術の伸長により、人々はコミュニケーションをとり、何とかして他者とクリエイティブな活動を可能にした。

20年5月~6月には2つのオーケストラで4時間分のオーケストラ曲のレコーディングの予定があったが2度延期になったよ。21年8月にはツアー開始の予定があるが、どうなるかはわからない。ブッキングエージェントと連絡を取り続けているよ。

20年はツアーミュージシャンにとっては厳しいというか、もはや不可能な年だったね。だが、私はこう考えることにしている:

君が自分の人生を振り返ってみると、「こうなるはずだった」と思うことがあるだろう。「こうでなくては」と強く要求するようなことだ。しかし、そうはならなかった。状況は変わるものなんだ。これらの変化は避けられないものであり、君の人生に新たな側面を追加するんだ。それは君の意志に反して起こることだが、結果的には君にとって最善の結果をもたらす。これは常に起こっていることで、理解することが重要だ。

過去にもあっただろう。どのような状況が目の前にあっても私たちは変化に対し、いかに弾力的に再起して前進してきたか思い起こそう。これまでも、今もそうなのだ。

だから、私は今回のロックダウンでも同様にした。全ての予定や見込みは変わったんだ。そこで状況や政治を嘆いても仕方がない。多くのミュージシャンはワーキングミュージシャンでツアー演奏で生活をたてている。しかし今、この状況下で何とかする力が試されているんだ。そして何とかしてきたのではないかな?ツアーの代わりに、様々なツールが役に立ち、創作活動が進んだのではないか。

"Candle Power" のアイデアについて教えてください。

私の記憶の限りで常に私には、自分の普段の快適範囲を超えた何かをプレイすることに関心があった。何か新しいもの。13歳でギターを手に取って以来ずっとだ。何かをプレイする能力、これはとても魅力的だ。何度も何度も練習してやがて突然弾けるようになる。これが私のキャリア全ての原動力なんだ。それが最も重要なことで、それ以外のことはその結果起こったことだ。

今でもそうで、私はアイデアが湧くと興奮する。わかるだろう?この興奮が君の成功へのロードマップだ。魅力的なアイデアに従うこと。何か別のものが必要だと思っている人が多いけれど、例えば「運」など。そうではない。必要なものは情熱だ、鍛錬でさえ必要ではない。鍛錬とは情熱ほど純粋ではない。わかるかな?鍛錬は自己を強制して何かしなければならないが、情熱はただそれに従ってやるだけだ。

私には自分にとって魅力的なアイデアがいくつもある。それは自分にとってであり、必ずしもオーディエンスにとってではない。自分にとって魅力的な創造的アイデアを追求するのだ。それが勝利チケットなんだ。

なぜなら、その1:創造の域において自己満足が得られる。それ程に満足できるものはない、歓びだ。自分の潜在能力を発揮し、自己の目的を実行しているのだからね。

その2:自分が心から楽しんですることはそれが対象に注がれる。成果物にはいわばその周波数が備わるのさ。それが特定の人々を惹きつけるのだよ。全ての人ではない。

私は幸運にも自分にとってクレイジーで面白いアイデアを追求すると私に適したオーディエンスを得られた。"Candle Power"についても同様だった。その辺りは君たちはもう知っているだろう。

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創造的アイデアを抱くと直ぐにそれを実行するのですか、それとも後にとっておくのでしょうか?

いい質問だ。創造におけるストレスがあるとしたら、私の生涯で実行できないアイデアが大量にあることだ。また、アイデアには即座に形にならず、後になって別の物へ発展するものがある。

これは私が悟ったことなのだが、君の生涯は今にあるのだ。「今」だけが君にある。私が今、何か創造的で満足感のあることをするとしたら、それで十分なんだ。全てを実行することはできないのだよ。できないことに気をもむことなどないのだ。今、魅力的で創造的なアイデアを追求することが重要なんだ。未来に対する妄想は失敗を招く。私はそれに気付いたのだ。

 (Part 2 へ続く)

 

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